~大学入試センター試験の廃止、増加するAO入試や秋入学が影響

  一昨年、東京大学が秋入学の導入を決定し、いよいよ日本の大学も海外の大多数の学校と同様に秋入学が主流になるということを予感させましたが、東大は秋入学を断念し、春入学を継続することになりました。企業や官庁の就職の時期は4月なので3月までに卒業する必要があるためです。ただし、政府は「グローバル30」をはじめ、海外からの留学生の獲得を推進しているため、授業は秋から始める「春入学、秋始業」という制度を導入することになったのです。このように秋入学には卒業時期が就職にとって不利だという問題を抱えているものの、教育のグローバル化を推進する大学を中心に導入が進んでいます。現在秋入学を導入している大学・学部は、慶應義塾大(総合政策・環境情報)、国際基督教大、上智大(国際教養)、早稲田大(国際教養)や、秋田県の公立大の国際教養大、東北大(工)、筑波大など約5%ですが、今後ますます増加することが予想されます。

  また、アメリカの大学の入学者選抜方法に類似したAO(アドミッションズ・オフィス)入試を導入する大学も増加傾向にあります。AO入試とは学力試験を行わず、高等学校の調査書(成績や活動記録)や志願理由書などによって受験生が大学の求める学生像(アドミッションズ・ポリシー)に合っているかどうかを審査して入学者を選考する方式です。日本では慶應義塾大学の総合政策学部と環境情報学部が1990年に最初に実施し、現在では4年制大学の約7割が導入しています。文部科学省のデータによると、AO入試の入学者数は2002年では8,117人(全体の1.4%)だったのに対し、2012年は50,626人(全体の8.5%)と大きく増加しています。

  このように日本の大学はアメリカ型に移行しつつあるとも言えます。そんな中、政府の教育再生実行会議が現行のセンター試験に替わる「達成度テスト(仮称)」の創設を柱とする大学入試制度改革の提言書を安倍首相に提出したことは、その傾向に拍車をかけるものでしょう。

構成されます。発展レベルは論理的な思考や問題解決能力を問う出題で、知識一辺倒の1点刻みの入試とならないよう成績は得点範囲別に分けて示されます。また、この成績が大学の受験資格として活用されます。基礎レベルは、高校段階での基礎学力の定着度を把握し、学力向上につなげることを目的とされ、AO入試で活用されます。両テストとも1回のみしか受験できないセンター試験とは異なり複数回の受験が可能で、前身の共通一次試験導入から30年以上を経て大きく変化しそうです。

  達成度テストの創設とともに、大学入試の改革も提言され、各大学が行う二次試験は、論文や面接、高校での活動実績などを踏まえ、多面的、総合的に評価するよう求められています。このように入試当日の学科試験の得点で合否が決まる入試システムから大きな変化が見られそうです。この大学入試制度改革もAO入試と同様にアメリカの大学入学者選考方法に類似しています。達成度テストはSATやACTに相当しますし、二次試験も各大学の入学者選考において高校の成績や諸活動を総合評価するアメリカのシステムにより近いと言えます。達成度テストの実施時期は具体的に示されていませんが、早ければ今の中学生が受験することになり、大学受験を目指す高校生の生活にも変化が見られるでしょう。

  達成度テストの創設による大学入試制度の改革に伴い、帰国生入試も変化しそうです。帰国生入試では、アメリカ出身者にはSATやACTのスコアを求める大学が3割ほどありますが、センター試験の受験を要する大学はごくわずかです。国公立大学でも免除されているところがほとんどです。各大学が実施する入試は小論文と面接です。理科系学部では数学や理科も課されますが、達成度テスト導入後の各大学が行う二次試験に似ています。ということは、帰国生にも国内生と同じ試験が課され、達成度テストの受験も求められることが考えられます。帰国生大学入試の受験生の数は減少傾向にあり、AO入試や秋入学の導入が進む一方で、廃止の動きも顕著だからです。今後の動向に注視したいです。

米日教育交流協議会・代表  丹羽 筆人

執筆者のプロフィール

河合塾で十数年間にわたり、大学入試データ分析、大学情報の収集・提供、大学入試情報誌「栄冠めざして」などの編集に携わるとともに、大学受験科クラス担任として多くの塾生を大学合格に導いた。また、現役高校生や保護者対象の進学講演も多数行った。一方、米国・英国大学進学や海外サマーセミナーなどの国際的企画も担当。1999年に米国移住後は、CA、NJ、NY、MI州の補習校・学習塾講師を務めた。2006年に「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、日本での日本語・日本文化体験学習プログラム「サマー・キャンプ in ぎふ」など、国際的な交流活動を実践。さらに、河合塾海外帰国生コース北米事務所アドバイザーとして帰国生大学入試情報提供と進学相談も担当し、北米各地での進学講演も行っている。また、文京学院大学女子中学校・高等学校北米事務所アドバイザー、名古屋国際中学校・高等学校アドミッションオフィサー北米地域担当、デトロイトりんご会補習授業校講師(教務主任兼進路指導担当)も務めている。

◆米日教育交流協議会(UJEEC)

  Phone:1-248-346-3818  Website:www.ujeec.org

~大学入試センター試験の廃止、増加するAO入試や秋入学が影響

  一昨年、東京大学が秋入学の導入を決定し、いよいよ日本の大学も海外の大多数の学校と同様に秋入学が主流になるということを予感させましたが、東大は秋入学を断念し、春入学を継続することになりました。企業や官庁の就職の時期は4月なので3月までに卒業する必要があるためです。ただし、政府は「グローバル30」をはじめ、海外からの留学生の獲得を推進しているため、授業は秋から始める「春入学、秋始業」という制度を導入することになったのです。このように秋入学には卒業時期が就職にとって不利だという問題を抱えているものの、教育のグローバル化を推進する大学を中心に導入が進んでいます。現在秋入学を導入している大学・学部は、慶應義塾大(総合政策・環境情報)、国際基督教大、上智大(国際教養)、早稲田大(国際教養)や、秋田県の公立大の国際教養大、東北大(工)、筑波大など約5%ですが、今後ますます増加することが予想されます。

  また、アメリカの大学の入学者選抜方法に類似したAO(アドミッションズ・オフィス)入試を導入する大学も増加傾向にあります。AO入試とは学力試験を行わず、高等学校の調査書(成績や活動記録)や志願理由書などによって受験生が大学の求める学生像(アドミッションズ・ポリシー)に合っているかどうかを審査して入学者を選考する方式です。日本では慶應義塾大学の総合政策学部と環境情報学部が1990年に最初に実施し、現在では4年制大学の約7割が導入しています。文部科学省のデータによると、AO入試の入学者数は2002年では8,117人(全体の1.4%)だったのに対し、2012年は50,626人(全体の8.5%)と大きく増加しています。

  このように日本の大学はアメリカ型に移行しつつあるとも言えます。そんな中、政府の教育再生実行会議が現行のセンター試験に替わる「達成度テスト(仮称)」の創設を柱とする大学入試制度改革の提言書を安倍首相に提出したことは、その傾向に拍車をかけるものでしょう。

構成されます。発展レベルは論理的な思考や問題解決能力を問う出題で、知識一辺倒の1点刻みの入試とならないよう成績は得点範囲別に分けて示されます。また、この成績が大学の受験資格として活用されます。基礎レベルは、高校段階での基礎学力の定着度を把握し、学力向上につなげることを目的とされ、AO入試で活用されます。両テストとも1回のみしか受験できないセンター試験とは異なり複数回の受験が可能で、前身の共通一次試験導入から30年以上を経て大きく変化しそうです。

  達成度テストの創設とともに、大学入試の改革も提言され、各大学が行う二次試験は、論文や面接、高校での活動実績などを踏まえ、多面的、総合的に評価するよう求められています。このように入試当日の学科試験の得点で合否が決まる入試システムから大きな変化が見られそうです。この大学入試制度改革もAO入試と同様にアメリカの大学入学者選考方法に類似しています。達成度テストはSATやACTに相当しますし、二次試験も各大学の入学者選考において高校の成績や諸活動を総合評価するアメリカのシステムにより近いと言えます。達成度テストの実施時期は具体的に示されていませんが、早ければ今の中学生が受験することになり、大学受験を目指す高校生の生活にも変化が見られるでしょう。

  達成度テストの創設による大学入試制度の改革に伴い、帰国生入試も変化しそうです。帰国生入試では、アメリカ出身者にはSATやACTのスコアを求める大学が3割ほどありますが、センター試験の受験を要する大学はごくわずかです。国公立大学でも免除されているところがほとんどです。各大学が実施する入試は小論文と面接です。理科系学部では数学や理科も課されますが、達成度テスト導入後の各大学が行う二次試験に似ています。ということは、帰国生にも国内生と同じ試験が課され、達成度テストの受験も求められることが考えられます。帰国生大学入試の受験生の数は減少傾向にあり、AO入試や秋入学の導入が進む一方で、廃止の動きも顕著だからです。今後の動向に注視したいです。

米日教育交流協議会・代表  丹羽 筆人

執筆者のプロフィール

河合塾で十数年間にわたり、大学入試データ分析、大学情報の収集・提供、大学入試情報誌「栄冠めざして」などの編集に携わるとともに、大学受験科クラス担任として多くの塾生を大学合格に導いた。また、現役高校生や保護者対象の進学講演も多数行った。一方、米国・英国大学進学や海外サマーセミナーなどの国際的企画も担当。1999年に米国移住後は、CA、NJ、NY、MI州の補習校・学習塾講師を務めた。2006年に「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、日本での日本語・日本文化体験学習プログラム「サマー・キャンプ in ぎふ」など、国際的な交流活動を実践。さらに、河合塾海外帰国生コース北米事務所アドバイザーとして帰国生大学入試情報提供と進学相談も担当し、北米各地での進学講演も行っている。また、文京学院大学女子中学校・高等学校北米事務所アドバイザー、名古屋国際中学校・高等学校アドミッションオフィサー北米地域担当、デトロイトりんご会補習授業校講師(教務主任兼進路指導担当)も務めている。

◆米日教育交流協議会(UJEEC)

  Phone:1-248-346-3818  Website:www.ujeec.org

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