幅広い国や地域に暮らす仲間と出会い、日本語・日本文化を体感する 「サマーキャンプ in ぎふ」の取り組み 4

2016年第2期の仲間とスタッフ2016年8月2日午後3時、JR東海道線岐阜駅の改札口前には、抱き合って泣く親子や子どもたちがあった。子どもたちは日本ではなく海外から来たことが一目で分かり、行きかう人々の目を引いていた。私は、その姿をほほえましく眺めていたが、抱き合って泣いていた親子が近寄り、別れのあいさつをしてくれるのを聞くと、思わず目を潤ませてしまった。

地元のおじいさん、おばあさんたちと野菜収穫と料理作りこれは、「サマーキャンプ in ぎふ2016」の第2期が終了し、子どもたちが解散する際の様子です。振り返ってみると、このようなシーンを2006年から19回経験したことになります。「サマーキャンプ in ぎふ」で出会い、1~2週間をともにした子どもたちは、のべ215人になりますが、その一人ひとりのことを今でも覚えています。子どもたちは、私のことを忘れてしまったかもしれませんが、「サマーキャンプ in ぎふ」のことは一生忘れないと思います。それは、当キャンプが、日本でも有数の自然豊かな地で開催され、他のキャンプでは体験のできない多彩なプログラムを多数用意しており、開催地の地元に暮らす多くの人々や一緒に参加者した同じ境遇の仲間たちとの出会いがあるからです。

源流に近い透き通った川で遊ぶキャンプ中は、地元の子どもたちやホストファミリーとの交流のみでなく、各種体験の講師であるお年寄り、大学教授や大学生、寺院のお坊さんのほか、キャンプの運営をサポートしてくれる20~30代の若者たちと接する機会もあり、幅広い年齢層の人々との出会いがあります。また、同じ境遇の仲間たちとは期間中ずっと寝食をともにするため、親密な関係が生まれ、キャンプ後も交流が続いています。

ここで、「サマーキャンプ in ぎふ」の特長についてご説明します。

幅広い国・地域で暮らし、日本語を学ぶ仲間との出会いの場

米日教育交流協議会 (US-Japan Educational Exchange Council 略称:UJEEC)は、米国在住子女の日本語教育の推進および帰国後の進学を支援するために、2006年1月に設立し、今年で12年目を迎えています。

緊張するが楽しい学校体験当協議会の活動の一つである「サマーキャンプ in ぎふ」は、日本で実施する海外に暮らす子ども専用の日本語・日本文化体験学習プログラムです。当協議会設立の2006年から11年間にわたり、年1~2回実施し、これまでの19回にのべ215人が参加しました。1年目の参加者数は、7月上旬から中旬に実施の第1期が2人、7月下旬から8月上旬に実施の第2期が3人というような寂しいスタートでしたが、2年目以降は徐々に増加し、4年目以降は第1期と第2期

合わせて20人を超えるようになりました。(2011年と2013年は第1期のみ、2016年は第2期のみ実施)

座禅で心を落ち着かせる参加者構成は年度や実施期間によって異なりますが、平均すると女子が約52%と男子をやや上回り、小学生が約40%、中学生が約50%、高校生が10%です。参加対象は小学4年生から高校生であり、幅広い年齢層の子どもが一緒に活動することが特長です。また、米国在住者のみならず、カナダ、メキシコ、英国、アイルランド、ベルギー、トルコ、韓国、中国、香港、台湾、タイに暮らす子ども、そして日本に暮らしインターナショナルスクールやアメリカンスクールに通学している子ども参加しました。米国在住者では、カリフォルニア州やワシントン州、ニューヨーク州、ニュージャージー州などが多いですが、全米各地から集まります。このように幅広い国や地域に暮らす子どもたちが出会うことができる場にもなっています。

手作りいかだで川下りを楽しむ楽しみながら日本語や日本文化に触れる多彩なプログラムの実践

このように幅広い国や地域から多くの子どもたちが参加するようになったことの背景には、「サマーキャンプ in ぎふ」では、海外に暮らす子どもたちが、楽しみながら日本語や日本文化を体験できる多彩なプログラムを組んで実践してきたからだと思います。地元の公立学校への体験入学、地元で実施されるイベントへの参加を通じて、日本の同年代の子どもたちと交流できるプログラム、豊かな自然に恵まれた里山でハイキングや川遊びを楽しむプログラム、日本の自然を活かした食文化や昔から継承されている伝統文化に触れることのできるプログラムなどのほか、日本で生活したり、日本人と接したりする際に必要な日本語やマナーを修得できるような指導も行っています。

ここで今年の「サマーキャンプ in ぎふ」で実施予定の主なプログラムをご紹介します。

◆学校体験:地元の公立小中学校・高等学校で、日本の学校の授業や掃除や給食などの学校生活を体験します。同年代の日本の子どもたちとの交流によって、生きた日本語に触れることができます。(第1期のみ)

◆地域交流体験:地元で行われているイベントや諸活動に一緒に参加します。これらの活動を通じて、生きた日本語に触れることができます。第1期では「和太鼓」の練習に参加して交流し、第2期では地元の子どもたちとともに「いかだ」を作り、川下りを体験します。

◆地域生活体験:地元民家でのホームステイは、そこに暮らす人々の心のあたたかさを感じる場であるとともに、日本の家庭の日常生活を経験する絶好の機会となります。また、日本語でたくさん話をすることもできます。ホストファミリーと過ごした週末は楽しい思い出として心に残るでしょう。

◆古民家生活体験:所有者の方が手入れし大切にされている築100年の古民家

「とっさの家」で田舎暮らしを体験します。薪割りをしてかまどを使ってご飯を炊いたり、五右衛門風呂に入ったり、古民家に隣接する山や川で遊んだりします。源流に近いため、川の水は美しく、夏でも冷たく感じられるほどです。

◆伝統文化体験:日本の伝統工芸(わら細工、竹細工、和紙工芸、草木染め、機織り、木工など)の製作や食づくりを通してものをつくる喜びを味わいます。自然の素材を利用した手作りの製品や食事のあたたかさときめ細かさを肌で感じることによって、日本人が古来より代々伝えてきた伝統文化のすばらしさと奥深さを理解することができます。そして、命や物を大切にする心を育みます。

◆農業体験:里山で栽培されている作物の収穫やその準備作業に携わることによって、昔から受け継がれている日本人の生活を感じます。また、作業を教えてくれる地元に暮らす人々と触れ合うことによって日本人の温かさも感じることができます。(第2期のみ)

◆自然体験:緑豊かな山道を散策するハイキング、さわやかな清流で楽しむ川遊びなどを通じて、日本の自然を味わいます。ハイキングでは、新鮮な空気を満喫しながらバードウォッチングや植物・昆虫採集なども楽しめます。川遊びでは、美しい川での水遊びやBBQも楽しめます。

◆寺院体験:地元の人々の生活に密着している寺院で読経、座禅、習字などを体験します。自分自身を静かに見つめる時間は、今後の人生にとって貴重な体験になるでしょう。 また、ここでの生活を通じて、様々な礼儀や作法を学ぶことができます。

◆史跡・地場産業見学:岐阜県下に多数ある史跡・名所を訪れます。訪問の候補地は、山県市内の史跡の他、岐阜城とその城下町などです。また、地元の工業施設など、現代のものつくりの現場を見学し、伝統産業や地元の資源との関係なども学びます。(第1期のみ)

「サマーキャンプ in ぎふ 2017」は、参加者の申し込みを受け付けています。詳細は、米日教育交流協議会のウェブサイト www.ujeec.org をご覧ください。

執筆者のプロフィール:

河合塾で十数年間にわたり、大学入試データ分析、大学情報の収集・提供、大学入試情報誌「栄冠めざして」などの編集に携わるとともに、大学受験科クラス担任として多くの塾生を大学合格に導いた。また、全国の高等学校での進学講演も多数行った。一方、米国・英国大学進学や海外サマーセミナーなどの国際教育事業も担当。米国移住後は、CA、NJ、NY、MI州の補習校・学習塾講師を務め、2006年に「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、日本での日本語・日本文化体験学習プログラム「サマー・キャンプ in ぎふ」など、国際的な交流活動を実践。また、帰国生入試や帰国後の学校選びのアドバイスも行っており、北米各地で進学講演も行っている。河合塾海外帰国生コース北米事務所アドバイザー、名古屋国際中学校・高等学校アドミッションオフィサー北米地域担当、名古屋商科大学アドミッションオフィサー北米地域担当、デトロイトりんご会補習授業校講師(教務主任兼進路指導担当)

◆米日教育交流協議会(UJEEC) Website:www.ujeec.org

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