りんご会補習授業校にて、米国スポーツ界で活躍している日本人を招いた講演会が1月の2週に亘って催された。

 同校では補習授業校主催による中高生向けのキャリア講演会を度々実施しているが、今回の講演会は同校の生徒会メンバーと理事・運営委員の発案・運営によって放課後に行っている『りんごハウス』の企画の一つ。通常は低年齢児童の遊びや勉強などの自主活動をボランティアの中高校生や保護者がサポートしている。今回はゲストスピーカーとの交渉から当日の進行まで、中高校生ボランティアが担当した。

  「外で遊ぶことができないミシガンの冬に、児童生徒たちにワクワクするイベントを」との趣旨のもと、対象を小学生中心に設定して、「夢」と「世界に挑戦する」ことの刺激を感じてもらいたいとの願いが籠められた。

   『りんごハウス特別編:冬季特別講演会』と銘打たれた講演会には、第1週には日本人唯一のNASCARドライバー尾形明紀選手、第2週には日本女子サッカー界の強豪「INAC神戸」を4冠達成に導いた石原孝尚元監督が特別講師を務めた。尾形選手は2010年夏に活動拠点をノースキャロライナに移し、昨年(2014年)秋にはナショナルシリーズ昇格を果たした。石原孝尚監督は昨年1月にアメリカ挑戦を決意し、現在は女子プロサッカーチームSky Blue FC(ニュージャージー州拠点)のコーチとして手腕を発揮している。

  フィールドは異なるものの、共に日本を飛び出しアメリカで挑戦し続けている。

NASCARドライバー 尾形明紀氏

  1月24日には、放課後の『りんごハウス』講演会に先駆けて、授業時間中に小学校高学年を対象にしたキャリア講演会が実施された。尾形選手と村井校長の対談形式で、尾形選手の少年期からのレース経歴と、プロに向けての情熱や努力が紐解かれた。小4で観たカーレースに衝撃を受け、夢中になった。14才でモトクロス(オートバイ競技)をスタート。手に入れたバイクを押して2時間程かかる練習場へ通うほど好きだったそうだ。上達するために練習を重ね学び続け、その対象がNASCARに代わっても迷いなく極め続けた。

  夢という言葉はあいまいで嫌いだと言う。いつも先に理想があった。「生活できないから諦めろといわれても、やるべき練習を続ければ、必ずプロになれると信じられた」「レースが好きでやっている。41才の今になるまで変わらない。それをし続けるためには、大変なことも苦労と思わない。乗り越えられる」と淡々と語る。そして「熱中してやり、好きだと言い続けていると、周りの人が助言したりサポートしたりしてくれる」と周囲の人々との繋がりにも言及した。親のサポートはなく、初めて手にしたバイクも近所の愛好者のお古だったという。親の金銭的支援や協力がなくとも、実現できることも示した。

  ちなみに、この日は外に本物のレースカーが展示され、多くの児童生徒に「ワクワク」が贈られた。

  放課後の講演会は幼児から大人まで幅広い聴講とあり、キャリア講演会同様に村井校長との対談形式ながらも、多数のスライドを映しながら、尾形選手の自由なトークが繰り広げられた。子どもの頃ののめり込み方や心情、周囲のサポートを具体的に語った。そして21才でアメリカを訪れNASCARの大きさを知り、その魅力にはまった話に展開した。何万人という観客。レースであると同時にショーであり、プロ意識が高いことに心が動いた。25才でプロのNASCARドライバーを目指し、その後、日米を行き来しての活動に限界を感じて36才でアメリカに拠点を移す決断をし、金銭的な苦労を経て、人脈・スポンサーを確保。5年でトップに昇りつめた。

  このように話を省略して書くと、順調な道のりであるかのようだが、強固な意志と努力の並々ならぬことは察せられる。

  質問タイムには、レースにかかる費用、スピードへの恐怖、エンジンについてなど、レースカーに対する興味の高さが分かる内容が続出。一つ一つに丁寧に説明がなされた。講演の最後、子ども達へのメッセージとして「誰でもプロになる可能性がある。今、目標が無くても、見つかったら一生懸命やることが結果に繋がる」と経験と自信に裏付けられた言葉が伝えられた。

  尾形選手のNASCARへの挑戦については、本講演会の橋渡し役でもある同校運営委員会所属の城俊之氏による寄稿『挑む』を弊紙に掲載させていただいている。(ウェブサイトにも掲載)

プロサッカーコーチ 石原孝尚氏

   1月31日の午前中には、チームを四冠という偉業に導いた石原監督の経験を元に、チームの結束、モチベーションの保ち方などを話題の軸とした保護者向けの講演会が催された。コンセプトは

“成功を目指すチームマネージメント”。

自身が監督として大切にしてきたことが、会社のリーダーや子育てをする保護者のアイデアになればとの意図が伝えられ、所々に人を伸ばしチームを強くするヒントが織り込められた内容となった。

   冒頭はモチベーションの設定について。勝ち続け、“勝っても寂しさ虚しさがあった”チームのスタッフや皆が感動するために、石原監督は四冠(プレナスなでしこリーグ、リーグカップ、皇后杯、モブキャストカップ国際女子クラブ選手権)という高い目標を敢えて掲げた。「チャレンジすると困難が増える」「夢、ロマン、不可能への挑戦が自分を成長させる」と語る。

 そして、「良い選手が揃っても強いチームになるとは限らない」と示唆。事実、石原監督退団後、INAC神戸は一転して無冠で終わった。チームビルディングの為に石原監督が取り入れた方法の一つは“リスペクト・カード”。各選手同士が好きなところや尊敬できるところを書いて伝えさせた。共に練習やゲームをしていても分からない思いが言葉になった。ベテラン選手の新人批評に対しては、新人に朝練追加や生活習慣の確立(お弁当チェックなど)など具体的な行動を課して対応。言うだけでは意味がないことを、他の例も通して強調した。また、 「自分のメンツより正解を大切に」との考えのもと、選手の意見を取り入れて監督の指示変更もあったとのこと。

  さらには、「選手に決めさせて覚悟させた。監督が決める=押し付けると、うまくいかないと責任から逃げる」「今の実力で評価しない。今できなくなくても、これからやれば良い」と人を伸ばすコツが教示された。

  講話の終盤に、四冠達成の試合前にチームが作成したモチベーションアップを意図した5分程のビデオが流された。世界のトップに立った女性たちの輝かしい姿に続き、なでしこジャパンが世界一になった瞬間の映像は、見た者を「自分もやってやろう!」と奮起させるに相違ない、製作意図を反映したものであった。「人はそんなに頑張れない。周りが支え、手助けする大切さを忘れずに」との“サポートのプロ”の言葉が会場に、そして心に響いた。

 放課後の「りんごハウス」講演会では内容を一変。見るからにサッカー好きな子供達が目を輝かせて並ぶ前で、澤選手や川澄選手など、なでしこジャパンでも大健闘し、その力が知られるプロ選手たちの活躍の裏にある努力や姿勢を具体的な話を織り交ぜて披露した。悪い言葉を仲間に言わない大切さ、「力をつける人は、素直に(人の言葉を)聞く」など、子供にストレートに届く教訓の多い内容であった。最後に、「澤選手やテニスの錦織選手が高い目標をもって世界にチャレンジしている。ここにいる皆は世界というフィールドにいる。より高めることにチャレンジして欲しい」「今できることを一生懸命がんばって」とメッセージを贈った。

 りんご会補習授業校にて、米国スポーツ界で活躍している日本人を招いた講演会が1月の2週に亘って催された。

 同校では補習授業校主催による中高生向けのキャリア講演会を度々実施しているが、今回の講演会は同校の生徒会メンバーと理事・運営委員の発案・運営によって放課後に行っている『りんごハウス』の企画の一つ。通常は低年齢児童の遊びや勉強などの自主活動をボランティアの中高校生や保護者がサポートしている。今回はゲストスピーカーとの交渉から当日の進行まで、中高校生ボランティアが担当した。

  「外で遊ぶことができないミシガンの冬に、児童生徒たちにワクワクするイベントを」との趣旨のもと、対象を小学生中心に設定して、「夢」と「世界に挑戦する」ことの刺激を感じてもらいたいとの願いが籠められた。

   『りんごハウス特別編:冬季特別講演会』と銘打たれた講演会には、第1週には日本人唯一のNASCARドライバー尾形明紀選手、第2週には日本女子サッカー界の強豪「INAC神戸」を4冠達成に導いた石原孝尚元監督が特別講師を務めた。尾形選手は2010年夏に活動拠点をノースキャロライナに移し、昨年(2014年)秋にはナショナルシリーズ昇格を果たした。石原孝尚監督は昨年1月にアメリカ挑戦を決意し、現在は女子プロサッカーチームSky Blue FC(ニュージャージー州拠点)のコーチとして手腕を発揮している。

  フィールドは異なるものの、共に日本を飛び出しアメリカで挑戦し続けている。

NASCARドライバー 尾形明紀氏

  1月24日には、放課後の『りんごハウス』講演会に先駆けて、授業時間中に小学校高学年を対象にしたキャリア講演会が実施された。尾形選手と村井校長の対談形式で、尾形選手の少年期からのレース経歴と、プロに向けての情熱や努力が紐解かれた。小4で観たカーレースに衝撃を受け、夢中になった。14才でモトクロス(オートバイ競技)をスタート。手に入れたバイクを押して2時間程かかる練習場へ通うほど好きだったそうだ。上達するために練習を重ね学び続け、その対象がNASCARに代わっても迷いなく極め続けた。

  夢という言葉はあいまいで嫌いだと言う。いつも先に理想があった。「生活できないから諦めろといわれても、やるべき練習を続ければ、必ずプロになれると信じられた」「レースが好きでやっている。41才の今になるまで変わらない。それをし続けるためには、大変なことも苦労と思わない。乗り越えられる」と淡々と語る。そして「熱中してやり、好きだと言い続けていると、周りの人が助言したりサポートしたりしてくれる」と周囲の人々との繋がりにも言及した。親のサポートはなく、初めて手にしたバイクも近所の愛好者のお古だったという。親の金銭的支援や協力がなくとも、実現できることも示した。

  ちなみに、この日は外に本物のレースカーが展示され、多くの児童生徒に「ワクワク」が贈られた。

  放課後の講演会は幼児から大人まで幅広い聴講とあり、キャリア講演会同様に村井校長との対談形式ながらも、多数のスライドを映しながら、尾形選手の自由なトークが繰り広げられた。子どもの頃ののめり込み方や心情、周囲のサポートを具体的に語った。そして21才でアメリカを訪れNASCARの大きさを知り、その魅力にはまった話に展開した。何万人という観客。レースであると同時にショーであり、プロ意識が高いことに心が動いた。25才でプロのNASCARドライバーを目指し、その後、日米を行き来しての活動に限界を感じて36才でアメリカに拠点を移す決断をし、金銭的な苦労を経て、人脈・スポンサーを確保。5年でトップに昇りつめた。

  このように話を省略して書くと、順調な道のりであるかのようだが、強固な意志と努力の並々ならぬことは察せられる。

  質問タイムには、レースにかかる費用、スピードへの恐怖、エンジンについてなど、レースカーに対する興味の高さが分かる内容が続出。一つ一つに丁寧に説明がなされた。講演の最後、子ども達へのメッセージとして「誰でもプロになる可能性がある。今、目標が無くても、見つかったら一生懸命やることが結果に繋がる」と経験と自信に裏付けられた言葉が伝えられた。

  尾形選手のNASCARへの挑戦については、本講演会の橋渡し役でもある同校運営委員会所属の城俊之氏による寄稿『挑む』を弊紙に掲載させていただいている。(ウェブサイトにも掲載)

プロサッカーコーチ 石原孝尚氏

   1月31日の午前中には、チームを四冠という偉業に導いた石原監督の経験を元に、チームの結束、モチベーションの保ち方などを話題の軸とした保護者向けの講演会が催された。コンセプトは

“成功を目指すチームマネージメント”。

自身が監督として大切にしてきたことが、会社のリーダーや子育てをする保護者のアイデアになればとの意図が伝えられ、所々に人を伸ばしチームを強くするヒントが織り込められた内容となった。

   冒頭はモチベーションの設定について。勝ち続け、“勝っても寂しさ虚しさがあった”チームのスタッフや皆が感動するために、石原監督は四冠(プレナスなでしこリーグ、リーグカップ、皇后杯、モブキャストカップ国際女子クラブ選手権)という高い目標を敢えて掲げた。「チャレンジすると困難が増える」「夢、ロマン、不可能への挑戦が自分を成長させる」と語る。

 そして、「良い選手が揃っても強いチームになるとは限らない」と示唆。事実、石原監督退団後、INAC神戸は一転して無冠で終わった。チームビルディングの為に石原監督が取り入れた方法の一つは“リスペクト・カード”。各選手同士が好きなところや尊敬できるところを書いて伝えさせた。共に練習やゲームをしていても分からない思いが言葉になった。ベテラン選手の新人批評に対しては、新人に朝練追加や生活習慣の確立(お弁当チェックなど)など具体的な行動を課して対応。言うだけでは意味がないことを、他の例も通して強調した。また、 「自分のメンツより正解を大切に」との考えのもと、選手の意見を取り入れて監督の指示変更もあったとのこと。

  さらには、「選手に決めさせて覚悟させた。監督が決める=押し付けると、うまくいかないと責任から逃げる」「今の実力で評価しない。今できなくなくても、これからやれば良い」と人を伸ばすコツが教示された。

  講話の終盤に、四冠達成の試合前にチームが作成したモチベーションアップを意図した5分程のビデオが流された。世界のトップに立った女性たちの輝かしい姿に続き、なでしこジャパンが世界一になった瞬間の映像は、見た者を「自分もやってやろう!」と奮起させるに相違ない、製作意図を反映したものであった。「人はそんなに頑張れない。周りが支え、手助けする大切さを忘れずに」との“サポートのプロ”の言葉が会場に、そして心に響いた。

 放課後の「りんごハウス」講演会では内容を一変。見るからにサッカー好きな子供達が目を輝かせて並ぶ前で、澤選手や川澄選手など、なでしこジャパンでも大健闘し、その力が知られるプロ選手たちの活躍の裏にある努力や姿勢を具体的な話を織り交ぜて披露した。悪い言葉を仲間に言わない大切さ、「力をつける人は、素直に(人の言葉を)聞く」など、子供にストレートに届く教訓の多い内容であった。最後に、「澤選手やテニスの錦織選手が高い目標をもって世界にチャレンジしている。ここにいる皆は世界というフィールドにいる。より高めることにチャレンジして欲しい」「今できることを一生懸命がんばって」とメッセージを贈った。

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