一年が過ぎるのはとても早いもので今年ももう年の瀬です。「あれもやらなきゃ、これも年内にやっておかなきゃ」などと心に焦りを感じる時期であるという方も多いのではないでしょうか。また、そんな多忙な中、イベントも盛りだくさんな時期でもあり、ひとつふたつ断りたい宴会があれど、なかなか断り切れず、疲労困憊しがちな時期でもないでしょうか。
多かれ少なかれ、「断りたかったのに断り切れなかった」という経験が誰にもあるのではないでしょうか。断るという行為はどうも否定的なイメージがあるせいか、誰かれの依頼であれ、NOと返答することに誰もが心苦しく感じてしまうものではないでしょうか。「上手く断れるようになりたい」、「NOと言えるようになりたい」というのは意外と多くの
人が抱えている悩みではないでしょうか。今月は断るをテーマにお話ししましょう。
後述の3つの例にあるような経験をされたことがありませんか?
その1「来週、XXのコンサートなんだよね~。みんなには言ってないけど、実は私ってXX系の音楽って好きじゃないのよね~。それに、私、車の運転って苦手なのにバンを持ってるからって、運転手を頼まれちゃてるんだよね~。いろいろ考えてたら、頭が痛くなってきちゃった。あ、憂鬱、行きたくないなぁ~。ホント、断っちゃおうかなぁ~。でも、今さら断ったらみんなに迷惑がかかるし、こんなことでみんなとの関係が悪くなっちゃったら困るしね。それに、もし行かなかったら、このコンサートの話題が出ても話についていけなくなっちゃうしな~。」
その2「なんだよ~、また、上司に今週も休日出勤してくれないかと頼まれてしまったよ~。今週末こそ家族で出かける予定があったんだけどなぁ~。またドタキャンだよ。家族に嫌な顔をされるだろうなぁ~。それにしてもなんで俺ばっかり休日出勤なんだよ。同僚のXXは今年一度も休日出勤してないじゃないか。でもな~、上司の頼みを断ったりしたら、後で何を言われるかわからないし、また、これを断ったことで出世に影響があったり、会社を首にでもされたりしたら困るし、仕方ないよなぁ~。」
その3「母から電話。今日はスケジュールがいっぱいなのよね。う~ん、どうしようかしら・・・。今日は無理だって母に伝えたいけど、母の頼みを断るのは心苦しいしね~。それに断ったら母ががっかりするだろうしな~。母の悲しい顔を見るのは心が痛いしね~。仕方ないなぁ~、娘をサッカーに送って、その試合中、こっそりぬけて、母のところに行ってこようかしら。あちらこちら車で走り回るのも疲れてるけど、それしか方法がないわよね~。」
似たような経験をしたことがあるという方が多いのではないでしょうか。その1の彼女のように元々断りたかった事に対し、YESと言ってしまい、心の中に後悔の念が渦巻くものの断るということはどうしても苦手であり、常になんとか自分をYESに説得、また、納得させて、断るこという行為を避ける傾向にあるという方。または、その2の彼のように腹立ちを感じるもののなんらかの恐れる気持ちや自分の気持ちを人に伝えることが苦手ということから、自分の言葉を飲む傾向にあり、常に自分を犠牲にしてしまうことが多いという方。更に、その3の彼女のように断ることにとにかく罪悪感を感じる、そのためか、人と関わることがなんだか億劫で複雑な気持ちになってしまうという方。
様々な理由において、断れなかった、または、仕方なくYESといってしまった経験は誰にもあるものです。ただ、断れないということが慢性化している方は心に大きな負担がかかっている可能性があるでしょう。慢性的に断りたいのに断れないということは、常に自分の本当の気持ちが押し込められたままになっている状態、自らが自分の心に嘘をつき続ける心理状態にあると言えるのではないでしょうか。ゆえに、色々な思いが常に心の中を駆け巡っている状態、また、複雑な思いがいつまでも心の中に残存したままな状態となり、心が非常に疲れやすい状態となります。
「なぜあの時自分はちゃんとNOと言わなかったのか」などと常に自分を叱る、また、自分の対して非難的、批判的になることが癖となってしまったり、自分を責めたてる、また、後悔の念に苛まれることが癖となってしまったりと自ら自分の心に負の影響を与える形態を作ってしまい、今までどちらかといえば、積極的、または、前向きであった気質が消極的、後ろ向きに変わってしまうようなことが起こりかねません。また、このような心の状態が継続すると自分を信じる力も低下していき、自分を疑うようになってしまったり、自分がダメ人間のように思えて気分が沈みがちになってしまうこともあるでしょう。
その結果、人間関係全般を億劫に感じるようになってしまったり、人とコミュニケーションを図ることに恐れを感じるようになってしまったり、または、人と交流することを避けるようになる結果となり、社会不安障害などを引き起こしてしまうようなことが生じてしまうこともあるでしょう。このように〝慢性断りたいけど断れない症候群″となってしまうと心理的疾患が生じやすくなる状態を自ら作り出すこととなってしまいます。
断れない、断れなかった理由の多くは基本的に人間関係に不和が生じないようにと心を配った結果です。しかし、断れない状態が慢性化すると自分の心が病んでしまったり、自分の断れなかった理由とは裏腹に人間関係に支障をきたしてしまうことが意外と多くあるものです。何かと断ない理由は数々あるものですが、「自分のスケジュールに無理がある時は断る」、また、「自分の価値観に合わないことに対してNOと言う」など、自己の心の健康管理のひとつとして「断る行為」を自分の慣行に取り入れることは大切ではないでしょうか。
サンクスギビングを終え、ホリデーシーズン真っ只中です。ホリデーストレスという言葉があるように、ホリデーシーズンは何かと人間関係の摩擦が多くなるなどストレスも溜まりがちです。断ること、断れないことが心の負担になっているようなら、このホリデーをきっかけに断ること、健全なYES/NOを使い分けることにチャレンジなれるのもよいのではないでしょうか。
こあきバイヤーズドルフ
Lifescape Counseling LLC のオーナー、メンタルヘルスカウンセラー、クロスカルチャーコンサルタント。日本語にて様々な心のケアサービスを提供。
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