<!--:en-->世界に広がる百人一首〜ミシガン大学キャンパスで かるたイベント<!--:--><!--:ja-->世界に広がる百人一首〜ミシガン大学キャンパスで かるたイベント<!--:--> 5

「いにしえの~」。和歌を読む朗々とした声が秋深いミシガン大学のキャンパスの一室に響いた。

  去る11月9日、ミシガン大学“競技カルタ部”とオハイオ州のオーバリン大学(Oberlin College) “East Asian Game Club”の合同かるたセミナーが開催された。どちらも学生による同好会である。イベントには、競技かるたの海外普及への貢献で知られるストーン睦美氏(ヴァージニア州在住)が招かれ、前半は、小倉百人一首についての歴史などに関するセミナーが行われ、後半は、「お坊さんめくり」にはじまり、参加者の希望や経験に合わせて、1対1の「競技かるた」並びに数人での「散し取り」が繰り広げられた。

   小倉百人一首(以下、百人一首)は、国語の授業やお正月の遊びとして馴染みのある読者も多いかと思うが、札は和歌(短歌)一首全部を書いた読み札と下の句だけの取り札各100枚に分れている。取り札が下の句であるため、覚えていないと上の句が読まれている間は手が出せない点が特徴。日本人にとっても難易度の高いカードゲームであるが、それが海外で外国人に親しまれていることに驚く。百人一首を題材にした人気漫画・アニメ「ちはやふる」の影響も大きいという話である。

   この日のイベントには一般参加も可能で、情報を耳にしたアメリカ人も足を運び、この繊細かつ華やかな絵柄のカードを使用するゲームのユニークさと遊び方に触れた。イベント案内には「日本語の知識は不要」と記載されており、日本語知識のない来場者も「お坊さんめくり」を楽しんだが、後半に行われた実際のゲームは、さすがに平仮名を判別できない人には無理。1対1の競技かるたには腕に覚えのある部員のみが挑戦、散し取りには両校の部員たち数名に加えて当地在住の日本人女性が参加し、ストーン氏が読み手を務めて同時に進行された。ハイライトともいえる1対1の競技かるたは、本来は両陣地に25枚ずつ計50枚で行われるところを今回は時間を短縮するために10枚ずつとした。勝ち抜き戦の最終対決は両校の会長同士が手合せとなり、この日はミシガン大学のエリックさんに軍配があがった。前日には、クリーブランドの西にあるOberlin Collegeのキャンパスで同様のプログラムが組まれ、この日の大会ではホームチームEast Asian Game Clubの会長であるヘンリーさんが優勝を収めたとのこと。East Asian Game Clubは百人一首に限らず花札や麻雀なども親しむクラブであり、ミシガン大学のエリックさんが百首をほぼ暗記している一方で、ヘンリーさんはまだ半分ほどの習得段階でありながら、試合は1対1の勝敗となったことも興味深い。記憶している札数の多少にかかわらず、自分の陣(自陣)の札の並べ方や、敵陣の札を取った時に自陣から敵陣に送る札の選び方など、つまりは戦略によって、優位に立つこともできる。そこが面白さだといえる。短歌を覚える長期メモリー、配置を覚える短期メモリー、そして瞬発力などスポーツ的要素も総動員される。ちなみに、有効な脳トレ手段として、日本では高齢者ケアの分野でも注目されているという。

   セミナーとかるた大会の進行役を務めたストーン睦美氏は、全日本かるた協会所属のA級登録選手(六段)という実力者。米国人であるご主人に伴って世界を転々としながら、ワールドワイドな普及を目指して活動している。これまで、英国、カザフスタン、タイ、中国などで暮らし、いずれの地でも競技かるたの実演やレクチャーを行い、普及に努めてきた。対戦相手が欲しいためでもあった・・・と笑いながら話すストーン氏だが、学生たちがプレーする姿を嬉しそうに見るまなざしが暖かく、百人一首を愛してやまないことが窺えた。かるた取りゲームの間に、取る工夫や札の覚え方などのアドバイスも加えていた。

  会場には、ストーン氏所蔵による歴史的価値のある古い百人一首や、かるたを題材にした漫画など百点を超す展示品が所狭しと並び、雅な世界を伝えていた。また、この日の競技かるたは本物の畳の上で行われたが、これはオーバリン大学の学生が地元の陶芸家である黒田真理氏から借用して運んできたという。ニューヨークの国際交流基金がスポンサーになり、ストーン氏の招へいが実現したが、その申請やストーン氏の送迎等も学生たちが手配した。自分たちで競技を楽しむだけでなく、普及にも努めようとする思いと行動力に頭が下がった。

   ミシガン大学競技カルタ部は大学のキャンパスで毎週1回集まって活動しており、現在は学生5人だが、学生以外の参加もOK。「参加者が増えると嬉しい」と、この部を立ち上げ、会長を務めているエリックさんは、会が継続成長することを願っている。活動は毎週土曜日の2時から4時。見学も大歓迎とのこと。

  連絡先:ehaengel@umichi.edu

「いにしえの~」。和歌を読む朗々とした声が秋深いミシガン大学のキャンパスの一室に響いた。

  去る11月9日、ミシガン大学“競技カルタ部”とオハイオ州のオーバリン大学(Oberlin College) “East Asian Game Club”の合同かるたセミナーが開催された。どちらも学生による同好会である。イベントには、競技かるたの海外普及への貢献で知られるストーン睦美氏(ヴァージニア州在住)が招かれ、前半は、小倉百人一首についての歴史などに関するセミナーが行われ、後半は、「お坊さんめくり」にはじまり、参加者の希望や経験に合わせて、1対1の「競技かるた」並びに数人での「散し取り」が繰り広げられた。

   小倉百人一首(以下、百人一首)は、国語の授業やお正月の遊びとして馴染みのある読者も多いかと思うが、札は和歌(短歌)一首全部を書いた読み札と下の句だけの取り札各100枚に分れている。取り札が下の句であるため、覚えていないと上の句が読まれている間は手が出せない点が特徴。日本人にとっても難易度の高いカードゲームであるが、それが海外で外国人に親しまれていることに驚く。百人一首を題材にした人気漫画・アニメ「ちはやふる」の影響も大きいという話である。

   この日のイベントには一般参加も可能で、情報を耳にしたアメリカ人も足を運び、この繊細かつ華やかな絵柄のカードを使用するゲームのユニークさと遊び方に触れた。イベント案内には「日本語の知識は不要」と記載されており、日本語知識のない来場者も「お坊さんめくり」を楽しんだが、後半に行われた実際のゲームは、さすがに平仮名を判別できない人には無理。1対1の競技かるたには腕に覚えのある部員のみが挑戦、散し取りには両校の部員たち数名に加えて当地在住の日本人女性が参加し、ストーン氏が読み手を務めて同時に進行された。ハイライトともいえる1対1の競技かるたは、本来は両陣地に25枚ずつ計50枚で行われるところを今回は時間を短縮するために10枚ずつとした。勝ち抜き戦の最終対決は両校の会長同士が手合せとなり、この日はミシガン大学のエリックさんに軍配があがった。前日には、クリーブランドの西にあるOberlin Collegeのキャンパスで同様のプログラムが組まれ、この日の大会ではホームチームEast Asian Game Clubの会長であるヘンリーさんが優勝を収めたとのこと。East Asian Game Clubは百人一首に限らず花札や麻雀なども親しむクラブであり、ミシガン大学のエリックさんが百首をほぼ暗記している一方で、ヘンリーさんはまだ半分ほどの習得段階でありながら、試合は1対1の勝敗となったことも興味深い。記憶している札数の多少にかかわらず、自分の陣(自陣)の札の並べ方や、敵陣の札を取った時に自陣から敵陣に送る札の選び方など、つまりは戦略によって、優位に立つこともできる。そこが面白さだといえる。短歌を覚える長期メモリー、配置を覚える短期メモリー、そして瞬発力などスポーツ的要素も総動員される。ちなみに、有効な脳トレ手段として、日本では高齢者ケアの分野でも注目されているという。

   セミナーとかるた大会の進行役を務めたストーン睦美氏は、全日本かるた協会所属のA級登録選手(六段)という実力者。米国人であるご主人に伴って世界を転々としながら、ワールドワイドな普及を目指して活動している。これまで、英国、カザフスタン、タイ、中国などで暮らし、いずれの地でも競技かるたの実演やレクチャーを行い、普及に努めてきた。対戦相手が欲しいためでもあった・・・と笑いながら話すストーン氏だが、学生たちがプレーする姿を嬉しそうに見るまなざしが暖かく、百人一首を愛してやまないことが窺えた。かるた取りゲームの間に、取る工夫や札の覚え方などのアドバイスも加えていた。

  会場には、ストーン氏所蔵による歴史的価値のある古い百人一首や、かるたを題材にした漫画など百点を超す展示品が所狭しと並び、雅な世界を伝えていた。また、この日の競技かるたは本物の畳の上で行われたが、これはオーバリン大学の学生が地元の陶芸家である黒田真理氏から借用して運んできたという。ニューヨークの国際交流基金がスポンサーになり、ストーン氏の招へいが実現したが、その申請やストーン氏の送迎等も学生たちが手配した。自分たちで競技を楽しむだけでなく、普及にも努めようとする思いと行動力に頭が下がった。

   ミシガン大学競技カルタ部は大学のキャンパスで毎週1回集まって活動しており、現在は学生5人だが、学生以外の参加もOK。「参加者が増えると嬉しい」と、この部を立ち上げ、会長を務めているエリックさんは、会が継続成長することを願っている。活動は毎週土曜日の2時から4時。見学も大歓迎とのこと。

  連絡先:ehaengel@umichi.edu

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