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ミシガン州在住 サライン須美子さん インタビュー

  アメリカで大ヒットした絵本『アメリカの数のえほん』(作:デビット・M.シュワルツ)の邦訳を手がけた女性がここミシガンに在住している。

  『アメリカの数のえほん』は『100万ってどれくらい?』『100万ドルあったなら』『100万をはかってみよう』の全3巻からなる絵本集で、Amazon(オンラインショッピング)では‘子ども向けの算数啓発書’と分類されているが、大人も驚きをもって楽しめる本。日本語版の監修を務めた秋山仁先生が絶賛しており、『100万ってどれくらい?』は小学校3年生の国語教科書(三省堂、2011年~2015年)で紹介されている。全国学校図書館協議会選定図書ならびに日本図書館協会選定図書にも選定されている。

  サライン須美子さんは翻訳専門家ではない。なぜ無謀ともいえる挑戦をし、成し遂げることができたのか、お話を伺った。

Q:なぜ翻訳しようと?

「子供の頃、算数が苦手でした。この本に出合っていたら興味を持っていただろうに・・・。日本の子供たちに読んで欲しいという想いが翻訳したいという気持ちになりました。」

Q:日本語の本があったら良いのにと思っても、翻訳家でない人が手がけようとは普通は考えないと思いますが・・・。

☆ ☆ ☆

  サライン須美子さんは地元アナーバー市の公立学校でELL(English Language Learnerの指導者として長年勤務しており、2004年、その一校で「アメリカの数のえほん」の作者デビット・M.シュワルツ氏を招いた講演会が催された折に日本人生徒への通訳のために参加した。話を聴き、本を知り、「こんな本に子供の頃に出合ったら算数が嫌いにならないで興味を持つに違いない」と思った。シュワルツ氏に尋ねたところ、フランス語、スペイン語、ドイツ語はあるが、日本語版は未だ無いとのこと。「日本の子供たちにも算数の楽しさを知ってもらいたい」と翻訳の意欲を駆り立てられた。しかし翻訳本についてはシュワルツ氏に決断権は無く、「自分のエージェントとして交渉したら良い」と提案してくれたため、決意を固めた。

   即刻はりきって翻訳に取り組み、翻訳文を添えた本を仕上げて日本の名だたる出版社に送ったが、出版社には企画部があり自社で翻訳本の選択をして翻訳家の手配も行うため、持ち込みは受け付けてもらえず諦めるしかなかった。無念にも翻訳本は2年間余り、御蔵入りとなってしまった。

  突然転機が訪れた。 須美子さんが医療通訳の仕事を請け負ったミシガン大学のイベントで通訳を務めた医療書の翻訳家を自宅に泊めたことがきっかけであった。その翻訳家は「秋山仁氏の推薦状をもらったら」と提案。ご存知の方も多いと思うが、秋山氏は、子供から大学受験生そして一般向けに算数/数学の啓発書や攻略本を多数執筆し、テレビ講座にも出演する著名な数学者である。この案は無謀かに思えたが、サライン家の親しい隣人である日本人ミシガン大学教授がかつて秋山氏の教え子であり、その縁と、その教授による“ミシガン大学の封筒を使う”アイデアが効を奏して、秋山氏の了解を得ることができた。そして出版社は、秋山氏が監修を務めることを条件に積極的に出版を進め、2007年には刊行が実現。その後、冒頭に記したように、国語の認定教科書でも取り上げられるほどの地位を獲得するまでになった。

  転機が訪れてからの進展スピードをみるとトントン拍子であったかのようであるが、訳に関しては一度ではOKが出ず、秋山氏から厳しい指摘も受け、推敲を重ねて再提出したという苦い経験もしたそうである。

  エレメンタリースクールを中心にバイリンガルテューターなどをした経験が言葉の選択に大いに生きたが、もとより苦手な算数の理論については、エンジニアである夫に教えを請い協力を得たという。

  「タイミングや人との繋がりが不思議なくらいぴったりと合っていたのです」と須美子さんは感慨をこめて話す。とはいえ、機会を得られるような幅広い活動をしていたのも、それを生かしたのも須美子さん自身であり、人脈を築いてきたのも彼女である。

  そもそも、経験の無い翻訳や、資格認定が厳しい医療通訳に、人生の半ば過ぎといえる年齢になって挑むエネルギーが何故生まれるのか。「原動力は?」と尋ねたところ、須美子さんは「子供のころ、勉強が苦手で苛られていました。それを打ち破りたかったんです。」と朗らかに答えた。烙印に押しつぶされず、逆にそれをバネにしてきたのだ。「日本の子供たちに読ませてあげたい」という翻訳動機に、改めて合点した。

  それまでの経験や生き様が実を結んだ業績といえる。「人生に無駄なことは何もない」という言葉があるが、それを実証するストーリーであった。

  「『アメリカの数のえほん』は本当に優れた本です。『100万をはかろう』は、日本でも親御さんたちに好評でした。大人の方には本文でなく後書きを是非読んで頂きたいと思います。本文をより細かく説明しているので、面白いはずです。アメリカに住んでいる方にはとても興味をそそる絵本だと思います。」と推奨。そして「楽しく学んで欲しい」と願いをつぶやいた。

(インタビュア―:JNC政田典子)

『100万をはかってみよう』

昔はどうやって長さや重さをはかっていたのか、そしてアメリカの単位を中心に、メートル法についても紹介している。

『100万ってどれくらい?』

実感しづらい大きな数についてイメージを膨らませたり、視覚でわかりやすく表したりしている。

『100万ドルあったなら』

100万ドルがどんなに大きなお金であるかを認識するだけでなく、お金の大切さ、銀行の役割も学べる。

ミシガン州在住 サライン須美子さん インタビュー

  アメリカで大ヒットした絵本『アメリカの数のえほん』(作:デビット・M.シュワルツ)の邦訳を手がけた女性がここミシガンに在住している。

  『アメリカの数のえほん』は『100万ってどれくらい?』『100万ドルあったなら』『100万をはかってみよう』の全3巻からなる絵本集で、Amazon(オンラインショッピング)では‘子ども向けの算数啓発書’と分類されているが、大人も驚きをもって楽しめる本。日本語版の監修を務めた秋山仁先生が絶賛しており、『100万ってどれくらい?』は小学校3年生の国語教科書(三省堂、2011年~2015年)で紹介されている。全国学校図書館協議会選定図書ならびに日本図書館協会選定図書にも選定されている。

  サライン須美子さんは翻訳専門家ではない。なぜ無謀ともいえる挑戦をし、成し遂げることができたのか、お話を伺った。

Q:なぜ翻訳しようと?

「子供の頃、算数が苦手でした。この本に出合っていたら興味を持っていただろうに・・・。日本の子供たちに読んで欲しいという想いが翻訳したいという気持ちになりました。」

Q:日本語の本があったら良いのにと思っても、翻訳家でない人が手がけようとは普通は考えないと思いますが・・・。

☆ ☆ ☆

  サライン須美子さんは地元アナーバー市の公立学校でELL(English Language Learnerの指導者として長年勤務しており、2004年、その一校で「アメリカの数のえほん」の作者デビット・M.シュワルツ氏を招いた講演会が催された折に日本人生徒への通訳のために参加した。話を聴き、本を知り、「こんな本に子供の頃に出合ったら算数が嫌いにならないで興味を持つに違いない」と思った。シュワルツ氏に尋ねたところ、フランス語、スペイン語、ドイツ語はあるが、日本語版は未だ無いとのこと。「日本の子供たちにも算数の楽しさを知ってもらいたい」と翻訳の意欲を駆り立てられた。しかし翻訳本についてはシュワルツ氏に決断権は無く、「自分のエージェントとして交渉したら良い」と提案してくれたため、決意を固めた。

   即刻はりきって翻訳に取り組み、翻訳文を添えた本を仕上げて日本の名だたる出版社に送ったが、出版社には企画部があり自社で翻訳本の選択をして翻訳家の手配も行うため、持ち込みは受け付けてもらえず諦めるしかなかった。無念にも翻訳本は2年間余り、御蔵入りとなってしまった。

  突然転機が訪れた。 須美子さんが医療通訳の仕事を請け負ったミシガン大学のイベントで通訳を務めた医療書の翻訳家を自宅に泊めたことがきっかけであった。その翻訳家は「秋山仁氏の推薦状をもらったら」と提案。ご存知の方も多いと思うが、秋山氏は、子供から大学受験生そして一般向けに算数/数学の啓発書や攻略本を多数執筆し、テレビ講座にも出演する著名な数学者である。この案は無謀かに思えたが、サライン家の親しい隣人である日本人ミシガン大学教授がかつて秋山氏の教え子であり、その縁と、その教授による“ミシガン大学の封筒を使う”アイデアが効を奏して、秋山氏の了解を得ることができた。そして出版社は、秋山氏が監修を務めることを条件に積極的に出版を進め、2007年には刊行が実現。その後、冒頭に記したように、国語の認定教科書でも取り上げられるほどの地位を獲得するまでになった。

  転機が訪れてからの進展スピードをみるとトントン拍子であったかのようであるが、訳に関しては一度ではOKが出ず、秋山氏から厳しい指摘も受け、推敲を重ねて再提出したという苦い経験もしたそうである。

  エレメンタリースクールを中心にバイリンガルテューターなどをした経験が言葉の選択に大いに生きたが、もとより苦手な算数の理論については、エンジニアである夫に教えを請い協力を得たという。

  「タイミングや人との繋がりが不思議なくらいぴったりと合っていたのです」と須美子さんは感慨をこめて話す。とはいえ、機会を得られるような幅広い活動をしていたのも、それを生かしたのも須美子さん自身であり、人脈を築いてきたのも彼女である。

  そもそも、経験の無い翻訳や、資格認定が厳しい医療通訳に、人生の半ば過ぎといえる年齢になって挑むエネルギーが何故生まれるのか。「原動力は?」と尋ねたところ、須美子さんは「子供のころ、勉強が苦手で苛られていました。それを打ち破りたかったんです。」と朗らかに答えた。烙印に押しつぶされず、逆にそれをバネにしてきたのだ。「日本の子供たちに読ませてあげたい」という翻訳動機に、改めて合点した。

  それまでの経験や生き様が実を結んだ業績といえる。「人生に無駄なことは何もない」という言葉があるが、それを実証するストーリーであった。

  「『アメリカの数のえほん』は本当に優れた本です。『100万をはかろう』は、日本でも親御さんたちに好評でした。大人の方には本文でなく後書きを是非読んで頂きたいと思います。本文をより細かく説明しているので、面白いはずです。アメリカに住んでいる方にはとても興味をそそる絵本だと思います。」と推奨。そして「楽しく学んで欲しい」と願いをつぶやいた。

(インタビュア―:JNC政田典子)

『100万をはかってみよう』

昔はどうやって長さや重さをはかっていたのか、そしてアメリカの単位を中心に、メートル法についても紹介している。

『100万ってどれくらい?』

実感しづらい大きな数についてイメージを膨らませたり、視覚でわかりやすく表したりしている。

『100万ドルあったなら』

100万ドルがどんなに大きなお金であるかを認識するだけでなく、お金の大切さ、銀行の役割も学べる。

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