
東京スカイツリー(東京都墨田区押上)634m
今から3年半前、世界一高い自立式の電波塔(634m)が東京都墨田区押上に建設されると聞いた時、東京タワー(東京港区)の元地元住民として心中穏やかではなかった。「そんなに高い電波塔が必要?」、「関東大震災で大火災が起きた地域なのに安全?」、「“東京タワー”をそう簡単に見捨てるわけ?」、「周辺との景観や日照権は?」、「電磁波障害は?」などなど。
私の中に嫉妬心がムクムクと芽生え、意地悪な疑心暗鬼が次々と飛び出した。
ところが、昨年末、地下鉄都営浅草線本所吾妻橋駅の階段を上り切った先に東京スカイツリー(以後、スカイツリー、又はツリー)がドーンと現れた瞬間、そんなわだかまりは見事に吹き飛ばされた。なんという存在感!美しいフォルム! もう、完全なひと目ぼれだった。“スカイツリー”というネイミングの通り、タワーと言うより、大空(スカイ)をどこまでも伸びる大木(ツリー)。大迫力ながら、至近距離で見上げても決して威圧的ではない。周辺の町並みにも、案外、溶け込んでいる。気になる日照権を墨田区在住の義甥に聞いてみると、「あっ、それ全然大丈夫!」とあっさり。細長いツリーの影が周辺に及ぼす時間もたかが知れているのか。そして、超高層ビルがない墨田区のどこを歩いていても姿を見せるスカイツリーを見ながら右へ、左へ。方向音痴の私にとって、すっかりいい目印になっていた。
【東京スカイツリーの建造美】
スカイツリーの建設地は、3本の都市軸(隅田川、荒川、鉄道・幹線道路)が三角地帯をつくる中央。土台の脚を3本にし、三辺を三角地帯の辺に合わせたことで、どこから見ても正面が見える設計。神社仏閣に見られる日本古来の建築様式“起(むく)り”(外側に向かって膨らむ凸曲線。例:柱)と“反(そ)り(凹曲線。例:日本刀)”を最新技術と融合させることで、底辺部の正三角形を地上320mで円柱にすることを可能にした。この様に底辺は△、上に向かうにつれて膨らみながら○になる外観は、周辺地域への圧迫感を最小限に抑える効果を発揮。そして、反りの曲線が、見る方向によってツリーを傾けたり、裾が非対称の様に錯覚させる面白さと美的センスを加えている。
中心の柱(心柱)は、法隆寺五重塔に習った心柱制耐震構造。その心柱を外側から幾何学模様上に絡み合いながら支える鉄筒は、まるで大木を覆う樹皮のよう。ツリーの一番高いアンテナ土台部分には100トンの重りとバネを利用した制振装置が付けられている。これらの耐震構造は、奇しくも東日本大震災で立証。(悲しいかな、東京タワーのアンテナは少し傾いたという。)
こうして、日本古来の“起りと反り”、法隆寺五重塔の耐震構造、最新技術を見事に調和させ、無機質になりがちな建造物に息吹を与えることに成功。世界一高い電波塔に美的センスを加えるなど、まさに、日本が世界に誇る“巧の技”ここにあり!この美しいツリーを見上げるたびに、「日本は東日本大震災から必ず復旧・復興する!」と確信させられるのだ。
【東京下町界隈】
スカイツリーの周辺界隈は東京の下町と呼ばれ、江戸時代からの職人の街。超高層ビルが立ち並ぶ都心から隅田川を渡った“川向う”(下町の別称)は、景色が一変。伝統的手工業や食べ物屋の老舗暖簾、相撲部屋、観光名所の浅草寺と仲見世通り、寄席、演芸場、両国国技館、職人肌の中小工業店舗等が点在し、そこには下町特有の人情と情緒が溢れている。
古い下町界隈と近代的電波塔という一見、不釣り合いな組み合わせ。しかし、日本の高い工業技術が伝統的職人技と日本のものづくりから生まれたことを考えると、最新技術と古代建築を融合させた世界一の電波塔がこの地に造られたことは象徴的だ。
墨田区在住の姑は、「毎日、スカイツリーが伸びていくのを見るが楽しい!」と喜んでいた。この様に、下町の人々はスカイツリー建設当初(2008年“平成20年”7月)から、まるで狭い路地裏に並ぶ植木を育てる様に慈しみ、見守って来たのではないだろうか。
【地元、押上商店街とおしなりくん】
スカイツリーの地元、押上商店街では、スカイツリーを頭にちょこんとのせた、ご当地キャラクター“おしなりくん”で盛り上がっている。名前の由来は、地元の“押上”と“業平橋”。容姿は、藤原業平に因んだ白装束姿の男の子。商店街に出現した“おしなりくんの家”ではキャラクターグッズの販売も行う。このおしなりくん、ゆるキャラ(少し不恰好で愛嬌ある“ゆるい”キャラクターの略)の中でもかなり可愛く、テレビ、ラジオで紹介されるや観光客にも大人気。等身大のおしなりくんが街に繰り出せば、ミッキーマウスさながらに、さっと取り囲こまれてしまう。押上で煎餅屋を営む店主によると、「スカイツリー煎餅よりも、おしなりくんを焼き付けた醤油煎餅の方がよく売れる」とか。その他、自作“おしなりくん神輿”を理髪店の前に置く店主、目の前のスカイツリーを見上げるのは大変だろうからと店の入り口に反射鏡を取り付けたクリーニング店(実際、見上げると首が疲れる!)、おしなりくんを店の看板に入れたラーメン店など、祭り好きな下町ならではの町興しを見て歩くのも楽しい。
【東京スカイツリータウン】
スカイツリーを含めた商業開発地区“東京スカイツリータウン”の開業は5月22日。ここでは公式キャラクター、“ソラカラちゃん(星の女の子)”が迎えてくれることだろう。東京スカイツリータウンには、飲食店、ファッション・雑貨店、下町商店街、みやげ物店等の商業施設「東京ソラマチ」、水族館、多目的ドームシアター、オフィス・スペースが入り、FM/AMラジオ局のライブ放送や、イベントスタジオ「Tokyo Sky Tree Studio」もオープンする。
スカイツリー展望台は、第1展望台(350m、大人の場合2,000円)、第2展望台(450m、大人追加料金1,000円)の2種類。展望台チケット団体予約は昨年11月、個人予約は今年3月から開始。前出の姑からの情報では、「団体旅行に入った方が“上りやすい”」そうだが、初年度の予想は来場者540万人、施設全体で2,500万人。第2展望台までの道のりは、遠い?
【電波塔としての役割】
外観、観光ばかりに気が取られ、つい忘れそうになるが、スカイツリー本来の目的は電波塔。超高層化した首都圏と関東一円(半径100km)への電波供給を可能にし、かつ世界一の高さ、さらに関東の古称“武蔵国(むさしのくに)”を連想させる語呂合せ(6・3・4、む・さ・し)で634mに決定。東京タワーとのサイマル放送、試験期間を経た後、2013年1月頃からNHKと主な在京民間放送局の放送機能の全てがスカイツリーに移動されるという。
東京タワー(港区芝公園)333m
【東京タワーの行く末は?】
それでは、残された東京タワーはどうなるのか。維持費など心配だが、当面、放送大学、各局のバックアップ機能、展望台や観光用商業施設として使用されるという。昭和33年開業時、電波塔で最長の333mを記録。東京オリンピック開催、霞ヶ関ビル(36F)等の高層ビルが建設され始めた東京に333mの電波塔が必要不可欠になったからで、“昭和33年、333m”という数字は偶然の賜物。それにしても、戦後の復興、高度経済成長、バブル経済に沸いた東京を半世紀以上に渡り見つめていた東京タワー。電波塔としては、ひとまず、お疲れ様!
【東京タワーの見所】
皆が引越した後は寂しくなるが、東京タワーにも見所がいっぱい。大展望台(150m、大人820円)、特別展望台(250m、大人600円追加)からは東京スカイツリー、レインボーブリッジと湾岸地帯を含めた首都圏と富士山までのパノラマ眺望、大展望台1F特設ステージではジャズの生演奏(水、木曜日の夜2回)、オンライン・リクエストによるDJライブ(金曜日)が楽しめる。大展望台2Fでは、知る人ぞ知る “タワー大明神”でお参りを。東京23区で一番高い所にあるだけに、神様にも願い事が早く伝わり、成績・受験、恋愛成就にご利益があるそう。成績をUPしたい受験生やカップルに人気。昭和の香り漂う“蝋人形館”は、タワー土台部分にあるフードコートや土産物店と共に健在だ。
タワー正面玄関には、なぜか「南極物語」で有名なカラフト犬、タロー、ジローの銅像(渋谷のハチ公を彫刻した安藤士 作)が。昭和34年、南極観測地から奇跡的に生還したタロー、ジローを動物愛護のシンボルとして、当時、観光スポットで人目を引いた東京タワーに日本動物愛護協会が設置したという。東京タワーの公式キャラクター、“のっぽくん兄弟”は玄関付近で来場者をお出迎え。兄弟揃って、年末のカウントダウン、豆まき等、タワーでの各種イベントに参加している。
【東京タワー周辺と外観】
東京タワーのお隣は、徳川家菩提寺(16世紀建立)の由緒ある増上寺。周囲は芝公園の緑。夜の盛り場六本木、赤坂、銀座、ビジネス中心街の丸の内、皇居にも近い。
最近はエコフレンドリーなLEDを使ってライトアップする東京タワーは、都心のサラリーマン、学生、住民の心を和ませる。東京タワーのお膝元で育った私にとっても、うれしい時、悲しい時、東京タワーはいつもそこにあった。東京に里帰りする度、その姿を見ると「帰ってきた」とホッとする。それゆえ、以前Detroit Free Pressのトラベルライターが“ugly(みっともない)なタワー”と表現したのには大憤慨だった。お馴染みのツートンカラー、朱&白の朱色は航空法(建設当時)で定められたインターナショナルオレンジと呼ばれるもので、青空に本当によく映える。パリのエッフェル塔を髣髴させる昭和のハイカラさん、東京タワー。東京都民へのアンケートでも、好感度は“東京タワー”に軍配が上がったらしい。やっぱり、“東京都心の顔”! 元地元住民としても、誇らしい。
「両方のおじいちゃん、おばあちゃんの家から、それぞれのタワーが見えるね。」と言った娘。その言葉通り、平成と昭和の“二つの電波塔”がそれぞれの役割を果たしつつ、共存しますように。(Y.T.)
東京スカイツリー(東京都墨田区押上)634m
今から3年半前、世界一高い自立式の電波塔(634m)が東京都墨田区押上に建設されると聞いた時、東京タワー(東京港区)の元地元住民として心中穏やかではなかった。「そんなに高い電波塔が必要?」、「関東大震災で大火災が起きた地域なのに安全?」、「“東京タワー”をそう簡単に見捨てるわけ?」、「周辺との景観や日照権は?」、「電磁波障害は?」などなど。
私の中に嫉妬心がムクムクと芽生え、意地悪な疑心暗鬼が次々と飛び出した。
ところが、昨年末、地下鉄都営浅草線本所吾妻橋駅の階段を上り切った先に東京スカイツリー(以後、スカイツリー、又はツリー)がドーンと現れた瞬間、そんなわだかまりは見事に吹き飛ばされた。なんという存在感!美しいフォルム! もう、完全なひと目ぼれだった。“スカイツリー”というネイミングの通り、タワーと言うより、大空(スカイ)をどこまでも伸びる大木(ツリー)。大迫力ながら、至近距離で見上げても決して威圧的ではない。周辺の町並みにも、案外、溶け込んでいる。気になる日照権を墨田区在住の義甥に聞いてみると、「あっ、それ全然大丈夫!」とあっさり。細長いツリーの影が周辺に及ぼす時間もたかが知れているのか。そして、超高層ビルがない墨田区のどこを歩いていても姿を見せるスカイツリーを見ながら右へ、左へ。方向音痴の私にとって、すっかりいい目印になっていた。
【東京スカイツリーの建造美】
スカイツリーの建設地は、3本の都市軸(隅田川、荒川、鉄道・幹線道路)が三角地帯をつくる中央。土台の脚を3本にし、三辺を三角地帯の辺に合わせたことで、どこから見ても正面が見える設計。神社仏閣に見られる日本古来の建築様式“起(むく)り”(外側に向かって膨らむ凸曲線。例:柱)と“反(そ)り(凹曲線。例:日本刀)”を最新技術と融合させることで、底辺部の正三角形を地上320mで円柱にすることを可能にした。この様に底辺は△、上に向かうにつれて膨らみながら○になる外観は、周辺地域への圧迫感を最小限に抑える効果を発揮。そして、反りの曲線が、見る方向によってツリーを傾けたり、裾が非対称の様に錯覚させる面白さと美的センスを加えている。
中心の柱(心柱)は、法隆寺五重塔に習った心柱制耐震構造。その心柱を外側から幾何学模様上に絡み合いながら支える鉄筒は、まるで大木を覆う樹皮のよう。ツリーの一番高いアンテナ土台部分には100トンの重りとバネを利用した制振装置が付けられている。これらの耐震構造は、奇しくも東日本大震災で立証。(悲しいかな、東京タワーのアンテナは少し傾いたという。)
こうして、日本古来の“起りと反り”、法隆寺五重塔の耐震構造、最新技術を見事に調和させ、無機質になりがちな建造物に息吹を与えることに成功。世界一高い電波塔に美的センスを加えるなど、まさに、日本が世界に誇る“巧の技”ここにあり!この美しいツリーを見上げるたびに、「日本は東日本大震災から必ず復旧・復興する!」と確信させられるのだ。
【東京下町界隈】
スカイツリーの周辺界隈は東京の下町と呼ばれ、江戸時代からの職人の街。超高層ビルが立ち並ぶ都心から隅田川を渡った“川向う”(下町の別称)は、景色が一変。伝統的手工業や食べ物屋の老舗暖簾、相撲部屋、観光名所の浅草寺と仲見世通り、寄席、演芸場、両国国技館、職人肌の中小工業店舗等が点在し、そこには下町特有の人情と情緒が溢れている。
古い下町界隈と近代的電波塔という一見、不釣り合いな組み合わせ。しかし、日本の高い工業技術が伝統的職人技と日本のものづくりから生まれたことを考えると、最新技術と古代建築を融合させた世界一の電波塔がこの地に造られたことは象徴的だ。
墨田区在住の姑は、「毎日、スカイツリーが伸びていくのを見るが楽しい!」と喜んでいた。この様に、下町の人々はスカイツリー建設当初(2008年“平成20年”7月)から、まるで狭い路地裏に並ぶ植木を育てる様に慈しみ、見守って来たのではないだろうか。
【地元、押上商店街とおしなりくん】
スカイツリーの地元、押上商店街では、スカイツリーを頭にちょこんとのせた、ご当地キャラクター“おしなりくん”で盛り上がっている。名前の由来は、地元の“押上”と“業平橋”。容姿は、藤原業平に因んだ白装束姿の男の子。商店街に出現した“おしなりくんの家”ではキャラクターグッズの販売も行う。このおしなりくん、ゆるキャラ(少し不恰好で愛嬌ある“ゆるい”キャラクターの略)の中でもかなり可愛く、テレビ、ラジオで紹介されるや観光客にも大人気。等身大のおしなりくんが街に繰り出せば、ミッキーマウスさながらに、さっと取り囲こまれてしまう。押上で煎餅屋を営む店主によると、「スカイツリー煎餅よりも、おしなりくんを焼き付けた醤油煎餅の方がよく売れる」とか。その他、自作“おしなりくん神輿”を理髪店の前に置く店主、目の前のスカイツリーを見上げるのは大変だろうからと店の入り口に反射鏡を取り付けたクリーニング店(実際、見上げると首が疲れる!)、おしなりくんを店の看板に入れたラーメン店など、祭り好きな下町ならではの町興しを見て歩くのも楽しい。
【東京スカイツリータウン】
スカイツリーを含めた商業開発地区“東京スカイツリータウン”の開業は5月22日。ここでは公式キャラクター、“ソラカラちゃん(星の女の子)”が迎えてくれることだろう。東京スカイツリータウンには、飲食店、ファッション・雑貨店、下町商店街、みやげ物店等の商業施設「東京ソラマチ」、水族館、多目的ドームシアター、オフィス・スペースが入り、FM/AMラジオ局のライブ放送や、イベントスタジオ「Tokyo Sky Tree Studio」もオープンする。
スカイツリー展望台は、第1展望台(350m、大人の場合2,000円)、第2展望台(450m、大人追加料金1,000円)の2種類。展望台チケット団体予約は昨年11月、個人予約は今年3月から開始。前出の姑からの情報では、「団体旅行に入った方が“上りやすい”」そうだが、初年度の予想は来場者540万人、施設全体で2,500万人。第2展望台までの道のりは、遠い?
【電波塔としての役割】
外観、観光ばかりに気が取られ、つい忘れそうになるが、スカイツリー本来の目的は電波塔。超高層化した首都圏と関東一円(半径100km)への電波供給を可能にし、かつ世界一の高さ、さらに関東の古称“武蔵国(むさしのくに)”を連想させる語呂合せ(6・3・4、む・さ・し)で634mに決定。東京タワーとのサイマル放送、試験期間を経た後、2013年1月頃からNHKと主な在京民間放送局の放送機能の全てがスカイツリーに移動されるという。
東京タワー(港区芝公園)333m
【東京タワーの行く末は?】
それでは、残された東京タワーはどうなるのか。維持費など心配だが、当面、放送大学、各局のバックアップ機能、展望台や観光用商業施設として使用されるという。昭和33年開業時、電波塔で最長の333mを記録。東京オリンピック開催、霞ヶ関ビル(36F)等の高層ビルが建設され始めた東京に333mの電波塔が必要不可欠になったからで、“昭和33年、333m”という数字は偶然の賜物。それにしても、戦後の復興、高度経済成長、バブル経済に沸いた東京を半世紀以上に渡り見つめていた東京タワー。電波塔としては、ひとまず、お疲れ様!
【東京タワーの見所】
皆が引越した後は寂しくなるが、東京タワーにも見所がいっぱい。大展望台(150m、大人820円)、特別展望台(250m、大人600円追加)からは東京スカイツリー、レインボーブリッジと湾岸地帯を含めた首都圏と富士山までのパノラマ眺望、大展望台1F特設ステージではジャズの生演奏(水、木曜日の夜2回)、オンライン・リクエストによるDJライブ(金曜日)が楽しめる。大展望台2Fでは、知る人ぞ知る “タワー大明神”でお参りを。東京23区で一番高い所にあるだけに、神様にも願い事が早く伝わり、成績・受験、恋愛成就にご利益があるそう。成績をUPしたい受験生やカップルに人気。昭和の香り漂う“蝋人形館”は、タワー土台部分にあるフードコートや土産物店と共に健在だ。
タワー正面玄関には、なぜか「南極物語」で有名なカラフト犬、タロー、ジローの銅像(渋谷のハチ公を彫刻した安藤士 作)が。昭和34年、南極観測地から奇跡的に生還したタロー、ジローを動物愛護のシンボルとして、当時、観光スポットで人目を引いた東京タワーに日本動物愛護協会が設置したという。東京タワーの公式キャラクター、“のっぽくん兄弟”は玄関付近で来場者をお出迎え。兄弟揃って、年末のカウントダウン、豆まき等、タワーでの各種イベントに参加している。
【東京タワー周辺と外観】
東京タワーのお隣は、徳川家菩提寺(16世紀建立)の由緒ある増上寺。周囲は芝公園の緑。夜の盛り場六本木、赤坂、銀座、ビジネス中心街の丸の内、皇居にも近い。
最近はエコフレンドリーなLEDを使ってライトアップする東京タワーは、都心のサラリーマン、学生、住民の心を和ませる。東京タワーのお膝元で育った私にとっても、うれしい時、悲しい時、東京タワーはいつもそこにあった。東京に里帰りする度、その姿を見ると「帰ってきた」とホッとする。それゆえ、以前Detroit Free Pressのトラベルライターが“ugly(みっともない)なタワー”と表現したのには大憤慨だった。お馴染みのツートンカラー、朱&白の朱色は航空法(建設当時)で定められたインターナショナルオレンジと呼ばれるもので、青空に本当によく映える。パリのエッフェル塔を髣髴させる昭和のハイカラさん、東京タワー。東京都民へのアンケートでも、好感度は“東京タワー”に軍配が上がったらしい。やっぱり、“東京都心の顔”! 元地元住民としても、誇らしい。
「両方のおじいちゃん、おばあちゃんの家から、それぞれのタワーが見えるね。」と言った娘。その言葉通り、平成と昭和の“二つの電波塔”がそれぞれの役割を果たしつつ、共存しますように。(Y.T.)