先月末日本の夏の風物詩の一つである夏の甲子園、全国高校野球夏季大会が終了しました。大阪桐蔭が決勝で三重を破り2年ぶり4度目の優勝。前評判で優勝候補と言われながら、トーナメントでは決して順風満帆な経過ではなく、6試合中4試合が先行されての逆転勝ち。特に初戦と決勝戦は1点差で薄氷の勝利。同校の先輩OB 達からは『史上最弱』とも言われて喝を入れられていたようですが、それらのプレッシャーを跳ね返しての優勝は見事でした。おめでとう!

また、今大会は毎年初戦や早期敗退が多かった北陸勢、東北勢も初戦突破して2回戦、3回戦に駒を進めて元気なところを見せてくれたのも印象的でした。

一方、当地ミシガンでは9月1日のLabor Dayの祝日を最後に学校の夏休みも終わって新学期が始まり、日一日と短くなる日照時間とともに夏の終わりが近付いて来ました。ニューヨークで開催中のU.S.オープンテニスも今年は誰が優勝するか?

本号が発行される頃には結果が出ている見込みですが、個人的には男子シングルスはロジャー・フェデラーに勝たせてあげたいですね。引退する前にメジャー大会で

もう一つか二つタイトルを取らせてあげたい。出来れば、17歳の時に初優勝した思い出のウィンブルドンの芝コートで最後の優勝をして引退に花を添えるのが理想的。

彼の華やかなプレースタイルとテニス歴にはそれが一番似合いますね。さて、結果は如何に?

今回は『正直=倫理的?』というテーマです。

何の事?当たり前じゃあ、と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、その話を少々してみたいと思います。

かなり古い話になりますが、20年以上も前にミシガン州内南西部のバトル・クリークという小さな町に米国企業との合弁会社設立準備のためにトロイにあった元勤務先のデトロイト事務所から約半年の間毎週出張ベースで工場の建設現場、その近くの間借りの仮事務所、グランド・ラピッズ市内の合弁相手企業に通い詰めて用地の購入取得、工場建設の監視・日程管理、初期幹部社員の採用面接、合弁契約、会社設立定款、会社規程などの打ち合わせ・交渉・作成、日本側親会社との連絡などに従事しておりました。

その時の作業の一つに合弁相手企業が自社でも採用していたバリュー/ビジョン/ミッション・ステートメント(企業の価値観・行動規範/到達すべき・あるべき姿/存在意義・使命。日本では企業理念あるいは経営理念とも呼ばれる)を新たな合弁会社にも適用しようという話になり、私にとっては馴染みの無い初めての経験でしたが、相手側で当時使っていたものを叩き台として毎回1~2時間、時間を置いてまた別の日に数時間と先方の社長や副社長も交えて真剣に発案、見直し、討議、意見交換し、『顧客第一』、『社員は最も重要な資産』など日本的な価値観の要素も加味して作り上げたものでした。

その際に価値観・行動規範の一つにHonest and Ethical(正直かつ倫理的であること)というのが候補で上がり、参加メンバーの一人から「正直ならば倫理的だろうから『正直であること』だけでいいのではないか?」との発言に対し、別の一人から

「必ずしも正直=倫理的ではない」と応答があり、続けて「例えば、殺人犯が『私は人を殺しました』と告白すれば正直ではあるが、犯した殺人は決して倫理的ではない」と追加発言があり、全員納得したものです。

数年前に米国ウォールストリートが発端となり世界中に負の連鎖をもたらした住宅バブル崩壊、金融破綻の荒波と前後して数多くの個人投資家まで巻き込んだポンジー・スキーム(いわゆるネズミ講)問題や大手銀行による一般消費者への住宅関連金融商品などの不正勧誘・売り込み、大手企業の経営トップによる不正会計・税務処理などが立て続けに表面化したことがありました。それらの事件を機に金融商品取引の規制強化や管理・報告義務の追加などが連邦政府や証券取引委員会から通達され、関係企業・組織・団体などに法令・規定・規程の遵守、倫理的・社会貢献的企業活動、内部統制、トランスペアレンシー(腐敗・汚職防止のための企業の透明性) 確保、株主や直接・間接的利害関係者への説明責任などの要求が米国内に留まらず、欧州や日本を含むアジア諸国でも高まって来ました。特にそれ以前は漏れていた会社のオーナーや最高経営責任者自身が不正や汚職行為をした場合に監視、管理統制、是正するシステムがなかった事が問題視され、その防止策と対策義務が追加されたのは周知の事実です。

米国でも日本でも何か不正事件、汚職事件、不祥事などがある度にメディア報道で取り上げられますが、米国では渦中の限りなくクロに近い灰色の当事者でも絶対に公然では謝らない一方、日本では本人自身ではなくその上司、管理監督責任者が記者会見にて一列に並び深々と頭を下げて詫びる光景を何度も目にしました。はたまた逆に、追求された直接の当事者本人が開き直って「だから何だ!?そうなったのはあいつの所為だ!」と逆切れして噛み付く場面も多い気がします。日米文化・習慣の違いもありますが、正直に告白して謝れば倫理責任が免除される訳ではないので、それを見ながら上述の『正直=倫理的?』の話を思い出した次第で、今回のテーマとしてみました。

最後に誤解のなきように申し上げますが、もちろん正直であることは大切な事。人生における必要条件ですが、倫理的であるための十分条件ではないということですね。倫理的に正しい「正直者がバカを見る」事態だけは避けたいですが・・・

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

先月末日本の夏の風物詩の一つである夏の甲子園、全国高校野球夏季大会が終了しました。大阪桐蔭が決勝で三重を破り2年ぶり4度目の優勝。前評判で優勝候補と言われながら、トーナメントでは決して順風満帆な経過ではなく、6試合中4試合が先行されての逆転勝ち。特に初戦と決勝戦は1点差で薄氷の勝利。同校の先輩OB 達からは『史上最弱』とも言われて喝を入れられていたようですが、それらのプレッシャーを跳ね返しての優勝は見事でした。おめでとう!

また、今大会は毎年初戦や早期敗退が多かった北陸勢、東北勢も初戦突破して2回戦、3回戦に駒を進めて元気なところを見せてくれたのも印象的でした。

一方、当地ミシガンでは9月1日のLabor Dayの祝日を最後に学校の夏休みも終わって新学期が始まり、日一日と短くなる日照時間とともに夏の終わりが近付いて来ました。ニューヨークで開催中のU.S.オープンテニスも今年は誰が優勝するか?

本号が発行される頃には結果が出ている見込みですが、個人的には男子シングルスはロジャー・フェデラーに勝たせてあげたいですね。引退する前にメジャー大会で

もう一つか二つタイトルを取らせてあげたい。出来れば、17歳の時に初優勝した思い出のウィンブルドンの芝コートで最後の優勝をして引退に花を添えるのが理想的。

彼の華やかなプレースタイルとテニス歴にはそれが一番似合いますね。さて、結果は如何に?

今回は『正直=倫理的?』というテーマです。

何の事?当たり前じゃあ、と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、その話を少々してみたいと思います。

かなり古い話になりますが、20年以上も前にミシガン州内南西部のバトル・クリークという小さな町に米国企業との合弁会社設立準備のためにトロイにあった元勤務先のデトロイト事務所から約半年の間毎週出張ベースで工場の建設現場、その近くの間借りの仮事務所、グランド・ラピッズ市内の合弁相手企業に通い詰めて用地の購入取得、工場建設の監視・日程管理、初期幹部社員の採用面接、合弁契約、会社設立定款、会社規程などの打ち合わせ・交渉・作成、日本側親会社との連絡などに従事しておりました。

その時の作業の一つに合弁相手企業が自社でも採用していたバリュー/ビジョン/ミッション・ステートメント(企業の価値観・行動規範/到達すべき・あるべき姿/存在意義・使命。日本では企業理念あるいは経営理念とも呼ばれる)を新たな合弁会社にも適用しようという話になり、私にとっては馴染みの無い初めての経験でしたが、相手側で当時使っていたものを叩き台として毎回1~2時間、時間を置いてまた別の日に数時間と先方の社長や副社長も交えて真剣に発案、見直し、討議、意見交換し、『顧客第一』、『社員は最も重要な資産』など日本的な価値観の要素も加味して作り上げたものでした。

その際に価値観・行動規範の一つにHonest and Ethical(正直かつ倫理的であること)というのが候補で上がり、参加メンバーの一人から「正直ならば倫理的だろうから『正直であること』だけでいいのではないか?」との発言に対し、別の一人から

「必ずしも正直=倫理的ではない」と応答があり、続けて「例えば、殺人犯が『私は人を殺しました』と告白すれば正直ではあるが、犯した殺人は決して倫理的ではない」と追加発言があり、全員納得したものです。

数年前に米国ウォールストリートが発端となり世界中に負の連鎖をもたらした住宅バブル崩壊、金融破綻の荒波と前後して数多くの個人投資家まで巻き込んだポンジー・スキーム(いわゆるネズミ講)問題や大手銀行による一般消費者への住宅関連金融商品などの不正勧誘・売り込み、大手企業の経営トップによる不正会計・税務処理などが立て続けに表面化したことがありました。それらの事件を機に金融商品取引の規制強化や管理・報告義務の追加などが連邦政府や証券取引委員会から通達され、関係企業・組織・団体などに法令・規定・規程の遵守、倫理的・社会貢献的企業活動、内部統制、トランスペアレンシー(腐敗・汚職防止のための企業の透明性) 確保、株主や直接・間接的利害関係者への説明責任などの要求が米国内に留まらず、欧州や日本を含むアジア諸国でも高まって来ました。特にそれ以前は漏れていた会社のオーナーや最高経営責任者自身が不正や汚職行為をした場合に監視、管理統制、是正するシステムがなかった事が問題視され、その防止策と対策義務が追加されたのは周知の事実です。

米国でも日本でも何か不正事件、汚職事件、不祥事などがある度にメディア報道で取り上げられますが、米国では渦中の限りなくクロに近い灰色の当事者でも絶対に公然では謝らない一方、日本では本人自身ではなくその上司、管理監督責任者が記者会見にて一列に並び深々と頭を下げて詫びる光景を何度も目にしました。はたまた逆に、追求された直接の当事者本人が開き直って「だから何だ!?そうなったのはあいつの所為だ!」と逆切れして噛み付く場面も多い気がします。日米文化・習慣の違いもありますが、正直に告白して謝れば倫理責任が免除される訳ではないので、それを見ながら上述の『正直=倫理的?』の話を思い出した次第で、今回のテーマとしてみました。

最後に誤解のなきように申し上げますが、もちろん正直であることは大切な事。人生における必要条件ですが、倫理的であるための十分条件ではないということですね。倫理的に正しい「正直者がバカを見る」事態だけは避けたいですが・・・

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

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