先ず初めに先月号の拙稿中の記述に誤りがありましたので、訂正とお詫びを致します。前書きのMLBに関する部分で「昨年のワールド・シリーズ覇者フィラデルフィア・フィリーズは・・・」と書きましたが、『昨年』は『2008年』の誤りでした。第7戦までもつれこんだ歴史に残る激戦を制した昨年の覇者はセントルイス・カージナルスでした。常日頃事実関係には十分注意しているつもりでしたが、今回は全くの思い込みと勘違いでお恥ずかしい限りです。大変失礼致しました。ひょっとして(しなくても)認知症の始まりかもしれません。

 NHLスタンレー・カップ決勝は何と誰も予想しなかったウェスタン・コンファレンス第8シードのロスアンゼルス・キングスが初優勝。NBAファイナルはレブロン・ジェームス率いるマイアミ・ヒートが2度目の優勝。彼にとってはプロ入り9年目にして悲願の初優勝。MLBレンジャースのダルビッシュ投手は一時の不調から立ち直りハーラー・ダービーのトップと並ぶ9勝目を上げ、新人でオールスター・ゲーム出場の可能性が高くなりました。サッカーでは何と言っても現在進行中の欧州選手権EURO2012が注目の的ですね。この原稿執筆時の時点でポルトガル、スペイン、ドイツ、イタリアがベスト4進出。本紙が皆さんのお手元に届く頃にはチャンピオンが決まっていることでしょう。

 さて、今回は『チーム作りの難しさ』というテーマについて書いてみます。

 再びサッカーの話題になりますが、サッカーファンならずとも少しでもスポーツに関心のある人ならばEURO2012の関連ニュースでご存知と思いますが、優勝候補の一角に挙げられていたオランダが予選1次リーグ3試合全敗で早々に敗退してしまいました。1次リーグで『死のBグループ』と言われたドイツ、ポルトガル、デンマークと同じ厳しいグループに入る組み合わせになったのは確かに不運な面がありましたが、勝ち点ゼロで大会を去ることになりオランダ国民の落胆は相当なものと推察します。

 これを見て改めて思ったのが、本題の『チーム作りの難しさ』です。

 オランダ代表チームのメンバーにはオランダ国内リーグはもとよりイングランドのプレミアリーグ、ドイツのブンデスリーガ、イタリアのセリエAなどでプレーしている国際的なスタープレーヤーが何人もいます。やや年齢層が高く、若手の育成・台頭に遅れを取っている感はあるものの技量、経験、実績面では下馬評として優勝候補に挙げられて当然と言えるチームでした。しかしながら、その試合内容、プレー振りは優勝候補に似つかわしくないものでした。3試合全てフルに観戦することは出来ませんでしたが、実況中継、ビデオ放送の一部やニュースを見た限りでは、素人目にもチームとしての共通の目的意識、目標達成のための強固な意志、連携プレー、まとまりに欠けていたように見えました。

 キラ星のごとき国際的なスタープレーヤー達がいながら何故?という大きな疑問に対し、サッカーの専門家ではない身ではその道のプロの観点から申せませんが、一般のビジネスにおけるチーム作り、組織作りにも共通する要素があるのではないかと思いました。ビジネスの観点からこれはという敗因をいくつか挙げますと;

  1. 置かれた環境・状況の悪さ=『死のBグループ』となった不運な組み合わせ
  2. 代表チームとして不十分な練習・準備期間
  3. チームとして目的意識の明確化、目標達成のための動機付けと共通意識構築、勝利を目指す強固な意志の醸成・共有の不足
  4. ベテランプレーヤーが多く自己の考え、プレースタイルに拘泥=チームワークの欠如、などがあったと思われます。

1.については自分達では全くコントロール出来ない外部要因で不可抗力。同グループの他3チームも同条件でしたから愚痴にしかならないですね。

2.についても期間的には各代表チームともほぼ同条件で文句は言えません。

3.については当事者である代表チーム関係者のみ知るところですが、それぞれの項目が欠如と言えないまでも不足していたと言えるでしょう。チームメンバーひとり一人の考え方、向かっている方向、そのための手段・方法がバラバラで全体としてまとまっていなかったのではないかと推察します。各自の力が十分あってもその向かう方向が一致しないと総合力として力を発揮出来ない、ビジネスで良く言われる「ベクトルが合っていない」状態だったのではないでしょうか?

4.については国際試合経験豊富なベテランメンバーのプラス部分よりマイナス部分が出てしまったのではないでしょうか?過去に何度も一緒にプレーした顔ぶれからいわゆる馴れ、成功体験、そこから生まれる慢心が少なからずあったと思われます。お互いに知っているつもり、分かっているつもりが独断・独善の思い込みとなり意志の疎通、共通の理解・合意を欠いたのではないでしょうか?

 メンバーの自覚もさることながら3、4は各メンバーの状態を正確に把握出来ず、タイムリーで的確なリードが出来なかったマネージメントの責任と言えます。

 マネージメントに携わる皆さん、成功するチーム作りのために部門・部署、職種に拘わらず『ベクトル合わせ』に十分ご留意下さい。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

 先ず初めに先月号の拙稿中の記述に誤りがありましたので、訂正とお詫びを致します。前書きのMLBに関する部分で「昨年のワールド・シリーズ覇者フィラデルフィア・フィリーズは・・・」と書きましたが、『昨年』は『2008年』の誤りでした。第7戦までもつれこんだ歴史に残る激戦を制した昨年の覇者はセントルイス・カージナルスでした。常日頃事実関係には十分注意しているつもりでしたが、今回は全くの思い込みと勘違いでお恥ずかしい限りです。大変失礼致しました。ひょっとして(しなくても)認知症の始まりかもしれません。

 NHLスタンレー・カップ決勝は何と誰も予想しなかったウェスタン・コンファレンス第8シードのロスアンゼルス・キングスが初優勝。NBAファイナルはレブロン・ジェームス率いるマイアミ・ヒートが2度目の優勝。彼にとってはプロ入り9年目にして悲願の初優勝。MLBレンジャースのダルビッシュ投手は一時の不調から立ち直りハーラー・ダービーのトップと並ぶ9勝目を上げ、新人でオールスター・ゲーム出場の可能性が高くなりました。サッカーでは何と言っても現在進行中の欧州選手権EURO2012が注目の的ですね。この原稿執筆時の時点でポルトガル、スペイン、ドイツ、イタリアがベスト4進出。本紙が皆さんのお手元に届く頃にはチャンピオンが決まっていることでしょう。

 さて、今回は『チーム作りの難しさ』というテーマについて書いてみます。

 再びサッカーの話題になりますが、サッカーファンならずとも少しでもスポーツに関心のある人ならばEURO2012の関連ニュースでご存知と思いますが、優勝候補の一角に挙げられていたオランダが予選1次リーグ3試合全敗で早々に敗退してしまいました。1次リーグで『死のBグループ』と言われたドイツ、ポルトガル、デンマークと同じ厳しいグループに入る組み合わせになったのは確かに不運な面がありましたが、勝ち点ゼロで大会を去ることになりオランダ国民の落胆は相当なものと推察します。

 これを見て改めて思ったのが、本題の『チーム作りの難しさ』です。

 オランダ代表チームのメンバーにはオランダ国内リーグはもとよりイングランドのプレミアリーグ、ドイツのブンデスリーガ、イタリアのセリエAなどでプレーしている国際的なスタープレーヤーが何人もいます。やや年齢層が高く、若手の育成・台頭に遅れを取っている感はあるものの技量、経験、実績面では下馬評として優勝候補に挙げられて当然と言えるチームでした。しかしながら、その試合内容、プレー振りは優勝候補に似つかわしくないものでした。3試合全てフルに観戦することは出来ませんでしたが、実況中継、ビデオ放送の一部やニュースを見た限りでは、素人目にもチームとしての共通の目的意識、目標達成のための強固な意志、連携プレー、まとまりに欠けていたように見えました。

 キラ星のごとき国際的なスタープレーヤー達がいながら何故?という大きな疑問に対し、サッカーの専門家ではない身ではその道のプロの観点から申せませんが、一般のビジネスにおけるチーム作り、組織作りにも共通する要素があるのではないかと思いました。ビジネスの観点からこれはという敗因をいくつか挙げますと;

  1. 置かれた環境・状況の悪さ=『死のBグループ』となった不運な組み合わせ
  2. 代表チームとして不十分な練習・準備期間
  3. チームとして目的意識の明確化、目標達成のための動機付けと共通意識構築、勝利を目指す強固な意志の醸成・共有の不足
  4. ベテランプレーヤーが多く自己の考え、プレースタイルに拘泥=チームワークの欠如、などがあったと思われます。

1.については自分達では全くコントロール出来ない外部要因で不可抗力。同グループの他3チームも同条件でしたから愚痴にしかならないですね。

2.についても期間的には各代表チームともほぼ同条件で文句は言えません。

3.については当事者である代表チーム関係者のみ知るところですが、それぞれの項目が欠如と言えないまでも不足していたと言えるでしょう。チームメンバーひとり一人の考え方、向かっている方向、そのための手段・方法がバラバラで全体としてまとまっていなかったのではないかと推察します。各自の力が十分あってもその向かう方向が一致しないと総合力として力を発揮出来ない、ビジネスで良く言われる「ベクトルが合っていない」状態だったのではないでしょうか?

4.については国際試合経験豊富なベテランメンバーのプラス部分よりマイナス部分が出てしまったのではないでしょうか?過去に何度も一緒にプレーした顔ぶれからいわゆる馴れ、成功体験、そこから生まれる慢心が少なからずあったと思われます。お互いに知っているつもり、分かっているつもりが独断・独善の思い込みとなり意志の疎通、共通の理解・合意を欠いたのではないでしょうか?

 メンバーの自覚もさることながら3、4は各メンバーの状態を正確に把握出来ず、タイムリーで的確なリードが出来なかったマネージメントの責任と言えます。

 マネージメントに携わる皆さん、成功するチーム作りのために部門・部署、職種に拘わらず『ベクトル合わせ』に十分ご留意下さい。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

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