4月もあっという間に過ぎて、日本ではGW連休明けには新入社員は5月病、その他大勢は連休ボケに要注意の時期です。当地ミシガンではとうとう4月早々に降った雪で過去の降雪記録を塗り替えましたね。かと思うと4月半ばの週末には20℃を超える日があったりとミシガンの天気は本当に日替わり、週替わりです。雪だけでなく寒さでもこの冬は例外でしたが、何度か話題にもなったポーラー・ヴォーテックス(北極圏の寒気渦流)に代わって今はポールン・ボーテックス(花粉の渦流)が発生中。長らく雪に埋もれ、寒さに耐えていた草木が束縛から解放され「待ってました!」とばかりに一気に芽を出し、花を咲かせると同時に大量の花粉を撒き散らし始めています。例年日本より短い春ではありますが、今年は更に短縮された期間にほとんど時間差なく種々の草木が先を争うように花粉を飛ばす事態となり、花粉アレルギーの人は例年より一層の注意・対策が必要とのことです。ご用心を。
日本のプロ野球では開幕後1ヶ月、25試合ほどを消化した時点でセ・リーグは広島東洋カープ、パ・リーグはオリックス・バッファローズが首位というやや予想外の展開。
このまま線香花火で終わらなければ、今年は優勝争いが面白いシーズンになるかもしれません。米国MLBでは順位はさておき、本欄で何度も触れて食傷気味の方もお見えでしょうが、ヤンキースの田中投手が既に先発3勝と無難以上の滑り出し。心配された大リーグの硬いマウンド、公式球の滑りやすさ、環境対応をものともしない安定したコントロールと奪三振/与四球比率で群を抜いています。日米とも春先は投手有利ですが、打者が慣れて調子を上げると同時に投手に疲れが溜まってくる夏場から秋口にかけて好調を持続出来るかどうかですね。特にファンと言う訳ではありませんが、日本人としては応援したくなります。
今回のテーマは『決意と責任』です。
何やら堅苦しいお題目ですが、最近またいい加減な事、いい加減な人達のニュースに触れて、このタイミングで書き記したいと思いました。
皆さんも連日のニュースでご存知のように、先月半ば日本のお隣韓国の客船が珍島沖で転覆・沈没し、修学旅行中の高校生の団体を含む多数の方々が犠牲または行方不明になっています。同国の海難史上最大の大変痛ましい事故で犠牲者の方々のご冥福をお祈りすると共にご家族・関係者の皆様に心より悔やみを申し上げます。
事故発生後、同国政府や海事警察などの初動の遅れや拙さに加えてデマや誤報による情報の錯綜もあって、当初正確な事実がタイムリーになかなかこちらまで伝わって来ませんでした。その後のメディア報道により事故の悲惨さ、深刻度が徐々に明らかになるに従って、事故発生直後の船長、乗組員の緊急対応ならびに乗客への連絡アナウンス、避難誘導に大きな問題があったことが判明して来ました。
特に酷かったのが勤務歴40年以上の船長の取った行動です。あろう事か、船長は乗客に対して「動かずに船室に留まるように」とのアナウンスを指示した直後、自分自身は緊急対応指示や避難誘導を一切せぬまま救命ボートで乗り付けた救助員に「乗客の一人」と偽って真っ先に脱出してしまったもの。今回事故船の船舶仕様や航海ルートは国際海事法の適用対象外とはいえ、数百人もの乗客の命を預かる大型船の船長の最大の責務は船舶及び乗客の安全確保です。海事関係者のみならず一般の人でも昔から船長は事故の際最後まで船に残り他の乗客、乗組員の安全確保・脱出を確認してから離船するというのが常識です。にも拘らず、この船長は自分の保身のみ考えて行動し、事故の重大さ、犠牲者数を大幅に増加させてしまったのです。更に恥の上塗りと言うべきは、救助されて陸地に上がった後持っていた紙幣が濡れていたのを乾かしながら「これはオレの金だ!」と見ている人に息巻いたというニュース。全く保身と守銭奴の固まりで無責任で恥知らずとしか言いようのない行動で呆れると同時に強い憤りを感じます。
その一方でこの船会社に入社・勤務開始後わずか6ヶ月ほどの若い女性添乗員が先の連絡アナウンスに従っては乗客が危ないと的確な判断をし、ドアを開けて乗客に救命具を手渡して次々と脱出させ多くの人達を助けながら、自分は「最後で良いから」と救命具を着けず、犠牲者の一人になってしまったという悲しいニュースに触れて余計に船長に対する怒りがつのりました。母親、妹との3人暮らしの家計を支えていたという孝行娘で、助かった人達も口々に「あの人のお蔭で助かった。あの人がいなかったらもっと犠牲者が増えていた」、「船長とあの人が逆の役目だったら良かったのに」というコメントを聞いて目頭が熱くなりました。
今回の場合、船長が船長としての責務に対するコミットメントをしておらず、その責任を放棄して全うしなかったと言えます。コミットメントという英語は約束・約定とか献身、専念などと和訳されますが、なかなかピッタリした日本語がなくそのまま英語をカタカナ表示で使われることがあります。実際に意味するところは、「本気で何かを実行しようと決意すること」と言った感じでしょうか。形式的とか表面的な格好付けではなく、真剣にその対象となる物事に取り組んでやるべき事をしっかりとやる、やり切るということですね。
船長の肩書きと報酬は手に入れても責務は果たさない、責任は取らないでは片手落ちで道理が通りません。正にいい加減そのものです。反対に女性添乗員はしっかりと自分の責務を自覚し、業務に対して真剣にコミットしていた結果自らの尊い命を犠牲にするリスクを冒してまで責任を果たそうとしました。この差は一体どこから来るのでしょうか?
子供の頃からの育ちや家庭環境にも影響されると思いますが、それはやはり日頃からの仕事に対する取り組み方、責務に対する自覚と決意、何か不測の事態や問題が発生した場合に備えてリスク回避・軽減のための物理的・システム的な準備と心構え、実際に問題が起こった場合の適切でタイムリーな対応処理、そして結果に対する責任を取る、という当たり前のことが出来るか出来ないかではないでしょうか。
自分をコミットし、真剣に物事に取り組み実行する決意をしてきちんとやるからこそ仕事や家庭に対する誇りが持て、しっかりやり切ったという達成感、充実感が生まれるのです。元の決意、コミットメントが不十分でいい加減だと結果も出せず、責任も取れずあいまいになるか、他人の所為にして仕事にも家庭にも誇りを持てない状況になりますね。
皆さんは何に対してご自分をコミットし、決意を持って取り組み実行して結果に責任を取っていますか?取れますか?
執筆者紹介:小久保陽三
Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。
4月もあっという間に過ぎて、日本ではGW連休明けには新入社員は5月病、その他大勢は連休ボケに要注意の時期です。当地ミシガンではとうとう4月早々に降った雪で過去の降雪記録を塗り替えましたね。かと思うと4月半ばの週末には20℃を超える日があったりとミシガンの天気は本当に日替わり、週替わりです。雪だけでなく寒さでもこの冬は例外でしたが、何度か話題にもなったポーラー・ヴォーテックス(北極圏の寒気渦流)に代わって今はポールン・ボーテックス(花粉の渦流)が発生中。長らく雪に埋もれ、寒さに耐えていた草木が束縛から解放され「待ってました!」とばかりに一気に芽を出し、花を咲かせると同時に大量の花粉を撒き散らし始めています。例年日本より短い春ではありますが、今年は更に短縮された期間にほとんど時間差なく種々の草木が先を争うように花粉を飛ばす事態となり、花粉アレルギーの人は例年より一層の注意・対策が必要とのことです。ご用心を。
日本のプロ野球では開幕後1ヶ月、25試合ほどを消化した時点でセ・リーグは広島東洋カープ、パ・リーグはオリックス・バッファローズが首位というやや予想外の展開。
このまま線香花火で終わらなければ、今年は優勝争いが面白いシーズンになるかもしれません。米国MLBでは順位はさておき、本欄で何度も触れて食傷気味の方もお見えでしょうが、ヤンキースの田中投手が既に先発3勝と無難以上の滑り出し。心配された大リーグの硬いマウンド、公式球の滑りやすさ、環境対応をものともしない安定したコントロールと奪三振/与四球比率で群を抜いています。日米とも春先は投手有利ですが、打者が慣れて調子を上げると同時に投手に疲れが溜まってくる夏場から秋口にかけて好調を持続出来るかどうかですね。特にファンと言う訳ではありませんが、日本人としては応援したくなります。
今回のテーマは『決意と責任』です。
何やら堅苦しいお題目ですが、最近またいい加減な事、いい加減な人達のニュースに触れて、このタイミングで書き記したいと思いました。
皆さんも連日のニュースでご存知のように、先月半ば日本のお隣韓国の客船が珍島沖で転覆・沈没し、修学旅行中の高校生の団体を含む多数の方々が犠牲または行方不明になっています。同国の海難史上最大の大変痛ましい事故で犠牲者の方々のご冥福をお祈りすると共にご家族・関係者の皆様に心より悔やみを申し上げます。
事故発生後、同国政府や海事警察などの初動の遅れや拙さに加えてデマや誤報による情報の錯綜もあって、当初正確な事実がタイムリーになかなかこちらまで伝わって来ませんでした。その後のメディア報道により事故の悲惨さ、深刻度が徐々に明らかになるに従って、事故発生直後の船長、乗組員の緊急対応ならびに乗客への連絡アナウンス、避難誘導に大きな問題があったことが判明して来ました。
特に酷かったのが勤務歴40年以上の船長の取った行動です。あろう事か、船長は乗客に対して「動かずに船室に留まるように」とのアナウンスを指示した直後、自分自身は緊急対応指示や避難誘導を一切せぬまま救命ボートで乗り付けた救助員に「乗客の一人」と偽って真っ先に脱出してしまったもの。今回事故船の船舶仕様や航海ルートは国際海事法の適用対象外とはいえ、数百人もの乗客の命を預かる大型船の船長の最大の責務は船舶及び乗客の安全確保です。海事関係者のみならず一般の人でも昔から船長は事故の際最後まで船に残り他の乗客、乗組員の安全確保・脱出を確認してから離船するというのが常識です。にも拘らず、この船長は自分の保身のみ考えて行動し、事故の重大さ、犠牲者数を大幅に増加させてしまったのです。更に恥の上塗りと言うべきは、救助されて陸地に上がった後持っていた紙幣が濡れていたのを乾かしながら「これはオレの金だ!」と見ている人に息巻いたというニュース。全く保身と守銭奴の固まりで無責任で恥知らずとしか言いようのない行動で呆れると同時に強い憤りを感じます。
その一方でこの船会社に入社・勤務開始後わずか6ヶ月ほどの若い女性添乗員が先の連絡アナウンスに従っては乗客が危ないと的確な判断をし、ドアを開けて乗客に救命具を手渡して次々と脱出させ多くの人達を助けながら、自分は「最後で良いから」と救命具を着けず、犠牲者の一人になってしまったという悲しいニュースに触れて余計に船長に対する怒りがつのりました。母親、妹との3人暮らしの家計を支えていたという孝行娘で、助かった人達も口々に「あの人のお蔭で助かった。あの人がいなかったらもっと犠牲者が増えていた」、「船長とあの人が逆の役目だったら良かったのに」というコメントを聞いて目頭が熱くなりました。
今回の場合、船長が船長としての責務に対するコミットメントをしておらず、その責任を放棄して全うしなかったと言えます。コミットメントという英語は約束・約定とか献身、専念などと和訳されますが、なかなかピッタリした日本語がなくそのまま英語をカタカナ表示で使われることがあります。実際に意味するところは、「本気で何かを実行しようと決意すること」と言った感じでしょうか。形式的とか表面的な格好付けではなく、真剣にその対象となる物事に取り組んでやるべき事をしっかりとやる、やり切るということですね。
船長の肩書きと報酬は手に入れても責務は果たさない、責任は取らないでは片手落ちで道理が通りません。正にいい加減そのものです。反対に女性添乗員はしっかりと自分の責務を自覚し、業務に対して真剣にコミットしていた結果自らの尊い命を犠牲にするリスクを冒してまで責任を果たそうとしました。この差は一体どこから来るのでしょうか?
子供の頃からの育ちや家庭環境にも影響されると思いますが、それはやはり日頃からの仕事に対する取り組み方、責務に対する自覚と決意、何か不測の事態や問題が発生した場合に備えてリスク回避・軽減のための物理的・システム的な準備と心構え、実際に問題が起こった場合の適切でタイムリーな対応処理、そして結果に対する責任を取る、という当たり前のことが出来るか出来ないかではないでしょうか。
自分をコミットし、真剣に物事に取り組み実行する決意をしてきちんとやるからこそ仕事や家庭に対する誇りが持て、しっかりやり切ったという達成感、充実感が生まれるのです。元の決意、コミットメントが不十分でいい加減だと結果も出せず、責任も取れずあいまいになるか、他人の所為にして仕事にも家庭にも誇りを持てない状況になりますね。
皆さんは何に対してご自分をコミットし、決意を持って取り組み実行して結果に責任を取っていますか?取れますか?
執筆者紹介:小久保陽三
Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。