
とり年最後の師走12月になりました。今年もあっという間の一年になりそうですが、少し早めに今年を振り返って見ると「トランプに始まり、トランプに終わる」形になりそうです。新年早々の大統領就任式を皮切りに幕を開けた『トランプ劇場』はしっかりした台本も脚本もない行き当たりばったりのリアリティー・ショー。監督兼主役のトランプ大統領は舞台経験がなく、「私が主役」にこだわる目立ちたがり屋で、抜擢した役者陣へのはっきりした舞台構想の事前説明や演技指導がないままツイッターというアドリブだけは連発して、後の展開や結末が全く予想不可能な一貫性も脈絡もないストーリーでドタバタ進行。役者の多くも舞台経験のない畑違いの素人で大根役者か田舎芝居の三文役者風で演技もせりふもいまひとつ。舞台そのものだけでなく、舞台裏や楽屋がこれまたドタバタで舞台以上に耳目を集める始末。役者の顔ぶれも時間の経過と共に初日のメンバーからくるくる入れ替わり、今も残っているのは片手程の人数となり、来年になると有名なアガサ・クリスティーの短編推理小説の題名である『そして誰もいなくなった』の状態になるかもしれません。最後まで残って主役を支えようとしても遂には支え切れなくなりそうな共演の名(迷?)脇役は誰でしょうか?トランプ政権だけに、最後にババを引くのは誰か?ペンス副大統領あたりでしょうか?(笑)
スポーツの話題を少々。プロ野球日本シリーズは福岡ソフトバンクホークスが横浜DeNAベイスターズを4勝2敗で下して優勝。最終第7戦までもつれたワールドシリーズはヒューストン・アストロズがロスアンゼルス・ドジャースを下して初優勝。特にワールドシリーズは野球ファンでなくても大興奮の連続でした。昨年のシカゴ・カブスとクリーブランド・インディアンズのシリーズも球史に残る熱戦でしたが、今年はそれに勝るとも劣らないシリーズでした。番外のニュースで驚いたのは何と3年前の2014年にスポーツ・イラストレーテッド(SI)誌が「アストロズは2017年にワールド・シリーズで優勝する。」と予言していたこと。1962年ナリーグの球団数拡張(増加)時に創設されたアストロズは球団売却、アリーグへの移動、2013年までレギュラーシーズン3年連続100敗以上などの苦い歴史の後、ドラフト指名・獲得後マイナーリーグから昇格またはベテラン選手の放出トレードで獲得した若手選手の育成・台頭、積極的なトレード補強をして着々とチーム再建を進め、2015年には10年ぶりにプレイオフ進出を果たし、2016年
は一休みしたものの今期トレード期限ぎりぎりでデトロイト・タイガースから獲得・補強したバーランダー投手が最後の切り札となり見事初優勝!当時は野球評論家から笑われるような大胆予想したSI誌の鋭い洞察力も見事でした。(拍手、拍手)
またまた前書きが長くなってしまいました。さて、今回のテーマは『中長期構想の重要性』です。
上述したアストロズのチーム再建の成功例でもお分かりのように、何事も中長期の構想が重要です。今日、今の一瞬を大切にして生きる事ももちろん重要ですが、明日以降1週間先、ひと月先、半年先、数年後、10年後、・・・と将来に繋がるしっかりした構想(ビジョン)を持つ事も忘れてはなりません。ともすれば重要度が低くても目先の急ぎの事に心を奪われ、限られた貴重な時間を費やしてしまいがちですが、以前の本欄でも触れた将棋の大局観の如く、現状を大所高所から見渡して目標となる着地点、到達点、終点に間違いなく辿り着けるように、或いは有るべき姿や状態になれるようにこの先どうして行こうか、どのような手を打って行こうかを考え、ビジネスならば立地、日程、予算・資金繰り、設備・機械、原材料、人員、製造・販売方法、運営システムなどを具体的な計画に落とし込んで行くことにより、一歩一歩着実に目標に近付き、辿り着くことが出来ます。この基本的な構想がいい加減だったりぶれたりすると後の計画も的外れになったり、実行困難や中止、失敗に終わる恐れがあります。
構想段階で性急に結論を出したり、計画作成・実行を急いだりすると途中で挫折・頓挫し、構想段階に後戻りして計画の練り直しをする羽目になりかねません。最初にたっぷり時間を掛けて関係部門、関係者間で十分意見を交わし、ぶれのないしっかりした構想が合意形成出来て初めて具体的な計画作成・実施に移れます。
同じプロ野球の世界で言えば、地元デトロイト・タイガース、プロフットボールではデトロイト・ライオンズがいまひとつ古い殻を破れずもう一段、二段レベルアップしてプレイオフで勝ち進められるように現状打破出来ずに低迷しているのはその点が問題ではないかと思います。バスケットボールのデトロイト・ピストンズも同類でしたが、今シーズンは一皮向けて出だし好調です。これがシーズン後半からプレイオフまで続くと嬉しいですね。昨シーズンで25年連続プレイオフ進出が途切れたアイスホッケーのデトロイト・レッドウィングスは今年も厳しい状況ですが、オーナーやファンから勝利を義務付けられ期待されても、決して焦らず的確な世代交代、チーム再建構想を基に具体的なカムバック計画を作成・実行して欲しいものです。
政治の世界では、トランプ大統領と同政権、上下院とも過半数を占める共和党共々に混乱が続き、場当たり的な政権・議会運営ばかりで確固たる中長期の構想が欠落しているように見えます。先月中旬から続いている税制改革法案がかろうじて下院は投票・可決・通過したものの、上院では共和党内の意見分裂もあって一票、二票が可決・否決の分かれ目になるぎりぎりの状況で、果たしてどうなりますか?
ここに来て北朝鮮問題やロシアゲート疑惑も再燃し、以前より炎が大きくなる様相を呈しており、最早場当たり的な運営では対応仕切れない状況かと思います。トランプ大統領は北朝鮮に対してまたも挑発的、侮蔑的な発言をしたり、テロ・移民問題に関して人種差別的なフェイクビデオをリツイートしたりして物議をかもしていますが、主要メディアのニュース報道を「フェイクニュースだ。嘘っぱちだ」と繰り返す本人がフェイクビデオをばら撒いたり、大統領報道官が「真実のビデオでもフェイクビデオでも問題ない」と擁護するなどツイートを大統領の公式政治的発言と位置付けた過去の経緯上、国内のみならず国際的にも米国大統領に対する信用・信頼と敬意は今やどん底の状態になりつつあります。
選挙キャンペーン中から現在に至るまで大統領自らの発言やツイートの内容に誤りがあり、はっきりした裏付けのある真実でないケースが多々ありますが、嘘つきやほら吹きの人が『フェイクニュース』呼ばわりするメディア報道は逆に真実であると言うことでしょうか?また、いよいよ核心に迫りつつある感のあるロシアゲート疑惑についても、事実に基づく精査と慎重で堅実な方法論を信条とするロバート・ミュラー特別検察官が現・元トランプ政権幹部やファミリーメンバーに捜査の焦点を移しつつあり、私見ではクリスマス前後か年明け早々に現政権を揺るがすような何か重大なサプライズ発表があるのではいかと予想しております。
スポーツの世界でも政治の世界だけでなく、皆さんの日常のビジネスや学校、家庭など私生活においてもしっかりした中長期の構想をお忘れなく!『転ばぬ先の杖』となるか『転んだ後の杖』になるか、同じ杖でも大違いですよ!!
執筆者紹介:小久保陽三
Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。