
2月14日(日)、デトロイト剣道道場主催による剣道トーナメントがノバイ・ハイスクールを会場にして開催された。このトーナメントは毎年行われており、全米各地やカナダの剣道道場から多数の剣士が参加する北西部屈指の大きな規模となっている。北米の他の地区でも剣道トーナメントが開かれるが、全米剣道連盟主催の大会を除くと、同トーナメントが最も規模が大きい。
約350名という多数の参加者が集まり、昨年同様の開催場所であるハイスクールの中、より広いジム(体育館)をトーナメント会場に変更し、昨年より2面多い8面のコートを設け、試合をこなした。
トーナメント当日の朝は華氏マイナス20度近くという、ミシガンでも稀な極寒ながら、各地からの参加者が結集した。このような盛況を収めている要因は、デトロイト剣道道場の長である田川順照剣道が日本でも数少ない教士八段であり、指導にも定評がある上、本トーナメントには例年、日本から国内トップクラスの剣士(教士)を招いていることがある。田川氏は1975年に米国内における剣道普及のために渡米し、現在、全米剣道連盟の会長に就いている。
各試合(コートごと)には3人の審判の他、選手係、時計係など最低4名は必要。デトロイト道場の父母たちの協力があってこそ、大きなトーナメントの開催が可能になっている。さらに、会場となったノバイハイスクールで日本語クラスを取っている生徒を始め、学生らのボランティアも多数得て、成功裏にとり行なわれた。
この度の日本からのゲストは栄花英幸氏と栄花直輝氏。両氏は御兄弟で、お二人とも剣道教士八段の高段者であり、兄である英幸教士は全日本剣道選手権大会2位など、直輝教士は世界剣道選手権大会ならび全日本剣道選手権大会で優勝という、それぞれに輝かしい剣歴を保持している。
開会式の田川道場長による「本大会は真剣勝負の場であると同時に交友と親善の場である」といった開会の挨拶に続いて、来賓である在デトロイト日本国総領事館の和田総領事がスピーチに立ち、日本の武道である剣道に情熱を傾けている人々が海外に多いことを喜ぶ言葉と、選手らへのエールを贈った。
試合に先駆けて、栄花御兄弟による刀を使った形の実演が行われ、高段者の凛とした美しい佇まいと技に剣士たちの真摯なまなざしが注がれた。両八段教士は前日に行われたセミナーで指導にあたり、参加者は貴重な機会に恵まれた。
栄花御兄弟に米国の剣士たちの印象を伺ったところ、英幸氏は15年前にもこのトーナメントに訪れており、当時に比べて参加人数が増え、特に少年剣士のレベルが上がったことに対する驚きを表したほか、「求める気持ちが強い。技術も伸びると思う。指導者がいかに正しく伝えるかに成長が懸かっている」とのこと。「何を尊んで欲しいか」との質問には、「潔(いさぎよ)さや弱さを知ることなど本質的な剣道の教え」との答え。剣道には「打って反省、打たれて感謝」という言葉があるが、感謝の気持ちや謙虚な心を持つこと、また、相手から学ぶ姿勢が大切であり、そういった精神部分を失ってはならないと説明してくださった。
米国での指導は初めてという直輝氏は、前日のセミナー(実演実技)での感想を「基本がしっかりできている。指導者から精神も学んでいることが分かる」、「皆さんの熱意などが新鮮で、自分自信、もっとがんばろう、より素晴らしいものを目指そうと、逆に刺激を得た。」と語った。
デトロイト剣道道場からの今大会参加者は45名。英幸氏の指摘通り、同道場も子どもや若手の層が厚くなりレベルを上げている。今大会に於いてもいくつもの入賞を飾っている。(文末に列挙)
日系の子ども達が剣道をたしなむ良さについて、コロンバス(Ohio)から参加していた少年、リングラー君(10才)の母親は、「日本的な礼儀は、海外にいる方が心掛けているが、礼儀が良く、自分のことが出来る子に育っている」と評価。別の保護者からは、「教え込むのでなく、道場の人たちを見て自然に日本の礼儀作法が身につく。ありがたい」との声もあった。改めて、立ち居振る舞いに目を向けてみると、確かに、折り目正しい礼や明朗な挨拶ができる子どもが多く感心させられた。
前述の栄花直輝剣士も「子ども達の礼儀がすばらしい。目上の人への対応がきちんとできている」と称賛していた。
今回初めて同大会を見学された和田総領事は、「日本人に限らず、これ程たくさんの方が一生懸命にやっていて、全米、そしてカナダからも参加者が来て、嬉しいです。」「私は中学で剣道が必修で辛かったですが、それを外人の方々がやっていて、とても素晴らしい」と笑顔を放った。同伴された奥様は、剣道を生で観るのが初めて。子ども達の可愛らしさと頑張る姿に心を動かされたとのこと。
スポーツとして心身を練磨するだけでなく、礼節や信義を尊ぶ剣道を通して、日本の心や文化が日系の子ども達に伝承され、さらには当地の周囲の人々に浸透していくことは何とも尊い。
デトロイト剣道道場 入賞結果
団体戦:
Team Adult 2位 Detroit Aチーム
Team Youth 2位 Detroit Aチーム
3位 Detroit Bチーム
個人戦:
2段の部
1位 シャロド コリン (Collin Sherrod)
シニア・ユース (Senior Youth)
3位 ウェサリング アレックス
(Alex Wesserling)
3位 扇田 ケイジ (Keiji Ogita)
ジュニア・ユース (Junior Youth)
1位 篠原コリン (Collin Shinohara)