桜の季節も終わり新緑が目に鮮やかな5月(皐月)となりました。アッパー・ぺニンスラなど北部を除くミシガン州ではさすがにもう雪は降らないと思いますが、“Never say never”の訓言もありますので、降らない事を願うだけにしましょう。日本では先月14日、16日に相次いで熊本・大分地域を突然襲った強い地震による大きな被害が出ました。被災者の皆様およびそのご家族、関係者の方々には心よりお悔やみを申し上げます。また、同じ16日には南米エクアドルでも更に強い地震が襲い、直後に発生した洪水も重なって人命、建物・施設などに甚大な被害が出ている模様です。死者の数も既に650名以上に上り、人的・物的資源に恵まれない現地では救護・支援活動も遅々として進まない状況とのことで、これ以上被害が大きくならない事をお祈り致します。

日本ではまだゴールデン・ウィークの余韻が残り、休みボケか5月病の人がいるかもしれませんが、当地米国では大統領予備選がいよいよ終盤を迎え、民主党はクリントン候補、共和党はトランプ候補の優勢が揺ぎ無いものとなり、両候補とも7月の党大会前に指名に必要な代議員数を獲得する可能性があります。個人的にはトランプ候補が共和党指名を受けて本選出馬する事自体、ましてや次期大統領に当選などしたら落胆と失望の極みとなりますが、民主政治の『諸刃の剣』である多数決のマイナス面が表面化せず、良識ある米国有権者の冷静な判断と選択が大多数を占めることを祈るばかりです。本欄では、基本的に政治色、宗教色は出さないつもりでしたが、先月、先々月と予備選絡みの内容が続いたため、読者の中に不興を買ってしまった方がいらっしゃれば、平にご容赦願います。

一方明るい話題としては、MLBに今シーズン新加入したドジャース前田投手が4月に3勝後初黒星を喫して惜しくも月間MVPは逃しましたが、MLBでも球速だけでなくコントロールと球種・配球の組み立てが如何に重要かを再認識させる投球内容で好発進。日本に比べて言葉や文化、食事・生活環境が違い、試合数、移動距離がはるかに多いMLBで怪我・病気をせずシーズンを通して活躍して欲しいものです。マーリンズのイチロー選手も控え外野手で出場機会に恵まれない中で先月末までにメジャー通算500盗塁を達成。日米通算700盗塁まで後一つとなり、本号発行時には達成済みかもしれません。また、同チームのレギュラーメンバーで1番を打つ昨シーズンナリーグ首位打者のディー・ゴードン選手が禁止薬物使用で80試合の出場停止処分となり、イチロー選手の出場機会が増えそうです。イチロー選手のアドバイスもあって首位打者を取れたゴードン選手の抜けた穴を埋める形になるのは皮肉な話ですが、これもたとえ試合に出れなくても日頃の努力と準備を怠らないイチロー選手に野球の神様が与えてくれた運命かもしれません。この予想外の展開をプラスに活かして、今シーズン中にMLB通算3,000本安打と日米通算安打記録の達成・更新の可能性も十分出て来ました。頑張れ、イチロー!!

前書きが長くなってしまいましたが、今月号のテーマは『不断の努力と事前の準備』です。

上述のイチロー選手と言えば、プレーヤーとしての能力、野球センスに加えてそのストイックなまでの野球に対する考え方、取り組み方が良く話題に上ります。味わい深い名言集も多々ありますが、食事のメニューからシーズンオフの過ごし方、自主キャンプスケジュール、キャンプ前・中のトレーニングメニュー、球場入りのタイミングと試合前のストレッチ、試合後のクールダウンと体力回復方法、バットやグローブ、スパイクの管理など挙げれば切りが有りません。全てが「常にベストの状態で試合に出る、試合に出たら常にベストのプレーが出来るように準備する」に繋がっているように思えます。レギュラーメンバーに入れず、控え選手の立場でも決して腐ったり、ヤケにならず、粛々と『不断の努力と事前の準備』を毎日・毎晩続けている訳です。言葉を代えれば、『日頃の努力と精進の賜物』とも言えますが、『日頃=普段』の努力ではなく、途絶える事のない『不断』の努力です。昨年は故障者の穴埋め、今年はゴードン選手の出場停止処分で巡って来た出場機会・打席数増加のチャンスは、やはりそれをいつも見ている野球の神様からのご褒美と言えるでしょう。

同じ様な事は、イチロー選手や野球だけでなく、他のスポーツやビジネス、学業、家庭、私生活にも当てはまるのではないでしょうか?

他例の一つとして、英国サッカープレミアリーグで奇跡とも言える優勝が間近に迫っているレスターシティがあります。一昨年同リーグに昇格し、昨年は当初から降格候補で推移し、実際に残り9試合まで最下位から7勝1分け1敗のフィニッシュで辛うじて残留。日本代表の岡崎選手がドイツブンデスリーガのマインツから移籍・加入した今年もリーグ残留が達成可能な現実的目標でスタートしたところ、ブックメーカーの

5,000倍強の優勝賭け率を尻目にあれよあれよと言う間に首位に立ち、一時は他チームに譲ったものの再び首位に復活した後は残り3試合となった4月末も首位をキープ。今や英国や欧州サッカー界だけでなく世界中のサッカーファンやスポーツファンの注目を集める話題となり、本号が出る頃には優勝が決まり、祝勝の大騒ぎをしているかもしれません。

岡崎選手のコメントによれば、レスターシティーのメンバーは他チームでは日の目を見ないメンバーだったが、今年から指揮を執っているラニエリ新監督の下でレギュラーもサブもチームとしてやるべき事、自分の役割をきちんと理解し、真面目に練習をし、試合に出ればそれをしっかり実行しているのが今の結果に繋がっている由。ゴール数では他のチームメンバーに及ばないものの、フィールド内では先発でもサブでも攻守に走り回り、所謂「泥臭く汗をかく」プレースタイルの岡崎選手は日本代表でも華やかなスター選手のようには目立ちませんが、トータルゴール数や試合を決定付けるゴール数が多く実質的貢献度は極めて大。彼がサッカー発祥の地英国の現役・OBプロ、評論家、専門誌だけでなく、目の肥えたサッカーファンに蔭の功労者として認められているのは嬉しい限りです。

彼や同じチームメンバーの場合も『不断の努力と事前の準備』があっての成果であり、奇跡と言われる優勝も起こるべきして起こった(になって欲しいです!)と言えるでしょう。何事も「焦らず、怠けず、諦めず」ですね。

皆さんも、たとえ小さな事でも『不断の努力と事前の準備』をお忘れなく!!

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。