
穏やかな日和に恵まれた10月1日(日)、JSDウィメンズクラブとJBSD(デトロイト日本商工会)文化部会の共催による恒例の大イベント日本まつりが昨年同様にノバイ市のハイスクールを会場に開催された。1時から4時までの開催時間を通して大勢の人で賑わった。無料の自由参加イベントであり、入場チケットを発行していないため、訪問者の人数は把握できないが、「例年より人出が多い」「昨年より混み合っていた」との声が多く届いてきた。
この日本まつりは、アメリカ人や他の文化背景を持つ人たちへの文化紹介と交流を主目的に様々な展示や実演などが行われている。もちろん周辺に滞在している日本人が楽しむ場にもなっており、当地の秋の行事として定着している。親子で浴衣姿で散策する姿も多く、祭りムードを高めていた。
在デトロイト日本国総領事館、日米協会、滋賀県の協力、そして会場のあるノ バイ市ならびにノバイ教育委員会のサポートを得て毎年開催している。今年も多数の団体や個人ボランティアが協力してこのイベントを支えた。JSDウィメンズクラブが書道コーナーのアレンジや当日の舞台の進行などを執り行なったほか、近隣の多数日本人女性がボランティアに応募し陰に表に活躍。また、ノバイハイスクールの生徒を始め、日本語を学習する現地のハイスクール生や大学生たちもボランティアとして参加し、来訪者との懸け橋として若いパワーでイベントを支え、盛り上げていた。
アトリウムと呼ばれる広々としたスペースには茶の湯や書道の実演や、書道・折り紙などの体験のコーナーが設けられ、手馴れた日本人女性たちを中心に実演や体験ワークショップが提供された。
茶の湯実演は、当地で活動する裏千家・表千家、2つの流派が手を携え、合わせて6回もの実演が行なわれた。お点前に合わせて英語での丁寧な解説も添えられ、多くの人が興味津々の表情で見入っていた。参観者は和菓子と抹茶を味わうチャンスにも恵まれた。生け花インターナショナルによる季節感溢れる数杯もの展示が文字通り華を添えていた。書道パフォーマンスは、書家である藤井京子さんが身の丈以上の書を見事な筆さばきで披露。紅葉の絵を施した和紙に「紅葉」の歌詞が書き上げられた。
また、ミシガン州と姉妹県関係にある滋賀県による文化紹介ブースを始め、デトロイトりんご会補習授業校、JCMU(Japan Center for Michigan University)など、日本に関連した団体のブースも並んだ。日本生まれの商標デザインを元にタオル帽子を作製し患者さんに寄贈する活動をしている「ミシガン・タオル帽子の会」も昨年に続きブースを出した。今回はじめて、ハンドスタンプアートプロジェクトのブースも登場。弊紙8月号で同プロジェクトについて記載したが、この活動は2014年に障がいを持つ子供の親たちが中心になってスタートしたもので、子ども達を支える人々の手形を世界中から集めてひとつのアート作品を作り、2020年東京パラリンピック開会式での掲示することを目標としている。
日本まつりの場で様々な活動や当地と日本との繋がりを知ることができる意義も大きい。
自作の割りばし鉄砲での的当てゲームや輪投げなどの日本の縁日遊びの体験コーナーには長い行列ができていた。書道と折り紙のワークショップも終始盛況で、ボランティアの女性や学生が懇切丁寧に手ほどきをしていた。書道コーナーには仮名や漢字を知っている非日本人の体験者も多く、楽しそうに挑んでいた。出来上がった折り紙作品を嬉しそうに親に見せる子どもの姿もあり、笑顔がたくさん見られた。
同イベントは隔年で体育館に櫓を組んで盆踊りを中心に夏祭り風にパフォーマンスを組む年と、講堂をステージに演目が披露される年があるが、今年は講堂で、8つのプログラムが順次進められた。
幕開けと締めには「五大湖太鼓センター」が、祭囃子の太鼓とは一味異なるパフォーマンス太鼓のダイナミックな魅力を披露。太鼓の音はアトリウムまで届き、音を聞いて会場にかけつけた人もいた。
田川八段が長を務めるデトロイト剣道道場による実演は、通常の稽古通りに“礼”から始まり、子どもたちの打ち込み練習が真剣そのものに行なわれ、“礼”にて終了した。短い時間ながらも日本の武道の折り目正しさを観客に伝えた。
一転して「ドリームシンガーズ」が会場を華やかに。主催者である森みゆきさんのオリジナル曲『Love Your Life』や『南中ソーラン節』を愛らしく元気に披露した。
ミシガン沖縄県人会「ちむぐぐる会」の演奏は5曲。民族衣装をまとい、琉球エイサースタイルの舞と太鼓を演じた。女性6人によるものであったが、勇壮で荘厳な雰囲気を醸し出していた。
名取である小山みち江さん(花柳徳猿)がオハイオ州から駆けつけ、『荒城の月』などを舞った。御一人での演舞でありながら、堂々たる一挙手一動によって気品ある空間を生み出していた。
邦楽グループ「雅(Miyabi)」は琴と、洋楽器であるバイオリンとチェロを加えて『秋の言の葉』など箏曲を奏で、雅な和の世界へ観客を誘った。
混声合唱「音もだち」は男声と女声による層の厚い歌声で『鴎』など3曲を豊かに歌い上げ、穏やかな時を聴衆に届けた。
総領事公邸の料理人である中野楓さんの和菓子プレゼンテーションと、彼女の手ほどきによる“和菓子づくり”は昨年の大好評を得て実施された参加型ワークショップ。老若男女が、柔らかな感触と甘い味を楽しんだ。
準備運営に動き回ったJSDウィメンズクラブ運営委員からは「協力団体はもとより、たくさんのボランティアのサポートがあってのこと、感謝しております」との感謝と合わせて、「改めて日本文化の素晴らしさを実感した一日でもありました」との言葉があった。これは多くの関係者、出演者、訪問者の思いでもあろう。和やかに盛況に続くことを祈りたい。