
この夏、デトロイトにあるCollege for Creative Studies (通称CCS)において、“Automotive Culture Immersion Workshop”という特別クラスが開講された。教鞭をとったのは、同校のトランスポーテーション学科の伊藤邦久教授とブライアン・ベーカー准教授。今年の開講は2008年夏に続き第二回目となる。参加者は、日本および中国の自動車企業に勤めて4、5年ほどたつカーデザイナーたち9名とCCSの大学院生2名の合計11名。車のデザインの構築、スケッチやレンダリングのテクニック、3Dのモデル製作に至るまでの4週間にわたる強化特訓コースである。一行は校舎に隣接するドミトリーに滞在した。
この特別クラスの特徴は、ドローイングテーブルに向かってデザインを学ぶことと並行して、学舎を飛び出しての野外活動が大きなウエイトをしめる点。デトロイトと言えば、言わずもがな「車の聖地」である歴史的背景がある。車の誕生逸話を学習し、かの偉人が車づくりに思いを馳せた生の現場に出向き、同じく車をデザインするものとして何かに感銘を受ける場所には事欠かない。また夏には車のイベントが各地で開催される。伊藤教授とベーカー准教授が、マイクロバスに参加者を乗せて、現地現場での説明をしながら案内にあたった。
訪ねた美術館は
・Ford Piquette Model T Plant
・Henry Ford Museum
・Kalamazoo Air Museum
・Studebaker Museum
・Auburn Cord Duisenberg Museum
・Hudson Dealership and Museum
・GM Heritage Center
・WP Chrysler Museum など9つ
参加したイベントは
・Concours D’elegance of America
・Harley Davidson Showing Night
・Flat Rock Speedway Races
・Woodward Ave. Dream Cruise
・NASCAR 400 Race など5つ
また、在デトロイト松田総領事からは公邸にて歓迎・激励会のレセプションパーティーの招待を受けた。野外活動の行き来には、ショッピングモールでの買い物やアメリカの典型的なレストランでの食事など、まさにアメリカに浸りきっての体験型学習となった。
今回のクラスでは、以下3つの課題の中から一つを選んでデザインし、モデルをを完成させることが最終課題として与えられた。
1 アメリカン・フルサイズ・ピックアップトラック
2 アメリカン・マッスルカー
3 アメリカン・フルサイズ・ラグジュアリーカー
またアメリカを代表するブランドアイコンとしては次の3つの中から選ぶ。
1 John Deer
2 Harley Davidson
3 Lockheed Martin
野外活動で自分が学んだこと感じ得たことを自分のデザインに反映させ、どのように自分のデザインを構築し発展させるのか、さらに、アメリカ市場を鑑みてデザインを起こすことは、日本と中国の若手のデザイナーには、大きなチャレンジとなり、ファイナルプレゼンテーションに向けての最終週は、毎晩徹夜の作業が続いた。
プレゼンテーションでは、英語でのプレゼンテーションが課せられた。CCSが招待した自動車業界関係者約50人には、アメリカ人が多い。自分のデザインのプロポーザルを明瞭にポイントを追って言い表すのは、日本人の苦手とするところであるが、そこにも同教授陣からのアドバイスがリハーサルを通して与えられた。
プレゼンテーションの挨拶では、伊藤教授よりこのワークショップをはじめた経緯などの説明があった。日本には、世界に名を馳せる自動車会社が数社あるにも拘らず、自動車のデザインを特化して教える大学がない。日本の自動車会社のカーデザイナーは、美術大学は出ているものの、学校でカーデザインの基礎を習う機会はないために、入社後に企業が基礎から教えている。このような現状の中で、カーデザインの第一人者である伊藤教授が企業から若手デザイナーの特訓を依頼されたことが実施のきっかけとなった。グローバル化が進む中、車の原点となる聖地デトロイトに浸っての特訓は、カーデザイナーとして琴線に触れるものが大いにあった充実した4週間だっただけでなく、ライバル会社のデザイナー同士切磋琢磨しながら友情も築けたようであった。
プレゼンテーションの後には、CCSから修了証が一人ひとりに授与された。
講義並びに制作実習が行われた校舎は元GMのデザイン部門を主とした社屋であり、実習室の域を超えた施設。デザイン設備が企業レベルであるほか、車用のエレベーターがあり、廊下も運転が可能な広さを備えている。ここで学ぶということ自体も大きな刺激になったようだ。
伊藤教授の指導による習得も計り知れないほど多大だが、ベーカー准教授による時代背景やアメリカ人の好みなどの解説も参加者の見識や意欲に大きく関与した。ベーカー氏は自称『典型的な車好きアメリカ人』。「アメリカンテイストとアメリカ人の車に対するパッションを知って欲しい」と願い、それが伝わるように指導や案内に務めたと話す。参加者に感想を伺ったところ、誰もがプログラムの充実度を称賛するとともに、「人生で一番の夏休み」などと充足感を語った。ミュージアムに展示されていたクラシックカーがドリームクルーズなどのイベントに自家用車として並んでいたことに刺激されたという声、また、イベントの盛り上がり方や家族連れが多いことから‘車が大好き’であることが伝わり、その期待に応えるように頑張らなくてはと思ったという発言もあった。1ヵ月で習得したことは多く、閃きも得られたが、帰国後にじわじわと消化して成果を出していけると思うという感想も寄せられた
プレゼンテーションを参観したSUBARUの大関氏は「プログラムのチョイスが素晴らしい。デザインのスキルアップだけでなく、背景や歴史、アメリカの文化を幅広く吸収できたことでしょう。他のメーカーさんと一緒だということも貴重」と高く評価した。他の参観者からも、各企業のホープである参加者たちの一層の活躍に期待の声が寄せられた。カーデザインの世界に留まらず、彼等の情熱は周囲に刺激を与えていくことであろう。
この夏、デトロイトにあるCollege for Creative Studies (通称CCS)において、“Automotive Culture Immersion Workshop”という特別クラスが開講された。教鞭をとったのは、同校のトランスポーテーション学科の伊藤邦久教授とブライアン・ベーカー准教授。今年の開講は2008年夏に続き第二回目となる。参加者は、日本および中国の自動車企業に勤めて4、5年ほどたつカーデザイナーたち9名とCCSの大学院生2名の合計11名。車のデザインの構築、スケッチやレンダリングのテクニック、3Dのモデル製作に至るまでの4週間にわたる強化特訓コースである。一行は校舎に隣接するドミトリーに滞在した。
この特別クラスの特徴は、ドローイングテーブルに向かってデザインを学ぶことと並行して、学舎を飛び出しての野外活動が大きなウエイトをしめる点。デトロイトと言えば、言わずもがな「車の聖地」である歴史的背景がある。車の誕生逸話を学習し、かの偉人が車づくりに思いを馳せた生の現場に出向き、同じく車をデザインするものとして何かに感銘を受ける場所には事欠かない。また夏には車のイベントが各地で開催される。伊藤教授とベーカー准教授が、マイクロバスに参加者を乗せて、現地現場での説明をしながら案内にあたった。
訪ねた美術館は
・Ford Piquette Model T Plant
・Henry Ford Museum
・Kalamazoo Air Museum
・Studebaker Museum
・Auburn Cord Duisenberg Museum
・Hudson Dealership and Museum
・GM Heritage Center
・WP Chrysler Museum など9つ
参加したイベントは
・Concours D’elegance of America
・Harley Davidson Showing Night
・Flat Rock Speedway Races
・Woodward Ave. Dream Cruise
・NASCAR 400 Race など5つ
また、在デトロイト松田総領事からは公邸にて歓迎・激励会のレセプションパーティーの招待を受けた。野外活動の行き来には、ショッピングモールでの買い物やアメリカの典型的なレストランでの食事など、まさにアメリカに浸りきっての体験型学習となった。
今回のクラスでは、以下3つの課題の中から一つを選んでデザインし、モデルをを完成させることが最終課題として与えられた。
1 アメリカン・フルサイズ・ピックアップトラック
2 アメリカン・マッスルカー
3 アメリカン・フルサイズ・ラグジュアリーカー
またアメリカを代表するブランドアイコンとしては次の3つの中から選ぶ。
1 John Deer
2 Harley Davidson
3 Lockheed Martin
野外活動で自分が学んだこと感じ得たことを自分のデザインに反映させ、どのように自分のデザインを構築し発展させるのか、さらに、アメリカ市場を鑑みてデザインを起こすことは、日本と中国の若手のデザイナーには、大きなチャレンジとなり、ファイナルプレゼンテーションに向けての最終週は、毎晩徹夜の作業が続いた。
プレゼンテーションでは、英語でのプレゼンテーションが課せられた。CCSが招待した自動車業界関係者約50人には、アメリカ人が多い。自分のデザインのプロポーザルを明瞭にポイントを追って言い表すのは、日本人の苦手とするところであるが、そこにも同教授陣からのアドバイスがリハーサルを通して与えられた。
プレゼンテーションの挨拶では、伊藤教授よりこのワークショップをはじめた経緯などの説明があった。日本には、世界に名を馳せる自動車会社が数社あるにも拘らず、自動車のデザインを特化して教える大学がない。日本の自動車会社のカーデザイナーは、美術大学は出ているものの、学校でカーデザインの基礎を習う機会はないために、入社後に企業が基礎から教えている。このような現状の中で、カーデザインの第一人者である伊藤教授が企業から若手デザイナーの特訓を依頼されたことが実施のきっかけとなった。グローバル化が進む中、車の原点となる聖地デトロイトに浸っての特訓は、カーデザイナーとして琴線に触れるものが大いにあった充実した4週間だっただけでなく、ライバル会社のデザイナー同士切磋琢磨しながら友情も築けたようであった。
プレゼンテーションの後には、CCSから修了証が一人ひとりに授与された。
講義並びに制作実習が行われた校舎は元GMのデザイン部門を主とした社屋であり、実習室の域を超えた施設。デザイン設備が企業レベルであるほか、車用のエレベーターがあり、廊下も運転が可能な広さを備えている。ここで学ぶということ自体も大きな刺激になったようだ。
伊藤教授の指導による習得も計り知れないほど多大だが、ベーカー准教授による時代背景やアメリカ人の好みなどの解説も参加者の見識や意欲に大きく関与した。ベーカー氏は自称『典型的な車好きアメリカ人』。「アメリカンテイストとアメリカ人の車に対するパッションを知って欲しい」と願い、それが伝わるように指導や案内に務めたと話す。参加者に感想を伺ったところ、誰もがプログラムの充実度を称賛するとともに、「人生で一番の夏休み」などと充足感を語った。ミュージアムに展示されていたクラシックカーがドリームクルーズなどのイベントに自家用車として並んでいたことに刺激されたという声、また、イベントの盛り上がり方や家族連れが多いことから‘車が大好き’であることが伝わり、その期待に応えるように頑張らなくてはと思ったという発言もあった。1ヵ月で習得したことは多く、閃きも得られたが、帰国後にじわじわと消化して成果を出していけると思うという感想も寄せられた
プレゼンテーションを参観したSUBARUの大関氏は「プログラムのチョイスが素晴らしい。デザインのスキルアップだけでなく、背景や歴史、アメリカの文化を幅広く吸収できたことでしょう。他のメーカーさんと一緒だということも貴重」と高く評価した。他の参観者からも、各企業のホープである参加者たちの一層の活躍に期待の声が寄せられた。カーデザインの世界に留まらず、彼等の情熱は周囲に刺激を与えていくことであろう。