9月となりました。今年は例年にない暑さと雨不足に見舞われたミシガンでしたが、先月下旬からようやく凌ぎやすくなりました。行く夏を惜しむように鳴くセミの声が夏の終わりの寂しさを感じさせます。

8月一番の話題であったリオ五輪も無事終わりました。長いようで短かった17日間でしたが、事前の競技施設、選手村の準備状況や安全確保、ジカ熱や環境汚染による健康・衛生面で色々心配されたものの、報道で知り得た限りではドイツのカヌー・スラロームチームのコーチがタクシー乗車中に交通事故死されたご不幸を除いては大きなトラブルがなかったのは不幸中の幸いでした。トラブルと言えば、今も現地と米国で余波が続いているライアン・ロクテ選手他4人の米国競泳チームメンバーによる『作り話強盗被害事件』のスキャンダルが無用な世界の注目を集め、同国競泳陣の華々しい活躍に影を落としてしまったのは大変残念です。自分達の出場競技を終え、アルコールも入って気が緩んでいたのでしょうが、外出時に立ち寄ったガソリンスタンドの施錠されていたトイレのドアを壊して立ち去ろうとしたところを警備員に見咎められて抜き差しならぬ状況に陥ってしまい、直ぐに嘘と分かるような作り話にしたようです。最後の五輪を無事終え、過去の実績と名声を人々の記憶に残して静かに現役生活に終止符を打つ筈の人生がつまらぬエゴで暗転して、このスキャンダルだけが記憶に残ってしまう醜態を晒してしまいました。米国やアメリカ人に対するステレオタイプ的な負のイメージも植え付けてしまい、刑事罰の有無や大小の議論以前にその責任は決して小さくありません。前号で書いたテーマ『権威と責任、品格と節操』に関する懸念を具現した悪例ですね。

五輪を話題にするとそれだけで本欄のかなりの誌面が埋まってしまいますので、本題に移ります。とは言ったものの、もう少しリオ五輪と他のスポーツの話題、世間一般の話題にも触れたいので、筆の勢いをそのままに今回のテーマは『リオ五輪を終えて』とします。私はスポーツ評論家でも各スポーツの専門家でもありませんが、いま少しご辛抱とお付き合いをお願いします。

リオ五輪の話に戻る前に一言、改めて「イチロー選手、MLB通算3,000安打達成おめでとうございます!」アウェイでの達成になりましたが、敵地のファンからも惜しみないスタンディング・オべーションを受けると同時に3,000本目が3塁打で敵地では三塁側ベンチに陣取っていたチームメイトが3塁上まで総出で祝福に駆けつけ、日頃は余り感情を出さないイチロー選手も流石に感極まってベンチに戻ったサングラスの下に光るものが見えましたね。その後の記者会見も彼らしいコメントで印象に残るものでした。重ねておめでとうございます!

さて、リオ五輪では多くの競技で日本選手が活躍しました。米国のNBCネットワークが独占放送権を持っていたため、当然ながら視聴率を稼げる米国がメダルを期待出来る競技、米国で著名あるいは人気のある選手が中心の放送が多く、日本チームや選手が出る競技が実況放送されず残念なケースも多々ありました。

7人制ラグビー、競泳、柔道、体操、バドミントン、卓球、カヌー、競歩、テニス、レスリング、シンクロナイズド・スイミング、陸上などで五輪で初めて、あるいは何十年ぶりの決勝トーナメント進出、メダル獲得、4連覇の他、色は変わっても連続大会メダル獲得など連日のように報道される多くの明かるいニュースがありました。中でも今回最も印象に残ったのは、大会後半の目玉で通常日本選手は余り話題にならない陸上競技の男子4x100Mリレー決勝。実況観戦出来た数少ない競技の一つで家内と一緒にTV観戦したのですが、日本チームのスピードに乗った流れるような走りと完璧なバトントスで第三走者から最終第四走者にバトンが渡った直後隣のコースのジャマイカの『走る稲妻』ボルト選手に一瞬並び掛けて、横目で見た彼をハッとさせ、本気にさせた感じでした。バトントスのゾーン違反で失格となった米国を押さえてアジア新記録での見事な銀メダル。ゴールの瞬間、「よしっ、やったー!」と思わず歓声を上げてしまいました。日本チーム4選手の100M走各個人記録のベストタイムを単純合計したらメダルに届かないレベルにも拘らず、そのギャップを埋める正確で無駄のないバトントスで驚きの銀メダル獲得。規律とチームワークを重んじ、個々の能力を全開しながら与えられた責任を全うする日本チームの良さが世界中が見守る中で遺憾なく発揮された瞬間でした。金メダルではないですが、私には金メダルと同等、いやそれ以上の価値のある銀メダルのように思えます。卓球女子団体戦で銅メダルを取った福原選手の「銅の漢字を分解すると金と同じとなるでしょ。」というコメントに倣うと、「銀の漢字を分解すると金より良いとなるでしょ。(頭の点がないので正確には違いますが)」と言えるかもしれません。短距離王国ジャマイカチームから今回を最後に引退を表明した怪物ボルト選手が抜けると、あの最後の50Mの爆発的な伸びを持つ後継者が出て来なければ(多分出て来ないでしょう)、4年後の東京五輪では更に差が縮んで、メダルの色が限りなく金に近付く可能性を今から期待せざるを得ません。今回獲得メダル数がロンドン大会を超える史上最多の41個でしたが、地元開催の次回東京大会は各競技で更なる成果が期待されます。地元でのプレッシャーは海外大会とは比較になりませんが、どの選手もプレッシャーを自分の力に変えて自己ベストを出せるように、そして五輪そのものを楽しめるように今から祈っております。「来年の話をすると鬼が笑う」と言いますから、4年後の話ですと鬼は大笑いしますかね?

リオ五輪と前後して日本では恒例の全国高校野球大会『夏の甲子園』、当地ではリトルリーグ・ワールドシリーズが開催されましたが、五輪の影響で例年より関心が薄くなってしまいました。前者では作新学院があの『空白の一日』入団で世間を騒がせた巨人軍OBの怪物江川投手在校時でさえなし得なかった優勝を54年ぶりに達成。後者では例年優勝候補に上る日本代表チームが知らぬ間に早々の敗退。決勝まで応援出来なくて残念でした。

スポーツから目を転じると、8月半ばから下旬に掛けて複数の台風が日本に上陸したり接近したりして各地で被害が出ました。今年は日本の南海上にモンスーン渦と呼ばれる直径2,500キロにも及ぶ巨大な低気圧渦が居座り、その域内で『ゴジラ台風』と呼ばれるような超大型台風が発生したり複数の台風が同時に発生しやすい状況とかで、これから9月、10月のピークを控えて今年は台風の当たり年になるかもしれません。

日本国内在住の皆さん、十二分にお気をつけて。海の向こうから無事と安全をお祈りしております。

一方、米国では先月上旬から中旬に掛けて南部湾岸州を襲った連日の大雨でルイジアナ州リビングストンおよびバトン・ルージュ周辺地区が大洪水に見舞われ、道路や

住宅が浸水・水没、死者も多数出る事態となり、今も復旧の目処が立っていません。

4年前にハリケーン『サンディー』の襲来で大きな被害を蒙った記憶も消えない内の惨事で、湾外沿いで当時家財を失った人達が州内に留まる決断をして別な場所に家を新築してようやく落ち着きを取り戻しつつあったところに再びこの災難で全く踏んだり蹴ったりの不運続きで、誠にお気の毒です。謹んでお悔やみ申し上げます。また、年明けから中南米を中心に表面化していたジカ熱騒ぎは南半球が夏から冬に移るとともに当該諸国では下火になりましたが、夏盛りの米国でモンスーン気候のフロリダ州では渡航要注意の当該諸国へ直接旅行した人達だけでなく、国内の二次感染者が当初の限られた特定箇所だけでなくマイアミやタンパ地区でも複数発生し、当初のCDCの予想に反して国内で感染拡大の兆しが見え、不安が増大しています。同州在住の妊婦の中には、出産前に安全な他州に緊急引越しを決断した夫婦もおり、暑い盛りは過ぎたとは言え今後の進展次第では混乱に拍車が掛るかもしれません。

他方、海外ではリオ五輪の閉幕直後の8月24日にイタリア中部の小都市を襲ったマグニチュード6.2の地震で多数の死者が出て、築100年以上の歴史ある建物のほとんどが倒壊し、町全体が壊滅状態になるという悲惨な自然災害がありました。奇しくも8月24日は旧ローマ帝国時代の西暦79年にヴェスヴィオ火山の大噴火で古代都市ポンペイが火山灰に埋没したポンペイ最後の日と重なったのは不幸な偶然の一致でした。犠牲者の方々のご冥福を心よりお祈り致します。

また、つい最近のニュースでは、北朝鮮が日本海で潜水艦からの近距離大陸間弾道ミサイル発射に成功し、300マイルの射程距離内にある韓国軍や在韓米軍、日本、更に米国本土への攻撃も可能との穏やかならぬ報道があり、次期米国大統領の責任と統率力がますます重大で必要不可欠なものになりそうです。

小市民の一人としては、世界平和を願いつつ筆を置きます。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

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