5月1日、アナーバーの日本レストランSlurping Turtleにて、水泳でオリンピック出場を決めた古賀淳也選手を囲んで祝賀・壮行会が催された。当地の日本コミュニティーにとって、喜びの大ニュースであり、貸し切りパーティー場となった会場は、ミシガン大学の関係者や知人をはじめとする大勢の人で満席となった。ちなみに、同店でラーメンを食べた後の試合では負けたことが無いという、古賀選手にとってラッキーなお店なのだという。
古賀淳也選手は1987年埼玉県生まれで現在28歳。春日部共栄高校、早稲田大学出身の競泳選手。2012年の冬より、アナーバーにあるミシガン大学のクラブチームClub Wolverine Elite Teamで練習を積んできた。専門は背泳ぎ。100m背泳ぎで2009年世界選手権を制した経歴を持つ。2012年のロンドン五輪代表選考会兼日本選手権水泳競技大会では100m背泳ぎ2位を収めたにも拘わらず派遣標準記録に0秒05届かず五輪出場を逃した。今年4月に行われたリオデジャネイロ五輪代表選考会兼日本選手権水泳競技大会で100m背泳ぎ3位・100m自由形4位の結果、100m背泳ぎでの五輪出場を逃すも、400mフリーリレーで五輪初出場を決めた。
古賀選手はSlurping Turtleによく来店していたそうで、店長の名倉氏が「店で祝賀の会をやりたい」と話したところ、ミシガン大学の日本研究センター(CJS)が喜んでオーガナイズを引き受けた。そして、在デトロイト総領事館からの助成金も得て、祝賀・壮行会が実現した。会場には、ひまわり幼稚園ならびにコアラクラブの子供たちが手掛けた横断幕やこいのぼりが飾られ、明るい雰囲気を高めていた。
会の冒頭、在デトロイト総領事館の野田領事より「何とカッコイイ好青年!」との実感のこもった声に続けて、古賀選手の経歴や過去の記録を紹介。「常人では理解できないプレッシャーがあることと思うが、持ち前の根性で頑張って欲しい」とのエール、そして、ミシガンで特別に応援している人がいることを思い出して大会に挑んで欲しいと、日本コミュニティーの想いを代表して伝えた。「スポーツの部門で日米関係の強化ができた」と、外交寄与での功績に対する感謝の言葉も添えた。
古賀選手は挨拶のスピーチで、感謝の言葉を告げた後、手のひら一つの差で五輪出場を逃してきた無念に触れ、「結果への諦めが肝心であり、どれだけ素早く前を向けるかが大事」とチャレンジを続けた心持ち、そしてその結果、リオに行ける喜びを率直に語ってくれた。
その後、祝賀に駆けつけた人々一人ひとりと朗らかに談話をしたり、写真撮影やサインにも笑顔で応じ、人気と高い評価を集めていた。「今回のニュースを聞くまで、失礼ながら存じ上げていなかったけれど、すっかりファンになりました」との声もあった。
Q&Aタイムには、寄せられた多くの質問に丁寧に答えた古賀選手。対応の仕方や話の内容に、誠実さとユーモラスな人柄が溢れていた。「なぜミシガンで?」との質問には、「いろいろな大学とコンタクトし、一番初めに快い返事をくれたので決めた」と答え、きっぱりと潔い一面も垣間見られた。
「ミシガン州から古賀選手を中心に応援します。」との野田領事の音頭で、全員で一本締めをして、結束を固めた。
散会後、インタビューに応じて頂いたが、まず、この日の会について尋ねたところ、「こんなにたくさん集まってくれて率直に嬉しい。応援が心強い。単身ミシガンに来て、このように目に見える形で応援してくれている人が大勢いると分かって力になる」と思いを語ってくれた。また、コーチやチームメイトにも恵まれ、ここでトレーニングして本当に良かったとも。元々海外の選手と思い切り競泳できるタイプであったが、日々高いレベルで泳げたことが良かったと成果を分析。専門としていた背泳ぎに関してはオリンピック出場が叶わず心が折れたが、ゼロから一つずつ積み上げてきたことが分かっているので自信につながり、気持ちを切り替えて自由形のレースに挑めたと話す。海外というそれまでとは異なる環境に自ら飛び込んだ古賀選手。言葉の壁や苦労は無かったと、きっぱり断言した。「話そうと思えば聞いてくれる」「(周囲の)人柄が良く、甘える形でやってこれた」という。
古賀選手はトレーニングで多忙な中でも、ミシガン大学関係の東日本大震災2周年メモリアルイベントでスピーカーを務めるなど、地域貢献にも尽力してきた。2009年の世界水泳選手権男子100m背泳ぎで日本新記録を出して優勝するなど輝かしい成績を収め、注目を集めてきた古賀選手は、東日本大震災の直後、何ができるか思案し、ボランティアに関するウェブサイトを仲間と立ち上げ、また、著名であることを生かして新聞やテレビも使って多くの人に情報を発信した。「僕は水泳選手なので、水泳で希望を与えたい」と震災2周年のイベントの折、話していた。
競泳日本代表は強豪で、メダル獲得が期待されている。支援に尽力してきた古賀選手を今度は我々が応援しましょう!