
7年間に延べ125人が参加
毎年夏は、日本語・日本文化体験学習プログラム「サマーキャンプ in ぎふ」の実施のために約1カ月半にわたり日本に滞在しています。そのうち1カ月近くを岐阜県揖斐川町の里山にて、サマーキャンプに参加する子どもたちと過ごしています。「サマーキャンプ inぎふ」は、海外生活が長い日本語学習中の小学生(4~6年)、中学生、高校生を対象として、日本語学習意欲を芽生えさせることを目的に、2週間と10日間の二つの期間にて実施しています。伝統文化や禅寺での体験、同世代の子どもをはじめ地域の人々との交流を通して、日本語や日本文化を心と体で感じられるように多彩なプログラムを用意しています。
「サマーキャンプ in ぎふ」は今年で8年目を迎えますが、今までの7年間で13回実施し、延べ125人の子どもが参加してくれました。内訳は、小学生が48人、中学生が66人、高校生が11人、男子が61人、女子が64人です。地域別には大半が米国ですが、カナダ、英国、中国、韓国、アイルランド在住の子どもや日本在住でインターナショナルスクールやアメリカンスクールに在学している子どももいます。私は今でもこれらの子どもたち一人ひとりのことを鮮明に覚えています。短期間といえども寝食を共にしたためだと思いますが、一人ひとりの子どもの個性が豊かであることも影響していると思います。そして、これらの子どもたちの個性は、海外での生活が育んだものであると言えるでしょう。また、一人ひとりの子どもたちの、見ること聞くとに感動し、出会った人々と楽しく交流する姿も忘れられません。
海外で育った子どもの特性
米国で子育てをしていると、家庭内では日本語で日本語的な教育を心がけていても、日本で生まれ育った親とは異なった言動が見られることに気づきます。また、補習校や学習塾などの教室でも日本の子どもたちにはない言動が気になります。世代の違いという要因もありますが、米国社会で育っているからこその違いでもあります。例えば、大人に対しても「あなたは~」とか、「彼(彼女)が~」という言い回しをすることや、「~した方がいいですか?」と言うべきところを「~してほしいの?」、「~してください」と言うべきところを「~できるか?」というような点はとても気になります。小さな子どもに、「あなたはぼくと遊べるか?」と言われた時や、部屋の掃除をしなさいと指示したときに、「あなたは掃除してほしいか」と言われた時には少々驚きました。また、校長先生に挨拶に行ったときにお辞儀もせずに握手を求めた小学生もいます。これらの事例は、決して子どもが偉そうにしているわけではなく、言語や文化の違いによるものです。
一方で、ほとんどの子どもが、明るく元気で、積極的、また友好的であるという特質を持っています。例えば、日本語に自信がなくても人前に立って大きな声でスピーチをすることができますし、初対面であっても言葉が通じなくてもすぐに仲良くなれますし、親元を離れてもホームシックになることも少なく楽しく過ごしています。「サマーキャンプ in ぎふ」では、集合場所のJR名古屋駅(以前はJR穂積駅、今年からはJR岐阜羽島駅)にて参加者が初めて出会いますが、初対面同士であるにもかかわらず、キャンプ地までのバスの中は、子どもたちの話し声や笑い声であっという間に騒がしくなります。そして、宿泊施設においても、まあまあおとなしく寝るのは初日くらいで、2日目からは消灯時間になっても話し声がちらほら聞こえるというくらいお話し好きの子が多いです。そして、キャンプ中の移動の際のバスの中は50人の団体かというくらいのにぎやかさとなります。(サマーキャンプ参加者数は回によって異なりますが10~20人です。
日本語の学習意欲を芽生えさせるために
「サマーキャンプ in ぎふ」に参加する子どもには、どちらかというと日本語の苦手な子どもが多く、家庭内でも日本語を話す機会が少ないという子どもも目立ちます。また、補習校や日本語学校への通学や日本の学校での体験入学を止めてしまった子どももいます。つまり、日本語の学習意欲を失ってしまっているのです。
確かに、海外にいて英語で暮らし英語で学んでいると、日本語を使う必要はほとんどないに等しいでしょう。また、日本語は英語よりもはるかに難しい言語であると感じるでしょう。しかし、親御さんにしてみれば、子どもが日本語を理解しなくなってしまうことはとても寂しいことですし、日本に暮らす祖父母や親族とのコミュニケーションも取りにくくなるという問題もあります。どうにかして子どもに日本語学習を継続してほしいと思うのは当然のことです。ただし、そのために嫌がる子どもに、無理やり日本語を使わせようとしたり、補習校や日本語学校に通学させようとしたりすると、もっと日本語が嫌いになるということにもなりかねません。
そこで、「サマーキャンプ in ぎふ」では、日本や日本人を好きになること、そして日本を知るために、日本人と楽しく交流するためには日本語が必要であることを感じ、日本語を学習したいという気持ちを持てるように多彩な体験プログラムを用意しています。第1期では地元の学校に体験入学しますが、学校での勉強内容を習得することが目的ではなく、同世代の日本の子どもとともに学校生活を経験することが重要と考えています。授業では日本と自国の違いを感じ、日本の学校特有の掃除や給食、また部活動などにも積極的に参加することがとても貴重な経験になっています。
地元民家でのホームステイは、3~4世代が同居している家庭で過ごすこともあります。伝統文化ではものつくりや食つくりをしますが、それは地元のおじいさんやおばあさん、おじさん、おばさんが講師となって教えてれます。宿泊施設の周りを散策したり、近くの山でハイキングしたり、川で遊んでいたりすると、地元の人々が声をかけてくれます。このような皆さんは英語ではなく日本語、それも方言交じりの日本語で話しかけてきます。意味は分かりにくいかもしれませんが、子どもたちはそれらの人々の言葉にぬくもりを感じているようです。このような触れ合いもまた、子どもたちの日本語学習意欲の芽生えに奏功しています。
また、日本語を使うということもとても大切にしています。このためにあえて英語での説明や通訳はしていませんし、プログラム実施中は英語の使用を禁止しています。これは日本語を使えるのに英語だけですまそうとすることを避けるため、また日本語の表現の誤りを修正するために重要です。
「サマーキャンプ in ぎふ」の終了後には、家庭でも日本語を話すようになった、日本語の本を読むようになった、日本語学校や補習校に通学を始めたなどというような歓びの声をお聞きします。
「サマーキャンプ in ぎふ2013」は、参加者の申し込みを受け付けています。詳細は、米日教育交流協議会のウェブサイト www.ujeec.org をご覧ください。
米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人
7年間に延べ125人が参加
毎年夏は、日本語・日本文化体験学習プログラム「サマーキャンプ in ぎふ」の実施のために約1カ月半にわたり日本に滞在しています。そのうち1カ月近くを岐阜県揖斐川町の里山にて、サマーキャンプに参加する子どもたちと過ごしています。「サマーキャンプ inぎふ」は、海外生活が長い日本語学習中の小学生(4~6年)、中学生、高校生を対象として、日本語学習意欲を芽生えさせることを目的に、2週間と10日間の二つの期間にて実施しています。伝統文化や禅寺での体験、同世代の子どもをはじめ地域の人々との交流を通して、日本語や日本文化を心と体で感じられるように多彩なプログラムを用意しています。
「サマーキャンプ in ぎふ」は今年で8年目を迎えますが、今までの7年間で13回実施し、延べ125人の子どもが参加してくれました。内訳は、小学生が48人、中学生が66人、高校生が11人、男子が61人、女子が64人です。地域別には大半が米国ですが、カナダ、英国、中国、韓国、アイルランド在住の子どもや日本在住でインターナショナルスクールやアメリカンスクールに在学している子どももいます。私は今でもこれらの子どもたち一人ひとりのことを鮮明に覚えています。短期間といえども寝食を共にしたためだと思いますが、一人ひとりの子どもの個性が豊かであることも影響していると思います。そして、これらの子どもたちの個性は、海外での生活が育んだものであると言えるでしょう。また、一人ひとりの子どもたちの、見ること聞くとに感動し、出会った人々と楽しく交流する姿も忘れられません。
海外で育った子どもの特性
米国で子育てをしていると、家庭内では日本語で日本語的な教育を心がけていても、日本で生まれ育った親とは異なった言動が見られることに気づきます。また、補習校や学習塾などの教室でも日本の子どもたちにはない言動が気になります。世代の違いという要因もありますが、米国社会で育っているからこその違いでもあります。例えば、大人に対しても「あなたは~」とか、「彼(彼女)が~」という言い回しをすることや、「~した方がいいですか?」と言うべきところを「~してほしいの?」、「~してください」と言うべきところを「~できるか?」というような点はとても気になります。小さな子どもに、「あなたはぼくと遊べるか?」と言われた時や、部屋の掃除をしなさいと指示したときに、「あなたは掃除してほしいか」と言われた時には少々驚きました。また、校長先生に挨拶に行ったときにお辞儀もせずに握手を求めた小学生もいます。これらの事例は、決して子どもが偉そうにしているわけではなく、言語や文化の違いによるものです。
一方で、ほとんどの子どもが、明るく元気で、積極的、また友好的であるという特質を持っています。例えば、日本語に自信がなくても人前に立って大きな声でスピーチをすることができますし、初対面であっても言葉が通じなくてもすぐに仲良くなれますし、親元を離れてもホームシックになることも少なく楽しく過ごしています。「サマーキャンプ in ぎふ」では、集合場所のJR名古屋駅(以前はJR穂積駅、今年からはJR岐阜羽島駅)にて参加者が初めて出会いますが、初対面同士であるにもかかわらず、キャンプ地までのバスの中は、子どもたちの話し声や笑い声であっという間に騒がしくなります。そして、宿泊施設においても、まあまあおとなしく寝るのは初日くらいで、2日目からは消灯時間になっても話し声がちらほら聞こえるというくらいお話し好きの子が多いです。そして、キャンプ中の移動の際のバスの中は50人の団体かというくらいのにぎやかさとなります。(サマーキャンプ参加者数は回によって異なりますが10~20人です。
日本語の学習意欲を芽生えさせるために
「サマーキャンプ in ぎふ」に参加する子どもには、どちらかというと日本語の苦手な子どもが多く、家庭内でも日本語を話す機会が少ないという子どもも目立ちます。また、補習校や日本語学校への通学や日本の学校での体験入学を止めてしまった子どももいます。つまり、日本語の学習意欲を失ってしまっているのです。
確かに、海外にいて英語で暮らし英語で学んでいると、日本語を使う必要はほとんどないに等しいでしょう。また、日本語は英語よりもはるかに難しい言語であると感じるでしょう。しかし、親御さんにしてみれば、子どもが日本語を理解しなくなってしまうことはとても寂しいことですし、日本に暮らす祖父母や親族とのコミュニケーションも取りにくくなるという問題もあります。どうにかして子どもに日本語学習を継続してほしいと思うのは当然のことです。ただし、そのために嫌がる子どもに、無理やり日本語を使わせようとしたり、補習校や日本語学校に通学させようとしたりすると、もっと日本語が嫌いになるということにもなりかねません。
そこで、「サマーキャンプ in ぎふ」では、日本や日本人を好きになること、そして日本を知るために、日本人と楽しく交流するためには日本語が必要であることを感じ、日本語を学習したいという気持ちを持てるように多彩な体験プログラムを用意しています。第1期では地元の学校に体験入学しますが、学校での勉強内容を習得することが目的ではなく、同世代の日本の子どもとともに学校生活を経験することが重要と考えています。授業では日本と自国の違いを感じ、日本の学校特有の掃除や給食、また部活動などにも積極的に参加することがとても貴重な経験になっています。
地元民家でのホームステイは、3~4世代が同居している家庭で過ごすこともあります。伝統文化ではものつくりや食つくりをしますが、それは地元のおじいさんやおばあさん、おじさん、おばさんが講師となって教えてれます。宿泊施設の周りを散策したり、近くの山でハイキングしたり、川で遊んでいたりすると、地元の人々が声をかけてくれます。このような皆さんは英語ではなく日本語、それも方言交じりの日本語で話しかけてきます。意味は分かりにくいかもしれませんが、子どもたちはそれらの人々の言葉にぬくもりを感じているようです。このような触れ合いもまた、子どもたちの日本語学習意欲の芽生えに奏功しています。
また、日本語を使うということもとても大切にしています。このためにあえて英語での説明や通訳はしていませんし、プログラム実施中は英語の使用を禁止しています。これは日本語を使えるのに英語だけですまそうとすることを避けるため、また日本語の表現の誤りを修正するために重要です。
「サマーキャンプ in ぎふ」の終了後には、家庭でも日本語を話すようになった、日本語の本を読むようになった、日本語学校や補習校に通学を始めたなどというような歓びの声をお聞きします。
「サマーキャンプ in ぎふ2013」は、参加者の申し込みを受け付けています。詳細は、米日教育交流協議会のウェブサイト www.ujeec.org をご覧ください。
米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人