新年明けましておめでとうございます。2013年が皆様にとって明るく健やかで実り多き一年でありますようにお祈り申し上げます。

先月号のテーマとして取り上げた『財政の崖』問題は、予想通りの経過・進行でクリスマス前には決着せず、オバマ大統領がハワイでの短い休暇から戻った今日、この新年1月号の原稿作業時にも揉め続けています。本号発行時までには何らかの妥協案で合意し、最悪の事態を免れる事を願うばかりです。

日本では、既にご承知の如く、先日行われた衆議院解散・改選で自民党が大勝し、第一党の立場に復帰して安倍新首相と新内閣が誕生しました。自民党が実力で勝ち取ったというよりも民主党が絶対に負けるタイミングで突然自殺行為的な解散選挙に走り、消去法で選ばれた自民党他の候補が多数当選した形でしょうか。

いずれにしても、新首相、新政権には国民が首を長くして待ちわびている『国民のための政治』を力強くかつ着実に実行して欲しいものです。

さて、今回のタイトルは『年の瀬、年明けに寄せて』です。テーマというよりも、この時期に思うところを書き綴ってみます。

年の瀬で一番大きなニュースは、何と言ってもコネチカット州ニュータウン市のサンディー・フック小学校で起こった銃乱射事件です。一年で一番楽しみなクリスマスを10日後に控えた学校で6人の大人と20人もの幼い命が奪われました。

「またかっ!?」という唸り声に続いて「もう沢山だ。いい加減にしろ!!」という怒りがこみ上がるのを押さえ切れませんでした。

在米生活満23年になりますが、同じ様な乱射事件、銃撃事件が後を絶ちません。前の事件を忘れられない内に全米各地で次から次と悲しい事件が起きています。その都度『銃規制の強化』が話題になりながら、犠牲者のご家族の切ない思いは通ぜず、販売店での形式的な銃器購入者の身分・犯罪歴などの事前確認・照会が法律で義務付けられた位でショー、展示会で即売される銃器は対象外のいわゆるザル法でした。

米国での銃規制の問題に関しては常に賛否両論ありますが、古くはヨーロッパから米国への移民初期、西部開拓時代、独立戦争、南北戦争を経て現在も脈々と生き続ける「自分の身は自分で守る」精神と自己防衛の権利が叫ばれ、目に見えて効果のある銃規制が法律化できないまま今日に至っています。

事件後、数日して次々報道されるニュースで葬儀の模様と犠牲者の名前、趣味、人柄などを耳にする度に胸が張り裂けるような悲しみとやり場のない怒りが再びこみ上げて来ました。「歴代の大統領も国会議員達も一体何をやっているんだ!?」「『世界で一番自由で進んだ国、発展した国』と自画自賛する国=アメリカで人殺しの道具となる銃の規制すら出来ないとは !!」という怒りです。

私の怒りを更に大きくしたのが、一つは事件発生直後犯人が使った銃と同じあるいは類似型式の銃器の販売が急増したことです。今回だけでなく、銃規制強化の前に購入しようと考えた人達がかなりいた事を示しています。狩猟が目的ならば一秒に何十発も銃弾を連射できるような銃は不要です。購入した本人達は銃規制に関して総論賛成、各論反対の最たるもので「自分はまとも。キチンと銃の管理が出来て何も問題は起こさない」と思っているのでしょうが、今のご時勢いつ何時何が起こるか分かりません。自分は大丈夫でも犯罪者やその予備軍に奪われて事件を起こす恐れも十分にあります。

もう一つはクリスマス直前に全米中継されたNRA(全米ライフル協会)副社長のテレビ談話です。談話の肝は要するに「米国の全ての学校に銃装備した警官を配置すべき」という驚くべき提案です。これを聞いた私は驚き、呆れて開いた口が塞がらず、恥知らず、人でなしと思うと同時に情けない思いに駆られました。

これだけ無実の人の尊い命が奪われ、悲しい思いをした人々が数多く居る中で少しは反省して銃規制に協力するどころか、更に多くの銃を売ろうとするのか!?この人はたとえ自分の子供が銃で撃たれて命を落としても何とも思わないのか?むしろ銃撃犯人が使った銃が売れた事を喜ぶのか?とさえ考えてしまいました。目には目を、力には力を、銃には銃を、の典型的な考え方ですが、もし武装警官が常駐パトロールする学校が増えたらそこの生徒・学生・教師・親達はどう思うか?教師にも武器と訓練を与えよ、という極端な意見まであるようですが、その教師や武装警官が何かの切欠でキレて自制心を失ったり、精神異常を来たして無防備な生徒や学生に銃を向けたらどうなるか?考えるだけでも恐ろしいです。

また、持っている銃を奪われて犯罪・事件に使われる恐れもあります。武装警官や教師が居ると分かれば、更にそれを上回る重装備をして乗り込む犯罪者が出て来るかもしれません。狂気が狂気を呼び、悲劇の規模が大きくなるばかりです。何度も言われたことですが、もうこれ以上待てません。次の悲劇が起こる前に世論が沸騰している今こそ、本格的銃規制を実現せねばなりません。

年明け早々暗い話題になってしまいましたが、新年のスタートに当たり巳年の今年こそ良い意味で蛇のように執念深く、粘り強く本当に有効で意味のある銃規制の強化実現に在米日本人の我々も少しでも貢献出来るようにしたいものです。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

新年明けましておめでとうございます。2013年が皆様にとって明るく健やかで実り多き一年でありますようにお祈り申し上げます。

先月号のテーマとして取り上げた『財政の崖』問題は、予想通りの経過・進行でクリスマス前には決着せず、オバマ大統領がハワイでの短い休暇から戻った今日、この新年1月号の原稿作業時にも揉め続けています。本号発行時までには何らかの妥協案で合意し、最悪の事態を免れる事を願うばかりです。

日本では、既にご承知の如く、先日行われた衆議院解散・改選で自民党が大勝し、第一党の立場に復帰して安倍新首相と新内閣が誕生しました。自民党が実力で勝ち取ったというよりも民主党が絶対に負けるタイミングで突然自殺行為的な解散選挙に走り、消去法で選ばれた自民党他の候補が多数当選した形でしょうか。

いずれにしても、新首相、新政権には国民が首を長くして待ちわびている『国民のための政治』を力強くかつ着実に実行して欲しいものです。

さて、今回のタイトルは『年の瀬、年明けに寄せて』です。テーマというよりも、この時期に思うところを書き綴ってみます。

年の瀬で一番大きなニュースは、何と言ってもコネチカット州ニュータウン市のサンディー・フック小学校で起こった銃乱射事件です。一年で一番楽しみなクリスマスを10日後に控えた学校で6人の大人と20人もの幼い命が奪われました。

「またかっ!?」という唸り声に続いて「もう沢山だ。いい加減にしろ!!」という怒りがこみ上がるのを押さえ切れませんでした。

在米生活満23年になりますが、同じ様な乱射事件、銃撃事件が後を絶ちません。前の事件を忘れられない内に全米各地で次から次と悲しい事件が起きています。その都度『銃規制の強化』が話題になりながら、犠牲者のご家族の切ない思いは通ぜず、販売店での形式的な銃器購入者の身分・犯罪歴などの事前確認・照会が法律で義務付けられた位でショー、展示会で即売される銃器は対象外のいわゆるザル法でした。

米国での銃規制の問題に関しては常に賛否両論ありますが、古くはヨーロッパから米国への移民初期、西部開拓時代、独立戦争、南北戦争を経て現在も脈々と生き続ける「自分の身は自分で守る」精神と自己防衛の権利が叫ばれ、目に見えて効果のある銃規制が法律化できないまま今日に至っています。

事件後、数日して次々報道されるニュースで葬儀の模様と犠牲者の名前、趣味、人柄などを耳にする度に胸が張り裂けるような悲しみとやり場のない怒りが再びこみ上げて来ました。「歴代の大統領も国会議員達も一体何をやっているんだ!?」「『世界で一番自由で進んだ国、発展した国』と自画自賛する国=アメリカで人殺しの道具となる銃の規制すら出来ないとは !!」という怒りです。

私の怒りを更に大きくしたのが、一つは事件発生直後犯人が使った銃と同じあるいは類似型式の銃器の販売が急増したことです。今回だけでなく、銃規制強化の前に購入しようと考えた人達がかなりいた事を示しています。狩猟が目的ならば一秒に何十発も銃弾を連射できるような銃は不要です。購入した本人達は銃規制に関して総論賛成、各論反対の最たるもので「自分はまとも。キチンと銃の管理が出来て何も問題は起こさない」と思っているのでしょうが、今のご時勢いつ何時何が起こるか分かりません。自分は大丈夫でも犯罪者やその予備軍に奪われて事件を起こす恐れも十分にあります。

もう一つはクリスマス直前に全米中継されたNRA(全米ライフル協会)副社長のテレビ談話です。談話の肝は要するに「米国の全ての学校に銃装備した警官を配置すべき」という驚くべき提案です。これを聞いた私は驚き、呆れて開いた口が塞がらず、恥知らず、人でなしと思うと同時に情けない思いに駆られました。

これだけ無実の人の尊い命が奪われ、悲しい思いをした人々が数多く居る中で少しは反省して銃規制に協力するどころか、更に多くの銃を売ろうとするのか!?この人はたとえ自分の子供が銃で撃たれて命を落としても何とも思わないのか?むしろ銃撃犯人が使った銃が売れた事を喜ぶのか?とさえ考えてしまいました。目には目を、力には力を、銃には銃を、の典型的な考え方ですが、もし武装警官が常駐パトロールする学校が増えたらそこの生徒・学生・教師・親達はどう思うか?教師にも武器と訓練を与えよ、という極端な意見まであるようですが、その教師や武装警官が何かの切欠でキレて自制心を失ったり、精神異常を来たして無防備な生徒や学生に銃を向けたらどうなるか?考えるだけでも恐ろしいです。

また、持っている銃を奪われて犯罪・事件に使われる恐れもあります。武装警官や教師が居ると分かれば、更にそれを上回る重装備をして乗り込む犯罪者が出て来るかもしれません。狂気が狂気を呼び、悲劇の規模が大きくなるばかりです。何度も言われたことですが、もうこれ以上待てません。次の悲劇が起こる前に世論が沸騰している今こそ、本格的銃規制を実現せねばなりません。

年明け早々暗い話題になってしまいましたが、新年のスタートに当たり巳年の今年こそ良い意味で蛇のように執念深く、粘り強く本当に有効で意味のある銃規制の強化実現に在米日本人の我々も少しでも貢献出来るようにしたいものです。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

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