9月に入りロンドン五輪の余韻も少しずつ薄らいで行く感じがしますが、皆さんの印象は如何でしたでしょうか?ジャパンTVのない我家ではNBCのネットワークでTVとインターネットの実況放送・録画通信サービスしか観られず、お目当ての日本期待の種目や日本人選手を観られない悲哀をまたまた味わいました。運良く観られてもリアルタイムでなかったり、ちょこ映りだったりして応援する側としては気を削がれること甚だしい限り。米国暮らしの身としては致し方ないとは言え、4年に一度のイベントなので残念至極でした。
今回のテーマはその『ロンドン五輪が残したもの、教えたこと』です。
今更の感はしますが、日本チーム、日本選手の皆さん、役員・スタッフ、サポート役・お世話係など裏方さん、縁の下の力持ちの皆さん、お疲れ様でした!
4年に一度しかない大舞台。本番で思った通り、もしくは思った以上の力を発揮して素晴らしい結果を残せた人、練習時の力を出し切れず不本意な結果に終わってしまった人、それぞれの思いと想い出を持って帰国されたことと思います。
特に印象的だったのは、昨年ドイツのワールドカップに続く女子サッカー『なでしこジャパン』の戦い振りでした。結果は銀メダルに終わりましたが、正に『限りなく金に近い銀メダル』と言えます。ワールドカップの決勝では米国チームに終始押され、劣勢を強いられながら数少ないチャンスをものにして奇跡的な勝利を飾った戦い振りに比べて、今大会では90分間対等以上に米国とわたり合い、決勝戦に相応しい誠に見応えのある試合でした。結果は1点差で涙を呑みましたが、最後までどちらが勝ってもおかしくない紙一重の差でした。拍手、拍手。
また、試合後の選手コメント、ニュース報道によれば「ロッカールームで泣いて表彰式では笑顔に」という下りも誠に爽やかな事この上なし。全力を出し切ったなでしこジャパン、本当に素晴らしい。銀メダル、おめでとう!
その中で一つだけちょっと気になったのが、ワールドカップ後キャプテンシーを引き継いだ宮間主将の表情でした。変な意味ではなく、何と言うか「自分がもう少し頑張って良いプレーをしてれば勝てたのに・・・出来なくて残念!」というようなやや物悲しい表情が試合後のフィールドでも表彰台でも映っていました。
前主将の澤選手は15歳の時から日本代表を続けている超ベテラン。言葉でメンバーを引っ張るのではなく、態度で示し背中でもの言うタイプのキャプテンでした。その後を引き継いだ宮間主将は就任当初こそ口では「今まで通りで何も変える事はない」と気丈な発言がありましたが、女子サッカーファンのみならず国民全体の期待が大きかっただけに、やはり目に見えないプレッシャーは相当なものだったのではないかと想像します。
ワールドカップ終了後からロンドン五輪までのニュース報道で彼女の一連のコメントを読むと彼女のやんちゃっぽい顔つき(失礼!)とは違ってどれも前向きで優等生的な発言内容でした。また、他の選手による主将に関する感想・コメント、エピソードを読むとレギュラー、サブを問わずチーム全員、個々のメンバーに対する適切でタイムリーな気遣いは部外者には分からないものだったと伺えます。
何が言いたいのかと申しますと、結果的に以前と比べて比較にならない程の責任感からのプレッシャー、表に出ない細かな気遣いの数々が連戦の疲れと相まって元々自由奔放な性格(と勝手に想像していますが)の宮間選手の世界一と言われる正確なプレースメントキック、パス出しの能力を微妙に狂わせたのではないかと思います。勝負に「たら、れば」はご法度ですが、宮間主将がキャプテンではなく一選手のままであの試合をプレイしていたら、もっと自由奔放にのびのびとインスピレーションの利いたクリエイティブなプレースメントキック、パス出しをしていたのではないか、そして金メダルに手が届いたのではないかと思う次第です。負けず嫌いで責任感の強い彼女が個人的に自分を責めていたように見えたので、それがちょっと気の毒で彼女に同情を禁じ得ませんでした。(涙)
女子柔道、競泳、男子体操、男女サッカー、女子バレーボール、卓球、レスリング、ボクシングなど他にも色々書きたい日本選手の活躍もありましたが、一方で失意の内に大会を後にした選手たちのことを考えると胸が痛みます。
毎日死に物狂いで練習し、予選会、日本選手権、代表選考会などを経て、晴れて念願のオリンピック代表に選ばれたにも拘わらず、競技の当日本番で日頃の力が出し切れなかった悔しさは想像し難いものがあります。金メダルゼロに終わった男子柔道では「世界一になるよりも日本代表になる方が難しい」とさえ言われる程で、日本代表に選ばれるために日頃の厳しい練習だけでなく各種の国内・国際大会への出場義務、怪我・病気、過労などで本番時に体調、コンディションをピークに持って行けなかった事とお家芸と呼ばれ「勝って当然。メダルを取って当然」との周囲の期待に押しつぶされて萎縮してしまったのかもしれません。
昔から『心・技・体』と言いますが、超一流の選手、その道のプロでも心・技・体のバランスを保ち、本番に合わせてコンディションをベストに持って行くことの難しさを改めて感じました。これは何もオリンピック、スポーツの世界での事だけでなく、職場や学校、家庭、日常の生活でも言える事ではないでしょうか。
完璧な人など誰もいません。私も少しでも近づけるように小さな事をコツコツと日々是精進して行きたいと思います。
執筆者紹介:小久保陽三
Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。
9月に入りロンドン五輪の余韻も少しずつ薄らいで行く感じがしますが、皆さんの印象は如何でしたでしょうか?ジャパンTVのない我家ではNBCのネットワークでTVとインターネットの実況放送・録画通信サービスしか観られず、お目当ての日本期待の種目や日本人選手を観られない悲哀をまたまた味わいました。運良く観られてもリアルタイムでなかったり、ちょこ映りだったりして応援する側としては気を削がれること甚だしい限り。米国暮らしの身としては致し方ないとは言え、4年に一度のイベントなので残念至極でした。
今回のテーマはその『ロンドン五輪が残したもの、教えたこと』です。
今更の感はしますが、日本チーム、日本選手の皆さん、役員・スタッフ、サポート役・お世話係など裏方さん、縁の下の力持ちの皆さん、お疲れ様でした!
4年に一度しかない大舞台。本番で思った通り、もしくは思った以上の力を発揮して素晴らしい結果を残せた人、練習時の力を出し切れず不本意な結果に終わってしまった人、それぞれの思いと想い出を持って帰国されたことと思います。
特に印象的だったのは、昨年ドイツのワールドカップに続く女子サッカー『なでしこジャパン』の戦い振りでした。結果は銀メダルに終わりましたが、正に『限りなく金に近い銀メダル』と言えます。ワールドカップの決勝では米国チームに終始押され、劣勢を強いられながら数少ないチャンスをものにして奇跡的な勝利を飾った戦い振りに比べて、今大会では90分間対等以上に米国とわたり合い、決勝戦に相応しい誠に見応えのある試合でした。結果は1点差で涙を呑みましたが、最後までどちらが勝ってもおかしくない紙一重の差でした。拍手、拍手。
また、試合後の選手コメント、ニュース報道によれば「ロッカールームで泣いて表彰式では笑顔に」という下りも誠に爽やかな事この上なし。全力を出し切ったなでしこジャパン、本当に素晴らしい。銀メダル、おめでとう!
その中で一つだけちょっと気になったのが、ワールドカップ後キャプテンシーを引き継いだ宮間主将の表情でした。変な意味ではなく、何と言うか「自分がもう少し頑張って良いプレーをしてれば勝てたのに・・・出来なくて残念!」というようなやや物悲しい表情が試合後のフィールドでも表彰台でも映っていました。
前主将の澤選手は15歳の時から日本代表を続けている超ベテラン。言葉でメンバーを引っ張るのではなく、態度で示し背中でもの言うタイプのキャプテンでした。その後を引き継いだ宮間主将は就任当初こそ口では「今まで通りで何も変える事はない」と気丈な発言がありましたが、女子サッカーファンのみならず国民全体の期待が大きかっただけに、やはり目に見えないプレッシャーは相当なものだったのではないかと想像します。
ワールドカップ終了後からロンドン五輪までのニュース報道で彼女の一連のコメントを読むと彼女のやんちゃっぽい顔つき(失礼!)とは違ってどれも前向きで優等生的な発言内容でした。また、他の選手による主将に関する感想・コメント、エピソードを読むとレギュラー、サブを問わずチーム全員、個々のメンバーに対する適切でタイムリーな気遣いは部外者には分からないものだったと伺えます。
何が言いたいのかと申しますと、結果的に以前と比べて比較にならない程の責任感からのプレッシャー、表に出ない細かな気遣いの数々が連戦の疲れと相まって元々自由奔放な性格(と勝手に想像していますが)の宮間選手の世界一と言われる正確なプレースメントキック、パス出しの能力を微妙に狂わせたのではないかと思います。勝負に「たら、れば」はご法度ですが、宮間主将がキャプテンではなく一選手のままであの試合をプレイしていたら、もっと自由奔放にのびのびとインスピレーションの利いたクリエイティブなプレースメントキック、パス出しをしていたのではないか、そして金メダルに手が届いたのではないかと思う次第です。負けず嫌いで責任感の強い彼女が個人的に自分を責めていたように見えたので、それがちょっと気の毒で彼女に同情を禁じ得ませんでした。(涙)
女子柔道、競泳、男子体操、男女サッカー、女子バレーボール、卓球、レスリング、ボクシングなど他にも色々書きたい日本選手の活躍もありましたが、一方で失意の内に大会を後にした選手たちのことを考えると胸が痛みます。
毎日死に物狂いで練習し、予選会、日本選手権、代表選考会などを経て、晴れて念願のオリンピック代表に選ばれたにも拘わらず、競技の当日本番で日頃の力が出し切れなかった悔しさは想像し難いものがあります。金メダルゼロに終わった男子柔道では「世界一になるよりも日本代表になる方が難しい」とさえ言われる程で、日本代表に選ばれるために日頃の厳しい練習だけでなく各種の国内・国際大会への出場義務、怪我・病気、過労などで本番時に体調、コンディションをピークに持って行けなかった事とお家芸と呼ばれ「勝って当然。メダルを取って当然」との周囲の期待に押しつぶされて萎縮してしまったのかもしれません。
昔から『心・技・体』と言いますが、超一流の選手、その道のプロでも心・技・体のバランスを保ち、本番に合わせてコンディションをベストに持って行くことの難しさを改めて感じました。これは何もオリンピック、スポーツの世界での事だけでなく、職場や学校、家庭、日常の生活でも言える事ではないでしょうか。
完璧な人など誰もいません。私も少しでも近づけるように小さな事をコツコツと日々是精進して行きたいと思います。
執筆者紹介:小久保陽三
Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。