
ノバイ市に拠点を置く「五大湖太鼓センター」は、2009年秋にミシガン州で和太鼓パフォーマンスグループ「雷音(らいおん)太鼓」が結成されたと同時に、雷音太鼓メンバーであるブライアン・ソウル氏によって創立された。「ミシガンに太鼓の素晴らしさを広げ、太鼓を愛する人の拠点になりたい」という夢を実現するための太鼓道場である。年明けの2010年1月には教室を開始し、ミシガン州初の和太鼓普及と演奏活動のセンターとして展開してきた。昨年には、同センターで修練してきた古参メンバーを中心とするパフォーマンスチーム「五大湖ドラマーズ」も結成された。雷音太鼓のメンバーや五大湖ドラマーズを含む太鼓センターの生徒たちは、こ
の6年ほどの間、数多くの日系の文化紹介イベントなどで演奏を披露した他、アジア系の踊りと音楽の祭典Splendor of the Eastやロイヤルオークの恒例ビッグイベントFord Arts, Beats & Eats Festival、デトロイトで開催されるDetroit River Daysなど様々な地元コミュニティーのイベントへも出演し、学校や教会でのワークショップも数多く行なってきた。
同センターは開設以来、ソウル夫妻の日本での繋がりを活かし、世界一流のパフォーマーを呼び寄せ公演を実現してきた。一周年コンサートには日本の実力派和太鼓ユニット『焱(ほのお)太鼓』がゲスト出演。『焱太鼓』はソウル氏が真有美夫人とともに太鼓修行をした浅野太鼓(石川県)に所属する女性の演奏グループで、国内外各地で活躍し、今日日本に広がっているパフォーマンス太鼓の先駆者でもある。二周年コンサートには、世界的に有名な『鼓童』のメンバーによって結成された『花結(はなゆい)』との舞台を実現。三周年には、焱太鼓のメンバー二人が再度渡米し、共演の他、当地の学校での実演披露も行なった。
そして今年2015年6月6日に、五周年記念公演会がデトロイト市のRedford Theatreで開催された。Redford Theatreは1928年にオープンした歴史的な劇場で、内装のモチーフが“日本”という、和太鼓演奏にぴったりといえる日本風な装飾が施されている3階建の荘厳な施設。創設者の夫人が大変な日本贔屓であったそうで、創立当時「アメリカ屈指のユニークな郊外劇場」と言われ人気を博した。インターミッションでは、そのシアターオルガンもチャーチオルガニストにより演奏され、独特の音色を直に聴くことができた。
五大湖太鼓センター主催として最も大きな会場でのコンサートとなった五周年記念演奏会には、『焱太鼓』から独立した若手メンバーを中心に結成した女性和太鼓グループ『DIA⁺(ダイアプラス)』が出演に応じ、華麗かつダイナミックなパフォーマンスを披露した。
開設当初20名ほどであった同センターの生徒は約80名にまで増加。3歳から83歳の広い年齢層の様々な人種が和太鼓を楽しみ、その魅力のとりことなっている。
公演前半の開始前には獅子舞が余興に披露され、インパクトのある『DIA⁺』の演奏で幕開けし、続いて6つのレベルクラスごとの演奏発表の他、『雷音』、『五大湖ドラマー』の合わせて11曲、そして後半は『DIA⁺』による9曲、と、盛り沢山なプログラムが組まれた。同センターでは、日本の伝統リズムやメロディーを大切にしつつも、お神楽(お囃子)や歌舞伎などの伝統芸能とは異なる‘創作和太鼓’を主なレパートリーにしている。古くからの楽曲をアレンジしたものや、近現代に作曲された20曲が届けられ、会場は空気を震わすほどの響きとパワーに包まれた。演奏者、出演者と会場が日本語と英語で和やかに交流し、アメリカの日本的な美しいシアターと一体となって、会場は終始華やいだ熱気に包まれていた。また、演奏者の和風で粋なコスチュームと、そして司会を務めた前田和香子さんの貴やかな着物姿も聴衆を楽しませた。
『DIA⁺』のリーダーである山田瑞恵さんは多数の和太鼓曲の作曲者でもあり、今回の演奏会でのセンターの生徒や“雷音太鼓”が叩いた曲にも山田さん作曲のものが多数含まれていた。曲名は『乱気流』『雷群』『出航』など自然にまつわるものが多く、曲想もそれを表して、凛とした雰囲気のもの、あるいはダイナミックな激しさで周囲の空気を震わせるものと、自然界の静と動を豊かに醸し出していた。同センターのためのオリジナル曲『五大湖』も、『雷音』と『五大湖ドラマー』の合同で奏でられた。
およそ六百人を数えた観客の大半は地元のアメリカ人と見られる人々。和太鼓、そして同センターの活動が浸透し、ファンが増えていることが伺えた。2時間を超す長帳場となったが、全ての曲が終わるや否や観客席から盛大な拍手と歓声が沸き上がり、スタンディングオベーションでの感動的な幕切れとなった。公演後にはホールでDIA+のメンバーと交流する時間も設けられ、貴重な和太鼓演奏鑑賞の機会に恵まれた感謝と喜びの声が出演者に伝えられていた。
ブライアン・ソウル氏は、五周年コンサートの感想と今後の抱負を「五周年に、百人近くの生徒になり、このように大きなことができるとは当初は思っていなかった。今回の演奏会で六百人ほどのお客さんに、そして今までには何千人もの方たちに和太鼓を紹介でき、とても嬉しいです。」「2007年から2年間、太鼓を習い、その素晴らしさや嬉しさ、体験したことをミシガンの人に伝えたかった。これからももっと多くの人に広めたいです。」と語っている。
和太鼓に馴染みの薄かった当地で、地盤を固めてきた五大湖太鼓センターの今後の展開が楽しみである。尚、10月に開催されるJBSD(デトロイト日本商工会)とJSDウィメンズクラブ共催の日本祭りに今年も出演が予定されている。
「若い人、ミュージシャンだけでなく、いろんな人がエンジョイできることが素晴らしい」とソウル氏。
クラスの見学はいつでも歓迎。体験も可能。尚、予めご連絡下さいとのこと。
email: raion.taiko@gmail.com
または 248-773-8899 (日本語可)
五大湖太鼓センターホームページ:www.michigantaiko.net