<!--:en-->2013 JSD Principal Mr. Murai<!--:--><!--:ja-->今春 日本より赴任 デトロイトりんご会補習授業校 村井校長先生に伺う<!--:-->

 今年3月16日にデトロイトりんご会補習授業校の校長として着任された村井龍三先生に、夏休みが間近な7月初旬にインタビューを受けて頂いた。
 村井先生はミシガン州と姉妹県州を結んでいる滋賀県の出身。中学校の美術科担当が出発で、その後管理職となって小中学校の教頭及び校長、さらに教育委員会で在職の経験もおありになる。一昨年に定年退職された時点で、予ねてより希望していた在外施設シニア派遣が決まっており、昨年度は一般派遣者向け及び管理者対象の研修を受けるなど準備を整えてきたとのこと。ちなみに、シニア派遣制度はかつて在外教育施設に派遣された経験を有する退職教員に応募を絞っており、海外子女教育の充実を図る目的で2007年度にスタートした。
 村井先生の海外派遣は今回が3回目であり、1回目は1984年から3年間インドのニューデリー日本人学校に教員として、2回目は2005年から3年間サウジアラビアのリアド日本人学校に校長として赴任されている。一様に日本人学校と言うものの、設置する側と相手国との事情が様々であるため、管轄にも差異があり、ニューデリー日本人学校は在インド日本国大使館の付属、一方、リアド日本人学校はサウジアラビア国の許可を得たインターナショナルスクールとして設置を認可され同国の歴史や地理を学ぶことが課せられるのだそうだ。
 日本国内の学校と在外教育施設や教育委員会を含めて37年間に15カ所に上る勤務先を経験されているという豊かな経歴と見聞をお持ちの村井先生に、海外帰国児童生徒の特長や日本の受け入れ状況などについてお話を伺った。

Q:海外育ちの子ども達の良さをどういったところに感じられますか。
 インドのニューデリー日本人学校は全校児童生徒が88人の小規模校でしたし、サウジアラビアのリアド日本人学校は治安情勢の悪化や校舎賃貸契約期限の接近、学校財政の弱さにより、赴任時、閉校の危機に直面していましたが、規模や事情が異なる中でも共通していたのは学んでいる子ども達の目の輝きです。両校では頻繁に停電や断水が起きるので木の下で授業を行ったこともありましたし、一つの部屋を多目的に利用していましたが、恵まれていない状況の中でも生き生きと学ぶ姿がありました。
ここアメリカは環境は恵まれていますが、補習授業校の児童生徒は別の意味で厳しい状況の中で良く頑張っているなあと感心します。補習授業校は週に1回の授業日にも拘らず日本の教科書を使って全単元を履修しますから各単元にかける時間が少ない訳ですが、子ども達の意欲や時間の使い方は素晴らしいものがあります。現地校に通って週末は疲れているでしょうから健康面は気になります。
 それに比べ、日本の子ども達は恵まれているのに学ぶ意欲に欠けているように思います。逆境にくじけない逞しさが欲しいです。

Q:一大行事である運動会が既に催されましたが、どのような感想を抱かれましたか。
 サウジアラビアでは日本人会の運動会に学校が参加する形でしたが、当校では学校行事に多くの企業の方々が準備や当日の補助をしてくださっています。協力無しでは有り得ませんし、非常に段取り良く進めていました。マニュアルもしっかりできていて、組織力と長年の積み重ねを感じました。
 児童生徒については、生徒会を含めて、特に高校生の活躍が素晴らしいと思いました。競技の補助や模擬店の運営を実に良くやっていました。先日、内装補修が行われている校舎の天井が崩れかけていたのですが、床に注意を促すため、椅子を置くことを高校生の方から「自分たちでしましょうか」と申し出てくれました。大人だなあと感じました。下の学年の子ども達がそれをモデルとして学んでいると思います。良い意味で純粋に育っている子が多いですね。

Q:日本に帰国する子ども達がスムースに適応するために、どんな配慮が考えられますか。
 補習授業校としては日本の学校生活での習慣を経験できるように努める必要があります。例えば授業の始めと終わりの挨拶ですとか、挙手の仕方などです。とはいえ、保護者の方へのお願いになりますが、日本の学校での学習内容やサービスをここで求めないようにとお伝えしたいです。
 そして、せっかくアメリカに居る子ども達に、いろいろな経験をさせてあげたらいいですね。日本では見聞き経験できないことに触れて、感性を磨いて欲しいです。

Q:校長先生ご自身はアメリカに居る間に余暇にどんなことをしたいと思っていらっしゃいますか。
 美術が専門ですから、休みを利用して特に現代美術の作品を見て回って自分の作品に生かしたいと思っています。指導者として制作活動、材料研究をして教材開発に役立てることは一生涯常に続けていかなくはならないと考えています。
 それから、日本では琵琶湖に近く、子ども達にカヌーを教えていましたのでこちらにも持ってきました。早速ケンシントンパークでやってきました。自然が豊かで、カヌーはポピュラーで良いコースも多いと聞いていますので、楽しみたいと思います。

Q:最後に、学校長としての抱負を伺わせてください。
 デトロイトりんご会では中期計画*を作成していますが、校長として、まず1つ目の計画目標である‘教育の質の向上’に向けて模索に務めたいと考えています。講師の先生方に日本の教育事情や指導のノウハウを提供するために校長短信を継続しています。
 また本年度、本校の学校設置目的に「日本と国際社会をリードできる人財を育成する教育を提供する」を新たに加えました。その実現のために、最終学年である高校3年生の時点にどういう力が備わっていたら良いのか、現在、講師にアンケートを取っています。先生方が共通の子ども像を描き、そして実際にどの学年でどんな力をつける為に何をするのかを具体化していく必要があります。それを推進していきます。
 幸い、当校の理事・運営委員の方々は企業人であり今の社会のニーズをよくご存知なので、すり合わせていけば素晴らしい方向に進んでいくことでしょう。補習校には大きな可能性があり楽しみです。

*デトロイトりんご会補習授業校では現在約800名の子どもたち(幼稚園児・小学生・中学生・高校生)が毎週土曜日に、国語を中心に算数(数学)、学年によって社会・理科なども加えた授業に取り組んでいる。今年度(2013年度)より、設置目的「日本の学習指導要領に基づいた教育課程を補習する機会を与える」を「(同文)・・・補習する機会を与えると共に、将来、日本と国際社会をリードできる人財を育成する教育を提供することを目的とします。」へ改訂した。改訂された設置目的の実現と、補習授業校の魅力を高めるために設定された今後3年間の「中期計画」は、①目指す園児・生徒像実現に向けた教育の質の向上、②安全確保と魅力向上、③安定経営と効率運営、の3つが柱。

 今年3月16日にデトロイトりんご会補習授業校の校長として着任された村井龍三先生に、夏休みが間近な7月初旬にインタビューを受けて頂いた。
 村井先生はミシガン州と姉妹県州を結んでいる滋賀県の出身。中学校の美術科担当が出発で、その後管理職となって小中学校の教頭及び校長、さらに教育委員会で在職の経験もおありになる。一昨年に定年退職された時点で、予ねてより希望していた在外施設シニア派遣が決まっており、昨年度は一般派遣者向け及び管理者対象の研修を受けるなど準備を整えてきたとのこと。ちなみに、シニア派遣制度はかつて在外教育施設に派遣された経験を有する退職教員に応募を絞っており、海外子女教育の充実を図る目的で2007年度にスタートした。
 村井先生の海外派遣は今回が3回目であり、1回目は1984年から3年間インドのニューデリー日本人学校に教員として、2回目は2005年から3年間サウジアラビアのリアド日本人学校に校長として赴任されている。一様に日本人学校と言うものの、設置する側と相手国との事情が様々であるため、管轄にも差異があり、ニューデリー日本人学校は在インド日本国大使館の付属、一方、リアド日本人学校はサウジアラビア国の許可を得たインターナショナルスクールとして設置を認可され同国の歴史や地理を学ぶことが課せられるのだそうだ。
 日本国内の学校と在外教育施設や教育委員会を含めて37年間に15カ所に上る勤務先を経験されているという豊かな経歴と見聞をお持ちの村井先生に、海外帰国児童生徒の特長や日本の受け入れ状況などについてお話を伺った。

Q:海外育ちの子ども達の良さをどういったところに感じられますか。
 インドのニューデリー日本人学校は全校児童生徒が88人の小規模校でしたし、サウジアラビアのリアド日本人学校は治安情勢の悪化や校舎賃貸契約期限の接近、学校財政の弱さにより、赴任時、閉校の危機に直面していましたが、規模や事情が異なる中でも共通していたのは学んでいる子ども達の目の輝きです。両校では頻繁に停電や断水が起きるので木の下で授業を行ったこともありましたし、一つの部屋を多目的に利用していましたが、恵まれていない状況の中でも生き生きと学ぶ姿がありました。
ここアメリカは環境は恵まれていますが、補習授業校の児童生徒は別の意味で厳しい状況の中で良く頑張っているなあと感心します。補習授業校は週に1回の授業日にも拘らず日本の教科書を使って全単元を履修しますから各単元にかける時間が少ない訳ですが、子ども達の意欲や時間の使い方は素晴らしいものがあります。現地校に通って週末は疲れているでしょうから健康面は気になります。
 それに比べ、日本の子ども達は恵まれているのに学ぶ意欲に欠けているように思います。逆境にくじけない逞しさが欲しいです。

Q:一大行事である運動会が既に催されましたが、どのような感想を抱かれましたか。
 サウジアラビアでは日本人会の運動会に学校が参加する形でしたが、当校では学校行事に多くの企業の方々が準備や当日の補助をしてくださっています。協力無しでは有り得ませんし、非常に段取り良く進めていました。マニュアルもしっかりできていて、組織力と長年の積み重ねを感じました。
 児童生徒については、生徒会を含めて、特に高校生の活躍が素晴らしいと思いました。競技の補助や模擬店の運営を実に良くやっていました。先日、内装補修が行われている校舎の天井が崩れかけていたのですが、床に注意を促すため、椅子を置くことを高校生の方から「自分たちでしましょうか」と申し出てくれました。大人だなあと感じました。下の学年の子ども達がそれをモデルとして学んでいると思います。良い意味で純粋に育っている子が多いですね。

Q:日本に帰国する子ども達がスムースに適応するために、どんな配慮が考えられますか。
 補習授業校としては日本の学校生活での習慣を経験できるように努める必要があります。例えば授業の始めと終わりの挨拶ですとか、挙手の仕方などです。とはいえ、保護者の方へのお願いになりますが、日本の学校での学習内容やサービスをここで求めないようにとお伝えしたいです。
 そして、せっかくアメリカに居る子ども達に、いろいろな経験をさせてあげたらいいですね。日本では見聞き経験できないことに触れて、感性を磨いて欲しいです。

Q:校長先生ご自身はアメリカに居る間に余暇にどんなことをしたいと思っていらっしゃいますか。
 美術が専門ですから、休みを利用して特に現代美術の作品を見て回って自分の作品に生かしたいと思っています。指導者として制作活動、材料研究をして教材開発に役立てることは一生涯常に続けていかなくはならないと考えています。
 それから、日本では琵琶湖に近く、子ども達にカヌーを教えていましたのでこちらにも持ってきました。早速ケンシントンパークでやってきました。自然が豊かで、カヌーはポピュラーで良いコースも多いと聞いていますので、楽しみたいと思います。

Q:最後に、学校長としての抱負を伺わせてください。
 デトロイトりんご会では中期計画*を作成していますが、校長として、まず1つ目の計画目標である‘教育の質の向上’に向けて模索に務めたいと考えています。講師の先生方に日本の教育事情や指導のノウハウを提供するために校長短信を継続しています。
 また本年度、本校の学校設置目的に「日本と国際社会をリードできる人財を育成する教育を提供する」を新たに加えました。その実現のために、最終学年である高校3年生の時点にどういう力が備わっていたら良いのか、現在、講師にアンケートを取っています。先生方が共通の子ども像を描き、そして実際にどの学年でどんな力をつける為に何をするのかを具体化していく必要があります。それを推進していきます。
 幸い、当校の理事・運営委員の方々は企業人であり今の社会のニーズをよくご存知なので、すり合わせていけば素晴らしい方向に進んでいくことでしょう。補習校には大きな可能性があり楽しみです。

*デトロイトりんご会補習授業校では現在約800名の子どもたち(幼稚園児・小学生・中学生・高校生)が毎週土曜日に、国語を中心に算数(数学)、学年によって社会・理科なども加えた授業に取り組んでいる。今年度(2013年度)より、設置目的「日本の学習指導要領に基づいた教育課程を補習する機会を与える」を「(同文)・・・補習する機会を与えると共に、将来、日本と国際社会をリードできる人財を育成する教育を提供することを目的とします。」へ改訂した。改訂された設置目的の実現と、補習授業校の魅力を高めるために設定された今後3年間の「中期計画」は、①目指す園児・生徒像実現に向けた教育の質の向上、②安全確保と魅力向上、③安定経営と効率運営、の3つが柱。

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