ミシガンでは珍しく猛暑が続いた7月もようやく過去のものとなり、8月に入りました。少しは暑さも緩むと思いますが、日本ではこれからが夏本番。電力需要がピークになる時期に供給不足・使用制限が見えていて本当にお気の毒な事です。

 さて、今夏の一大イベントであるロンドン・オリンピックが始まりました。一足先の6月にエリザベス女王の即位60周年記念行事が行われ、四半世紀ほど元気のなかった英国も久し振りに旧大英帝国の隆盛と栄光を思い出したように活気付いています。それにしても、英国国民は英国人である事に揺るぎなき誇りを持ち、本当に心から女王陛下を敬い、愛している事が改めて強く印象に残りましたね。

 さて、前回『チーム作りの難しさ』について書きましたが、今回は『動機付けの重要性と難しさ』というテーマです。

 チーム作りが出来た後、あるいはほぼ同時にそのチームを目的・目標に向かって進めるための動機付けが必要です。これが上手く出来ないと折角有能なメンバーを集めたチームも形を作っただけで「仏造って魂入れず」になってしまいます。各メンバー個々の能力と強みを活かし、足りない点や弱みをカバーし合いながらチームとして最大限のパワーを発揮し、目的・目標を達成出来るようにしっかりと動機付けするのがリーダーの役目です。いわゆる『一致団結』の状態に持っていかないと、個々の能力レベルが高いほど「船頭多くして船山に登る」事になりかねません。

 チームとしてのコンセンサス・ビルディング(合意形成)がきちんと出来ないままプロジェクトをスタートしてしまうと途中でリーダーとメンバーまたはメンバー間の誤解、行き違いが生じ、一時停止して調整や修正が必要となったり、最悪すごろくゲームではないですが「スタートに戻る」羽目になってしまいます。その時点で残された期限は切迫するわ、予算枠も目減りするわでメンバーのやる気も減退してプロジェクトはもう既に半分失敗と言えます。

 またまたサッカーの話題になって恐縮ですが、オリンピック開幕に先立ち女子に続いて男子のサッカー競技がスタートしました。昨年のワールドカップで初優勝し、日本中と海外の日本人に元気を届けてくれたなでしこジャパンは本稿作成時点で予選リーグ1勝1分けで既に決勝トーナメント進出が確定。男子U-23日本代表は予選リーグ緒戦で優勝候補のスペイン代表を撃破して世界をあっと言わせました。

 この男女日本代表チームに関する試合前後のメディア報道を読んで、動機付けの重要性と難しさを改めて感じた次第です。

 先ずなでしこジャパンですが、ワールドカップを制覇し、そのひたむきさとパスを繋いでゴールを目指すポゼッション・サッカーが一気に世界の注目を集めました。その後半年間に行われた招待大会、テスト・マッチ(親善試合)でも米国とは1勝1分けで「米国はもはや勝てない相手ではない」とまで一部で報道されたものです。

 ところがどっこい、敵もサルもの、引っかくもの。直近のスウェーデン遠征テストマッチでは米国に1-4で大敗。ワールドカップでは3-1で勝利したスウェーデンとも1-1の引き分け。今回オリンピック予選リーグでもスウェーデンとは0-0の引き分け。

 これらの試合結果から感じたのは、「各国が本気になって日本対策をして来た」と言うことです。特に過去「どうやっても日本に負ける訳がない」という楽観モードだった米国が日本の戦術とプレイスタイルを細かく分析して対策を練って来たのは明白。ワールドカップチャンピオンになった代償として世界最強No.1ランクの米国を本気にさせてしまったのです。日本が動機付けした形ですね。

 スウェーデンについても同様の事が言えます。7/28(土)の日本戦ではワールドカップ時の欠点をきちんと修正して、自陣から中盤へパスをしっかり繋ぎ、更に前線へ切り込む動きとパスで何度か得点チャンスを作っていました。

 No.2ランクのドイツは出場していませんが、本気になって日本対策を練って来た各国代表と再度修正したなでしこジャパンとのガチンコ勝負の舞台が今度のオリンピックです。そんな緊張感の中、予選リーグでカナダに勝った後佐々木監督の「予選リーグは2位通過もありかな」という微妙な発言がありました。確かに2位通過だと準々決勝での対戦予想相手はランク的に少し楽に思われます。

 しかしながら、この微妙な発言が予選リーグから決勝まで全勝で突破を目指していたチームメンバーの心理に水を差してしまったようです。2位通過などという奇策を弄さず、どこが相手になっても正々堂々と戦って金メダルを勝ち取る意気込みのメンバーはやや拍子抜けになると同時に「アメリカやフランスと先に当たったら負けると思っているの?私たちを信用していないの?」と思ったかもしれません。佐々木監督の本意でなかったとしても、動機付けの難しさですね。

 代表監督就任以来今まで緩急を付け、硬軟自在にアメとムチを使い分けてなでしこメンバーを掌握して来た佐々木監督には珍しく不用意な発言でした。マイナスの動機付けになってチームのパフォーマンスに悪影響しない事を祈るばかりです。

 また、男子U-23日本代表も少なからずなでしこジャパンから動機付けされています。なでしこブームが日本中を席巻し、男子はA代表はもちろん次世代のU-23代表は影が薄く、オリンピックの前評判も芳しくなくてメキシコ五輪銅メダルの元A代表の釜本茂氏からは「女子はメダル。男子は無理」と言われた辛口のコメントも動機付けに拍車を掛けて(釜本氏の狙い通り?)下馬評では誰も予想していなかったスペイン代表に大番狂わせの勝利。スペインが何点取るか、何点差で勝つかだけに興味を持って観戦していた世界中が驚き、一気にメダル取りの話題が沸騰しています。これにはなでしこジャパンメンバーが逆に動機付けのお返しをもらいプラスの相乗効果となっています。

 まぐれ、奇跡と言われないように次戦も勝って決勝トーナメントに進み、なでしこジャパンと共にメダルを持ち帰って欲しいですね。頑張れ、日本!

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。