(初回)米大統領選2016の見所
http://www.japannewsclub.com/2015/11/米大統領選2016の見所/

(前回)米大統領選2016の見所 (2)
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IOWA CAUCUS:

アイオワ予備選(Iowa Caucus)は、2016年2月に全国に先駆けてアイオワ州で行われる予備選のことです。”caucus”は、アイオワ州では二年に一度開かれる党員集会のことであり、参加者は、党の方針を決定したり、党の候補者を選出したりする場です。又、1970年代初頭に、民主党がいち早く予備選をアイオワ州で実施したことから、その動向が注目されたことに着目した共和党が、1976年に、予備選の時期を民主党の予備選の時期に合わせて行うようになったのがそもそものはじまりでした。その結果、全国メディアから『全米で最初の予備選』ということで特別な注目を浴びるようになったということです。又、ニューハンプシャー州予備選やサウスキャロライナ州予備選がその後に続きます。

Trump edges ahead of Cruz in Iowa:

11月に実施されたアイオワ州の共和党員による世論調査の結果、今まで独走の感が強かったドナルドトランプ氏が、テッドクルーズ氏に僅差まで追い詰められているという結果が出ております。その差はほぼ3ポイントですが、誤差の範囲以内にあり、共和党の大統領候補指名を争う戦いは、事実上、トランプ氏vsクルーズ氏の対決ムードに拍車がかかってきたようです。そして、かなり水を明けられた形で、マークルビオ氏が3位を追走しております。そして、今までは、沈着冷静さと理知的な雰囲気で人気のあったベンカーソン氏は、大差で4位に陥落しております。それを追うのがその他の候補です。

Cruz vs Rubio:

ここで注視したいのが、ルビオ氏とクルーズ氏は共にキューバ移民の出身であるということです。そのために、移民政策には、格別な関心を寄せております。一千百万人いるといわれる違法移民をめぐる論争でも、多くの共通した考えを持ちながら、最近になって、クルーズ氏が保守主義の思想色を強めたことが(右傾化)一挙に躍進した理由であるといわれております。そして、その背後には、南部の諸州を始め、第一回目の予備選が実施されるアイオワ州でも、その影響力が特に強いといわれる、Evangelical

(福音派のキリスト教徒)や、共和党内でも最右翼といわれるTea Party、の支持を取り付けることに成功した事も一因であるともいわれております。今後、共和党内のいわば体制派どうしと、外部者であるトランプ氏との体制派対外部者の対立の構図も更に熾烈を極めてくるものと思われます。全国レベルの世論調査ではトップを走るトランプ氏もアイワ州の予備選に限ると劣勢であると言う世論調査も出ております。

San Bernardino Terror Attack:

今までもそうでしたし、そして、これからも引き続いて論争されるであろうことは、移民政策であることは間違いありません。しかし、パリで起きた同時多発テロと、12月2日に、カリフォルニア州のサンバーナーディーノで起きたテロ襲撃事件がアメリカの移民政策の抜本的な見直しを迫っているのです。というのは、犯人が合法的にアメリカ市民権(American citizenship)を得ていたことや、共犯者の女性が婚約者ビザ(fiancé visa)で入国していたことなどが判明した事がきっかけです。これからは、電話、インターネット、ツィッター、フェイスブック、等のソーシャルネットワークの検閲や、テロの温床となっている国々への渡航暦、疑わしい銀行送金、交友関係、飛行機に乗る時の身体検査、持ち物検査、その他数々のわずらわしい手続きが日常化する事が予想されます。それは一面においてプライバシーが制限されることですが、元ブッシュ大統領が作った先例が生きており、戦時下(war time)という認識の下では、Patriot Act(愛国法)のような法規制の強化も避けられないでのでしょう。12月15日に予定されている第5回共和党ディベートでもテロ(terrorism)、移民政策(immigration)、銃規制法(gun control)、などが大きな論争を呼ぶことでしょう。

5th GOP Debate:

今回の共和党大統領候補によるディベートは、CNN主催で、支持率により、4人と9人に分かれて行われました。前半はunder card(前座ディベート)とよばれ、4人が参加しましたが、文字通り前座扱いで、盛り上がりに欠けておりました。後半は9人が入り乱れるディベートでしたが、メインイディベート(main debate)に相応しい充実感がありました。参加者は、トランプ氏(28%)を中央に、クルーズ氏(25%)、ルビオ氏(14%)、

カーソン氏(10%)、ブッシュ氏(7%)などが、脇を固めていました。話し合われた主題は主に国家安全保障(national security)でした。

Brokered Convention:

このディベートで、数々の注目すべき発言や、候補者同士の確執が表面化しました。その中でも特に注目されたのが、最近良く取りざたされる大物政治家が陰で暗躍する党の全国大会(brokered convention)のことです。といいますのは、ドナルドトランプ氏が、共和党体制派側からすれば外部者(outsider)であり、その上彼の人気は一過性のものだから、そのうちかげりが見えるであろうと箍をくくっていた節があったのです。ところが、数々の度肝を抜くような過激な発言にもかかわらず、彼の人気は全国レベルで下がるどころか上がる一方だったのです。一向に衰える気配を見せないことから業を煮やした共和党体制派の一部から、予備選に敗れた候補を反トランプ氏ということで一本化すれば、結果的にトランプ氏が共和党候補になることを阻止できるという考えでした。そこでbrokerという言葉は、『物品やサービスの仲介役』という意味で使われることが多いのですが、ここでは、『黒幕による仲裁』という意味が色濃く出ています。ディベートで、このような動きがあることに触れ、司会者(moderator)が、その場合に無所属、あるいは、第三の政党(Independent)から立候補する事もありうるのかという質問に対し、トランプ氏は、言下に、”No”、と答えていたのが印象に残っています。それをCNNは、”Trump pledges allegiance to GOP, rules out 3rd–party bid.”と伝えております。『共和党に忠誠を尽くし第三政党からの立候補はありえない』と言明しているのです。

Commander In Chief to order Blanket Bombing, Indiscriminating Bombing, Massive Bombing:

更に今回の共和党ディベートで大きな話題を呼んだのが、大統領の陸海空軍総司令官(Commander in chief)としての役割と責任でした。パリの同時テロと、アメリカ国内におけるサンバーナーディーノテロ事件を受けて、アメリカはいまや戦争状態にあるという共和党候補者のほぼ全員に共通した認識から、勇ましい発言が次から次へと飛び出しました。すなわち大統領たるものはその戦争を勝利に導く勇気と決断が問われる、というのが共和党候補の共通した争点だったのです。先頭を走るトランプ氏は、イスラム教徒の全面的な入国禁止やデータベースの整備を進めるべきだと主張しました。イスラム教徒の反発にも関わらず、多くの共和党員の支持率はむしろ向上し、一部の共和党支持者からは、良くぞ言ってくれたという賞賛の声さえ上がるくらいだったのです。それは既成の共和党体制派に不満を持ち、今までは、選挙があっても投票に行かない人達から多くの支持があるからだといわれています。又、テッドクルーズ氏からも、負けじとばかり過激な発言が飛び出しました。トランプ氏のイスラム過激派の家族も攻撃の対象とするべきだという主張に対し、もっと大々的に、絨毯爆撃(blanket bombing)の必要性さえ説いたのです。それに対しアメリカは、ベトナム戦争で繰り返し絨毯攻撃を仕掛けたにもかかわらず、敗退した過去の教訓を学んでいないのかという反論も少なくありませんでした。

Ronald Trump vs Jeb Bush:

ジェブブッシュ氏は元フロリダ州知事であり、そこでの実績を引き下げて颯爽と登場したのですが、元大統領の弟であるということもあって、後援者からの寄付金も潤沢で、

それゆえに前評判が高かったのですが、実際にふたを開けてみると一ケタ台の支持率で低迷しておりました。それが今回のディベートでは真っ向からトランプ氏に勝負を挑んだ感じです。例えば、トランプ氏の違法移民を全員送り返すという提案は非現実的であり、イスラム教徒の全面入国禁止という提案も、10億を超す全世界の善良なイスラム教徒を敵に回すようなもので、しかも建国の理念に反する、あるいは総司令官としての資質、真面目さにかける、などなどと食って掛かったのですが、あたかも、負け犬の遠吠えのような結果に終わったようです。その証拠に、ディベート後の支持率でもブッシュ氏の支持率向上の兆しは全く見えておりません。

3rd Democratic Debate:

第三回目の民主党大統領候補指名を争うディベートでは、ヒラリークリントン氏の圧倒的な優勢が報道されております。その後行われた、Real Clear Politics という米政治専門のサイトが集計した各種世論調査でもそれがはっきりと現れております。すなわちクリントン氏が約55%で、二位のバーニーサンダース氏に25ポイント以上の差をつけております。ここでディベートで言い争われた内容よりも結果に着目するのは、紙面の都合もありますが、それよりも民主党が現政権を支える与党であり、共和党候補者の現大統領ゃ現政権に対する猛烈な批判と反発が、民主党の候補者にもそのまま向けられており、共和党候補者に対する民主党候補者の反発の構図が避けて通れなかったからです。次にその構図に簡単に触れてみたいと思います。

Clinton vs Trump:

それぞれがそれぞれの党の指名を受け大統領候補になると断定するのは時期尚早ですが、クリントン氏とトランプ氏が、お互いがお互いを意識して死に物狂いの舌戦を繰返していることは周知の事実です。その中から、幾つかの興味ある話題と英語表現を集めてみました。

1.”BE CAREFUL.” これは、本来『気をつけろ』というなんら変哲のない表現ですが、全て大文字で書かれている事に注目して下さい。トランプ氏は、同じ共和党の女性候補であるカーリーフロリーナ氏に対しても、女性を蔑視する表現でマスコミをにぎわした事がありました。クリントン氏に対しても信頼性、好感度、正直さなどを取り上げては、人間性を徹底的に卑しめる表現で攻撃してきましたが、クリントン氏がトランプ氏は女性差別主義者(sexist)だと反論したのに対し、トランプ氏がツイッターのなかで使った表現です。メディアも注目し様々な憶測が流れましたが、どうやらトランプ氏の真意は、ヒラリークリントン氏の夫であり元大統領のビルクリントン氏が犯した女性スキャンダルを念頭において、トランプ氏が女性蔑視主義者なら、ビルクリントン氏が危ういところで政治生命を落としかけた事もある女性問題を同じ土俵で話題にするぞという脅しだったようです。

2、”schlong” 一国の大統領を目指す候補者が公開の席で使うような表現ではありません。でも英語の辞書を開いてみると『おちんちん』と出ています。これは明らかに下品な表現です。しかも名詞ですから-edをつけて、動詞と同じような過去分詞形を作り、それを形容詞として使うことは出来ません。それをトランプ氏はクリントン氏を称して”schlonged woman”といっているのです。新しい語法を編み出し、それが何を意味しているのかは想像が付きます。『。。。。。の付いた』とでも言いたかったのでしょうが、良識ある人々からは顰蹙を買っています。表現の自由が許される範囲をはるかに逸脱していると思いますが、皆さんはどう思いますか。

筆:小林 義尚

著者略歴: 語学学校KOBY USAの校長。1987年に来米しMMUCに通訳として入社(6年間勤務)。早稲田大学第一商学部中退。立教大学経済学部卒業。働きながら、デトロイト大学大学院に学びMAとMBAを取得。ウェイン州立大学の経済学博士課程に進学すると同時に経済学部講師に就任。中途で病気の為退学。1993年に、コービィインターナショナルアカデミーを創立。2004年に第三者に経営権を譲渡。2012年にKOBY USA INCを設立。コービィランゲージセンターとコービィラーニングセンターの運営に従事。在米経験は約30年に亘る。