(次回)米大統領選2016の見所 (2)
http://www.japannewsclub.com/2015/12/米大統領選2016の見所-(2)/

Presidential Election:

米国の大統領選が刻々と近づきつつある。米国民にとっては4年に一度の一大行事です。なぜならば大統領は米国の国家元首(chief of state)であり、行政府の長(chief of executive office)であり、陸海空軍を統括する総司令官(commander in chief)であり、

国民の手で直接選ばれる国民の顔(symbol)であるからだ。更に誰が大統領に選出されるかは、少なからず世界情勢を左右するだけではなく、日本にとっても重大な影響を及ぼすので日本人にとっても興味津々である。7年間に亘り大統領職を務めた現職のBarak Obama大統領は再来年の一月に行われる新大統領の就任式(Inauguration Ceremony) を以って任期は完了します。

News Sources: 

私は過去3回に亘り、大統領選を間近に接してきました。情報源は主に新聞、雑誌、TV、ラジオ等で、誰もが気軽に接することの出来るものばかりです。生きた英語を学びたい一身から、ことあるごとにそれらの情報収集に努めてきました。従って私にとって来年の大統領選は4回目となリます。大統領選があるたびに、様々な話題が浮上してきます。そして選挙の結果だけを追うのではなく、それに至る過程をつぶさに観察してみると、実に多くのドラマがあることに気がつきます。今回のそれも例外ではありません。それらの中心には、それぞれの候補者の信念・信仰・憲法解釈・政策・その他の百花繚乱を見ているような気がします。例えば、それぞれの候補者の異なる出自・性別・人種・階層・過去の思い出・現状認識・将来の展望等、様々な論争点が浮き彫りになるのです。それらの事柄が浮上するたびに、見慣れない英語表現や概念も浮上してきます。一つの例を挙げれば、千百万人いると言われる違法移民(illegal immigrants)に関する論争の中でAnchor Babyと言う表現が頻出します。それは、違法移民が話題になると頻出する表現です。ある妊娠中の母親が、出生主義(birthright citizenship)に基き、米国の市民権(citizenship)を取得できることをいいことに、違法な手段で米国に入国しそこで出産を果たすと、その子供には米国の市民権が自動的に与えられるのです。こうして生まれた子供は、親子のかすがいとなって違法移民をアメリカ国内に繋ぎ止めて、違法移民を増大させている、と言う主張に繋がってくるのです。これはそのほんの一例に過ぎませんが、同じような話題を米国大統領選という文脈の中で、これから一年間に亘り追いかけてみたいと思います。そこで最初に話題にしたいのが、共和・民主両党の大統領候補指名(presidential nomination)を狙う候補者(candidates)の顔ぶれです。

1st & 2nd Republican Presidential Debates:

米国の二大政党の元で、それぞれの党内でそれぞれ独自の論争が繰返されます。そこに現れる顔ぶれには、おなじみの顔もあれば、意外な顔も登場します。それらの候補者がほぼ出揃うのは、選挙が行われる一年とちょっと前です。今年の場合、共和党(Republican Party又はGrand Old Party、略してGOPと呼ばれる事もある)からは十数人の候補者がひしめいております。それらの候補者が一堂に会して行われる第一回目のディベートが8月20に開催されました。出席者は8名です。更に、第二回目のディベートが9月16日に開催されました。出席者は、前半が4名。そして後半が11名です。

これらのディベートを通して、三人の候補者が特別な脚光を浴びております。Donald Trump氏、Ben Carson氏、Carly Florina氏の上位三人です。彼らに共通していることは、それぞれ政治家としての経験がないことです。そのために、outsiderという言葉が良く使われます。それに比して、政界で知事(governor)や上院議員(senator)として前評判の高かったJeb Bush氏やMark Rubio氏は各種世論調査で低迷したままである。彼らはいわばinsiderであるが、共和党員の支持を失っているのは、既成の政党や政治家に対する不満・反発があり、より新鮮かつ強力なリーダーシップ(leadership)を求めているからであると言われている。

まず、トップを走るDonald Trump氏は不動産で巨額の富を築いた実業家であり、それに続くBen Carson氏は、アフリカ系のアメリカ人で小児科の神経外科医であり、ダークホース的な存在であるCarly Florina氏は、コンピュターでお馴染みのHewlett-Packard社に秘書として入社してから経営最高責任者(CEO)の地位まで上り詰め、最後は解雇されたと言ういわくつきの会社経営者である。政策論争に関する詳細は後ほど触れるとして、各種世論調査で上位を独占する彼ら三人は異色の人材です。まず最初に注目したいのが、首位を走り続けるトランプ氏の歯に衣着せぬ発言です。違法移民対策として国境沿いに高い強固な塀を建造し、コストは隣国のメキシコに負担させるとか、現在違法滞在している千百万人は一人残らず彼らの本国に強制送還をするという。また、現職の大統領であるバラックオバマ氏や元国務長官のヒラリークリントン氏を無能呼ばわりしたり、うそつきであるとさえいう。又、かつては本命視されていた元ブッシュ大統領の実弟であるJeb Bush氏はリーダーとなるためにはエネルギー不足であると言ってのける。そういった発言は猛烈な反発にあっているが、本人は一向にひるむ気配はない。他の候補者に向けられた誹謗中傷は常識の範囲を逸脱しているという非難も絶えない。一方では、女性を馬鹿にしていると言う非難があるかと思えば、その一方で、強力なリーダーシップの現れであるという評価も少なくない。最も注目されるのが、現在人気はあるけれど、実際に民主党の候補との政策論争に対等、又は、それ以上に渡り合えるのかどうか疑問視する向きも少なくない。その後を追うのが、ベンカーソン氏である。

彼は物静かで、政治とは縁のないの学者のようである。ところが、静けさの中に意外な強硬路線を主張する。例えば、銃の規制に反対し、ナチの時代にユダヤ人が大量に殺戮されたことは、あまりにも有名であるが、もし彼らが銃を所持していたら、大領殺戮はまぬがれることが出来たであろうと言って、銃の所持は憲法修正第2条に保障された国民の権利であると言う共和党員には支持され、銃規制を主張する民主党員からは猛烈な反発にあったりしている。そして、民主党支持者が多いアフリカ系アメリカ人の中にあって、異色の共和党候補者であるといえるであろう。カーソンに迫るのが、カーリーフローリン氏である。かつてTimes誌で世界で最も強力な女性経営者として紹介された事があり、その舌鋒の鋭さには、たじたじする者も多い。彼らは政治には無関係でも、職業政治家にうんざりしている共和党員は、政治の世界に新風を吹きこみたいという願望の現れであろうか。下馬評ではしばしば有望視されていたJeb Bush氏を始めとする職業政治家は、今のところ各種世論調査(poll)でも既述の三人から、はるか後塵を拝しているのが現態である。

1st Democratic Presidential Debate:

共和党のディベートに引き続いて行われた民主党(Democratic Party)の第一回ディベートは10月13日に実施されました。際立ったのは、ダントツで上位を占める二人です。先頭に立ったのがHillary Clinton氏で、それを追うのがBernie Sanders氏です。クリントン氏は、いわずと知れた前大統領ビルクリントン(Bill Clinton)氏の妻であり、一期目のオバマ政権(Obama Administration)の内務長官(Secretary of State)を勤め、アメリカで初の女性大統領を狙う民主党のホープである。特に、デイベートでは貫禄十分に他の参加者を圧倒し高い評価を受けました。しかし彼女にも弱みがあるといえます。その中で最も頭を痛めているのが、内務長官時代に私設Eメールサーバーを使用していた問題です。その問題を問われるたびに説明がころころ変わり、一貫性に欠けるといって批判されております。又、それは信頼性(reliability)・好感度(likability)・正直さ(honesty)の問題であるということで、突出していた支持率も下降気味です。更に、国務長官の時代に、リビアのベンガジ(Benghazi)にあるアメリカ領事館が襲撃され、大使を含む4人が殺害された事件に関し、現地から安全(security)に問題があるので警備の強化を要請されたにもかかわらず、なんら有効な対策も講じる事がなかったのは、三軍の総指揮官としての大統領職には不適切であると言う共和党の集中砲火を浴びているのです。その上、現職の副大統領であるJoe Biden氏の立候補がささやかれ続けたが、10月21日に不出馬の声明が発表されるに及んで、むしろ、クリントン氏の支持率は11%位上昇したと言われています。それに続く民主党の有力な候補は、Bernie Sanders氏です。彼は民主社会主義者(democratic socialist)を名乗リ、元来、共産主義(communism)や社会主義(socialism)にアレルギー体質といっても過言でもないアメリカ国民が、どういう反応を示すのか注目されるところです。現在のところ、現体制(establishment)に失望し、投票にも行った事がないという多くの若者たちから信望や期待を集め、破竹の勢いでクリントン氏に迫っています。

『追記』  これから何が起こるかは不明ですが、各種報道に触れていると、生きた時事英語の教材として、これ以上に面白い題材はないと思います。もっと多くの日本人の方々が、現在進行中の話題を共有し、対米経験を加味し、対米中に起きた出来事をリアルタイムで追及していけば、かけがえのない思い出が出来ると信じております。繰り返しになりますが、4年に一度行われる米大統領選は、そういう話題として最適であると確信しております。

筆:小林 義尚

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