
デトロイトりんご会補習授業校の恒例行事であるオープンハウスが、10月18日(土)に開催された。このオープンハウスは、児童生徒が平日に通う現地のアメリカの学校の教職員や教育委員など教育関係者を招待して行われ、授業参観及び交流と、日本文化紹介を通じ日本の児童生徒への理解と関心を高めてもらい、ひいては現地校での彼らへの指導に役立つ情報を提供することを目的としている。
参加者は受付で校内地図などの参考資料を受け取った後、2校時目にあたる授業を自由に参観した。現地校の学級担任やESL(ELL)の先生方は、担当の子ども達が所属する教室を探して訪れ、学習する姿に温かいまなざしを向けていた。現在担当している児童のみならず、かつて係わった児童の様子を見ようと、20人以上を見て回る先生もいた。幼稚園部では一緒に作業する訪問者も多く、児童の嬉しそうな顔や、はにかむ表情などが見られた。授業内容や教材について父母会の案内担当者に熱心に質問する参加者も多く、日本の指導法への関心の高さも窺えた。
地元ノバイウッズ・スクールのキンダーガーデンの先生は、同校がノバイ市に移転する以前から毎回訪れており、「この日をとても楽しみにしている」「貴重なイベントと捉えている」と話してくれた。他にも、「土曜日にどんな様子なのかが分かり、理解が深まった」といった児童に対する感想の他、クラス全体の態度の良さや、児童生徒全体の礼儀正しさを称賛する声も寄せられた。「日本から来たばかりで英語が通じない児童を受け持っているが、今日参観して、言葉が分からない気持ちが分かった。より工夫や配慮を施したい。」との感想もあり、オープンハウス開催の効果は大きい。
日本を訪問した教育者の報告会
参観後には講堂にて、この夏、当周辺地区よりETJ (Educators To Japan:現地校教育関係者日本派遣プログラム)で日本を2週間訪問し研修した米国人教育関係者からの報告プレゼンテーションが行われた。
まず、村井学校長による歓迎の辞と感謝の言葉や、同校が日本のカリキュラムを進めていることなど学習内容の概略説明に続き、「ゴールは、海外に出て、インターナショナルは世界で活躍できるような人材の育成」と伝え、現地校の教育関係者と手を携えていきたい旨を表した。
ETJ参加者の報告に先立って、JBSD(デトロイト日本商工会)の担当者より同プログラムの経緯や概要について説明がなされた。
同プログラムは駐在員子弟を受け入れている現地校の先生方に感謝と日本文化理解を図る目的で1975年にロサンジェルスで始まり、以後、参加地域が増加。デトロイト地区では1992年からJBSDがスポンサーとなって継続してきており、ほぼ毎年数人の参加者を送り出している。これまでに総計147人を送ってきた。
今年度は当地5名の参加者が、世界各地からの参加者20名と共に、ホームステイ及び学校や多数の文化施設を見学する機会を得た。
5名揃っての報告プレゼンテーションでは、冒頭に、「目的は、米国に住む永住や短期滞在の(日本人の)子ども達の為に日本を理解することである」と前置きし、視察やホームステイでの具体的なエピソード、日本の美しさ、学校生活や設備の違いなどを、異文化の中に放り込まれた新鮮な驚きを交えつつ紹介した。
学校訪問の話題では、生徒が栄養バランスの良い給食を摂り、食べ物を粗末にしないことに感銘を受けたの声があった。トヨタの工場見学もプログラムに組まれているが、対応した役員のみならず運転手も礼儀正しかったと感想を加えた。
学習活動をはじめとする生活の中の伝統的なものと、近代技術の対比が印象深かったとのこと。「習字のように、見た目がシンプルで奥が深いものが多い」「京都の寺では平和と調和に浸かることができた。時の使い方について考えさせられた」「常識だと思っていたことが違うと気づかされた」など、短期間の訪問でありながら、多くの経験を通して、意識や考え方に影響を及ぼしたことが窺えた。
報告の最後に、補習校で自国の文化を学ぶ大切さを強調。また、「子どもは我々皆のもの。全ての人がケアするべき」と纏めた。
質疑応答では、「ここの学校システムは変わるべきか」の問いかけに対し、参加者の一人は、掃除当番など全生徒が同じことをする日本、そして、個々に対応し自由なアメリカ、と違いがあり、バランスが大事であろうと答えた。ITなど最新技術が進んでいる一方で、古くからの技術や考えを大切にしている日本から学ぶことは多いとの意見も出た。
ETJ参加者だけでなく、報告会の傍聴者にとって、日本の学校や文化への理解がより深まり、今後の児童生徒の指導、さらには日米相互理解と絆が、より良く進展してゆくことであろう。