(初回)米大統領選2016の見所
http://www.japannewsclub.com/2015/11/米大統領選2016の見所/

(前回)米大統領選2016の見所 (3)
http://www.japannewsclub.com/2016/01/米大統領選2016の見所-(3)/


President Obama sheds tears during gun speech:

銃による大量殺戮が頻発しているのに、共和党主導の議会がなんら有効な対策をとってこなかったことに業を煮やしたオバマ大統領は、2016年1月5日に、大統領権限で

実施できる銃規制対策 (executive action on gun control)を発表しました。その 時オバマ大統領は多数の罪のない子供たちが犠牲となっていることに触れ、公の席で大粒の涙を流し(shed tears)、有効な銃規制が急務であると説いたのです。それは、銃の所有に

関して、共和党と民主党では、真っ向から対立する根深い考え方の違いを見逃す事が

出来ません。共和党は、銃は憲法修正第二条(2nd amendment of the constitution)で保証された権利であり、それに制限を加えることは絶対に許されないと主張するのです。

それに対し民主党は、銃が野放しになっている事が問題で、もっと効果的な銃の規制が必要だと主張するのです。これは古くて新しい論争で、銃乱射事件が起こるたびに、同じ論争が蒸し返されます。それが時期大統領選でも大きな争点の一つになるであろうことは間違いありません。

Gun control in America: How Americans got here:

歴代の大統領が辿った銃規制の歴史を簡単に振り返ってみましょう。

1934, 1938: Roosevelt cracks down on Capone and Co:

1934年に、第32代目のローズベルト大統領の時代に、機関銃や散弾銃の規制と

同時に罰則を強化する目的で制定されたものです。当時はアルカポネ (Al Capone)や

バッグスモーガン(Bugs More)などの悪名高いギャングらが暗躍し、血なまぐさい抗争を繰り広げていた時代です。

1968: For John, Robert, and Martin:

1963年11月22日に当事の現職大統領であったジョン F ケネディが暗殺され、アメリカ国内だけでなく全世界を震撼させました。1968年には、4月に、公民権運動の指導者であるマーチン L キングJrが暗殺され、更に、6月には、次期大統領候補として有望視されていたロバート F ケネディが暗殺されるという痛ましい事件が相次いで起きたのです。それを受けて、1968年に36代目の大統領リンドン B ジョンソンの時代に制定された銃の規制改革法です。

Firearms Owners Protection Act 1986: Reagan’s compromise:

この法案は、1981年に、第40代目の大統領であったロナルド W レーガンの時代に、民主・共和の超党派の議員と銃ロビイストの間で時間をかけて論議した結果成立した

ものです。それは、完全に自動化された武器や機関銃を民間の顧客に売却することを禁じたものです。それは、長い間銃規制に不満を持ってきたNRA (National Rifle Association)や、銃の保持は憲法修正第2条で保証された固有の権利であると主張する活動家達 (gun rights activists)の主張も取り入れ、武器所有者のデータベース化は 行わないとか、より厳格な管理の下で州と州をまたぐ銃の移動を認める、ということも含んだもので、妥協の産物であるともいわれております。

1993: The Brady Bill and background checks:

1991年のレーガン大統領暗殺未遂事件 (attempted assassination on Ronald Reagan)で頭を拳銃で撃たれ負傷した大統領報道官 (Press Secretary)のジェームスブラディ

(James Brady)の名前を冠した法律で、1993年に42代目の大統領である、ビル J クリ

ントン大統領が署名し施行されたものです。彼は、拳銃 (hand gun)を購入する際に5日間の待機期間 (waiting period)を設けようとしたのですが、連邦捜査局 (Federal Bureau of Investigation)が、全米インスタント・クリミナル・バックグラウンド・チェック・システム (National Instant Criminal Background Check Systemを省略してNICSという)の運用を開始したのを理由に採用されませんでした。

1994: Clinton signs the assault weapon Ban:

ブラディ法案が発効した翌年の1994年に、ロナルドレーガン、ジェラルドフォード、ジミー

カーターの三人の元大統領が連名で書簡を送り、軍事目的で作られた突撃用武器の製造・所有・販売の禁止を支持する旨が書かれておりました。更にこれらの武器に弾薬 (ammunition)を供給する弾倉 (magazine)の大きさも制限すべきであるとも述べていたのです。それを受けて、1994年に、クリントン大統領が突撃武器の禁止法案 (Assault Weapon Ban)として署名・発効させたものです。

*この法律は、ジョージ W ブッシュ大統領の時代に期限切れとなり、それ以来、更新されることはありませんでした。オバマ政権の下で、共和党が多数を占める議会は、銃規制となると悉く拒んできたのです。

Donald Trump predicts ‘you won’t be able to get guns’:

この発言は共和党員共通の理念を代弁すると同時に、ドナルド氏独特の言辞 (rhetoric)が使われており、『オバマ大統領の銃規制が実施されれば、アメリカ国民が銃を持てなくなる日も近い』と、共和党員の不安を誘うような言い方をしております。それに対しオバマ大統領はCNNで放送されたタウンホールンミーティングで、憲法で保証された銃の保持を制限する意図はさらさらなくバックグラウンドチェックを強化することで罪のない子供が犠牲になるのを未然に防ごうとしているだけなのに、銃の保持を全面的に禁止すかのごとく言いふらしているのはトランプ氏の陰謀 (conspiracy)でさえあると述べておりました。

Trump raises Cruz’s eligibility to run for president:

トランプ氏は、競争相手であるクルーズ氏が大統領選に出馬する資格 (eligibility)が

あるかどうかという新たな問題を投げかけています。というのは母親がアメリカ国籍を持っていたのでクルーズ氏もアメリカ国籍を取得したけれども生誕地がアメリカでなくカナダであったという点が引っかかるというのです。それをさしてトランプ氏は『不確かな問題(precarious problem)』だとも言っております。なぜならば、アメリカ合衆国憲法の規定で、大統領はアメリカ生まれの市民でなければならないというのです。そこで問題視されているのは、natural born citizen (アメリカ生まれの市民)が何を意味するかということです。一般的な解釈では、親がアメリカ市民権を持ち、アメリカで生まれた子供は自動的にアメリカの市民権を得るということです。しかし、出生地が『アメリカ本土』ではなく、

『アメリカ領』、『自治領』、『外国』で生まれた場合にはどうなるのか、という最高裁の判決が出ていない事が『不確かな問題 (precarious issue)』といわれる所以かもしれません。

The State of the Union Address:

アメリカ大統領が毎年1月に行う年頭教書 (the State of the Union Address)の中で、

バラックオバマ大統領は、残された最後の一年に何を到達目標とするかというよりも、

むしろ未来に夢を託すという事に重点を置いているようでした。それは8年目を迎える大統領が、あと一年で任期を終えるために、思うように動いてくれない共和党主導の議会 (congress)に夢を託し任期満了前のレイムダック (lame duck)といわれるよりも、二極化の著しい中で辛くも成し遂げた実績 (achievements)を後の世代に遺産 (legacy)として残す方が得策だと考えたからではないでしょうか。例えば、リーマンショック直後の金融危機 (financial crisis)を克服したこと、医療保険制度改革法 (Obama Care)、キューバとの

国交回復、環太平洋経済連携条約協定(TPP)の交渉妥結、など立派な業績がある

一方、富める者と貧しい者の間の格差は益々拡大しているという国民の不満は少なく

ありません。

この一般教書演説の実況中継を見ていると、オバマ大統領の背後には、バイデン副大統領とライアン下院議長が並んでおりましたが、二人の反応は正反対で、バイデン副大統領(民主党)はしばしば拍手を送っておりましたが、ライアン下院議長(共和党)は一二度拍手を儀礼的にしただけで、後は退屈そうな顔を隠そうともしませんでした。

6th Republican Presidential Debate:

第6回共和党ディベートは、世論調査で上位(tier 1)7名の候補者と、それに続く(tier 2)

4名の候補者が、早い時間帯と遅い時間帯に分かれて行われました。遅い時間帯に行われたメインディべートでは、ドナルドトランプ氏、テッドクルーズ氏、マークルビオ氏の三人に的が絞られてきたようです。今まで全国レベルでトップを走ってきたトランプ氏が共和党全国大会 (Republican National Convention)で大統領候補に指名されたら

クルーズ氏を副大統領候補に指名するとまで公言しておりましたが、今回のディベートでは、手のひらを返したようにクルーズ氏に食って掛かったのです。第一の理由はクルーズ氏がカナダ生まれで、二重国籍を持ち、憲法の規定によりアメリカ合衆国の大統領になる資格そのものが疑わしいということでした。それはいわゆるbirther issue (大統領の出生をめぐる資格問題)といわれる問題です。又、クルーズ氏が、上院議員選挙の際に、妻が関与するGoldman Sachsから多額の借金があったのに、それを政治資金報告書に記載していなかったということを問題視したのです。そのほか参加者の間で、国家の安全保障をめぐる論議も活発に交わされ、大統領候補を選ぶというよりは、むしろ米国陸海空軍の最高司令官 (commander in chief)のみを選ぶための選挙であるという感じを否めませんでした。

3rd Democratic Presidential Debate:

民主党のディベートはヒラリークリントン氏とバーニーサンダース氏の対決が見ものでした。争点は健康保険、銃規制、選挙資金などが主でした。サンダース氏は、増税をしてでも国民皆保険 ( Medicare for All)を主張するのに対し、クリントン氏はオバマ政権の下でやっと成立した医療保険改革法 (Obama Care)を擁護しました。銃規制に関しては、クリントン氏はより厳格な規制を主張しましたが、サンダース氏は犯罪に使われた銃を売った人にまで責任を負わせるのは行過ぎであると反論しました。また選挙資金に関する論戦では、クリントン氏がウォール街から多額の献金を受け取っていると、サンダース氏はクリントン氏を非難するなどそれはかつてみられなかったような激しい論戦でした。

Definition of Birther:

今回の記事で何度か出てきたBirtherという言葉が頻繁に使われるようになったのは2008年頃からです。現在の大統領である Barak Obama氏が、憲法に定めるnatural born citizenではなく、従って大統領になる資格がないと信ずる人びとを指してbirtherというようになったのです。当事はいろいろな噂が飛び、オバマ氏の出生証明書 (birth certificate)が偽造であるとか、父親はイスラム教徒であるから彼もそうであるに違いない、従って聖書に手をかざして大統領就任の宣誓行うことは許されないと主張していたのです。その出生をめぐる大統領の資格論争 (birther issue)が、又、再燃しているのです。テッドクルーズ氏が生まれたのはカナダで、しかも最近まで二重の国籍やパスポートを持っていたとか、仮に大統領に選出されたとしても、民主党が問題視し法廷闘争に持ち込まれ、大統領職には没頭できないのではないか、とトランプ氏は真面目な顔をして主張しているのです。

筆:小林 義尚

著者略歴: 語学学校KOBY USAの校長。1987年に来米しMMUCに通訳として入社(6年間勤務)。早稲田大学第一商学部中退。立教大学経済学部卒業。働きながら、デトロイト大学大学院に学びMAとMBAを取得。ウェイン州立大学の経済学博士課程に進学すると同時に経済学部講師に就任。中途で病気の為退学。1993年に、コービィインターナショナルアカデミーを創立。2004年に第三者に経営権を譲渡。2012年にKOBY USA INCを設立。コービィランゲージセンターとコービィラーニングセンターの運営に従事。在米経験は約30年に亘る。