卯月(うづき)4月となりました。日本では新年度が始まり、桜の開花情報と共に各地で入学式、入社式のニュースが伝えられていました。米国より一足早く開幕した今年のプロ野球は、新人監督や新人選手の話題で例年より盛り上がっているようです。当地MLBの今シーズン、日本人選手の活躍に期待と応援をしていますが、投手では、新加入のドジャース前田投手、右肘故障からそれぞれ手術無しと手術有りで復帰するヤンキースの田中投手とレンジャーズのダルビッシュ投手、マリナーズの岩隈投手、レッドソックスの上原、田澤両投手に頑張ってもらいたいです。野手では、マーリンズのイチロー選手、マリナーズの青木選手、それとマイナー契約でも腐らず、メジャー昇格目指して明るく頑張り続けるムネリンことカブスの川崎選手を応援しています。特にイチロー選手には後65本に迫っているMLB通算3,000本安打と43本に迫る日米通算安打記録の達成・更新を今シーズン中に是非とも実現して欲しいですね。他にも日米通算3塁打数、MLB通算500盗塁、日米通算700盗塁など達成目前の記録が目白押しなので、チーム事情や監督の選手起用方法に左右されますが、キャンプ中の日替わりTシャツの話題以上に実戦でのプレーで注目を集めて欲しいものです。

さて、今月号のテーマは「危機的世界情勢と平和ボケ日本」です。

先月号、先々月号でも触れましたが、当地米国では次期大統領予備選が中盤戦から終盤戦に突入し、現時点で民主党ではクリントン候補が優勢を続けており、党大会における指名獲得に必要な代議員数到達まで間近となっています。共和党ではトランプ候補の優勢は変わらぬものの、候補者間の低次元の誹謗・中傷合戦や共和党保守派など彼の指名阻止運動を推進するグループの出現もあり、いずれの候補者も党大会の指名に必要な過半数代議員獲得に至らず、党大会で指名決定を争う可能性も出て来ました。

その場合、共和党の候補者指名党大会がコンテスト方式になるかブローカー方式になるかも最終指名決定に少なからず影響しそうです。共和党の党内規則の詳細を全て理解するには時間も専門知識も不十分ですが、基本的にコンテスト方式の初回投票で一人の候補者が指名に必要な過半数代議員を獲得出来ればすんなり決まりますが、それが出来ず初回で指名が決まらない場合はブローカー方式となり、2回目以降は予備選からの指示候補者の鞍替え可能なスーパー代議員の支持変更と過半数獲得を目指して舞台裏での代議員数の多い党内派閥グループとの交渉、駆け引きが重要な要素となるため、党内で影響力の大きい有力者の意向と交渉・説得次第で予備選や党大会初回の投票結果が逆転する可能性も有り得るようです。

米国内の主な関心が大統領予備選に向けられている最中の先月下旬にはベルギーの首都ブリュッセルの空港と地下鉄駅でほぼ同時に3件の爆破テロが発生し、多数の犠牲者が出ました。ISISが犯行声明を出しましたが、その数日前に昨年11月半ばに起きた大規模のパリ同時多発テロの実行犯首謀者で長らく逃走中であったISISの容疑者が逮捕されて多くの一般人がややホッとしたのも束の間、専門家達が普段以上に恐れ警戒していた新たなテロが発生してしまいました。

また、現アサド大統領政権派と自由独立運動派の内戦とISISの域内侵攻防戦が同時進行中のシリアでは、昨年9月末から始まったロシア軍の空爆と相まって複雑な様相を呈していますが、先月突然ロシアの空爆停止宣言が出るまで反政府派拠点だけでなく一般住宅地にもロシア軍と政府軍によると思われる空爆が続き、多数の死傷者が連日のように出ていました。つい先日、米国ニュース専門TV局であるCNNが放送した隠密取材班による決死的なシリア潜入特別レポートの現地実写映像では怪我人や病人を治療、手当てする病院を意図的に標的とするその空爆の恐ろしさと酷さが伺え、身震いする思いでした。

更に東回りに海外を見渡すと、東アジア、極東アジアでは中国の覇権主義的とも言える一連の領土・領海拡大行動から目を逸らさす程のインパクトで北朝鮮の核の脅威が毎週のように話題となっています。直近では、毎年恒例の米韓合同軍事演習に今年は特殊部隊による北朝鮮への極秘上陸作戦や金主席の排除作戦(和訳では

『首切り作戦』とISISにも劣らぬ何とも物騒な名称です)を追加想定した内容になると報道されたため、当然北朝鮮側の抵抗・反発も激しく韓国の朴大統領の暗殺テロ指示発令と前後して、米韓側に対し「自国と主席に対する脅威に対しては核を満載したミサイル攻撃で殲滅する」という主旨の最後通告的な警告を出しました。

北朝鮮は国連決議と米国主導の包囲網により既に長らく経済・財政面で国際的な制裁と拘束を受けており、食糧難と生活苦で国民は疲弊し、国軍の志気・規律の衰えも噂される中、表裏で唯一同士、同盟国的に支持・支援してくれていた中国さえ扱いに困ってやや距離を置くようになっており、自暴自棄になって韓国攻撃や核ミサイル発射のボタンを押さないとは言い切れません。「今回も単なる脅しだろう」と高を括っていると、日本も蚊帳の外とは行かず、取り返しのつかない大変な事態になる恐れがあります。

このような危機的世界情勢の中、日本では「桜が咲いた」という記事が新聞の一面を飾り、外国人から「日本は平和な国だね」と羨望と皮肉の混じったコメントがあった由。平和であるのが一番ですが、それが「臭い物に蓋」的に嫌な事、不安な事、心配な事に目をつぶったり、目を逸らしたりしているのであれば単なる『平和ボケ』でしかありません。『ゆでガエル』の表現で日本でも有名なGE社の社内警句ではありませんが、ゆっくりと沸騰する水(湯)の中のカエルは身に迫る危険に気付かないため驚いて飛び出さず、徐々に死に至るたとえもあります。

日本国民の関心が、桜の花や山田洋次監督の最新ヒット映画などほのぼのする話題ばかりでなく、日銀を仕掛け人としてマイナス金利まで招いてしまった『ヘリコプターマネー』(いわゆるバラマキ)とも言える行き過ぎた量的緩和策とアベノミクスの破綻、その結果として起こる物価上昇、円貨・預金価値の減少、生活苦、経済低迷という国内問題に加えて、国際問題にも向いていなくては危機的世界情勢や国家の存続危機にも意識が及ばず、大局を見誤って自滅を招く最悪の事態になりかねません。海外在住の日本人である私達も肝に銘じて行動しましょう。

以上、反省と自戒を込めて一言申し上げました。失礼あれば、ご容赦願います。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。