
文&写真 by ヤマトノオロチ
口の中に広がる香りとギャラクシー・ホップの渋さがまるで、ペアダンスのようなおもしろさを演出しているのが、Hop Tango。British style のPale AleのTempestとWheat beerのBird the whistleを50/50にして作ったIPAだ。ミキシングの微妙なバランス。
TempestもBird the whistleも単独では出していないミステリアスさもいい。
“Grand River Craft Beer Corridor”(グランドリバー クラフトビール街道)――。グランドリバー沿いや、その近辺のオークランド郡には最近若手が経営するブリューワリーがいくつかオープンしているが、これを彼はそう名付けた。Hop Tangoを作るこのbrewmasterは元L.A.のフリーランスのレコーディング・エンジニアだ。この近辺が地元で、昨年ブリューワリーをオープンさせた。
サウスライオンの中心通りLafayette Avenueにユニークな聖教師のロゴ、がここの目印。聖教師はL.A.のデザイナーが描き、周囲の木版画はいとこのアレンジ、モダンかつノスタルジックな黄系の背景はインド系の人に描いてもらった、という。マイクロ・ブリューワリーなので、店内はこじんまりとしている。ブリューワリーのポリシーもシンプル。「FlokのQRコードの活用。マグクラブはなし。HPもシンプル。自分ともう一人のバーテンダーで切り盛りしているから、ビールについて話したいときはいつでも寄って欲しい」。数百人のカスタマーケア、メンバーシップに付随するマグ(ジョッキ)の管理やイベントなどの運営で多くの他のブリューワリーは悲鳴を上げているらしい。そういうビジネスを極力カットしている。
Third Monkはお客さんがそれぞれここにきた時にQRコードをスキャンして、5回で$2の割引。「Untappedという、ビール愛好家のAppがあるから、それを参考にすればいいよ」とも。
マーケティングにかける労力を最小限にするのはすべてビール作りのためだ。4月に行われた2016 World Expo of BeerのEnglish Pale Ale部門ではLyon Pride Strong Bitterは第3位。Bitterといってもただ苦いのではなく、深褐色の切れのいい仕上がり。ちなみに
第1位は大手会社のSamuel Adamsというから、その実力のほどが窺える。
「GoalはImperial作り」。IBU(International Bittering Unit)50-90ぐらいで、苦味のないビールを造りたいという。どうしてサウスライオンに、の問いには「ここは交通量がいいから。いつもAnn Arborに向う車が通るよ」。
L.A.でフリーランスをしていた時、Columbia Recordsから売り上げ総計250万枚の記念の楯をもらった、と言いながら誇らしげに見せていただいた。テープ、レコード、CDと音楽業界の変遷を目の当たりにしながら、地元ミシガンでビジネスの機会を求めて戻ってきた彼のしなやかかつ強靭なメンタリティーは他にはないユニークさだ。
Third Monk Brewing Company
228 S. Lafayette, South Lyon, MI 48178
【電話番号】248-278-6366
【ウェブサイト】http://www.thirdmonkbrewingco.com/
マイクロビューワリーなので食事の提供なし。子供は午後9時まで。チップ類、ソフトドリンクは販売あり。キャーリーアウトの持込やオーダーが可能。