例年は比較的涼しいミシガンにも先月は珍しくヒートウェーブ(熱波)が押し寄せて、名古屋や東京よりも暑い日が数日続きましたが、皆さんお元気でお過ごしでしょうか?先日日中の厳しい陽射しの中、アウトドアテニスをする機会がありましたが、日本でもテニスの経験がある方が当地在住の長い方に「日本はこんなもんじゃない。もっと凄いですよ。」と脅し(?)ていました。確かに私も日本で30歳になったばかりの真夏の日中一番暑い時間帯に無謀にもシングルスの試合をやって熱中症寸前になった記憶があります。6ゲーム先取で後1ゲーム取れば終わりの状況から5-5のタイになり、お互い決め手のない膠着状態が続き、終わりの見えないアリ地獄。飲み物もなくなって朦朧として来た頭の中では「もう俺の負けでいいから早く終わりたい!」という声が聞こえていました。相手も同じ思いだったようで、どちらからともなくネットに近付いて「もう止めて引き分けにしようか?」となって水入りとなり何とか今も生き延びています。「根性なし !」

と言われそうですが、今こそ笑い話で済むものの、冗談抜きに危なかったかもしれません。

そう言えば、ブラジルのリオ五輪が今月中旬にいよいよ始まります。年初から話題になっていたジカ熱問題、有力選手の参加辞退、直前のロシアの国絡みのドーピング不正問題に加えて、前・現職大統領の醜聞によるブラジル国内の政情不安、犯罪増加や選手村宿泊施設の完成遅れ・準備不足など話題に事欠きませんが、何とか無事に始まり、無事に終わって欲しいものです。また、日本のプロ野球では、パリーグで独走状態だったソフトバンク・ホークスを投打二刀流の大谷選手を擁する日本ハム・ファイターズが連勝街道を驀進してなんと3.5ゲーム差まで急接近と猛追。一方セリーグでは、広島東洋カープがセパ交流戦後に混戦を抜け出したと思ったら、こちらも記録尽くめの連勝、また連勝であっという間に独走状態。マジックナンバーも点灯しそうな勢いで、25年ぶりの『優勝』もかなり現実味を帯びて来ました。MLBではイチロー選手が日米合算プロ野球通算安打数世界一達成に続いてMLB単独で3,000本安打まで秒読み段階。本号が出る前の7月最終週末のホームゲームで達成していますように !!

さて、今回のテーマは『権威と責任、品格と節操』です。

本欄でも継続して触れて来ましたが、全米だけでなく世界中が注目している次期大統領選は、先月中旬から下旬に掛けて共和党、民主党の候補者指名全国大会が続けて開催され、トランプ候補、クリントン候補がそれぞれ正式に指名を受けました。(と過去形にしておきます。)

これから11月の本選投票に向かっていよいよ両候補の一騎打ちになりますが、上述の党全国大会の前後および最中だけでもテロ事件、銃乱射事件、白人警察官による黒人銃殺事件、黒人による白人警察官狙撃事件、ロシアによる民主党本部のメールサーバー・ハッキングとウィキリーク経由での内容公表などが立て続けに起こり、それらに関して両候補者のみならず著名支援者を巻き込んでのコメントとそれに対する非難・攻撃コメントの応酬で誠に騒がしい2週間でした。

両党の党大会での演説や参加者の動きだけでも、党内団結、大統領本選勝利に向けて少なからず不安を残す場面がありました。共和党では、予備選に敗れたクルーズ前候補者が予備選中の初期TV討論会で自分が破れた場合にすると約束していたにも拘わらず、トランプ氏を正式候補者として支持する旨表明をしなかったどころか、まるで民主党の候補者に投票してもいいような発言内容で物議を醸しました。また、民主党では予備選の最後まで手強い抵抗を見せていたサンダース前候補者の支持者多数が参加した会場でも支持表明の演説やプラカード掲示、シュプレヒコール連呼などを繰り返して、サンダース氏が彼らをなだめてクリントン候補の支援要請に四苦八苦する姿が映し出されていました。

これら一連の出来事を目にしながら思った事が、『権威と責任、品格と節操』という今月のテーマです。

日本でも三菱自動車のリコール隠し・燃費データ不正、東芝の不正会計、舛添前東京都知事の公費乱用・公私混同などメディアが飛びつき世間を騒がす事件が色々ありましたが、上述の米国での事件やGM車のイグニッション・キー起因の死亡事故、タカタ製エアバッグの構造不良・機能不全による死傷事故、VW社製ディーゼル車の排ガスデータ不正・違法制御など様々な出来事と合わせて共通する事は「権威と責任のある立場の人が、品格を持って節操のある発言や行動をしていなかった。」と言うことです。

日本で少し前に「○○の品格」という書名の本がブームとなり数多く出版されていましたが、強大な権威と重大な責任を持つ人が立場を忘れて、軽率に無責任で品格を問われるような節操のない発言・行動をするから世間・一般国民の顰蹙(ひんしゅく)を買い、非難を浴びて信頼と尊敬を失い、弾劾されたり、辞任に追い込まれたり、最悪の場合刑事罰を受けて収監される事態に陥るのです。また、それが部下や周囲の人達にも悪影響を及ぼして規律・秩序・志気の低下と組織の劣化を招く訳です。

我々一般人もうっかり犯してしまいそうな一例として、公私混同のインターネット使用やメール交信があります。クリントン候補者が国務長官時代に公用の丸秘メールを含む何万通ものメールを私用サーバーで受発信していた事など余りに安易で軽率な行動でした。FBIまで捜査に乗り出し、議会証言に呼び出される事態となり、辛うじて刑事訴追は免れたものの、この件で恐らく何百人あるいは何千人という数の各種公務員がサーバーに残っていたメールおよび紛失した(消去された?)メールの発見・復元と内容確認・層別に駆り出され、数多の貴重な時間と労力、国民の税金が失われた筈です。それもこれもたった一人の思慮に欠けた我儘な行動が火種となったためで、同じ時間と労力、税金をもっと国民のためになる他の有益な物事に使えた筈です。白人警察官による黒人射殺事件では管理責任のある州や市政府から遺族に対して何百万ドルもの金額の慰謝料が支払われます。それも国民の血税です。もちろん遺族の方々にはお気の毒としか言えませんが、本当に溜息が出ますね。

メールと言えば、もう一つ民主党全国大会の直前にハッキングおよびリークされた同党全国委員会の委員長(議長)が予備選中にサンダース氏よりもクリントン氏を応援するように促すメールが公表され、フェアでないとサンダース氏支持メンバーの猛非難を浴びて大会開催前に辞任に追い込まれる醜態がありました。以前から時々テレビで報道される彼女の発言には疑問や何かすっきりしない点がありましたが、「やっぱり」といった結果になりました。

このメール問題に飛びついて「(クリントン候補者の)メールサーバーから消えた33,000通のメールをロシアに見つけてもらいたい」と攻撃的コメントをしたトランプ候補の発言も敵性国家(ちょいと言い方は古いですが)に「米国の国家機密や安全保障に関わるメールを強奪する諜報戦をけし掛ける反国家的行為であり、大統領候補として適格でない」と敵対する民主党だけでなく、身内の共和党内からも非難を浴びたため、当人は一日経ってから「あれは皮肉を言ったまで。本意ではない。」と慌てて訂正コメントをしましたが後の祭り。予備選中から相手の発言や質問に対して言いたい放題、思いついたら直ぐ口に出す、後追いで少し違うか逆の内容の発言をするなどの性癖から「不平・不満は煽るが具体的な政策案がない、起伏の激しい性分で大統領には適格でない。」と多くの有識者が言うのも無理からぬ事です。

国務長官とか大統領候補とか恐れ多い立場にはない我々ですが、責任と節操のある言動を出来れば少しでも品格も伴って出来るように心掛けましょう。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。