
攻撃を仕掛けた人が瞬く間に「バシッ!」と大きな音を立てて床に倒れ込む。稽古でありながら、息を飲むほどの気迫が伝わってくる。
アナーバー市に道場を構えるHuron Valley Aikikai(ヒューロン・バレー・合気会)は、合気道界の最大会派である財団法人合気会の系列で、ロジャー・パーク氏(Mr. Rodger Park、六段)が道場長(プリンシパル・インストラクター) を務め、12歳以上の子供から大人までのクラスを開いている。
合気道は大正末から昭和前期にかけて植芝盛平が日本伝統の武術の奥義を究め、独自の精神哲学でまとめ直した、体術を主とする総合武道。心身の錬成を図ることを最たる目的としている。自然の理にかなった動きで、相手に逆らうことなく攻撃の力を利用して制する。合理的な体の運用により体格体力によらず「小よく大を制する」ことが可能である点、そして試合は行わないことが特徴となっている。植芝盛平の弟子たちと歴代の合気道道主たちが積極的に海外普及に努めた結果、東南アジア・北南米・欧州など国際的に広まった。習得すれば相手を傷つけずに制することができるため、護身術として世界各地の警察でもその有用性が評価されているという。
見学させていただいたのは有段者が多いクラス。体が宙を舞うような技が繰り広げられ、女性や比較的小柄な男性ががっしりとした大柄の男性の攻撃をかわして投げ倒す、あざやかな姿もあった。共通しているのは、攻撃してきた相手のバランスを崩すと同時に投げ技や固め(相手の動きを封じる)技をかけるなど、攻撃の勢いや相手の力をうまく利用する点。素手での手合わせ、刀による攻撃を素手で撃退するなど、幾つもの技の稽古が続けられた。杖(ジョウ)という長い棒を使った技もあった。防具は纏わない。どの技も「うまい!」と声を上げそうなほど、素人目にも無駄のない効果的な動きだと分かり感嘆の連続。アクション映画を観ているような爽快さがあった。会得していない者であれば大怪我しそうなものだが、攻撃を仕掛ける側(一瞬後には制圧される側)も受け身を体得しているので、手首を捻られる痛い技もあるそうだが、怪我に至ることはない(らしい)。ちなみに、冒頭の「バシッ !」という音は、倒れ込むときに音を立てて畳をたたくことで体への衝撃を和らげる効果がある為であるとの話。
また、「動く禅」や「武にして舞」といった言葉で表現されることもある合気道。武術でありながら、楚々とした品格ある立居振舞は能の舞いを彷彿させられた。特に、僅かな動きで相手を投げた後の平然と構えた姿には、見る者の姿勢まで正してしまう威厳が感じられた。
パーク氏の話では、稽古を続けていると心身とも強くなるが、始めるにあたっては筋力を必要とせず、老若男女誰でも大丈夫であるとのこと。「争わないための修練」であり、生き方にもそれが通じ、「負かすのではなく共に生きること」「互いを尊重する姿勢」を貫くものであると説く。日常生活での効果を尋ねたところ、集中力の向上の他、仕事のプレゼンテーションで過剰にナーバスにならない話を挙げた。「No one kills me.(別に殺されるというわけでは無いので)落ち着いて自分自身を保ち、発言することができる」また、転んだ時に怪我をしない、コアが鍛えられるなど、日常生活へのメリットも挙げられると語る。一分の隙が致命的になるような全身全霊での手合わせを重ね、極限といえる状況に身を置いて修練してきた経験が培った強靭さと達観といえる。
日本人の有段者である前田氏は学生時代に合気道を始め、ブランクはあるが計2 0年間たしなんでいる。稽古の楽しさについて「学生時代は体力にまかせてガムシャラに技をかけることに熱中していましたが、稽古を続けていくうちに力を抜くところ入れるところが段々と感覚的に解ってきました。最近は体のしくみや相手の反応のしかたなどを自分なりに分析して、いろいろと試しながら行う稽古を楽しんでいます。」と語る。また、稽古は個々のペースで無理なく行うことができて、技が上手く掛かった時はわずかな力で自分より大きな人をスパーンと投げることができるのも合気道の魅力とのこと。
この日の稽古で紅一点のテリーさんはパーク氏の奥様だが、合気道の哲学と美しさに惹かれていると言う。筋力に頼った護身ではなく、しなやかに攻撃を受け流すことができるので、女性にとって有効な護身。技としてだけでは無く、精神を研ぐことができ、周囲の危険に対する意識が養われ敏感になるという。賢明に危機を回避する知恵と技を身につける武道と言い換えることができようか。
合気道は微動かつ瞬時に相手の攻撃を捌いて投げたり押さえ込んだりするため、写真ではどのような過程を経て技が掛かったのか分かりづらいかもしれない。その見事さは実際に目で確かめていただくしかない。Huron Valley A i k i k a iでは現在、特に初心者専用のクラスは設けておらず、上級者と手合わせする中で基礎を中心に学ぶ。常時入門者を歓迎しており、稽古日数を重ね技を体得し鍛練を続けてゆく中で、東京の合気会本部道場より段位の修得も可能。また、居合道は合気道とは別の武道であるが、当道場では居合抜刀法のクラスもあり、数人が合わせて研鑽している。また、各種セミナーの招致開催や地域交流文化イベントに於ける演武の披露、更には州内外の他道場との交流稽古など、対外活動をも広く積極的に展開している。パーク氏は
「より多くの人に合気道の素晴らしさを広めたい」と熱く語る。
練習日など詳細はホームページで
http://www.hv-aikido.com/
攻撃を仕掛けた人が瞬く間に「バシッ!」と大きな音を立てて床に倒れ込む。稽古でありながら、息を飲むほどの気迫が伝わってくる。
アナーバー市に道場を構えるHuron Valley Aikikai(ヒューロン・バレー・合気会)は、合気道界の最大会派である財団法人合気会の系列で、ロジャー・パーク氏(Mr. Rodger Park、六段)が道場長(プリンシパル・インストラクター) を務め、12歳以上の子供から大人までのクラスを開いている。
合気道は大正末から昭和前期にかけて植芝盛平が日本伝統の武術の奥義を究め、独自の精神哲学でまとめ直した、体術を主とする総合武道。心身の錬成を図ることを最たる目的としている。自然の理にかなった動きで、相手に逆らうことなく攻撃の力を利用して制する。合理的な体の運用により体格体力によらず「小よく大を制する」ことが可能である点、そして試合は行わないことが特徴となっている。植芝盛平の弟子たちと歴代の合気道道主たちが積極的に海外普及に努めた結果、東南アジア・北南米・欧州など国際的に広まった。習得すれば相手を傷つけずに制することができるため、護身術として世界各地の警察でもその有用性が評価されているという。
見学させていただいたのは有段者が多いクラス。体が宙を舞うような技が繰り広げられ、女性や比較的小柄な男性ががっしりとした大柄の男性の攻撃をかわして投げ倒す、あざやかな姿もあった。共通しているのは、攻撃してきた相手のバランスを崩すと同時に投げ技や固め(相手の動きを封じる)技をかけるなど、攻撃の勢いや相手の力をうまく利用する点。素手での手合わせ、刀による攻撃を素手で撃退するなど、幾つもの技の稽古が続けられた。杖(ジョウ)という長い棒を使った技もあった。防具は纏わない。どの技も「うまい!」と声を上げそうなほど、素人目にも無駄のない効果的な動きだと分かり感嘆の連続。アクション映画を観ているような爽快さがあった。会得していない者であれば大怪我しそうなものだが、攻撃を仕掛ける側(一瞬後には制圧される側)も受け身を体得しているので、手首を捻られる痛い技もあるそうだが、怪我に至ることはない(らしい)。ちなみに、冒頭の「バシッ !」という音は、倒れ込むときに音を立てて畳をたたくことで体への衝撃を和らげる効果がある為であるとの話。
また、「動く禅」や「武にして舞」といった言葉で表現されることもある合気道。武術でありながら、楚々とした品格ある立居振舞は能の舞いを彷彿させられた。特に、僅かな動きで相手を投げた後の平然と構えた姿には、見る者の姿勢まで正してしまう威厳が感じられた。
パーク氏の話では、稽古を続けていると心身とも強くなるが、始めるにあたっては筋力を必要とせず、老若男女誰でも大丈夫であるとのこと。「争わないための修練」であり、生き方にもそれが通じ、「負かすのではなく共に生きること」「互いを尊重する姿勢」を貫くものであると説く。日常生活での効果を尋ねたところ、集中力の向上の他、仕事のプレゼンテーションで過剰にナーバスにならない話を挙げた。「No one kills me.(別に殺されるというわけでは無いので)落ち着いて自分自身を保ち、発言することができる」また、転んだ時に怪我をしない、コアが鍛えられるなど、日常生活へのメリットも挙げられると語る。一分の隙が致命的になるような全身全霊での手合わせを重ね、極限といえる状況に身を置いて修練してきた経験が培った強靭さと達観といえる。
日本人の有段者である前田氏は学生時代に合気道を始め、ブランクはあるが計2 0年間たしなんでいる。稽古の楽しさについて「学生時代は体力にまかせてガムシャラに技をかけることに熱中していましたが、稽古を続けていくうちに力を抜くところ入れるところが段々と感覚的に解ってきました。最近は体のしくみや相手の反応のしかたなどを自分なりに分析して、いろいろと試しながら行う稽古を楽しんでいます。」と語る。また、稽古は個々のペースで無理なく行うことができて、技が上手く掛かった時はわずかな力で自分より大きな人をスパーンと投げることができるのも合気道の魅力とのこと。
この日の稽古で紅一点のテリーさんはパーク氏の奥様だが、合気道の哲学と美しさに惹かれていると言う。筋力に頼った護身ではなく、しなやかに攻撃を受け流すことができるので、女性にとって有効な護身。技としてだけでは無く、精神を研ぐことができ、周囲の危険に対する意識が養われ敏感になるという。賢明に危機を回避する知恵と技を身につける武道と言い換えることができようか。
合気道は微動かつ瞬時に相手の攻撃を捌いて投げたり押さえ込んだりするため、写真ではどのような過程を経て技が掛かったのか分かりづらいかもしれない。その見事さは実際に目で確かめていただくしかない。Huron Valley A i k i k a iでは現在、特に初心者専用のクラスは設けておらず、上級者と手合わせする中で基礎を中心に学ぶ。常時入門者を歓迎しており、稽古日数を重ね技を体得し鍛練を続けてゆく中で、東京の合気会本部道場より段位の修得も可能。また、居合道は合気道とは別の武道であるが、当道場では居合抜刀法のクラスもあり、数人が合わせて研鑽している。また、各種セミナーの招致開催や地域交流文化イベントに於ける演武の披露、更には州内外の他道場との交流稽古など、対外活動をも広く積極的に展開している。パーク氏は
「より多くの人に合気道の素晴らしさを広めたい」と熱く語る。
練習日など詳細はホームページで
http://www.hv-aikido.com/