新年明けまして、おめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

月並み(年並みという言葉があればそちらにしたい)ですが、『年波』と勘違いされても困りますので、ここはやはり月並みとしておきましょう。今年は午年。巳年の昨年はヘビの如くニョロニョロと蛇行してしまい、目的地まで遠回りしたり、拙速で目標時刻までに辿り着けなかったりと苦戦続きでしたが、午年にバトンタッチした今年はウマのように駆け跳ね、目標に向けて疾走したいと思います。

日本も米国もシーズンオフとなったプロ野球では、ストーブリーグの大きな話題は何と言っても楽天ゴールデン・イーグルスの田中投手(マー君)のMLB移籍交渉の行方でしょう。従来のポスティングシステムが失効し、新ポスティングシステムの日米間交渉から決着まで紆余曲折がありましたが、クリスマス明けに楽天球団がポスティング制度を使ってのMLB移籍を認め、米国での争奪戦がスタートしました。資金力があり、柱になる先発投手が欲しいヤンキースが本命との噂が前々からありますが、果たしてどうなりますか?私個人的には、田中投手はエリート集団のヤンキースではなく、楽天のようにもう少し控えめな地方都市の球団で2番手位の先発投手として地道にコツコツ努力して成功して欲しいような気がします。高校時代は甲子園で『ハンカチ王子』こと斉藤祐樹投手の引き立て役的存在でしたし、プロになってからも一足先にMLBに移籍したダルビッシュ有投手の影で余り目立たない存在でした。そういう環境で体力強化や新たな球種のマスターと投球術の上達に励み、それが昨年レギュラーシーズン24勝無敗、1セーブという歴史的な大記録で球団も初優勝、日本一として花開いた訳です。とは言うものの、やはり優勝を狙える球団、プレイオフに出れるような球団でないと十分なサポートがなく勝ち星にも恵まれず期待を裏切る事態になりかねないので、難しい選択ではあります。何処の球団に落ち着くとしても、高価な値札に見合った日本からの輸入品の活躍を期待しましょう。

またまた前書きが長くなってしまいました。今回のテーマは『部分最適と全体最適』です。

何らかの形でビジネスに関わっていらっしゃる方は何度か目・耳にした事があると思いますが、『部分最適』とは文字通り特定の社会、会社、組織・団体、部署、グループ、システムなどにおける部分的、局部的、限定的なベストであり、対照的に『全体最適』はそれら全体にとって総合的、普遍的なベストを意味します。

一つの例として日系企業では当たり前、欧米企業でも参考にして取り入れている改善活動で両者の違いを説明しますと、過去にこんな事が実際にありました。

自動車関連のティアワン・サプライヤー(1次下請け業者)の社内改善活動のミーティングでティアツー・サプライヤー(2次下請け業者)からの納入部品に通い

(循環)方式で使われている空パレットや空箱を種類ごとに層別してから指定置き場に保管し、サプライヤーに返送するのに工数(人手と時間)が掛かり過ぎて生産に寄与する投入時間が食われているため、種類ごとの層別を止めて同じサプライヤー用の空パレット、空箱はごちゃ混ぜのまま一緒くたで返送する、という決定がなされ、各サプライヤーにも通知されました。

当のティアワン・サプライヤー社内では空パレット、空箱の層別・ハンドリングの作業時間が短縮され確かに効率が改善されましたが、その下請け業者の現場はたまったものではありません。

元々通い方式の循環サイクル内に投入されているパレットと通い箱の総数は決められており、手元には生産出荷に必要なぎりぎりの数量しかない設定にも拘らず、受け入れドックに着いた巡回トラックから引っ張り出す空パレット、空箱はサイズも種類もバラバラのごちゃ混ぜ。そのままでは指定の置き場にも持って行けず、とりあえず仮置き場に移してそこで想定外の人手を掛けて先ず層別作業。それが終わって初めて各パレット、通い箱の指定置き場に移動。いわゆるカンバンシステムや類似の生産方式を組んでいると、この余分な作業の所為で本来指定置き場にあるべきタイミングであるべき数の空パレット、空箱がないという事態が発生。生産ライン脇に投入する通い箱、パレットが不足して指定外のダンボールや代替パレットに仮入れ、仮置きし、一旦製品置き場あるいは倉庫に移した後、本来指定の通い箱とパレットに入れ替え、積み直しの作業まで発生する始末。当然想定外の人件費、作業費が嵩み、生産性もダウンしてかなりのコストアップ。

上記の例では、ティアワン・サプライヤーの社内改善は独り善がりの『部分最適』であり、社外の下請け業者まで含めた『全体最適』になっていない訳で、全体のシステムを考えれば改善どころか改悪になってしまったケースです。工程改善や帳票削減・管理改善などの場合も常に『全体最適』を頭に置いて独善の『部分最適』にならないように注意が必要です。

もう一つの例は、バスケットボールやサッカーの試合で見受けられるものです。

相手チームに抜群の得点能力を持った突出したスタープレイヤーがいる場合、そのプレイヤーにボールが渡るやいなや、時にはボールが渡る前から二人掛り、三人掛りでカバーして自由にプレイさせない戦法があります。これが上手く機能して得点を許さないか、通常実績よりかなり少ない最小得点に留めた場合は『部分最適』が試合全体の中でも『全体最適』とイコールとなって成功した例です。

逆に相手の1プレーヤーに複数の人手を割いたために、他のプレーヤーがフリーとなり通常のスタープレーヤー並の得点をされてしまえば『部分最適』は『全体最適』とイコールにならず失敗に終わります。同じ戦法でも結果は大違いです。

皆さん、『部分最適』の罠に陥らないようにくれぐれもご留意下さい。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

新年明けまして、おめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

月並み(年並みという言葉があればそちらにしたい)ですが、『年波』と勘違いされても困りますので、ここはやはり月並みとしておきましょう。今年は午年。巳年の昨年はヘビの如くニョロニョロと蛇行してしまい、目的地まで遠回りしたり、拙速で目標時刻までに辿り着けなかったりと苦戦続きでしたが、午年にバトンタッチした今年はウマのように駆け跳ね、目標に向けて疾走したいと思います。

日本も米国もシーズンオフとなったプロ野球では、ストーブリーグの大きな話題は何と言っても楽天ゴールデン・イーグルスの田中投手(マー君)のMLB移籍交渉の行方でしょう。従来のポスティングシステムが失効し、新ポスティングシステムの日米間交渉から決着まで紆余曲折がありましたが、クリスマス明けに楽天球団がポスティング制度を使ってのMLB移籍を認め、米国での争奪戦がスタートしました。資金力があり、柱になる先発投手が欲しいヤンキースが本命との噂が前々からありますが、果たしてどうなりますか?私個人的には、田中投手はエリート集団のヤンキースではなく、楽天のようにもう少し控えめな地方都市の球団で2番手位の先発投手として地道にコツコツ努力して成功して欲しいような気がします。高校時代は甲子園で『ハンカチ王子』こと斉藤祐樹投手の引き立て役的存在でしたし、プロになってからも一足先にMLBに移籍したダルビッシュ有投手の影で余り目立たない存在でした。そういう環境で体力強化や新たな球種のマスターと投球術の上達に励み、それが昨年レギュラーシーズン24勝無敗、1セーブという歴史的な大記録で球団も初優勝、日本一として花開いた訳です。とは言うものの、やはり優勝を狙える球団、プレイオフに出れるような球団でないと十分なサポートがなく勝ち星にも恵まれず期待を裏切る事態になりかねないので、難しい選択ではあります。何処の球団に落ち着くとしても、高価な値札に見合った日本からの輸入品の活躍を期待しましょう。

またまた前書きが長くなってしまいました。今回のテーマは『部分最適と全体最適』です。

何らかの形でビジネスに関わっていらっしゃる方は何度か目・耳にした事があると思いますが、『部分最適』とは文字通り特定の社会、会社、組織・団体、部署、グループ、システムなどにおける部分的、局部的、限定的なベストであり、対照的に『全体最適』はそれら全体にとって総合的、普遍的なベストを意味します。

一つの例として日系企業では当たり前、欧米企業でも参考にして取り入れている改善活動で両者の違いを説明しますと、過去にこんな事が実際にありました。

自動車関連のティアワン・サプライヤー(1次下請け業者)の社内改善活動のミーティングでティアツー・サプライヤー(2次下請け業者)からの納入部品に通い

(循環)方式で使われている空パレットや空箱を種類ごとに層別してから指定置き場に保管し、サプライヤーに返送するのに工数(人手と時間)が掛かり過ぎて生産に寄与する投入時間が食われているため、種類ごとの層別を止めて同じサプライヤー用の空パレット、空箱はごちゃ混ぜのまま一緒くたで返送する、という決定がなされ、各サプライヤーにも通知されました。

当のティアワン・サプライヤー社内では空パレット、空箱の層別・ハンドリングの作業時間が短縮され確かに効率が改善されましたが、その下請け業者の現場はたまったものではありません。

元々通い方式の循環サイクル内に投入されているパレットと通い箱の総数は決められており、手元には生産出荷に必要なぎりぎりの数量しかない設定にも拘らず、受け入れドックに着いた巡回トラックから引っ張り出す空パレット、空箱はサイズも種類もバラバラのごちゃ混ぜ。そのままでは指定の置き場にも持って行けず、とりあえず仮置き場に移してそこで想定外の人手を掛けて先ず層別作業。それが終わって初めて各パレット、通い箱の指定置き場に移動。いわゆるカンバンシステムや類似の生産方式を組んでいると、この余分な作業の所為で本来指定置き場にあるべきタイミングであるべき数の空パレット、空箱がないという事態が発生。生産ライン脇に投入する通い箱、パレットが不足して指定外のダンボールや代替パレットに仮入れ、仮置きし、一旦製品置き場あるいは倉庫に移した後、本来指定の通い箱とパレットに入れ替え、積み直しの作業まで発生する始末。当然想定外の人件費、作業費が嵩み、生産性もダウンしてかなりのコストアップ。

上記の例では、ティアワン・サプライヤーの社内改善は独り善がりの『部分最適』であり、社外の下請け業者まで含めた『全体最適』になっていない訳で、全体のシステムを考えれば改善どころか改悪になってしまったケースです。工程改善や帳票削減・管理改善などの場合も常に『全体最適』を頭に置いて独善の『部分最適』にならないように注意が必要です。

もう一つの例は、バスケットボールやサッカーの試合で見受けられるものです。

相手チームに抜群の得点能力を持った突出したスタープレイヤーがいる場合、そのプレイヤーにボールが渡るやいなや、時にはボールが渡る前から二人掛り、三人掛りでカバーして自由にプレイさせない戦法があります。これが上手く機能して得点を許さないか、通常実績よりかなり少ない最小得点に留めた場合は『部分最適』が試合全体の中でも『全体最適』とイコールとなって成功した例です。

逆に相手の1プレーヤーに複数の人手を割いたために、他のプレーヤーがフリーとなり通常のスタープレーヤー並の得点をされてしまえば『部分最適』は『全体最適』とイコールにならず失敗に終わります。同じ戦法でも結果は大違いです。

皆さん、『部分最適』の罠に陥らないようにくれぐれもご留意下さい。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

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