~大学入試センター試験の廃止と新テスト導入、大学個別試験の変更

米日教育交流協議会・代表  丹羽 筆人

  昨年12月に中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)が大学入試改革について答申しました。大学入試センター試験を廃止し、それに代わるテストを導入すること、大学が個別に実施する入学試験の選考方法を変更することが盛り込まれており、早ければ、現在の高校2年生の受験する2016年度入試から変化が見られそうです。ここでは、大学入試改革案の概要と現行の入試との違い、改革後の入試が高校の教育に及ぼす影響をご説明します。

大学入試センター試験廃止後のテストは2種類

  大学入試センター試験は、1979年から実施されていた共通一次試験に代えて

1990年に導入され、年1回(1月中旬)、高校3年生と高校を卒業した受験生を対象に実施されています。共通一次試験は、国公立大のみの利用でしたが、大学入試センター試験では、私立大も利用できるようになりました。この試験では、国語、数学、外国語、地理歴史、公民、理科の6教科が出題され、各大学が入学試験の合否判定に利用する科目を指定していますが、国公立大では多くが5~6教科を課し、一次試験として利用しています。一方、私立大では一次試験として利用してはいませんが、センター試験利用型入試として2~3教科を課し、定員の一部の合否判定に利用するのが目立ちます。また、出題形式は選択式や空欄補充など客観式で、解答方法は数字や記号を塗りつぶすマークセンス方式です。テストの結果は点数化され、全国の受験生の中での位置づけを把握できます。客観的なデータで合否が判定されるのですが、一方で、大学の序列が浮き彫りになるという点や、1回だけのテストで受験生学力を数値化するのはよくないのではという意見もあります。また、標準的な問題が出題されるので、難関大を目指す受験生の間では差がつかず、かえって不公平だとも言われています。

  大学入試センター試験に代わるテストは、2種類の導入が検討されています。一つは、高校教育の基礎的学習の達成度を把握することを目的とする「高校基礎学力テスト(仮称)」で、2019年から実施が予定されています。高校2・3年生の希望者を対象に年に2回程度(夏~秋)に実施されます。出題教科は国語、数学、外国語、地理歴史、公民、理科の6教科で、外国語の英語はTOEFLなど外部試験を活用することが検討されています。もう一つは大学教育を受けるために必要な能力を把握することを目的とする「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」で、2020年からの実施が予定されています。大学受験生を対象に年に複数回実施されます。高校基礎学力テストのような教科型に加え、複数の教科を組み合わせた合教科型、教科の枠を超えた総合型も導入し、将来的には教科型は廃止されます。また、このテストでも外国語の英語はTOEFLなど外部試験を活用することが検討されています。

大学の個別試験は、「多面的な判定」に転換

  現行の大学の個別試験は、教科型の試験が一般的で、文科系学部では、国語、外国語が必須、社会(地理歴史・公民)または数学の3教科、理科系学部では数学、理科、外国語の3教科の出題が目立ちます。高校での成績や活動の記録が記載された調査書を提出しますが、合否判定では学力テストの成績が重視されています。つまり、大学に合格するためには、教科の学力テストにて高得点を上げることが重要なのです。また、大学の個別試験は、大学入試センター試験と同様に、受験機会は1回のみであり、入試本番でのテストの出来不出来が合否を左右するのが現状です。

  一方、今回の中央教育審議会の答申では、各大学で実施されている個別試験は、受験生の「主体性・多様性・協調性」を重視して選抜する方式に転換することを提言しています。具体的には、面接、小論文、集団討論を実施し、部活動や課外活動の実績なども加え、高校時代にどのような経験をしたかを重視する「多面的な判定」とするべきだとしています。また、学力テストをする場合には記述式・論述式で出題し、客観式の問題は避けることや、大学入試センター試験に代わるテストの成績の活用も勧めています。一方、AO・推薦入試など学力を問わない入学者選考をする場合にも、「高校基礎学力テスト(仮称)」の成績を活用することを求めています。

変わる大学受験対策と高校の教育

  このように、中央教育審議会が答申した大学入試改革案が実現すると、大学入試は現行のものとは大きく変わります。このことによって、大学受験対策が様変わりするのはもちろんですが、高校での教育も姿を変えることが予想されます。

  各大学は、大学入試センター試験に代わる二つのテストのいずれかを入学者の選考に利用することが求められていますので、これらのテストはすべての大学の一次試験という位置づけとなります。多くの大学では、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」を利用することが予想されます。つまり、教科型の学力テストで高得点を上げるための学習では対応できません。また、先述した通り、大学の個別試験も「多面的な判定」となりますので、教科の枠を超えた総合的な学力、そして、論述力やプレゼンテーション能力の向上が必要ですし、高校在学中に部活動や課外活動で実績を上げることも大切です。

  ただし、この大学入試改革は、大学側が受け入れるのか、また、受験生や保護者の賛同を得られるのかどうかなどの問題も抱えています。しかし、実現した時には、米国の学校で学んだ経験のある帰国生にとっては有利であると明言できます。それは、この改革が米国の大学入試の仕組みを参考にしているからです。英語のテストがTOEFLですし、集団討論(ディベート)にも慣れています。海外で学ぶことは大変ですが、メリットもたくさんあるはずなので、ぜひ頑張ってほしいと思います。

執筆者のプロフィール

河合塾で十数年間にわたり、大学入試データ分析、大学情報の収集・提供、大学入試情報誌「栄冠めざして」などの編集に携わるとともに、大学受験科クラス担任として多くの塾生を大学合格に導いた。また、全国の高等学校での進学講演も多数行った。一方、米国・英国大学進学や海外サマーセミナーなどの国際教育事業も担当。1999年に米国移住後は、CA、NJ、NY、MI州の補習校・学習塾講師を務めた。2006年に「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、日本での日本語・日本文化体験学習プログラム「サマー・キャンプ in ぎふ」など、国際的な交流活動を実践。また、帰国生入試や帰国後の学校選びのアドバイスも行っており、北米各地で進学講演も行っている。河合塾海外帰国生コース北米事務所アドバイザー、文京学院大学女子中学校・高等学校北米事務所アドバイザー、名古屋国際中学校・高等学校アドミッションオフィサー北米地域担当、デトロイトりんご会補習授業校講師(教務主任兼進路指導担当)

◆米日教育交流協議会(UJEEC)

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