
11月12日、デトロイトりんご会補習授業校にて、恒例の音楽会が開催され、小学部3・4年生が歌や合奏を披露した。
会は3年生のリコーダー演奏で幕を開けた。初めてリコーダーを手にした3年生は、『リコーダーと友だちになろう』を目標に、4月から演奏の基礎を学んできた。北村俊彦氏著のリコーダー教本から、まずは「しっぱれー」「ちょっとまってね」を演奏した。続いて「遠い星からやって来た笛星人のメッセージをリコーダーで地球の人に伝えよう」というミッションを背負って(?)演奏する「笛星人」。ここまでは一音のみでの演奏であるが、多彩な伴奏に合わせて全員が音をそろえることで、曲の広がりが感じられた。そこに2音を加えた「地平線」をゆったりと演奏し、リコーダーの発表を締めくくった。最後に日本で歌い継がれている「ふじ山」を斉唱。「富士山の頂上が、曲の一番盛り上がるところ」として、富士山の美しい稜線を思い浮かべるようにハリのある声で歌って発表を終えた。
4年生の発表は、リコーダー奏「ブラックホール」でテンポよく始まった。宇宙でブラックホールに遭遇した緊迫感が伝わってくる。次の「花笛」はうって変わった情緒豊かな曲想で、花の精が美しい花を咲かせようと歌う様子が表現されていた。続いて、季節にふさわしい「もみじ」を主旋律・副次的旋律に分かれて合唱し、歌詞にある「山の麓の裾模様」や「水の上にも織る錦」の豊かな彩りが眼に浮かんでくるような、美しく厚みのある歌声を披露した。圧巻は、和太鼓や鳴子も使った演奏と歌「ソーラン節」で、ニシン漁さながらの威勢のよいかけ声や力強い歌声で、会場には子どもたちのエネルギーが満ちあふれた。
最後に客席も交えた会場全員で補習授業校校歌を歌い、今年の音楽会は幕を閉じた。
数少ない音楽の授業を通して発表活動に取り組むのは容易なことではないが、わずかな空き時間や家庭でも練習を重ねてきた成果が表れた堂々とした発表ぶりで、改めて子どもたちのもつ底力を感じさせられた。客席の保護者からも「いい演奏だった」と、称賛の声が聞かれた。子どもたちが存分に力を発揮できたのは、本人たちの努力はもちろん、陰でその舞台を支える保護者のボランティアを始めととする周囲の協力あってのことである。
今、日本では、我が国の伝統や文化を大切に関する学習活動の一層の充実が求められ、様々な取り組みが行われている。それは、自分たちの文化を土台として、多様な文化を知り大切にしていこうとする心を育むことをねらいとしているからである。今回の音楽会で取り上げた教材曲「ふじ山」「もみじ」「ソーラン節」は、日本で大切にされてきた音楽である。子どもたちは、自ずと日本とアメリカの音楽を比べながら互いの良さやおもしろさを見つけようとしていた。実際にそれぞれの文化にふれ、学ぶことができることは素晴らしいことである。このような学びを積み上げていくことで、グローバル化社会にあって、多様な文化を、他者の文化を大切にする心が養われることを願っている。