4月もあっという間に過ぎた感のまま迎えた5月。草花が咲き誇り、日に日に青さが増す芝生や木々の若葉は春の息吹を感じさせ、近付く夏を期待させます。開幕からひと月経った日米のプロ野球ですが、シーズン序盤やや予想外の展開です。日本のセ・リーグでは昨年リーグ優勝した広島東洋カープが出だしこそややスローでしたが現在首位。僅差で復活を目指す阪神タイガースが2位、読売ジャイアンツが3位と大きな驚きは無し。一方、パ・リーグでは何と昨年日本シリーズの栄冠を勝ち取った北海道日本ハムファイターズが4月に10連敗して目下最下位。昨年5位の東北楽天イーグルスが首位、最下位だったオリックスバッファローズが2位(一時は首位)、優勝候補筆頭のソフトバンクが3位とちょっとした異変が起きています。米国MLBではア・リーグ西地区でヒューストン・アストロズが首位を快走。ナ・リーグでは同じく西地区でアリゾナ・ダイアモンドバックスが首位、僅差の2位にコロラド・ロッキーズ、優勝候補常連のサンフランシスコ・ジャイアンツが最下位と西で異変。シーズン浅くまだまだこれからの長丁場なので、5月以降違う展開になる可能性は大いにありますが、やや低調な出だしの日本人選手の奮起、巻き返しに期待しながら見守って行きましょう。テニスでは先のトーナメント中に手首を負傷した錦織選手がこの数年好成績を挙げていたバルセロナ・オープン開幕前日の練習で痛みが再発し出場辞退となり残念。痛みがある内はボールを打つ練習が出来ず、再々発する恐れがあるため実戦復帰、完全回復にかなり時間が掛かるかもしれません。次のマドリード・オープンだけでなくひょっとするとメジャーのフレンチオープンも危ないかも。昨年まで結構稼いでいたクレーコートのポイントが欠場または早期敗退などで失効するとランキングも急降下して各トーナメントでシード順も下がり、早い段階でハイランク、ハイシードの難敵と対戦する状況となりますます苦しくなります。フレンチ・オープンの後芝のウィンブルドン、そしてハードコートのUSオープン・シリーズからUSオープン本番へと健全なプレーヤーでも過酷な長く暑い夏の戦いが続くので無理は禁物。もしまた痛みが出たら、下手をすると3ヶ月でも治らず6ヶ月とか残りのシーズンを棒に振る心配があります。若手プレーヤーの台頭もあり、本人の焦る気持ちは良く分かりますが、完全治癒とコーチ、トレーナー陣も含めて慎重でベストな判断を切に願います。

さて、今回のテーマは「ホワイトハウスは伏魔殿?」です。

本題に入る前に一言お断りしておきますが、直近数ヶ月の本欄原稿が長文化する傾向が続き、スペース調整や紙面構成・編集の面で編集者兼発行者の方に多大のご迷惑をお掛けしてしまったため、今回から出来るだけ原稿量を目標・目安範囲に止めたいと思います。決して手抜きする訳ではありませんので、悪しからずご了承願います。

先月末で大統領就任後100日の節目を迎えたトランプ政権の評価は残念ながらいまひとつです。相変わらず選挙キャンペーン当時のスタイルを継続した演説、発言と強気な基本姿勢を続けていますが、「就任100日では(公約を果たす)多くの事は出来ない」とか「政治・政権運営は思う程やさしくなかった」など時折弱音を吐いています。振り返れば、選挙キャンペーン中の討論会の発言や集会演説でも具体的な政策論はほとんどなく、前オバマ政権や民主党、対立候補者のアラ探し、悪口、非難・攻撃(口撃)が主で人気投票を集めて当選したため、本人も取り巻き陣も明確なもしくは大枠でも政策案があった訳ではなく、大統領就任後寄せ集めた急造政権幹部との意見交換・摺り合せ・調整も余りない状態で的確な政策を打ち出そうとしても、表面的な目立つ現象のみを捉えて対策を打ち出しただけでそれが及ぼすプラス・マイナス両面の各種各様の影響を事前に精査・推測・検証せずに実行したため、国民の大半が期待するレベルの実効が上がらず逆に大きなマイナス面の問題が発生するという事態に至り、当選した勢いだけで何でもゴリ押ししようとしても所詮無理な話で当然と言えば当然の結果です。

国内だけでも両手に余る程の緊急課題が山積みのところに、シリアで一般国民に対するアサド政権によると思われる化学兵器(サリンガス)攻撃や北朝鮮の核実験、核弾道搭載可能ミサイル試射の継続、中国の『一帯一路』構想に基づくシルクロード経済帯および21世紀海上シルクロードの構築、それらを財政面で支えるシルクロード基金やアジアインフラ投資銀行の設立運営で米国(日本も)を外して中国が中心となり世界的求心力を高める覇権的『中国版マーシャルプラン』、欧州他諸国での各種テロ事件など国外でも看過出来ない事態が続き、野球に例えれば、直球一本勝負で行こうとするトランプ流プレースタイルのところに剛速球だけでなく滅多やたらと変化球が、それも同時にあちこちから飛んで来て、長年実務経験のある海千・山千の政治のプロでも対応が難かしいのに政治素人の大統領と手薄な取り巻き陣ではこの上ない危うさを感じます。

また、選挙キャンペーン中から政権スタート後に掛けて、当時のキャンペーンマネージャーやトランプ支持グループおよび政権の中枢人物がロシア政府関係者と極秘に連絡を取り合っていた事実がいよいよ明るみに出て、ロシア政府の米国大統領選挙キャンペーン活動への侵入や極秘情報入手、選挙妨害が疑われていますが、ホワイトハウスは事実として一切認めず、関連情報提供を拒み、逆切れしてメディアや前オバマ政権を非難したり、もみ消し工作に躍起になっている節があります。ロシア関連疑惑に関して当事者の一人であり、去る2月に国家安全保障担当大統領補佐官の要職から更迭されたマイケル・フリンは顧問弁護士を通じて「(法的に処罰されない)免疫権が与えられるならば、議会証言しても良い」と声明しておりますが、昨年の選挙キャンペーン中のトランプ応援演説で当時話題になっていたクリントン候補者のメール問題をサカナにして「牢屋にぶち込め!(彼女やその取り巻き陣がメール問題に関して証言する条件として要望したという)免疫権は恐らく罪を犯したという意味だ」と言い切った当の本人が免疫権を求めるとは、天に唾したツバがそのまま自分の顔に振り掛かって来たようで正に身から出た錆、自ら墓穴を掘ったも同じで自業自得ですね。

更に、最近では政権内の幹部同士の摩擦、内輪揉め、不協和音が漏れ出しています。選挙キャンペーンの黒幕でナショナリズム/ポピュリズム戦略で一般大衆支持を得てトランプ候補を当選させ、その後閣僚でない立場でホワイトハウス入りし、一部では実質的な陰の大統領としてトランプ大統領を背後で操っているとまで言われているスティーブ・バノンと大統領の娘婿であるジャレッド・クシュナーの関係がギクシャクして陰の立役者バノンが一時政権中枢から外されかねないムードになったようですが、就任100日の節目に捲土重来で復活し自分の能力と影響力を今まで以上に強烈に顕示しようと考えているようで余計に心配です。

娘婿は政権内で正式な役職・肩書きを持たないにも拘わらず、外国要人や国家主賓との会談や国家機密に関わる会議、打ち合わせにも同席を許され国家間の政治的・経済的最高機密に直接触れる機会を与えられ、トランプ大統領の政権担当期間中および退任後のトランプグループの経営・事業運営上、妻であるイバンカ嬢と共に直接・間接的に極めて大きな私的メリットを享受出来る立場になっております。 新税制改革案と合わせてトランプファミリーにはプラス効果ばかりです。

これら諸々の出来事を考えますと、今のホワイトハウスは完全に私物化され、透明性は失われ、まるで得体の知れない魔物が住む伏魔殿か恐ろしい妖怪が跋扈する妖怪の館のようです。狸にばかされるか狐につままれる程度の笑話で済めば、まだ可愛いものかもしれません。取り返しのつかない事にならねばいいですが。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。