<!--:en-->海外の東洋美術 コレクターと商人の関わりを紐解いた講演 『The Business of Asian Art: Yamanaka & Company and Charles Lang Freer』<!--:--><!--:ja-->海外の東洋美術 コレクターと商人の関わりを紐解いた講演 『The Business of Asian Art: Yamanaka & Company and Charles Lang Freer』<!--:--> 2

  日本国外の美術館を訪れて日本美術品の充実ぶりに驚いた経験はないだろうか。私(リポーター)はニューヨークやワシントンDCの美術館で、日本セクションの一級品や仏教美術品の多さに愕然とした。いったい誰が海外に持ち出しのただろうか。

  4月末、日本をはじめアジアの美術品を大量に売買した山中商会に関する講演会がデトロイト美術館(DIA)で開催された。講演者に『東洋の至宝を世界に売った美術商——ハウス・オブ・ヤマナカ』の著者であるジャーナリストの朽木ゆり子氏(ニューヨーク在住)を招き、英語による講演が行われた。これは、以下団体の協賛、また、在デトロイト総領事館の支援を得て実現したもので、会場には200人を超える聴講者が足を運んだ。

協賛:The Freer House, Wayne State University; Friends of Asian Arts & Cultures, DIA; Japan America Society of Michigan and Southwestern Ontario

  協賛団体の筆頭に記載した“The Freer House”は、デトロイトで巨万の富を築いた美術コレクターであるフリーア(Charles Lang Freer, 1854-1919)の旧宅の名称で、デトロイト美術館の近くに現存している。建物は残っているものの、蒐集品はワシントンDCのフリーア美術館(スミソニアン博物館群の一つ)に収蔵されて旧宅には残っていないが、邸宅の保存修復とフリーアの業績を伝え広める目的をもつ「フリーア友の会」が絵画のレプリカを元の位置に飾るなど復元を進めている。

 フリーアの蒐集品はアジア美術において世界屈指と言われながら、彼の遺言により門外不出であるためにあまり知名度が高くないが、日本にあれば重要文化財、国宝間違いなしと評される逸品が数多く揃っていることにも触れておきたい。フリーアは数回も訪日したほど日本美術に傾倒し、フリーアハウスにも東洋の美を愛していたことが見て取れる。

  朽木氏の講演は、フリーアと山中商会との関係に焦点をおき、海外に渡った美術品の種類や傾向、売却の経緯、そして商会の盛衰について多数の映像を交えて解説した。山中商会(ハウス・オブ・ヤマナカ)は19世紀末のニューヨーク進出を機に、第2次世界大戦まで欧米各地に店を構え、海外の蒐集家に大量のアジア美術を販売。人脈と信頼を糧に、日本や中国の書画骨董を買い集めては売り渡したという。仏教美術品も、寺院の経済事情を背景に海を渡ることになった。

 当時の浮世絵は作品によっては$35程度の値段であったこと、山中商会のニューヨーク店は一等地であった5番街に構え40人ほどの従業員を擁していたことなど、素人にも面白い話が多く、高い関心を集めていた。品物の確かさやマージンの低さが功を奏して繁栄していた商会であったが、敵国となったためにアメリカ政府に美術品やその他の資産をすべて接収・売却され閉店を余儀なくされたという話に関して、質問タイムに聴講者から従業員らの行方・・・強制収容されたのかを懸念する質問が上がった。聴講者の9割以上が日本人以外と見られたが、盆栽収集についての質問もあり、日本文化についての知識や関心の高さが窺われた。

  山中商会のような美術商によって大量の美術品が国外に流出したのは事実であり、否定的にとらえる向きもあるが、同時に、海外にアジア美術を紹介した功績は大きいといえる。浮世絵は国内では挿絵かプロマイド程度の位置づけであったものが、海外でその技術の高さや美しさを評価されたことで“美術品”の域に価値があがり、紙くず扱いの危機を免れたように、保護現存に寄与したのも事実である。フリーアのようなコレクターの存在価値も然りであろう。

  講演を聴いた日本人からも、「優れていると認められ、海外に売られることがなければ、捨てられたり消失していたのかもしれない」「海外で日本美術が見られることに感謝の気持ちが生まれた」との声が聞こえた。

  講演後には、フリーアハウスの邸内ツアーが提供された。現在はWayne State Universityに属する研究所のオフィスとして使われており、通常、一般に公開されていない。アメリカのNational register of Historic Placesに登録されている歴史的建造物を見学する貴重な機会となった。余談ではあるが、フリーアは庭の植物の詳細な購入記録を残していたため、それを基に庭の再現プロジェクトも進行中とのこと。フリーアハウスに関する問い合わせは 313-664-2500 または www.mpsi.wayne.edu/freer/

  朽木氏に、海外にある日本美術品の見方について助言を求めたところ、「印象派やフランス美術に人気があるのは、作品が世界中に拡散したから。日本美術も広く見られれば日本に対する理解も深まると思います」との言葉をいただいた。また、DIAの展示品に関して、西洋美術やコンテンポラリーの内容が素晴らしいと評価。講演前に廻る機会を得たというデトロイトのダウンタウンについては、「デトロイト市破産から、デトロイト美術館が独立法人になるまでのプロセスは外部から見ていて感心した。デトロイトは実行力があるんですね。」とのこと。最後に「美術コレクターがいる。そして、破たんしかけたデトロイトの美術館を存続するために寄贈した人々がいる。そういう土地なのでしょう」と穏やかな口調で語った。

朽木ゆり子氏の著書

『東洋の至宝を世界に売った美術商 ハウス・オブ・ヤマナカ』 新潮文庫 750円

  日本国外の美術館を訪れて日本美術品の充実ぶりに驚いた経験はないだろうか。私(リポーター)はニューヨークやワシントンDCの美術館で、日本セクションの一級品や仏教美術品の多さに愕然とした。いったい誰が海外に持ち出しのただろうか。

  4月末、日本をはじめアジアの美術品を大量に売買した山中商会に関する講演会がデトロイト美術館(DIA)で開催された。講演者に『東洋の至宝を世界に売った美術商——ハウス・オブ・ヤマナカ』の著者であるジャーナリストの朽木ゆり子氏(ニューヨーク在住)を招き、英語による講演が行われた。これは、以下団体の協賛、また、在デトロイト総領事館の支援を得て実現したもので、会場には200人を超える聴講者が足を運んだ。

協賛:The Freer House, Wayne State University; Friends of Asian Arts & Cultures, DIA; Japan America Society of Michigan and Southwestern Ontario

  協賛団体の筆頭に記載した“The Freer House”は、デトロイトで巨万の富を築いた美術コレクターであるフリーア(Charles Lang Freer, 1854-1919)の旧宅の名称で、デトロイト美術館の近くに現存している。建物は残っているものの、蒐集品はワシントンDCのフリーア美術館(スミソニアン博物館群の一つ)に収蔵されて旧宅には残っていないが、邸宅の保存修復とフリーアの業績を伝え広める目的をもつ「フリーア友の会」が絵画のレプリカを元の位置に飾るなど復元を進めている。

 フリーアの蒐集品はアジア美術において世界屈指と言われながら、彼の遺言により門外不出であるためにあまり知名度が高くないが、日本にあれば重要文化財、国宝間違いなしと評される逸品が数多く揃っていることにも触れておきたい。フリーアは数回も訪日したほど日本美術に傾倒し、フリーアハウスにも東洋の美を愛していたことが見て取れる。

  朽木氏の講演は、フリーアと山中商会との関係に焦点をおき、海外に渡った美術品の種類や傾向、売却の経緯、そして商会の盛衰について多数の映像を交えて解説した。山中商会(ハウス・オブ・ヤマナカ)は19世紀末のニューヨーク進出を機に、第2次世界大戦まで欧米各地に店を構え、海外の蒐集家に大量のアジア美術を販売。人脈と信頼を糧に、日本や中国の書画骨董を買い集めては売り渡したという。仏教美術品も、寺院の経済事情を背景に海を渡ることになった。

 当時の浮世絵は作品によっては$35程度の値段であったこと、山中商会のニューヨーク店は一等地であった5番街に構え40人ほどの従業員を擁していたことなど、素人にも面白い話が多く、高い関心を集めていた。品物の確かさやマージンの低さが功を奏して繁栄していた商会であったが、敵国となったためにアメリカ政府に美術品やその他の資産をすべて接収・売却され閉店を余儀なくされたという話に関して、質問タイムに聴講者から従業員らの行方・・・強制収容されたのかを懸念する質問が上がった。聴講者の9割以上が日本人以外と見られたが、盆栽収集についての質問もあり、日本文化についての知識や関心の高さが窺われた。

  山中商会のような美術商によって大量の美術品が国外に流出したのは事実であり、否定的にとらえる向きもあるが、同時に、海外にアジア美術を紹介した功績は大きいといえる。浮世絵は国内では挿絵かプロマイド程度の位置づけであったものが、海外でその技術の高さや美しさを評価されたことで“美術品”の域に価値があがり、紙くず扱いの危機を免れたように、保護現存に寄与したのも事実である。フリーアのようなコレクターの存在価値も然りであろう。

  講演を聴いた日本人からも、「優れていると認められ、海外に売られることがなければ、捨てられたり消失していたのかもしれない」「海外で日本美術が見られることに感謝の気持ちが生まれた」との声が聞こえた。

  講演後には、フリーアハウスの邸内ツアーが提供された。現在はWayne State Universityに属する研究所のオフィスとして使われており、通常、一般に公開されていない。アメリカのNational register of Historic Placesに登録されている歴史的建造物を見学する貴重な機会となった。余談ではあるが、フリーアは庭の植物の詳細な購入記録を残していたため、それを基に庭の再現プロジェクトも進行中とのこと。フリーアハウスに関する問い合わせは 313-664-2500 または www.mpsi.wayne.edu/freer/

  朽木氏に、海外にある日本美術品の見方について助言を求めたところ、「印象派やフランス美術に人気があるのは、作品が世界中に拡散したから。日本美術も広く見られれば日本に対する理解も深まると思います」との言葉をいただいた。また、DIAの展示品に関して、西洋美術やコンテンポラリーの内容が素晴らしいと評価。講演前に廻る機会を得たというデトロイトのダウンタウンについては、「デトロイト市破産から、デトロイト美術館が独立法人になるまでのプロセスは外部から見ていて感心した。デトロイトは実行力があるんですね。」とのこと。最後に「美術コレクターがいる。そして、破たんしかけたデトロイトの美術館を存続するために寄贈した人々がいる。そういう土地なのでしょう」と穏やかな口調で語った。

朽木ゆり子氏の著書

『東洋の至宝を世界に売った美術商 ハウス・オブ・ヤマナカ』 新潮文庫 750円

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