新年も2月に入りました。この冬ミシガンは全般的に暖かく、例年に比べて雪の代わりに雨が多いですね。冬らしい雪嵐があったのは昨年のクリスマス前と年明け1月前半位で過ごし易いのはありがたいのですが、急に平年並みの気温になるとギャップが大きく老体には寒さが身に染みます。

そう言えば、先月20日にはトランプ新大統領の就任式があり、各TV局もかなりの時間と人員を割いて前日から当日、翌日と関連報道が続きました。就任式の実況中継を観ながら、「とうとう本当にトランプが米国大統領になってしまったのか!?」と2ヶ月前の当選報道に耳を疑い、落胆し、その後も素直に受け入れられなかった事を現実として受け止めねばならなくなりました。民主党関係者や著名芸能人を中心に欠席者、出演辞退者も多数いた中で就任式に立ち会ったオバマ前大統領、ジョージ・W・ブッシュ、クリントン、カーター元大統領夫妻他の列席者もそれぞれ内心は複雑な思いで式進行を見守ったと思いますが、表情と態度にはいささかの揺らぎも見せず礼を尽くした事には「これが平和的、民主主義的大統領交代のあるべき姿だ」と感銘しました。トランプ新政権の行方については今回の本題として後述したいと思います。

スポーツの世界では、今年最初のグランドスラム・テニスイベントであるオーストラリアオープンが先月開催されました。本稿作成時点では男女シングルスの覇者は未定でしたが、何と男女とも決勝戦に進出したのは全員30代の選手で史上初めての出来事。女性の年齢を語るのは失礼に当たりますが、女子決勝を戦ったウィリアムス姉妹は姉のヴィーナスが36歳、妹のセリーナが35歳。男子ファイナリストのフェデラーとナダルはそれぞれ35歳と30歳。4人合計で136歳、平均年齢34歳!更に凄いのはこの4人で四大大会シングルス優勝回数の合計が今回決勝を含めずに60回!!男子で優勝候補の本命、対抗と思われていたジョコビッチ、マレー両選手、女子でもセリーナの対抗と思われていたランク1位のカーバー選手が早々に敗退した波乱の結果ですが、本人達を含めて誰も事前に予想も期待もしていなかった顔ぶれとなり、例年オーストラリアオープンは四大大会の中では一番盛り上がらないのですが、歴史と記憶に残る超エキサイティングな大会となりました。日本のエース錦織選手が不運なドローで4回戦でフェデラー選手に負けてしまったのは残念でしたが、開幕直後のTV放送で解説者が「ピート・サンプラス(元世界1位の米国男子プロ)が現役引退する直前のグランドスラムUSオープンの男子シングルスで優勝した時が17シード。今大会のロジャー・フェデラーが17シード」と何かを暗示するような発言をしていたのが思い出されます。こうなったら彼に優勝して欲しいですが、果たして・・・?

テニスの話題になると長くなってしまいましたが、本題に戻って今月のテーマは『トランプ新政権の行方』です。

さて、肝心のトランプ新政権ですが、出だしから順風満帆とは言えません。オバマ前大統領の退任直前の米国民の支持率が60%と極めて高率であったのに対し、トランプ新大統領就任直前のそれは史上最低の40%台を記録し、選挙活動中に米国民・有権者の反目・分裂・対立・憎悪を招いた多くのネガティブな言動が尾を引き、速やかに解消されるべき軋轢が選挙後も現在も続いている状況です。就任宣誓直後の就任演説からその後の祝賀食事会、パレード、舞踏会、上下院国会議員との交歓会、統合参謀本部、FBI、CIA本部での演説など種々のイベントをこなしましたが、演説の中味が選挙キャンペーン中の続きかと思わせる偏ったものや、「我々は今は団結しなければならない」と言いながら当選勝利を誇示して敗者やその支持層への敬意を欠いたり、FBIやCIA組織と現職、OB職員に対する信頼や敬意を欠いた文言・表現を含み、関係者の大きな失望と強い怒りを買ってしまいました。また、就任式当日は厳戒態勢であった会場周辺でも数百人の逮捕者が出る複数の抗議デモがありましたが、翌土曜日にはワシントンDCのみならず全米各地で女性の差別反対、権利保証・向上を求める大規模なデモ行進が一斉に開催され、100万人から150万人と言われた就任式の参列者数を総数で上回る反トランプ勢力が集結。今後も続きそうな勢いです。

更に就任翌日から公約に揚げていた国民皆保険奨励制度ACA(所謂オバマケア)の廃止・代替政策実施やメキシコ国境沿いの壁建設とその費用捻出のための国境税または越境調整税の導入、TPPからの恒久的撤退、NAFTAの条件見直し・再交渉、不法移民国外退去、テロ関与国からの入国制限、正式な移民認証書類を持たずに在米中の不法移民に強制退去を命じず暫定的に滞在を許可したオバマ前大統領命令を覆し、それを黙認して移民認証書類を持たない人々を連邦政府に逐次報告していないサンクチュアリー・シティーと呼ばれる市町村への連邦補助金提供打ち切り、前政権で中止されていたカナダのアルバータ州からテキサス州に至るオイル(タール)サンド供給用のキーストーンXLパイプラインの建設工事再開など毎日のようにオバマ前大統領の実績と足跡を悉く否定・無力化するような大統領命令を連発しています。先月末のメイ英国首相との会談後の記者会見の質疑応答では「私はピープル・パーソン(人の気持ちが良く分かる人、人当たりの良い人)。きちんと他人の面倒を見る(世話を焼く)。メキシコ人は大好き。」などとまたまた口から出まかせの好き放題な発言をしていました。聞いていて思わず「ウソをつけっ!」と口走ってしまいそうでした。昨年の予備選挙活動中に同じ共和党のテッド・クルーズ候補者を『ライイング・テッド』と嘘つき呼ばわりしていましたが、「嘘つきはあんたでしょ!?」と言いたいところでした。

オバマ前大統領と異なり、政治活動・官僚経験なしで私企業経営のみ。自身と一族の利益追求が最優先で『公僕』としてパブリック・サービスの経験や概念そのものが欠如していると思われるトランプ新大統領を選んだ事が誤った選択であり、大失敗であった事を彼に投票した有権者に一日でも早く気付いてもらいたい一方で、新政権の政治・経済・社会的各種施策が失敗に終わり、米国のみならず世界中で混乱を招き、米国民や世界中の人々を不幸に陥れるような事態になるのは絶対に見たくないので、何とか上手くやって欲しいと思う複雑な気持ちでいるのは私だけではないでしょう。

トランプ新政権だけに種々のカードを切りますが、一体誰が『ババ』を引くのか?大統領自身か、ペンス副大統領や政権幹部の誰かか、あるいは米国民や他国民か?『ババ』の押し付け合いが始まるのか?今後も目が離せません。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

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