Turning Point:-NASCAR スプリントカップドライバー デビッド・レーガン- 2

IMG_8064NASCAR(ナスカー)-全米が熱狂するこのモータースポーツは、5700cc V8エンジンを積んだイコールコンディションのストックカーで争われる。様々なスポンサーのカラーを施し、レースでは時に派手なクラッシュも。なによりその轟音と迫力は圧巻であり、レース全体がアメリカンテイストにあふれている。

NASCARの最高峰Sprint Cupシリーズに参戦するDavid Ragan(デビッド・レーガン)選手。今回、縁あって特別に取材許可をもらえたので紹介したい。

Exif_JPEG_PICTUREジョージア出身のこのドライバーは若干18歳でNationalシリーズの一角Camping World Truckシリーズ、Xfinityシリーズに参戦。22歳で名門Roushレーシング(本社はLivonia,MI)からトップシリーズのSprint Cup参戦。Roushで長年エースをつとめたマーク・マーティンから栄光の#6を引き継ぎ、まさに順風満帆のレース人生・・・

しかし現実は厳しく、結果が出せず苦悩の日々を送る。なにしろSprint Cupの決勝を走れるのは数千人のうちわずか43人。Roush在籍中は1勝を上げたに留まり、チーム縮小に伴い離脱。

移籍先を探すも大きなスポンサーを持っているドライバーが優先される厳しい現実。たどり着いたのは小さな新興チーム、Front Row Motorsports(以下FRM)。ここでほとんどスポンサーが無い白いクルマを与えられた。

しかし、ここからデビッドは真価を発揮し始める。

彼は昔からスーパースピードウェイを得意としてきた。NASCARというと「オーバルコースをグルグルまわるだけでしょ?」とよく言われる。しかしそのオーバルコース、25以上あり形状は様々。三角あり、四角あり、二本の直線を二つの半円でつないだものなど。競輪場のように全周バンクのものから全周フラットまで。一周の距離に至っては、スーパースピードウェイと言われる4km超のものから、ショートトラックと言われる800m(!)のものまで。ここでスーパースピードウェイはデイトナとタラデガの二つ。ここがデビッドの得意とするところで、Roushでの1勝もデイトナでのもの。

FRM移籍後の2013年春のタラデガ。

残り2周でRoushの#99カール・エドワーズがトップに躍り出ると、それを追うのは5年連続チャンピオンの#48ジミー・ジョンソン、トヨタのエース、#20マット・ケンセスなどの強豪。その中から、弱小FRMの2台が協力しながらトップグループへ。デビッドは同僚のデビッド・ギリランドの援護を受けながらカールをフェイントで抜き去り、さらに大胆な牽制をしながら一気に最短コースへ切り込み、見事FRMに初勝利をもたらす!これにはデビッドも「あの日は大切な一日になった・・・」。

2015年6月。ミシガン・インターナショナル・スピードウェイ。ここにデビッドはMichael Waltrip Racing(以下MWR)の#55 トヨタ・カムリと共に姿を現す。

2015年もFRMからの参戦だったところ、#18カイル・ブッシュが第一戦で負傷。急遽デビッドが代役として#18トヨタ・カムリのドライバーに抜擢、新しいクルマ、トップチームのプレッシャーの中でありながらも常にTop5を走って見せた。それを評価したMWRが契約、2015年一杯、#55トヨタ・カムリをドライブすることになったのだ。

IMG_7687-6月12-13日Practice & Qualify-

青と白が鮮やかな#55 Aaron’s トヨタ・カムリ。「あれっ?」ルーフに書かれるドライバーの名前が違う・・・「KEN RAGAN」。そう、父の日を前に何名かのドライバーは自分の代わりに父親の名前を記載。このあたり、NASCARらしい。じつはKENもNASCARドライバー。再びKEN RAGANの車が走るのを見れて本人も往年のファンもうれしいことだろう。

比較的余裕がある金曜日。ファンが次々にデビッドのところにやってくる。カナダから来た夫婦、車イスの子供、ひっきりなしにやってくるゲストにいつも元気よく「調子はどうだい!」と声をかけ、サインを書き、いっしょに写真を撮ったり話をしたり・・・このときのデビッドの優しい笑顔は、まさか300km/hオーバーの世界に生きるドライバーとは思えない。

カナダから来た夫婦が私に耳打ちする。「トップに上がると天狗になるのが多いんだけど、デビッドはほんとうにナイスガイだよね!」・・・まったくその通り!

土曜のPractice、ガレージでのデビッドはやはり雰囲気が違う。ジャマにならないように遠くから望遠でカメラを向ける。車に乗り込んでヘルメットをかぶり、エンジンをかけるまでの数分間、その瞳ははるか遠くを見ているように静かだ。何の迷いも気負いも感じられない。ただ、速く走るだけ・・・

-6月14日 Final-

朝からドライバーズミーティングや車検、作戦会議など多忙を極める。

ピットクルーも仕事場に向かう。「Have a good race!」私はフロントタイヤ担当のライアンと拳をぶつけた。

ピットではストレッチやイメージトレーニング、そしてタイヤ空気圧の確認など余念が無い。レースが始まっても彼らは常に体を動かし、いつでも最高の働きができるように備える。

NASCARはオーバル、イコールコンディション。単純、単調と思われがちだが、そこが難しいところ。今回の予選では1位から3位までの差が0.1秒。1位から27位までが1秒。出走43台のほとんどが2秒以内に入ってしまう。1周わずか35秒のコースでピット作業ミスは致命傷になる。

午後一時。「Start Your Engines!」地鳴りのような低音が響き渡り、1.5トンの鉄の塊43台がピットレーンを滑り出す。

やがてグリーンフラッグが振られ、スタート。43台が一斉にフル加速する轟音が大気を震わせた。

序盤、#22が2台に左右を挟まれて行き場を失い減速、真後ろにいたデビッドに接触かと思われたが、丁寧に距離を取ってかわした。

35週目には#42がアウトにはらみ一気に順位を下げる。これもオーバルの怖さ。前に追いつこうとしても、1周0.1秒も縮まらない。しかし、一瞬のミスで0.5秒も失おうものなら一気に10番手は順位を落としてしまう。

やがて雨が降り出し、イエロー(速度制限)、レッド(中断)の繰り返し。降っては乾かし、走っては降り・・・

45周目からのレース再開後は順調に進むも、短縮が予定されており各チームとも戦略が混乱。大きなクラッシュは無いが、順位が定まらない。

デビッドもタイムとしては悪くないが、ペースカーが入るイエロー時にピットインすれば順位を落とすことは無いところを、残念ながらグリーン状況での給油となる。さらにその直後にイエロー発生。大きく順位を落としてしまった。

最後は138周(予定は200周)で豪雨により中断。追い上げる機会を失い35位となった。

今回のミシガンでのレースを終えて・・・

「8月のミシガンでのレースに向けて車の熟成を進めるのみ。その前に7月5日のデイトナ、勝ちたいね!」

NASCAR最高峰で戦うデビッド・レーガン。厳しい一日一日を着実に積み重ねる彼は、この転機で必ず次のステップに進めると確信できた3日間だった。

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