
デトロイト剣道道場の代表である田川順照氏が、5月に京都市でおこなわれた剣道称号範士審査会において範士を受称、さらに、7月13日付の外務省報道発表により平成28年度外務大臣表彰の受賞が公表された。
『範士』は、全日本剣道連盟が授与する称号の最高位。剣道称号範士の本年の合格者はわずか6名であり、日本国外では初の受称となった。全日本剣道連盟は 「剣理に通暁、成熟し、識見卓越、かつ、人格徳操高潔なる者」に審査を経て、範士号を授与している。
田川氏は1975年、米国における剣道普及のために渡米し、当地で1996年にデトロイト剣道道場を設立して以来、数多くの人々に剣道を指導し、1998年以降毎年オープン剣道トーナメントを開催する他、各種日本文化イベントでの剣道の披露等を通じて剣道の文化を育て、日米の文化交流、相互理解に多大な貢献をしてきた。米国中西部剣道連盟会長、全米剣道連盟の要職を歴任後、昨年(2015年)米国剣道連盟会長、国際剣道連盟副会長に就任。世界剣道選手権大会での強化委員長を務めた経験もある。
その栄誉を祝し、デトロイト道場による「剣道範士受称祝賀会」が8月28日に催され、道場の関係者に加え、米国中西部剣道連盟会長ならびに北米の他の道場の師範なども出席し、盛大な祝いの宴となった。祝賀会の前には田川範士八段による直々の指導の場が設けられ、前半は他地区道場の師範も加えて、田川範士による指導稽古、後半は子ども達の勝ち抜き戦が行われ、道場の歴史と剣士たちの心に深く刻まれるであろう貴重なイベントとなった。
祝賀会では、まず、米国中西部剣道連盟会長を務める鈴木裕香氏より祝辞が述べられ、「田川範士の受称は私達にとっても宝であり、一緒にやれることは光栄」といった趣旨の喜びを感謝と併せて伝え、また、田川先生が日本国外への剣道普及の為、常に新しい方法を模索するなど努力してこられたことも受称に繋がったのであろうと称えた。
デトロイト道場代表として馬目拓也氏からは、「この瞬間に立ち合え光栄です!」との言葉が高らかに、感動を籠めて告げられた。
鏡開きと祝杯に続き、田川氏の経歴ならびに写真の紹介の後、道場の剣士や保護者などによって、歌や和太鼓の演奏が届けられ、会場は祝賀ムードに満ち溢れた。
最後に、田川範士が挨拶に上がり、「最高位である範士という称号をいただき、肩の荷が重いが、こうして祝ってくださる多くの人たちと喜びを分かち合いたい。40年以上前に渡米し、そしてミシガンに道場を開いて20年経ち、ここに多くの友人というより“家族”ができた。師が教えるのではなく共に学ぶのが剣道であるので、家族だと思っている。この道場の家族と一緒に、剣の道をより極めていきたい」と伝えた。
外務大臣表彰は、国際関係の様々な分野で活躍し、我が国と諸外国との友好親善関係の増進に多大な貢献をしている中で特に顕著な功績のあった個人および団体について、その功績を称えることを目的としており、田川氏は「アメリカ合衆国における剣道の普及に多大な貢献」を評価され、表彰の運びとなった。