
いけばなインターナショナル デトロイト支部 創立50周年記念イベント 華道池坊の教授を迎え、実演とワークショップ
「シンプルさが美しくすばらしい!」「花や枝に対する見方が変わった。」生け花の実演に賛美や感嘆の声が集まった。
冬が厳しかったミシガンに一気に春の花ばなが咲き誇った5月8日(金)、いけばなインターナショナルのデトロイト支部(Detroit chapter 85)の50周年イベントの一環として、バーミングハムの教会にて一般公開の実演が無料で行われた。支部のメンバーと友人のほか、多数の米人が参加し、180人ほどの老若男女で席が埋まり、盛況に催された。会場のあちらこちらに生け花が飾られ、祝賀に華やかさを加えていた。
社団法人いけばなインターナショナルは、生け花の精神と芸術性に深い感銘を受けた米国人エレン・ゴードン・アレン夫人により、「花を通じての友好」をモットーに、1956年に東京に設立された国際的な文化団体で、国籍も所属流派も多様な会員が、生け花とそれに関連した日本の文化・芸術の紹介を通して相互理解と友好を深める活動をしている。当初20数名で発足した組織が、今日では全世界50数ヵ国および地域に163支部が設立され、会員数6300名を数えるまでに発展した。
ミシガンの支部は、Detroit Chapter 85の数が示す如く、世界85番目の支部として1965年に設立された。現在登録メンバーは50名ほどで、その多くが現地の米人となっている。設立同時からのメンバーであり池坊の師範であった下浦敏子教授が今年2月に他界され大きな柱を失ったが、下浦教授の手ほどきを受けて准師範のレベルに向上した現会長ローレンさんをはじめとする米人たちと日本人たちが手を携えて活動している。近年の恒例として、デトロイト美術館で開催される「ひな祭り」イベントおよび、デトロイト日本商工会とJSDウィメンズクラブ共催による日本祭りで生け花の実演や展示を行っている。
5月8日の一般公開イベントには在デトロイト総領事ご夫妻も列席し、総領事より50周年の祝辞が贈られた。加えて、同支部が長年、いけばなという日本文化を通じてコミュニティーの交流活動に貢献してきたことを称え、総領事表彰が行われた。
続いて、この日のメインイベントとして、ノースカロライナ州から招かれた華道家元池坊の鈴木笑子教授(正教授1級)による実演に移った。鈴木教授は在住地であるノースカロライナ州ヘンダーソンビルに日本文化紹介施設 “WNC Japanese Culture Center”(WNC:Western North Carolina)を設立し、いけばなの普及伝播に精力的に努めている。穏やかな笑顔あふれる鈴木教授による実演は8種類(8瓶)におよび、ユーモラスな逸話を交えた英語の解説つきで進められ、始終和んだ雰囲気に溢れていた。池坊のいけばなの3つのスタイルである「立花(りっか)」(最も古い様式)、「生花(しょうか)」(江戸時代に成立したシンプルな様式)、そして「自由花(じゆうか)」(フリースタイル)、それぞれの特徴を分かり易く説きながら実演紹介していった。「生花」では花材の種類は3種までであることや、咲き頃の花ばかりではいけなく“過去・現在・未来”を入れる必要があることなど、西洋のフラワーアレンジメントには見られないルールや考え方を伝えた。手品のように無駄のない動きで作品を次々に完成させる様子に会場の誰もが引き込まれたように見入っていた。この日の実演では、生ける段階のみが披露され、いとも簡単そうに見受けられたが、前日にはメンバーたちが庭や花屋から大量の花材を調達し、余分な枝葉を落としたり、ワイヤーなどで形を整えたりする下ごしらえに朝から夜まで励んだとのこと。美しさを際立たせるために多大な労を惜しまない営みに感嘆させられた。会場に響きわたる絶賛の拍手とともに実演イベントは終了した。鈴木教授との歓談や質問、作品の撮影で、しばらく人々の賑わいが続いた。
次の日には支部のメンバーと応募者を対象にしたワークショップが実施され、午前中に同じ花材と形状の似た花器(花瓶)を使用しての伝統スタイルの手順の実践、そして午後には各自が好きな花材と花器を選んでのフリースタイルで生けたものを、鈴木教授が一人ひとりに丁寧な説明を添えながら手直しして回った。花材選びの前の「これもあれもはダメ。主を一つ選ぶこと。真珠とダイヤモンドのネックレスを両方をしては、どちらも生きないでしょ?」との言葉が心に残った。
「新しいアイデアを知ることができた」「指導者によってポイントがかわり視点が変わる」「先生の個性に刺激された」など、習得の喜びの声が寄せられた。
8年前にデトロイト美術館に飾られた亡き下浦教授の作品に強烈に惹かれて習い始めたという米人女性は、「いけばなには意味がある。精神性、ピースフルになれるのがいい」と、彼女にとっての魅力を語ってくれた。
鈴木教授に、いけばなの特徴や考え方を伺ったところ、「いけばなの鑑賞を通して日本人がたしなんできた文化の良さをより知ってもらえれば嬉しいです。」と思いを語ったうえで、以下のように挙げてくださった。
・いけばなは日本のものだが、何を生けても良く、トロピカルな葉などをあしらうこともある。自然界ではありえない一瓶の中で取り合わせを楽しむことができ、“出会い”の楽しみがある。
・花材の“過去・現在・未来”とは、過去:時の経過や年代を感じさせる枝ぶりなど、現在:咲きごろ、未来:つぼみなど。それらによって単に形のアレンジでは無く、自然を表現している。
・花や植物が外(自然、庭など)にある時よりきれいにすることを目指す。切り取ったからには草木の美しさをより生かすために、余分な枝葉を落とす、つまり素材の良さをより際立たせる為の取捨の作業は選択の連続で、最も良いものを見極める力が要る。
鈴木教授は優しい笑顔を浮かべながら、「いけばなは、結果よりその過程が大切で、楽しいと同時に“生き方= 生かす”修養です」と結んだ。
★Detroit chapter 85の定例会は月一回、Southfield市で開かれている。
経験不要、いつでも入会が可能とのこと。問い合わせ、入会申し込みは、
http://sites.google.com/site/ikebana85detroit/
いけばなインターナショナル デトロイト支部 創立50周年記念イベント 華道池坊の教授を迎え、実演とワークショップ
「シンプルさが美しくすばらしい!」「花や枝に対する見方が変わった。」生け花の実演に賛美や感嘆の声が集まった。
冬が厳しかったミシガンに一気に春の花ばなが咲き誇った5月8日(金)、いけばなインターナショナルのデトロイト支部(Detroit chapter 85)の50周年イベントの一環として、バーミングハムの教会にて一般公開の実演が無料で行われた。支部のメンバーと友人のほか、多数の米人が参加し、180人ほどの老若男女で席が埋まり、盛況に催された。会場のあちらこちらに生け花が飾られ、祝賀に華やかさを加えていた。
社団法人いけばなインターナショナルは、生け花の精神と芸術性に深い感銘を受けた米国人エレン・ゴードン・アレン夫人により、「花を通じての友好」をモットーに、1956年に東京に設立された国際的な文化団体で、国籍も所属流派も多様な会員が、生け花とそれに関連した日本の文化・芸術の紹介を通して相互理解と友好を深める活動をしている。当初20数名で発足した組織が、今日では全世界50数ヵ国および地域に163支部が設立され、会員数6300名を数えるまでに発展した。
ミシガンの支部は、Detroit Chapter 85の数が示す如く、世界85番目の支部として1965年に設立された。現在登録メンバーは50名ほどで、その多くが現地の米人となっている。設立同時からのメンバーであり池坊の師範であった下浦敏子教授が今年2月に他界され大きな柱を失ったが、下浦教授の手ほどきを受けて准師範のレベルに向上した現会長ローレンさんをはじめとする米人たちと日本人たちが手を携えて活動している。近年の恒例として、デトロイト美術館で開催される「ひな祭り」イベントおよび、デトロイト日本商工会とJSDウィメンズクラブ共催による日本祭りで生け花の実演や展示を行っている。
5月8日の一般公開イベントには在デトロイト総領事ご夫妻も列席し、総領事より50周年の祝辞が贈られた。加えて、同支部が長年、いけばなという日本文化を通じてコミュニティーの交流活動に貢献してきたことを称え、総領事表彰が行われた。
続いて、この日のメインイベントとして、ノースカロライナ州から招かれた華道家元池坊の鈴木笑子教授(正教授1級)による実演に移った。鈴木教授は在住地であるノースカロライナ州ヘンダーソンビルに日本文化紹介施設 “WNC Japanese Culture Center”(WNC:Western North Carolina)を設立し、いけばなの普及伝播に精力的に努めている。穏やかな笑顔あふれる鈴木教授による実演は8種類(8瓶)におよび、ユーモラスな逸話を交えた英語の解説つきで進められ、始終和んだ雰囲気に溢れていた。池坊のいけばなの3つのスタイルである「立花(りっか)」(最も古い様式)、「生花(しょうか)」(江戸時代に成立したシンプルな様式)、そして「自由花(じゆうか)」(フリースタイル)、それぞれの特徴を分かり易く説きながら実演紹介していった。「生花」では花材の種類は3種までであることや、咲き頃の花ばかりではいけなく“過去・現在・未来”を入れる必要があることなど、西洋のフラワーアレンジメントには見られないルールや考え方を伝えた。手品のように無駄のない動きで作品を次々に完成させる様子に会場の誰もが引き込まれたように見入っていた。この日の実演では、生ける段階のみが披露され、いとも簡単そうに見受けられたが、前日にはメンバーたちが庭や花屋から大量の花材を調達し、余分な枝葉を落としたり、ワイヤーなどで形を整えたりする下ごしらえに朝から夜まで励んだとのこと。美しさを際立たせるために多大な労を惜しまない営みに感嘆させられた。会場に響きわたる絶賛の拍手とともに実演イベントは終了した。鈴木教授との歓談や質問、作品の撮影で、しばらく人々の賑わいが続いた。
次の日には支部のメンバーと応募者を対象にしたワークショップが実施され、午前中に同じ花材と形状の似た花器(花瓶)を使用しての伝統スタイルの手順の実践、そして午後には各自が好きな花材と花器を選んでのフリースタイルで生けたものを、鈴木教授が一人ひとりに丁寧な説明を添えながら手直しして回った。花材選びの前の「これもあれもはダメ。主を一つ選ぶこと。真珠とダイヤモンドのネックレスを両方をしては、どちらも生きないでしょ?」との言葉が心に残った。
「新しいアイデアを知ることができた」「指導者によってポイントがかわり視点が変わる」「先生の個性に刺激された」など、習得の喜びの声が寄せられた。
8年前にデトロイト美術館に飾られた亡き下浦教授の作品に強烈に惹かれて習い始めたという米人女性は、「いけばなには意味がある。精神性、ピースフルになれるのがいい」と、彼女にとっての魅力を語ってくれた。
鈴木教授に、いけばなの特徴や考え方を伺ったところ、「いけばなの鑑賞を通して日本人がたしなんできた文化の良さをより知ってもらえれば嬉しいです。」と思いを語ったうえで、以下のように挙げてくださった。
・いけばなは日本のものだが、何を生けても良く、トロピカルな葉などをあしらうこともある。自然界ではありえない一瓶の中で取り合わせを楽しむことができ、“出会い”の楽しみがある。
・花材の“過去・現在・未来”とは、過去:時の経過や年代を感じさせる枝ぶりなど、現在:咲きごろ、未来:つぼみなど。それらによって単に形のアレンジでは無く、自然を表現している。
・花や植物が外(自然、庭など)にある時よりきれいにすることを目指す。切り取ったからには草木の美しさをより生かすために、余分な枝葉を落とす、つまり素材の良さをより際立たせる為の取捨の作業は選択の連続で、最も良いものを見極める力が要る。
鈴木教授は優しい笑顔を浮かべながら、「いけばなは、結果よりその過程が大切で、楽しいと同時に“生き方= 生かす”修養です」と結んだ。
★Detroit chapter 85の定例会は月一回、Southfield市で開かれている。
経験不要、いつでも入会が可能とのこと。問い合わせ、入会申し込みは、
http://sites.google.com/site/ikebana85detroit/