去る3月2日、大阪大学真嶋潤子教授の「外国人児童生徒の複数言語能力の縦断的研究—何もなくさない日本語教育を目指して」プロジェクトチーム(平成24年度科学研究費補助金)と、ひのきインターナショナルスクール(JBSD基金助成金)共催、イースタンミシガン大学後援のラウンドテーブル型の勉強会が、ひのきインターナショナルスクールを会場に開催された。テーマは、「文化的言語的に多様な子どもたち(CLD児)のことばの力の育て方、捉え方」で、日本からのプロジェクトチームが各々のトピックで発題者として登壇した。また、司会進行は、イースタンミシガン大学の桶谷仁美教授が務めた。会場には、当地の言語教育関係者も参加し、3時間の開催予定時間を超えても質問や情報交換が続き、内容の濃い企画となった。詳細は下記の通り。

《発題内容と講演者》

『日本の外国人児童生徒の現状と大阪の研究事例の紹介』 真嶋潤子(大阪大学教授)
『外国人児童生徒の二言語能力の発達と言語環境』 友沢昭江(桃山学院大学教授)
『外国人児童性のための対話型評価と指導・支援の応用』 櫻井千穂(大阪大学研究員)

 発題者のお三方とも、日本在住の外国人児童生徒の言語教育や評価方法について、実際に外国人児童生徒に携わりながら研究を推進している。日本には外国人並びに日本国籍者も含めて、日本語指導が必要な児童生徒は3万人を超えるそうだが、指導が十分に行きわたっていない現状がある上に、指導の必要があるかの判断も恣意的だという。

 大阪の研究事例では、親が日本語を理解できなかったり、両親共に長時間労働者で子どもの教育に時間が持てない実情などはアメリカに居る日本人・日系人や国際結婚の2言語(多言語)で育つ子どもたちとは環境背景が多分に異なるものの、特徴として共通する点も多いことが事例の紹介から伺えた。例えば、日常(生活)会話には支障がなくても学習言語が身についていないために教科学習について行けない場合が多いことや、アイデンティティに揺らぎが生じやすいことなどが挙げられた。

 個別のケースとして、小学校入学時にダブルリミテッド(両言語とも伸びない)状態が心配され、高学年ではバイリテラル(言語・文化的に双方習得)になった成功例が示された。バイリテラルになる要因として以下の重点が挙げられた。

(抜粋要約)

  • 母語ができるようになることは、日本語(非母語)学習を阻害しない。
  • モノリンガル(1言語話者)より語彙は足りなくとも、行間を読み取ったり、多角的に物事を考える思考力は年齢相応かそれ以上に発達する。
  • 相当な言語的文化的インプットの量と質が大切である。
  • 大人が長い目で子どもの2言語の成長を見る必要がある。
  • 子どもに、心理的な安定と自信ができると自尊感情が生まれ、学習に前向きに取り組める。
  • 「母語ができることは素晴らしいことだ」というメッセージを送り続けることで、精神的なサポートになる。

 家庭環境と二言語能力の調査結果からは、親との対話の量や言語の種類が子どもの言語能力を左右することは当然ながら、レベルの高い子の場合は父親が熱心で、家に本があることや、子どもが何語で応えるかは能力レベルに直結してない結果が出ているなど、興味深い内容も示された。言語を混合することは、コミュニケーションストラテジーの一つと捉えると、悪いこととは一概に言えない。また、どちらかの言語が強ければそれを引き上げれば良く、両言語ともに弱いままであることが問題との指摘もあった。

 言語が弱いか強いか、つまりは年齢相応であるかのレベル判断が難しいところだが、最後に実践試験中である対話型読書力評価(DRA)について説明がなされた。DRAは元々読書力を診断するためのテキストであるが、ペーパーテストではなく、1対1で一緒に読み切ることで語彙や漢字の知識や理解の度合いなどを包括的・多角的に診断できる。それだけではなく、結果、達成感や優越感を味わう機会になり、自分のレベルが分かり、意欲と多読につながること、また、内容理解確認のためのあらすじ再生という過程では様々な力がつくことも実証されたという。

 DRAは日本の外国人児童生徒のためのものではあるが、当地で日本語を学ぶ子供の読書力判断にも利用可能とあり、この日の聴講者の高い関心を呼んだ。残念ながら一般入手はできないが、多読、とりわけ1対1で理解度を図りながら読み切ることの有意性が大きいことは確かである。実践のポイントとして、本の選定は子どもにとって興味のある魅力的なもので長過ぎない本であること、難しすぎたら途中で変更、子どもの選択で簡単すぎる本が続いたら励ましながらレベルを上げていくことが挙げられた。この評価(DRA)は学習言語能力を伸ばすためのものであると同時に、意欲も伸ばすことを重視している。聴講者から、日本語を母語とする子にも浸透したら素晴らしいという声も上がった。

 終盤に設けられた質問タイムに3歳児の母親から「いかに興味を持たせるのか。」との問いがあり、「大人が読むことに興味をもつ。」「(3歳は)絵や図鑑を楽しむのが大事な時期。たくさん見せてあげるとよい。」とのアドバイス。一日10冊(繰り返しでも良い)、約30分が目標とのこと。よく提言される「ことばのシャワーを浴びる大切さ」を再認識させられた勉強会であった。

  去る3月2日、大阪大学真嶋潤子教授の「外国人児童生徒の複数言語能力の縦断的研究—何もなくさない日本語教育を目指して」プロジェクトチーム(平成24年度科学研究費補助金)と、ひのきインターナショナルスクール(JBSD基金助成金)共催、イースタンミシガン大学後援のラウンドテーブル型の勉強会が、ひのきインターナショナルスクールを会場に開催された。テーマは、「文化的言語的に多様な子どもたち(CLD児)のことばの力の育て方、捉え方」で、日本からのプロジェクトチームが各々のトピックで発題者として登壇した。また、司会進行は、イースタンミシガン大学の桶谷仁美教授が務めた。会場には、当地の言語教育関係者も参加し、3時間の開催予定時間を超えても質問や情報交換が続き、内容の濃い企画となった。詳細は下記の通り。

《発題内容と講演者》

『日本の外国人児童生徒の現状と大阪の研究事例の紹介』 真嶋潤子(大阪大学教授)
『外国人児童生徒の二言語能力の発達と言語環境』 友沢昭江(桃山学院大学教授)
『外国人児童性のための対話型評価と指導・支援の応用』 櫻井千穂(大阪大学研究員)

 発題者のお三方とも、日本在住の外国人児童生徒の言語教育や評価方法について、実際に外国人児童生徒に携わりながら研究を推進している。日本には外国人並びに日本国籍者も含めて、日本語指導が必要な児童生徒は3万人を超えるそうだが、指導が十分に行きわたっていない現状がある上に、指導の必要があるかの判断も恣意的だという。

 大阪の研究事例では、親が日本語を理解できなかったり、両親共に長時間労働者で子どもの教育に時間が持てない実情などはアメリカに居る日本人・日系人や国際結婚の2言語(多言語)で育つ子どもたちとは環境背景が多分に異なるものの、特徴として共通する点も多いことが事例の紹介から伺えた。例えば、日常(生活)会話には支障がなくても学習言語が身についていないために教科学習について行けない場合が多いことや、アイデンティティに揺らぎが生じやすいことなどが挙げられた。

 個別のケースとして、小学校入学時にダブルリミテッド(両言語とも伸びない)状態が心配され、高学年ではバイリテラル(言語・文化的に双方習得)になった成功例が示された。バイリテラルになる要因として以下の重点が挙げられた。

(抜粋要約)

  • 母語ができるようになることは、日本語(非母語)学習を阻害しない。
  • モノリンガル(1言語話者)より語彙は足りなくとも、行間を読み取ったり、多角的に物事を考える思考力は年齢相応かそれ以上に発達する。
  • 相当な言語的文化的インプットの量と質が大切である。
  • 大人が長い目で子どもの2言語の成長を見る必要がある。
  • 子どもに、心理的な安定と自信ができると自尊感情が生まれ、学習に前向きに取り組める。
  • 「母語ができることは素晴らしいことだ」というメッセージを送り続けることで、精神的なサポートになる。

 家庭環境と二言語能力の調査結果からは、親との対話の量や言語の種類が子どもの言語能力を左右することは当然ながら、レベルの高い子の場合は父親が熱心で、家に本があることや、子どもが何語で応えるかは能力レベルに直結してない結果が出ているなど、興味深い内容も示された。言語を混合することは、コミュニケーションストラテジーの一つと捉えると、悪いこととは一概に言えない。また、どちらかの言語が強ければそれを引き上げれば良く、両言語ともに弱いままであることが問題との指摘もあった。

 言語が弱いか強いか、つまりは年齢相応であるかのレベル判断が難しいところだが、最後に実践試験中である対話型読書力評価(DRA)について説明がなされた。DRAは元々読書力を診断するためのテキストであるが、ペーパーテストではなく、1対1で一緒に読み切ることで語彙や漢字の知識や理解の度合いなどを包括的・多角的に診断できる。それだけではなく、結果、達成感や優越感を味わう機会になり、自分のレベルが分かり、意欲と多読につながること、また、内容理解確認のためのあらすじ再生という過程では様々な力がつくことも実証されたという。

 DRAは日本の外国人児童生徒のためのものではあるが、当地で日本語を学ぶ子供の読書力判断にも利用可能とあり、この日の聴講者の高い関心を呼んだ。残念ながら一般入手はできないが、多読、とりわけ1対1で理解度を図りながら読み切ることの有意性が大きいことは確かである。実践のポイントとして、本の選定は子どもにとって興味のある魅力的なもので長過ぎない本であること、難しすぎたら途中で変更、子どもの選択で簡単すぎる本が続いたら励ましながらレベルを上げていくことが挙げられた。この評価(DRA)は学習言語能力を伸ばすためのものであると同時に、意欲も伸ばすことを重視している。聴講者から、日本語を母語とする子にも浸透したら素晴らしいという声も上がった。

 終盤に設けられた質問タイムに3歳児の母親から「いかに興味を持たせるのか。」との問いがあり、「大人が読むことに興味をもつ。」「(3歳は)絵や図鑑を楽しむのが大事な時期。たくさん見せてあげるとよい。」とのアドバイス。一日10冊(繰り返しでも良い)、約30分が目標とのこと。よく提言される「ことばのシャワーを浴びる大切さ」を再認識させられた勉強会であった。

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