4月になりました。3月の卒業式に続いて入学式、入社式、新年度、始業式、新1年生、新社会人など『入』、『新』、『始』という漢字が良く似合い、またこれ程見掛ける時期も他にないでしょう。体より大きなランドセルを背負ったピッカピカの1年生、桜の花がほころび、散り行く中を歩む初々しい新入生、新入社員。どれも新鮮で明るい希望に満ちたイメージを抱かせます。ふと我が身を振り返れば、先日の出張中に引いてしまったしつこい風邪の所為でヨレヨレの60+年生。「とほほ」と嘆いたり、落ち込んでいる場合ではありません。東北地方の皆さんは震災直後から1年を過ぎた今日も着実に黙々と復旧から復興へと歩み続けています。2月の誕生日を機に近所の映画館ではめでたくシニア優遇レート適用資格保持者となった小老子も周りの気運に乗じて心機一転、もう少し頑張らねばなりません。

 さて、今回のテーマは新たな門出に相応しく『日々是新、日々是好日』です。

 どこが相応しい?と思われた方、極めて普通の感覚をお持ちです。小老子が言わんとするのは新たなスタートは決して新人だけの特典ではなく、この時期に限った事でもないということです。

 上級生と呼ばれる学校の生徒・学生達、先生方、会社の先輩・上司の方々、家庭で奮闘中の主婦・主夫の皆さん、定年退職後我が道を行く熟年グループメンバー。皆それぞれ立場や環境は違っても、「日々是新たなり」という気持ちで今日という日を迎えられた幸せに感謝しながら新たな事に挑戦したり、新たな方法で取り組んだりすれば、新人諸君と同じレベルではなくとも昨日とは違った新鮮な一日を過ごせるのではないでしょうか?

 人間の体細胞は約60兆個もあり、その内約20%の15兆個が毎日死滅し新たな体細胞に置き換わっているそうです。見かけは同じに見えてもその中身と実体は毎日別人と言える位違っている訳です。それ故、ちょっとした気の持ちようで、たとえ目に見えない程の小さな一歩でも昨日より今日、今日より明日と少しずつ前に進めるのではないでしょうか?向かい風が強過ぎたり、上り坂が急過ぎたりして時には休んで一息入れたり一歩、二歩下がることもあるかもしれません。水前寺清子さんの歌の歌詞ではありませんが、「三歩進んで二歩下がる」ことがあっても「休まないで、あ~る~け~」ですね。

 空に舞い上がるタコは向かい風でないと上がりません。逆風が強い程高く舞い上がります。上り坂も峠を越えれば楽な下り坂です。上り坂と下り坂は必ず同じ数だけあります。「苦あれば楽あり。楽あれば苦あり」ですね。今の忙しさと目先の苦労だけに心を奪われ、我を忘れてはなりません。大分以前の本稿でも書きましたが、『忙』も『忘』も「心を亡くす」と書きます。「心を亡くす」ことは「人間らしさを亡くす」ことに他なりません。『日々是好日』はそのような心理状態、行動パターンに陥らないように戒めた言葉だと思います。

 小老子も含めて人は誰しも何か嬉しい事、楽しい事があった日は好日と思いますが、そういう事が何もなかった日でも「悪いことがなくて良かった。無事に過ごせて良かった」と思えば、それも好日なのです。また、仮に何か良くない事、辛い事、苦しい事があっても「最悪の事態は免れた。小さな被害で済んで不幸中の幸い」と思えば、やはり好日なのです。

 上を見れば切りがない。人間の欲望には限界がない。と言われますが、みんなが「幸せになる」のは難しいけれども、自分の考え方一つで誰もが「幸せに思える。幸せと感じる」ことは出来る筈です。相田みつおさんの言い方ですと「幸せは自分が決める」ことなのでしょうね。経済的には極貧状態のアジアの小国ブータンの国民総幸福度にも通ずるものがあります。

 かく言う小老子も聖人君子でないのはもとより、悟りを啓いた先人達の足元にも及ばず、今も青い鳥を追い続けるチルチル、ミチルと同じ「幸せになれない」人間の一人です。ご多聞に漏れず、『日々是好日』どころか『日々是口実』の有様でどうも毎日出来ない理由、やれなかった言い訳が多いような気がします。反省。

 どうぞ皆さん、小老子を反面教師として頂き、一人でも多くの方が『日々是新』、『日々是好日』を実感出来る日が一日でも多く持てますように、新たな気持ちで4月をスタートし、これからの毎日をお過ごし下さい。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。