2月に入り、日本でも正月気分はとうの昔の話となりましたが、米国在住の皆さんの新年最初の月は如何でしたか?順調なスタートを切り、春先に向けて徐々にペースを上げつつあるところでしょうか?いきなりトップスピードで走られている方もいらっしゃるかもしれませんが、一年を通して活躍出来るように怪我、故障のなきようご留意下さい。

日本では1月下旬の寒波で何と沖縄本土にも観測史上初めて雪が降る事態でしたが、米国でも同じ頃南東部、北東部を寒波が襲い、首都ワシントンD.C.では従来の一年分の降雪量に相当する雪がわずか一日で降った由。ニューヨーク市では従来の一日の降雪量記録にはわずか0.1インチ及ばなかったものの、史上第2位に当たる記録とか。この冬暖かく雪の少ない当地ミシガン州よりテネシー、南北カロライナ、バージニアなど南の州の方が雪が多い状況です。これも地球温暖化の影響だと思いますが、ここ数年本当に異常気象が多くなりました。また、このところ連日ニュースで取り上げられるようになった中南米・カリビアン諸国を中心に急激に拡散している蚊が媒介するジカウィルス感染症も今夏ブラジルで開催予定のオリンピックを控えて非常に危惧されます。有効な予防薬、治療法がない現在、CDC(米国疾病対策予防センター)が当該国・域内への渡航自粛を勧告していますが、早急に対策が講じられ、拡散防止・収束の方向へ向かうことを願います。

政治面では、今年の11月に行われる米国大統領選挙に向けて昨年正式スタートした共和党、民主党の各候補者キャンペーン活動が昨年末までの数回の公開TV 討論会、タウンホール・ミーティングを経て年明けに本格化して来ました。ボクシングで言えば、当初は軽いジャブの応酬程度でしたが、最近では必殺のKOパンチ狙いか、あるいはカウンターパンチの応酬と言った感じです。本号が皆さんのお手元に届く頃には、前哨戦第一弾アイオワ州コーカスの結果が出ている筈です。果たして結果は如何に?

今回のテーマはそれに関連して「米国次期大統領予備選に思う」です。

今回の大統領予備選に関して最も大きな特徴は、共和党、民主党とも党内少数革新派および本職政治家でない、言わば非主流・部外的候補者の台頭により、従来ならば本命視されて当然の保守・主流派候補者が事前予想・世論調査でかなり苦戦していることです。

直近の事前予想・世論調査によると、共和党候補者ではドナルド・トランプ氏とテッド・クルーズ氏、民主党候補者ではヒラリー・クリントン女史とバーニー・サンダース氏の一騎打ちの様相を呈しています。

昨年半ばの時点で一体誰がこのような事態を予想出来たでしょうか?売名行為か話題作りだけかと思っていたトランプ氏が実際に共和党候補者として立候補し、事前予想では一時的に僅差の2位になった時を除いてほぼ毎回首位を継続維持したかと思えば、当初予想では議会での奇行や先鋭的な発言以外は全国的知名度の低かったクルーズ氏が討論会を重ねるごとに急上昇して僅差で首位を争う事になろうとは、正に想定外と言っても過言ではないでしょう。

民主党候補者では、クリントン女史が正式立候補宣言するかなり前から民主党支持有権者の大半から圧倒的期待を一身に集め、「彼女しかいない。彼女で決まり!」という感じの下馬評でしたが、公私混同の電子メールの取扱いミスとリビア国ベンガジ市の米国大使館襲撃テロの責任問題を追求する議会証言に数回召還されたのがケチのつき始めで、余裕綽々の状況から一転して現在のマッチレースのレベルになるまでサンダース氏の台頭を許してしまいました。

主たる原因はここ数年続いている共和党内の混乱、不協和音、不統一性と民主党オバマ大統領政権下での政策、特にISISを始めとするテロ対策など外交面での失敗、国際舞台での米国の権威・信用低下が国民の失望を招き、不平・不満を抱え新たな変化を求める有権者層の声が強くなり、新鮮味のない保守・主流派の衰退に繋がっていると思われます。余談ですが、共和党を表す短縮代名詞GOP(Grand Old Party)自体「古い。変えるべき」という声もあるようです。

米国市民でない私には投票権がありませんし、個人的には共和党、民主党のどちらも特に共感・応援している候補者がいる訳ではありませんが、率直な感想としてどの候補者も一長一短(一長多短かも?)で誰が大統領になっても物足りないし、大変だろうな、というところです。日本の選挙でも良くあるケースですが、前向きにベストの候補者を選ぶというより、消去法で信頼度、期待度の低い候補者から消し込んで行き、最後に残った候補者が合格という展開かもしれません。

但し、トランプ氏だけには絶対に次期大統領になって欲しくないと思います。

予備選キャンペーン活動中の発言で対立候補者を貶し、政治的、経済的に不平・不満を持つ有権者を煽り、安全・安心に不安を抱く有権者にはテロ対策として不法移民の即時国外追放、メキシコ国境にメキシコの費用負担で侵入防止壁設置、米国内在住イスラム教徒の行動監視、個人データ閲覧・管理、シリアなどからの難民受け入れ拒否、国外からの移民・入国者の手続き・審査の厳格化など、たとえ現職の大統領でも実行不可能な憲法違反や議会立法を無視した無責任な事ばかり並べ立てています。まるで彼が製作していたリアリティーTV番組の視聴率稼ぎの延長みたいです。エゴイストでやりたい放題、言いたい放題のわがままな彼が万一次期大統領になったりしたら、現在の同盟国や友好国でも歓迎されなくなり、それ以外の諸国ではますます米国嫌いが進み、国際舞台における米国の信用失墜、立場の悪化、孤立化が深刻化すると予想します。

予備選の段階で米国有権者の良識と賢明なる判断・選択を祈るばかりです。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。