~どう書くのかよりも何を書くのかが重要

  9月初旬より帰国生大学入試が始まっています。早稲田大、慶應義塾大、上智大、東京理科大などは9月中に入試を実施し、ほとんどの私立大が10月までに入試を終了します。一方、国公立大は11~12月に入試を行う大学と2月下旬に入試を行う大学とに分かれます。このように帰国生は1~2月に受験する国内生よりも早く入学先を決めることができます。

  また、帰国生には国公立大を受験する場合でも大学入試センター試験が免除されるという優遇措置がありますし、入試科目も国内生に比べれば負担が軽減されています。例えば文科系学部ならば英語と小論文と面接のみという大学が目立ちます。理科系学部の場合は数学や理科を課す大学もありますが、小論文と面接のみという大学もあります。ただし、入試科目の負担が軽いからと言って帰国生入試は易しいわけではありません。受験生にとっては対策が立てにくく、また実力を伸ばしにくい小論文と面接がほとんどの大学で課されるのです。ここでは、小論文の対策のポイントをお伝えします。

書くためにはまず知識の蓄積を

  小論文の出題形式には、大きく分けて二つがあります。一つが「○○について述べなさい。」というような課題に答えるテーマ型、もう一つが論述文などの長文を読んで答える課題文型で、大学入試では後者が多くなってきています。また、図表や写真を見て答えるデータ型などもあります。それぞれ形式は異なりますが、自分の意見を論ずるという点では共通しています。高校入試や中学入試で課される作文とは異なり、小論文では自分の意見=問題点を解決する提案(問題解決策)を、読み手である採点者=大学の先生に説得させる(感心させる)ことができるように問題解決策を論ずることが必要です。そのためにはまず、与えられた課題から問題点を見つけ出さねばなりません。

  テーマ型の場合には与えられたテーマについての知識がなければ問題点を指摘することはできません。例えば、「日中の領土問題について述べなさい。」という出題であれば、尖閣諸島に関する問題についての知識がなければ問題点を指摘しようがありません。課題文型は文中に指摘されている事柄や筆者の意見に見つけることができますが、書かれている内容についての知識がある方が読み取りも問題点の指摘もしやすいです。データ型も課題文型と同様に知識が図表や写真の読み取りや問題点の指摘の助けになります。

時事問題や学部専門領域の知識が必要

  小論文で与えられるテーマや課題文、図表の内容は大学や受験する学部によって異なり、最近の時事問題が提示される大学・学部と学部の専門領域に関する問題が提示される大学とがあります。どちらかというと私立大では前者が多く、国公立大では後者が目立ちます。

  時事問題をテーマとする小論文作成のためには、日頃より社会で起こっているニュースに目を向ける必要があります。例えば頻繁に報道されている中国や韓国、そしてロシアとの領土問題の動きは逐次キャッチしておきましょう。間もなく行われる米国の大統領選、民主化の進むアラブの国々の紛争、ヨーロッパの経済危機、米国の火星探査なども説明できるようにしましょう。それから、日本の社会の出来事を知ることも大切です。

  一方で学部の専門領域をテーマとする小論文作成のためには、専門領域に関する書籍や雑誌などを積極的に読むことが必要です。学識者の論文を掲載している新書を読むこともよいですが、志望する専門分野に関係があれば、興味が持てる内容の書籍を多数読むことの方が大切です。科学雑誌や経済誌などもお勧めします。日本語の書籍や雑誌が身近になければ英語で読んでも構いません。まずは知識を増やすことの方が大切です。また、新聞やテレビなどで報道されている学問領域に関連するニュースもキャッチしておきましょう。

海外生活で得た体験が読み手=採点者の目を引く

  このように知識を蓄積すると同時に、問題点を見つけ出す視野を持つことが必要です。このためには自分が見聞きした事柄に疑問を持つ習慣をつけることが大切です。ニュースをキャッチしたり、本を読んだりするときにはもちろん、日常の生活を送る中でも疑問を持つことを習慣づけるとよいでしょう。疑問はニュースで報道される出来事そのものだけではなく、当事者の言動にも隠されています。筆者の意見にも見つけることができるでしょう。現地校の先生や友人の言動にもあるでしょう。そして見つけた疑問=問題点は、どのように解決すればよいのかを考えましょう。これが小論文に明示すべき自分の意見=問題解決策です。

  そして、自分の意見を説得力のあるものにするためには、それを裏付ける理由=根拠を提示せねばなりません。根拠は具体的に説明することが大切ですが、それは自分の知識や体験に基づいていることが重要です。他人の受け売りでは決して自分に意見とは言えないからです。特に、帰国生の答案には海外での体験や海外からの視点を盛り込むことが大切なので、米国の社会に接する中で積極的に知識を吸収したり体験を積んだりしたりしましょう。世界や日本で起こった出来事が米国でどのように報道され、米国の人々はどのように感じているのかという点を把握する必要があります。現地校の授業も重要な知識吸収や体験の場です。また、クラブ活動やボランティア活動などにも積極的に参加することをお勧めします。このような知識や体験を具体例として盛り込むことで、自分の意見を読み手=採点者に納得してもらえる答案となるのです。

  小論文対策は、どう書くかという書き方のテクニックを習得するよりも、まずは何を書くのかというアイデアが浮かぶように練習を積むことの方が重要です。

米日教育交流協議会・代表 / 河合塾北米事務所・アドバイザー 丹羽 筆人

執筆者/河合塾 海外帰国生コース 北米事務所 丹羽 筆人

  河合塾で十数年間にわたり、大学入試データ分析、大学情報の収集・提供、大学入試情報誌「栄冠めざして」などの編集に携わるとともに、大学受験科クラス担任として多くの塾生を大学合格に導いた。また、現役高校生や保護者対象の進学講演も多数行った。一方、米国・英国大学進学や海外サマーセミナーなどの国際的企画も担当。1999年に米国移住後は、CA、NJ、NY、MI州の補習校・学習塾講師を務めた。2006年に「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、日本での日本語・日本文化体験学習プログラム「サマー・キャンプ in ぎふ」など、国際的な交流活動を実践。さらに、河合塾海外帰国生コース北米事務所アドバイザーとして帰国生大学入試情報提供と進学相談も担当し、北米各地での進学講演も行っている。また、文京学院大学女子中学校・高等学校北米事務所アドバイザー、名古屋国際中学校・高等学校アドミッションオフィサー北米地域担当、デトロイトりんご会補習授業校講師も務めている。

~どう書くのかよりも何を書くのかが重要

  9月初旬より帰国生大学入試が始まっています。早稲田大、慶應義塾大、上智大、東京理科大などは9月中に入試を実施し、ほとんどの私立大が10月までに入試を終了します。一方、国公立大は11~12月に入試を行う大学と2月下旬に入試を行う大学とに分かれます。このように帰国生は1~2月に受験する国内生よりも早く入学先を決めることができます。

  また、帰国生には国公立大を受験する場合でも大学入試センター試験が免除されるという優遇措置がありますし、入試科目も国内生に比べれば負担が軽減されています。例えば文科系学部ならば英語と小論文と面接のみという大学が目立ちます。理科系学部の場合は数学や理科を課す大学もありますが、小論文と面接のみという大学もあります。ただし、入試科目の負担が軽いからと言って帰国生入試は易しいわけではありません。受験生にとっては対策が立てにくく、また実力を伸ばしにくい小論文と面接がほとんどの大学で課されるのです。ここでは、小論文の対策のポイントをお伝えします。

書くためにはまず知識の蓄積を

  小論文の出題形式には、大きく分けて二つがあります。一つが「○○について述べなさい。」というような課題に答えるテーマ型、もう一つが論述文などの長文を読んで答える課題文型で、大学入試では後者が多くなってきています。また、図表や写真を見て答えるデータ型などもあります。それぞれ形式は異なりますが、自分の意見を論ずるという点では共通しています。高校入試や中学入試で課される作文とは異なり、小論文では自分の意見=問題点を解決する提案(問題解決策)を、読み手である採点者=大学の先生に説得させる(感心させる)ことができるように問題解決策を論ずることが必要です。そのためにはまず、与えられた課題から問題点を見つけ出さねばなりません。

  テーマ型の場合には与えられたテーマについての知識がなければ問題点を指摘することはできません。例えば、「日中の領土問題について述べなさい。」という出題であれば、尖閣諸島に関する問題についての知識がなければ問題点を指摘しようがありません。課題文型は文中に指摘されている事柄や筆者の意見に見つけることができますが、書かれている内容についての知識がある方が読み取りも問題点の指摘もしやすいです。データ型も課題文型と同様に知識が図表や写真の読み取りや問題点の指摘の助けになります。

時事問題や学部専門領域の知識が必要

  小論文で与えられるテーマや課題文、図表の内容は大学や受験する学部によって異なり、最近の時事問題が提示される大学・学部と学部の専門領域に関する問題が提示される大学とがあります。どちらかというと私立大では前者が多く、国公立大では後者が目立ちます。

  時事問題をテーマとする小論文作成のためには、日頃より社会で起こっているニュースに目を向ける必要があります。例えば頻繁に報道されている中国や韓国、そしてロシアとの領土問題の動きは逐次キャッチしておきましょう。間もなく行われる米国の大統領選、民主化の進むアラブの国々の紛争、ヨーロッパの経済危機、米国の火星探査なども説明できるようにしましょう。それから、日本の社会の出来事を知ることも大切です。

  一方で学部の専門領域をテーマとする小論文作成のためには、専門領域に関する書籍や雑誌などを積極的に読むことが必要です。学識者の論文を掲載している新書を読むこともよいですが、志望する専門分野に関係があれば、興味が持てる内容の書籍を多数読むことの方が大切です。科学雑誌や経済誌などもお勧めします。日本語の書籍や雑誌が身近になければ英語で読んでも構いません。まずは知識を増やすことの方が大切です。また、新聞やテレビなどで報道されている学問領域に関連するニュースもキャッチしておきましょう。

海外生活で得た体験が読み手=採点者の目を引く

  このように知識を蓄積すると同時に、問題点を見つけ出す視野を持つことが必要です。このためには自分が見聞きした事柄に疑問を持つ習慣をつけることが大切です。ニュースをキャッチしたり、本を読んだりするときにはもちろん、日常の生活を送る中でも疑問を持つことを習慣づけるとよいでしょう。疑問はニュースで報道される出来事そのものだけではなく、当事者の言動にも隠されています。筆者の意見にも見つけることができるでしょう。現地校の先生や友人の言動にもあるでしょう。そして見つけた疑問=問題点は、どのように解決すればよいのかを考えましょう。これが小論文に明示すべき自分の意見=問題解決策です。

  そして、自分の意見を説得力のあるものにするためには、それを裏付ける理由=根拠を提示せねばなりません。根拠は具体的に説明することが大切ですが、それは自分の知識や体験に基づいていることが重要です。他人の受け売りでは決して自分に意見とは言えないからです。特に、帰国生の答案には海外での体験や海外からの視点を盛り込むことが大切なので、米国の社会に接する中で積極的に知識を吸収したり体験を積んだりしたりしましょう。世界や日本で起こった出来事が米国でどのように報道され、米国の人々はどのように感じているのかという点を把握する必要があります。現地校の授業も重要な知識吸収や体験の場です。また、クラブ活動やボランティア活動などにも積極的に参加することをお勧めします。このような知識や体験を具体例として盛り込むことで、自分の意見を読み手=採点者に納得してもらえる答案となるのです。

  小論文対策は、どう書くかという書き方のテクニックを習得するよりも、まずは何を書くのかというアイデアが浮かぶように練習を積むことの方が重要です。

米日教育交流協議会・代表 / 河合塾北米事務所・アドバイザー 丹羽 筆人

執筆者/河合塾 海外帰国生コース 北米事務所 丹羽 筆人

  河合塾で十数年間にわたり、大学入試データ分析、大学情報の収集・提供、大学入試情報誌「栄冠めざして」などの編集に携わるとともに、大学受験科クラス担任として多くの塾生を大学合格に導いた。また、現役高校生や保護者対象の進学講演も多数行った。一方、米国・英国大学進学や海外サマーセミナーなどの国際的企画も担当。1999年に米国移住後は、CA、NJ、NY、MI州の補習校・学習塾講師を務めた。2006年に「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、日本での日本語・日本文化体験学習プログラム「サマー・キャンプ in ぎふ」など、国際的な交流活動を実践。さらに、河合塾海外帰国生コース北米事務所アドバイザーとして帰国生大学入試情報提供と進学相談も担当し、北米各地での進学講演も行っている。また、文京学院大学女子中学校・高等学校北米事務所アドバイザー、名古屋国際中学校・高等学校アドミッションオフィサー北米地域担当、デトロイトりんご会補習授業校講師も務めている。

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