
1990年代のマイクロ・ブリューワリー萌芽期から活躍しているブリューワリーがある。今年9月に20周年を迎える、Atwater Breweryだ。デトロイト・ダウンタウンからJefferson Avenueを北に数ブロック行き、レンガ造りの建物の一角にある。角からはGMのRen Cenも見える。
バーテンダーに、初めてこのブリューワリーを訪れたのはずいぶん前になることを話してみると、「ああ、それなら昔のTap Roomの頃ね。あそこにそのときの建物が残っているわよ。私もその頃からここで働いているから」。そう言ってバーの後ろのガラスごしに見える醸造タンクのルームを指差した。“Atwater Brewery”の看板が見えた。彼女は、デトロイト学校区で教員をしているそうだ。給料や待遇をめぐって教員のsick-out(病気理由の欠勤)がたびたび起こっているデトロイト公立学校区(Detroit Public Schools)は日本とは違った環境を思い知らされる。そんなこととは別に、Atwater Breweryは清新でソフィスティケートな雰囲気だ。
クラフトビールに興味がある人なら、食料品店等でAtwaterのビールのラベルを見たことがあるだろう。店のロゴは「労働者をモチーフにしている」が、ラベルのデザイナーはPlymouthのTony Rokoで多くのセレブたちにも作品を提供してきた。Atwaterのラベルは2016年に一新され、以降彼が手がけている。ロートレックとゴッホ風、がモチーフ。独特の線と色彩がヨーロッパの19世紀の絵画を連想させる。自然や風景、動物をメインにしたミシガン・クラフトビールのラベルの中でも、このAtwater Breweryのは芸術的で独特なアピールの仕方だ。
ダウンタウンに近いせいか、Happy Hourには勤め帰りの会社のグループと思しき人たちが多く見られた。店内はブースよりも大き目のテーブルが多く、オープンスペース的な雰囲気だ。サンドイッチは$4(!)。サーバーに尋ねたところ、人気なのはBall Parker。ロールパンにビーフ・ウインナーと甘く炒めた玉ねぎ、チーズにBBQソース。小腹を満たすのにはちょうどいい大きさで、勤め帰りの人たちを意識した大きさ。12インチのピザはシェアするのにちょうどいい。Italianoピザはモッツァレラが美味で、辛目のイエロー・ペッパーとカラマタオリーブがバランスよい。
やはりタップルームのサーバーから出てくるビールはおいしい。Going Steady IPAはホップの風味がいい。シーズナルのWango Mango Wheatはボトルのラベルも魅惑的だが、マンゴーの甘さがおいしい。
5月中旬からRooftop Biergartenもオープンし、デトロイト川を臨みながら夕暮れを楽しめる。8月にはHydro jet planeのレース、9月にはDetroit Jazz Festival、10月のデトロイト・マラソンと界隈の大きなイベントが目白押し。Atwater Breweryのすぐ前の空き地が駐車場になっているので便利だ。金曜、土曜日はいつも混んでいるそうだ。
Atwaterはこのデトロイト・ダウンタウンのJos CampauのほかにもGross Pointe ParkとGrand Rapidsにも店がある。