デトロイトりんご会補習授業校 新校長 宮本校長先生インタビュー

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今年(2016年)4月8日より文部科学省の在外教育施設派遣制度によってデトロイトりんご会補習授業校の校長に着任された宮本正彦校長先生に、9月中旬、インタビューに応じていただいた。

宮本校長先生は東京都出身。東京都の目黒区と世田谷区の公立小学校で36年間勤務され、うち23年間は学級担任、13年は教頭そして校長として管理職に就いていらした。在外教育施派遣は2回目で、前回は1994年から3年間、台湾の台北日本人学校に教員として赴任された経歴があります。

一昨年に定年退職され、その後も再任用で勤め続ける道も選べたが、一年間、大学や教育委員会で仕事をしている間に、台湾派遣の経験を活かしたいと考えて在外教育施設シニア派遣教員に応募。即派遣合格者に決定し、国内で研修を受けるなど準備を整えてきたとのこと。

学校現場一筋、長年勤務された宮本先生に、補習授業校の印象、さらに、海外帰国児童生徒の特長や日本での適応などについて話を伺った。

Q: 台湾の台北日本人学校のご経験がありますが、補習授業校であるデトロイトりんご会の印象、良さをどう感じておられますか。

A: 月曜日から金曜日を現地校などに通い英語の環境の中で学習している子供達が、補習校では週一回、日本のことを学び、友達と日本語で関わり合えることができる貴重な一日ですから、そこを大切にしたいと考えています。デトロイト補習授業校では、年間42日間の授業日の中で、日本に帰ったときの学習に適応させることと、そして、もう一つはグローバル化の中で国際人材の育成として、世界で羽ばたく子供達の資質能力を伸ばすこと、その二つを目的として掲げています。日本の公立小中学校とほぼ同じである日本人学校とは違って、異なる文化と友達、そして英語に多く触れることができる補習校の児童生徒には貴重な多文化理解の基盤があります。

子供達の様子を見ていると、現地校に5日通った後の土曜日で体力的にも辛いと思うのですが、補習校を非常に楽しみにして、元気に登校する子が多いです。補習校はそれほど魅力あるところなのだと感じています。

補習校の運営組織では、日本での校長職とは違い、内外の関係者との連絡調整など、戸惑うこともありますが、面白さを感じていますし、今までにない学校経営、運営組織の体制が整っていることに感心しています。

Q: 体制といえば、6月に当校の一大行事であり、企業の方々にも実行の協力を得ている運動会がありましたが、どのような感想を抱かれましたか。

A: 日本と同じように運動文化の要素としては素晴らしいものを経験できていますが、当日までの過程や背景は日本とは違います。日本では運動会当時まで計画的に練習をしますが、本校はほとんど練習をしていないにも関わらず、本番であれだけのことができる子供たちの力に驚きました。そして、その背景にある、多くの企業、理事運営委員、保護者から構成されている運動会実行委員会の存在やその実動力の大きさに驚きもあり感動もしました。

Q: 補習校で日本の学校行事を行う意義は?

日本の学校行事は様々ありますが、それを補習校で行なう意義は大きいです。特に紅白に分かれて競い合う運動会は、集団的な関わりの意識を高め、子供同士の繋がりができる貴重な機会です。3百人以上にもなるチームの一体感、運動の達成感や成就感を味わうことは、通常の学級での学習活動ではできないものです。素晴らしい行事の中で子供達は力を付けたと思います。

Q: 東京都の目黒区と世田谷区の小学校で勤務されたとのことですが、海外帰国児童が多い地区だったのでは?

受け入れや学校の様子をお聞かせいただけますか。

A: 学校により差はありますが、帰国児童が多い地区です。退職前にいた世田谷区の小学校では9月の2学期始業式に転入生紹介があるのですが、多いと10名近くの転入生のほとんどが海外からということもありました。目黒区も世田谷区も様々な対応をしていて、帰国児童への対応として特別教室を設定したり、個別支援として教室に入ってくれたり土曜日に日本語を補習する学級などがあります。担任時代には帰国児童を受け持った経験が多々ありました。

 

Q: 海外育ちの子供達の良さをどういったところに感じられますか。

A: もちろんいろいろな子がいますが、

‘穏やか’という印象をもっています。その背景は様々で、不安はあるに違いないですが、不安にも増して、人と穏やかに関わる力があるのでしょう。異文化を経験してきたことで、違うことを受け入れる姿勢があり、それが穏やかさに繋がるのではないかと思います。

Q: 初めて耳にした声です。一般的には「帰国子女は自己主張が強い」と言われますが。

A: そういった言葉を聞いていましたが、自分自身の経験や担任の報告から考えると、決してそうではないです。大人に対する印象を子供に当てはめてしまった言葉ではないかと感じます。その子その子の性格もありますし、中高生になると異なるでしょうが、私が接してきた小学生の段階、発達期にある子供達は柔軟性があり、柔らかく適応することができるように思います。

Q: 学校側の受け入れ、子供の適応には望ましい傾向ですね。

A: ただ、その穏やかさの背景には不安や戸惑いがかなりあるに違いないので、それは留意しなければならないと思います。

日本の子供達も変わってきました。一昔前は海外から転入する子が少なく、注目を集めたり、驚かれたりしていましたが、今は多いので、受け入れる側の子供達も慣れてきて、違和感なくすっと受け入れます。保護者についても同じようなことがいえます。小学校で英語の指導が始まりましたが、その支援にボランティアで入ってくれる人の中に、帰国保護者(海外赴任者の奥様)がかなり多くいます。ここ十年ほどで学校の中のグローバル化が進んでいます。

Q: 帰国後の適応をスムーズにするために、家庭で心がけておくと良いことや、認識しておくと良いことなどの助言をいただけますか。

A: 補習校での授業時間は限られていますから、宿題・家庭学習は無くては補えない現実があります。家庭で学習している時には、保護者は大きな気持ちで見守ってあげて欲しいです。励ましたり、一緒に悩んだりしながら、基礎的、基本的なことに重点をおくことが大切です。基礎、基本が身についていれば日本に帰ってもすぐに順応できると思います。学習内容の先取りや背伸びした高いレベルに視点を置かない方が良いでしょう。

現地校の宿題もあり、大変だと思います。親が支援できることはいろいろあると思いますが、支援の仕方が子供にどう影響を与えているか、“子供が主体的にやっているか”“強制的にやらされていないか”など、振り返ることも大切だと思います。「困難なことを克服すれば力になる」という考え方と、「子ども達が面白そうと感じて主体的に進めるようにさせる」という2つの考え方がありますが、私は学習の面白さ、楽しさを強調しながら接していくことが大切だと思っています。主体的に取り組んだ時に発揮する能力は大きく、それは小学生だけでなく、中高、そして生涯教育の基本と考えています。

漢字や九九を覚えること、読書を通して文を読み取る力などの基礎、基本を大切にしながら、補習校での貴重な体験をこれからの人生に生かして欲しいと思います。

Q: 話題を一変して、校長先生のご趣味は? アメリカ滞在中にどんなことをしたいと思っていらっしゃいますか。

A: 私はサッカーと関わって50年間程が過ぎました。始めは選手として、そしてコーチ・監督など指導者として続けてきました。サッカーから学んだことは多く、その学びは今の私の生き方の基礎、基本となり、確実な力になっています。そして、その得た力は教師として教育実践の場でも活かしてきました。サッカーというスポーツをこれからも大切にしていきたいです。最近は体も動かなくなり走ったり、跳んだりはできなくなりましたがスポーツは全般的に好きです。これからも鑑賞も含めてスポーツを身近なものとして取り入れていきたいと思っています。日本では自転車通勤をしていて、それだけでも鍛えられていましたが、今は思うように運動ができません。観戦でエネルギーをもらえますから、アメリカのスポーツ観戦を楽しみたいですね。

また、スポーツは大切な財産ですから、子供達にもその良さを伝えていきたいと思っています。

Q: 最後に、学校長としての抱負や思いを伺わせてください。

A: 先ほど触れましたが、児童生徒たちに基本的な力を身につけさせることは教師の最も大切な職務です。そのために講師の方々が働きやすい・指導しやすい環境づくりを念頭に、校長として実践していきたいと思っています。具体的には講師向けの資料を定期的に発行したり、機会がある限り授業見学を行ない、研修や指導を含めて講師の方々とコンタクトをとり、子供の様子や授業について話がたくさんできるようにしています。フットワークよく動きたいです。

児童生徒が5年10年先に振り返った時、あるいは成人になった時に、「補習校で学んで良かった」と言う子供達を育てていきたい。週に1回、「たかが一回、されど一回」の補習校での貴重な体験を将来に活かして欲しいので、私は管理職としてそこに専念しながら努めたいと考えています。

デトロイトりんご会補習授業校は理事、運営委員、父母に運営とともに支えられている学校で、当校はそれがよく機能していて素晴らしいと感じています。子供達にとっても、応援し支えてくれる人が身近にいる環境は安心感となります。今はそれに気づかないかも知れませんが、これから先、多くの他者との関わりの中で自分が成長していることに気づき、その大切さを代々に伝えていって欲しいと思います。