例年メモリアル・デーが過ぎると一気に夏!という感じのミシガンですが、今年は3月に一度バカ陽気のヒート・ウェーブが訪れ、4月には肌寒い日が数日続いたりと天候が不順だったので、皆さん体調管理にご苦労されたのではないでしょうか?6月に入ると当地の高校、大学の卒業式が終わり、卒業生は想い出に浸る時間もそこそこに新たな門出の準備、在校生は長い夏休みに入ります。輝かしい門出、安全で健康な夏休みになりますように。
スポーツの世界ではNHLプレイオフはスタンレー・カップの決勝を残すのみ。NBAプレイオフはコンファレンス・ファイナル開始。MLBは過酷な夏場の勝負所に突入。約50試合を消化し、予想通り首位を走り順当と言えるのはAL西地区のテキサス・レンジャースのみ。同東地区ではボルチモア・オリオールズとタンパベイ・レイズが首位争い。同中地区では下馬評の高かったデトロイト・タイガースが勝率5割近辺で苦戦。毎年激戦区のNL東ではワシントン・ナショナルズが首位。昨年のワールド・シリーズ覇者フィラデルフィア・フィリーズは最下位に低迷。同西地区ではロスアンゼルス・ドジャースが首位を独走。と予想外、波乱の序盤戦になっています。気になるレンジャースのダルビッシュ投手は強力打線の助けもあり、既に7勝とハーラー・ダービーのトップを行く活躍。このまま怪我・病気なくシーズンを通して活躍して欲しいものです。
さて、今回のテーマは少し真面目に『米国製造業の衰退と従業員の意識』です。
実は今まで他人に話したり、公の場で発言する機会はほとんどなかったのですが、先日たまたま日系企業の米国駐在経営幹部の方と面談した際に話題の一つとして上がりました。米国に早23年余り滞在し、その大部分を部品製造メーカーの管理職、経営幹部として勤務し、自社および他社の現地従業員と直接・間接に日々接触して来た経験から長年自分なりに感じている事を書いてみたいと思います。
『米国製造業の衰退』については、この20~30年米国内を初め、それこそ世界各国の政治家、経済評論家、経営コンサルタント、シンクタンク、経営者、学識者、研究者などありとあらゆる人達が数多の調査・分析結果、考察・見解などを述べており、何も目新しい話題ではありません。
「米国製造業衰退の原因は何か?」この疑問についても既に星の数ほどの答えが出されており、今更私が何か申し上げるような事もなさそうですが、政治的な要素もあるものの、突き詰めて言えば資本主義自由経済下における利潤追求型・利益至上主義的経営の破綻、マネージメントの失敗と言えると思います。
多くの上場企業では「株主に最大利益をもたらすために企業価値を最大化する」という一見もっともらしい表現が使われたりしますが、短期的な利潤追求、利益達成のために企業の存続と競争力の源となる新規開発費を縮小、廉価な労働力や原材料費、製造コストを狙った輸入や国外への外注または製造移管、新規設備投資・既存設備の更新・保全を手抜きして古い設備を使い続けるなど長期的な利益体質が損なわれ、従業員のモラルも低下し、結果として企業を弱体化する事態に陥っているのではないかと思われます。
『従業員の意識』に関しては、一般的に日本に比べて会社への帰属意識が薄いのではないかと感じます。理由は色々違っても転職する人数・頻度は米国の方が遥かに多く、いわゆる労働のモビリティー(社会的流動性)が高いと言えます。会社側も業績が悪化すると簡単にレイオフやダウンサイズをしますし、業績が回復するとすぐに元社員を雇い戻します。従業員も過去を根に持たず平気で復職します。At-will employment(退職および解雇が自由な雇用形態)が主流になっているのとそのような自由労働市場、社会的文化が背景にあるためです。
また、会社の業績が悪くなった時、仕事が上手く行かなくなった時に自分が皆と一緒に辛い思いをしてでも頑張って問題を解決しよう、良くして行こうという気持ちが薄い気がします。もちろん部署や立場によって個人差はあり、中には日本人以上に頑張る人もいますが、「最終的に今の会社でどうしようもなくなったら他の会社に行けばいい。別の仕事を見つければいい」という人が多いのではないかと思われます。
そういう考えや態度が暗黙の内に親から子へ、子から孫へと引き継がれ、世代が移り変わる間に米国のどの製造業も何処の製造メーカーも弱体化し、徐々に衰退の一途を辿っているのではないかと思われます。とは言ったものの製造業の衰退、製造メーカーの凋落は従業員の責任ではなく、究極のところマネージメントの責任であります。米国進出の日系企業の経営幹部の方々はこの『従業員の意識』を念頭に入れ、その中で如何に従業員を動機付けし、継続的な問題解決と業務改善、目標達成の意識を植え付け実践して行くかが極めて重要な課題と言えます。容易な事ではありませんが、是非諦めずに頑張って頂きたいです。
執筆者紹介:小久保陽三
Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。
例年メモリアル・デーが過ぎると一気に夏!という感じのミシガンですが、今年は3月に一度バカ陽気のヒート・ウェーブが訪れ、4月には肌寒い日が数日続いたりと天候が不順だったので、皆さん体調管理にご苦労されたのではないでしょうか?6月に入ると当地の高校、大学の卒業式が終わり、卒業生は想い出に浸る時間もそこそこに新たな門出の準備、在校生は長い夏休みに入ります。輝かしい門出、安全で健康な夏休みになりますように。
スポーツの世界ではNHLプレイオフはスタンレー・カップの決勝を残すのみ。NBAプレイオフはコンファレンス・ファイナル開始。MLBは過酷な夏場の勝負所に突入。約50試合を消化し、予想通り首位を走り順当と言えるのはAL西地区のテキサス・レンジャースのみ。同東地区ではボルチモア・オリオールズとタンパベイ・レイズが首位争い。同中地区では下馬評の高かったデトロイト・タイガースが勝率5割近辺で苦戦。毎年激戦区のNL東ではワシントン・ナショナルズが首位。昨年のワールド・シリーズ覇者フィラデルフィア・フィリーズは最下位に低迷。同西地区ではロスアンゼルス・ドジャースが首位を独走。と予想外、波乱の序盤戦になっています。気になるレンジャースのダルビッシュ投手は強力打線の助けもあり、既に7勝とハーラー・ダービーのトップを行く活躍。このまま怪我・病気なくシーズンを通して活躍して欲しいものです。
さて、今回のテーマは少し真面目に『米国製造業の衰退と従業員の意識』です。
実は今まで他人に話したり、公の場で発言する機会はほとんどなかったのですが、先日たまたま日系企業の米国駐在経営幹部の方と面談した際に話題の一つとして上がりました。米国に早23年余り滞在し、その大部分を部品製造メーカーの管理職、経営幹部として勤務し、自社および他社の現地従業員と直接・間接に日々接触して来た経験から長年自分なりに感じている事を書いてみたいと思います。
『米国製造業の衰退』については、この20~30年米国内を初め、それこそ世界各国の政治家、経済評論家、経営コンサルタント、シンクタンク、経営者、学識者、研究者などありとあらゆる人達が数多の調査・分析結果、考察・見解などを述べており、何も目新しい話題ではありません。
「米国製造業衰退の原因は何か?」この疑問についても既に星の数ほどの答えが出されており、今更私が何か申し上げるような事もなさそうですが、政治的な要素もあるものの、突き詰めて言えば資本主義自由経済下における利潤追求型・利益至上主義的経営の破綻、マネージメントの失敗と言えると思います。
多くの上場企業では「株主に最大利益をもたらすために企業価値を最大化する」という一見もっともらしい表現が使われたりしますが、短期的な利潤追求、利益達成のために企業の存続と競争力の源となる新規開発費を縮小、廉価な労働力や原材料費、製造コストを狙った輸入や国外への外注または製造移管、新規設備投資・既存設備の更新・保全を手抜きして古い設備を使い続けるなど長期的な利益体質が損なわれ、従業員のモラルも低下し、結果として企業を弱体化する事態に陥っているのではないかと思われます。
『従業員の意識』に関しては、一般的に日本に比べて会社への帰属意識が薄いのではないかと感じます。理由は色々違っても転職する人数・頻度は米国の方が遥かに多く、いわゆる労働のモビリティー(社会的流動性)が高いと言えます。会社側も業績が悪化すると簡単にレイオフやダウンサイズをしますし、業績が回復するとすぐに元社員を雇い戻します。従業員も過去を根に持たず平気で復職します。At-will employment(退職および解雇が自由な雇用形態)が主流になっているのとそのような自由労働市場、社会的文化が背景にあるためです。
また、会社の業績が悪くなった時、仕事が上手く行かなくなった時に自分が皆と一緒に辛い思いをしてでも頑張って問題を解決しよう、良くして行こうという気持ちが薄い気がします。もちろん部署や立場によって個人差はあり、中には日本人以上に頑張る人もいますが、「最終的に今の会社でどうしようもなくなったら他の会社に行けばいい。別の仕事を見つければいい」という人が多いのではないかと思われます。
そういう考えや態度が暗黙の内に親から子へ、子から孫へと引き継がれ、世代が移り変わる間に米国のどの製造業も何処の製造メーカーも弱体化し、徐々に衰退の一途を辿っているのではないかと思われます。とは言ったものの製造業の衰退、製造メーカーの凋落は従業員の責任ではなく、究極のところマネージメントの責任であります。米国進出の日系企業の経営幹部の方々はこの『従業員の意識』を念頭に入れ、その中で如何に従業員を動機付けし、継続的な問題解決と業務改善、目標達成の意識を植え付け実践して行くかが極めて重要な課題と言えます。容易な事ではありませんが、是非諦めずに頑張って頂きたいです。
執筆者紹介:小久保陽三
Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。