去る9月30日、在デトロイト総領事公邸に於いて、JETプログラム帰任者の歓迎ならびにネットワーキングのための場が設けられた。
JETプログラムはThe Japan Exchange and Teaching Programme(語学指導等を行う外国青年招致事業)の略称で、海外の若者が日本各地で言語指導員、国際交流員、そしてスポーツ交流員として働くプログラムであり、例年、当地から多数参加しており、この夏には当管轄地域(ミシガン州とオハイオ州)より54名名が日本へ渡った。
日本で尽力してきた彼らに対する慰労と感謝をこめた帰還歓迎の目的に加えて、就職情報の提供も意図しており、例年このイベントに招かれている日本語教育関係者としてミシガン州とオハイオ州の学校(K-12)や大学で日本語の指導や研究に携わっている教師、そして数社のリクルートやコンサルタント会社に加え、数名の日系企業の代表者が出席した。
JETプログラムによる派遣者の大半が言語指導員として中学や高校の英語教師のアシスタントに就く事情もあり、かつては大学で日本語や教育、文化を専門に学んできた参加者が多かったが、近年はそうと限らず、理工、法律が専攻で、帰還後の就職希望も多岐に広がってきている現状がある。米国内で行われる大規模なジョブフェアは日本での就職を求めるものがほとんであるため、当地での日本語堪能者や日本文化に精通した人材雇用の情報や機会は希少かつ非常に貴重といえる。
また、JETプログラム経験者有志の集まりであるJETアルミニ(同窓会)の当地支部の代表者も参加した。
和田総領事は歓迎の挨拶のなか、帰還者に対する感謝と慰労の言葉に加えて、「最近の雇用状況の情報を得たり、アルミニのネットワーキングなどで日本との繋がりを持つなど、貴重な場になれば嬉しい」といった願いを伝えた。「異文化理解には、JET参加者が良い例であるように、実体験が重要であり、それを果たした皆さんは一人一人が国と国を結ぶ大使である」など、称えると同時に今後に期待を寄せた。
当地のJETアルミニ会長を務めるジェフリーさんからは、自身の10数年前の滋賀県へのJET派遣の折、勤務先の校長先生に親身にしてもらったことなど日本での忘れ得ぬ経験話に触れた後、友人やJETアルミニと音信を取り続けること、また、日本語を使い維持すること、さらに、日本での経験を周囲の人に話し、何かしら生かして欲しいと願いを届けた。ジェフリーさん自身は現在、ミドルスクールでジャパニーズクラブを開き、日本在住時にたしなんだ琴も指導しているとのこと。
JETアルミニは、参加経験者同士の繋がりを持つためだけではなく、当地の領事館、米国や他の支部との関係を保ち、情報交換や日本支援などの活動をしている。
JET経験者で、当地の日本祭りなどJBSD関連のイベントで司会を何度となく務めてきたナターシャさんもスピーチに立ち、17才での日本(滋賀県)滞在に始まり、JETや日本の大学での受講経験、また一転して親の故郷であるポーランドでの滞在など、国外での経験歴を語り、「どんな機会があるか分からない。すぐに(職業に)反映できなくとも、必ず役に立つ」
「他の文化を知っていることは大切で、翻訳や教師に限らず可能性は広がっている」とエールを贈った。
帰還者によるそれぞれのスピーチでは、感動が明瞭に伝えられた反面、進路については「日本語を維持できる職を探している」といった状況を口にする人もいた。派遣期間は1~3年が原則であったが、自治体と本人の合意によって延長が認められるようになり、滞在を延ばす参加者が増えているという。この日の参加者には、青森で5年勤めたという人、佐渡ヶ島で4年という人もいた。どちらも女性で、大の日本ファン。
単なる観光ではなく、語学指導助手として学校という社会に入り込んで、文化を体験し、理解を深めた若者たちが経験や才能を発揮できることを祈りたい。