
8月下旬、社会環境科学の博士である矢作弘教授(龍谷大学政策学部)をリーダーとする研究グループがデトロイトに訪れた。昨年に続く2度目の訪問で、都市計画、経済学、建築などの専門家がそれぞれの関心から見学や聞き取り調査を進めた。
一行の研究テーマは地域開発の中でも特に“縮小都市”の開発。日本では今後、人口減少は必須であり、どの都市でも空き地や空き家/空きビルをどうしていくかが課題になる。人口減少というと負のイメージがあるが、上手に賢く、むしろ好転させて縮小すること「スマート・シュリンク」が究極の目標ということだ。
原因も事情も異なるとはいえ、既に縮小が起きている各地での取り組み例を調査し、地域の発展のために何が必要かを研究・提言している。土地や建物の側面のみならず、雇用の促進や、高齢者に社会的な役割を生み出すなど、人的活性化の可能性も探る必要があるという。
デトロイトには調査・研究対象として何があるのか。
デトロイトは自動車産業によって繁栄したが1950年代をピークに人口減少が始まり、半世紀ほどの間に市の人口は60%激減。今、市内にはあちこちに膨大な空き地や廃虚が存在する。居住やオフィスが郊外に移り、生産のグローバル化により工場などが国外に流出したことも市の縮退に拍車をかけた。しかしここ10年程、市行政の推進もあり、都市農業、アート活動、ニューベンチャーなどがバネになり、再生の取り組みが顕在化してきている。これらのチャレンジが地域開発の研究にあたって注目されているという。
デトロイトにおけるモデルの一つは農作物の生産。一般にはあまり知られていないが、デトロイト市内に1300程のファームが存在するということ。この中には慈善事業も含まれている。その一つに、薬物依存者の回復と社会復帰/雇用促進等をサポートしている“リカバリー・パーク”というノンプロフィットの団体がある。農業など食に関わる産業によってデトロイトの再興を意図しているが、使われなくなっていた倉庫を利用して漁業プロジェクト(ティラピア等の養殖)も促進している。今回はその施設“Urban Farm” を訪れた。一行は数日の滞在中、施設視察のほか、デトロイト商工会職員、デトロイトフリープレスのコラムニスト、デトロイトに長く住む大学教授などへの聞き取り調査も行った。
世界的な再生の時代にデトロイトは?
世界的にみて、“壊しては造る”から“在る物を再利用する”方向に移っているそうだ。既にある資源を保全し、再生を通して有効活用し、都市の活力に結びつけることが、特に先進国各国にとって、必要に迫られた課題と言える。旧い建造物のユニークさを生かしたレストランなどの店舗が各地に登場しているが、デトロイトでは、コメリカパーク近くの劇場跡を地ビールのブルワリー(酒造+パブレストラン) にした例があるそうだ。
世界各地を見て回っている研究者の方々にデトロイトの可能性について尋ねたところ、「デトロイトは歴史的にたくさんの新しいことがスタートしてきた所。可能性を抱いていると思う」「職が無い為に止むを得ず出て行った人は雇用があれば戻ってくるでしょうし、魅力が出れば人は増える」など、光の見える答えが戻ってきた。そして、ほんの1年の間で前向きな変化を感じると語った。
有効な取り組みを学び合い、何をしなくてはいけないかを模索し、次代を拓いていく必要を強く感じる。
8月下旬、社会環境科学の博士である矢作弘教授(龍谷大学政策学部)をリーダーとする研究グループがデトロイトに訪れた。昨年に続く2度目の訪問で、都市計画、経済学、建築などの専門家がそれぞれの関心から見学や聞き取り調査を進めた。
一行の研究テーマは地域開発の中でも特に“縮小都市”の開発。日本では今後、人口減少は必須であり、どの都市でも空き地や空き家/空きビルをどうしていくかが課題になる。人口減少というと負のイメージがあるが、上手に賢く、むしろ好転させて縮小すること「スマート・シュリンク」が究極の目標ということだ。
原因も事情も異なるとはいえ、既に縮小が起きている各地での取り組み例を調査し、地域の発展のために何が必要かを研究・提言している。土地や建物の側面のみならず、雇用の促進や、高齢者に社会的な役割を生み出すなど、人的活性化の可能性も探る必要があるという。
デトロイトには調査・研究対象として何があるのか。
デトロイトは自動車産業によって繁栄したが1950年代をピークに人口減少が始まり、半世紀ほどの間に市の人口は60%激減。今、市内にはあちこちに膨大な空き地や廃虚が存在する。居住やオフィスが郊外に移り、生産のグローバル化により工場などが国外に流出したことも市の縮退に拍車をかけた。しかしここ10年程、市行政の推進もあり、都市農業、アート活動、ニューベンチャーなどがバネになり、再生の取り組みが顕在化してきている。これらのチャレンジが地域開発の研究にあたって注目されているという。
デトロイトにおけるモデルの一つは農作物の生産。一般にはあまり知られていないが、デトロイト市内に1300程のファームが存在するということ。この中には慈善事業も含まれている。その一つに、薬物依存者の回復と社会復帰/雇用促進等をサポートしている“リカバリー・パーク”というノンプロフィットの団体がある。農業など食に関わる産業によってデトロイトの再興を意図しているが、使われなくなっていた倉庫を利用して漁業プロジェクト(ティラピア等の養殖)も促進している。今回はその施設“Urban Farm” を訪れた。一行は数日の滞在中、施設視察のほか、デトロイト商工会職員、デトロイトフリープレスのコラムニスト、デトロイトに長く住む大学教授などへの聞き取り調査も行った。
世界的な再生の時代にデトロイトは?
世界的にみて、“壊しては造る”から“在る物を再利用する”方向に移っているそうだ。既にある資源を保全し、再生を通して有効活用し、都市の活力に結びつけることが、特に先進国各国にとって、必要に迫られた課題と言える。旧い建造物のユニークさを生かしたレストランなどの店舗が各地に登場しているが、デトロイトでは、コメリカパーク近くの劇場跡を地ビールのブルワリー(酒造+パブレストラン) にした例があるそうだ。
世界各地を見て回っている研究者の方々にデトロイトの可能性について尋ねたところ、「デトロイトは歴史的にたくさんの新しいことがスタートしてきた所。可能性を抱いていると思う」「職が無い為に止むを得ず出て行った人は雇用があれば戻ってくるでしょうし、魅力が出れば人は増える」など、光の見える答えが戻ってきた。そして、ほんの1年の間で前向きな変化を感じると語った。
有効な取り組みを学び合い、何をしなくてはいけないかを模索し、次代を拓いていく必要を強く感じる。