本欄も109回目を迎えました。2名の前任者の後を継いだ形ですので、私一人の積み重ねではありませんが、108の煩悩を経てそろそろ楽な日々になるかと甘い期待に反し、未だに悩みは尽きません。3月の声も聞こえ始めた先月後半には久し振りにミシガンにも雪が降りました。暖冬で球根から土を持ち上げ伸びかけていた拙宅玄関前の水仙の若芽が思わぬ寒さに首をすくめています。春の草木や新緑が早めに萌え出るのは歓迎ですが、この暖冬のせいで去年から生きながら得た蚊や虻などの越冬部隊に今年卵からかえる新生の仲間たちが合流して例年以上の数になりそうだとのありがたくない予想記事がありました。花粉アレルギーとともに招かれざる春の客人です。一方日米でプロ野球がキャンプインし、毎日各地から興味深い球春便りが入り始めました。レンジャースのダルビッシュ投手の取材ニュースはやや過剰・過熱気味ですが、不慣れな環境でも順調に調整が進んでMLBデビューし、シーズンを通して活躍してもらいたいものです。

 さて、今回のテーマは『リコよりリタが好き』です。またまた?マークですかね?

決して女性の好みを言っている訳ではありません。靴下を履かずに素足で靴を履く熟年プレイボーイ(だった?)石田純一氏と昨年結婚した女子プロゴルファー東尾理子さんの話でもありません。気を持たせてすみません。要は『リコ(利己)よりリタ(利他)が好き』という話です。

 利他というのは余り耳慣れない言葉だと思いますが、読んで字の如く自分自身のことよりも他人の利益・便宜を図る行為、考え方です。効率優先、利益至上主義が大半の企業の命題となってしまった感のある昨今の世知辛い世の中では、個人の信条・信念や価値観までその影響を強く受けて「自分さえ良ければ」、「他人の事など構っていられるか!」と言った態度が往々にして見受けられます。

 大変残念な事ですが、元々利己的だった人ばかりではなく、他人の事を気遣い、善意を施し、助け合っていた人達が本人も気付かぬ内に考え方や行動パターンが変わり、極端な場合には性格まで変わって「まるで人が変わってしまった」ように感じられることもあります。ゆっくり落ち着いて話をしている時には極めて正論で常識のある発言をする人が、一般的な総論から自分の利害に直接関わる各論に移ると急に利己的な発言に変わってしまい、こちらが面食らう事もあります。

 そのような中で間もなく1周年となる東日本大震災と福島原発事故が発生した後、被災地や被災者の人達への救援・支援活動を切っ掛けとして「他人のために何かしたい」、「誰かのために役立ちたい」という気運が日本中に溢れ、最初から積極的に活動している人達だけでなく、それまでどちらかと言うと内にこもって社会との関わりを断っていた人や仲間内だけの付き合いに限っていた人達が見ず知らずの人に連絡を取り、自分の思いを広く発信し、具体的に動き始めました。2011年の『今年の漢字』に『絆』が選ばれたのもうなずける話です。

 自分の事は二の次にしてでも「他人のために何かしてあげたい」と思う純粋な思いと利他の気持ちは極めて尊く、本人の意志が相手に伝わり実現するように大切にしなければならないのですが、時が経つにつれて折角の気運が尻すぼみになりつつあると言う残念なニュースを耳にしました。

 色々な理由や事情があるようですが、一つは最も中心的・リーダー的存在である国と政府の支援態勢が拙速でまとまりがなく一貫性を欠いて弱腰な事。次に個人や一般の人達よりも規模と金額で勝る国内企業が円高、原油高、業績不振などで支援する余力が少なくなった事。三つ目は救援・支援物資、義捐金、ボランティア希望者などの受け入れおよび配分・活用のための管理体制の不備や非効率な運営が尊い気持ちに水を差してしまっている事などがあるようです。

 それが本当ならば非常に残念なことです。過去の出来事を決して忘れたり、風化させてはなりません。自戒の念も含めて、折角忘れ掛けていた利他の念を思い出し、新たに芽生えた人達の意志を絶対に無駄にしないように是非協力し助け合いましょう !一人でも多く「リコよりリタが好き」と言えるように努力しましょう!

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

 本欄も109回目を迎えました。2名の前任者の後を継いだ形ですので、私一人の積み重ねではありませんが、108の煩悩を経てそろそろ楽な日々になるかと甘い期待に反し、未だに悩みは尽きません。3月の声も聞こえ始めた先月後半には久し振りにミシガンにも雪が降りました。暖冬で球根から土を持ち上げ伸びかけていた拙宅玄関前の水仙の若芽が思わぬ寒さに首をすくめています。春の草木や新緑が早めに萌え出るのは歓迎ですが、この暖冬のせいで去年から生きながら得た蚊や虻などの越冬部隊に今年卵からかえる新生の仲間たちが合流して例年以上の数になりそうだとのありがたくない予想記事がありました。花粉アレルギーとともに招かれざる春の客人です。一方日米でプロ野球がキャンプインし、毎日各地から興味深い球春便りが入り始めました。レンジャースのダルビッシュ投手の取材ニュースはやや過剰・過熱気味ですが、不慣れな環境でも順調に調整が進んでMLBデビューし、シーズンを通して活躍してもらいたいものです。

 さて、今回のテーマは『リコよりリタが好き』です。またまた?マークですかね?

決して女性の好みを言っている訳ではありません。靴下を履かずに素足で靴を履く熟年プレイボーイ(だった?)石田純一氏と昨年結婚した女子プロゴルファー東尾理子さんの話でもありません。気を持たせてすみません。要は『リコ(利己)よりリタ(利他)が好き』という話です。

 利他というのは余り耳慣れない言葉だと思いますが、読んで字の如く自分自身のことよりも他人の利益・便宜を図る行為、考え方です。効率優先、利益至上主義が大半の企業の命題となってしまった感のある昨今の世知辛い世の中では、個人の信条・信念や価値観までその影響を強く受けて「自分さえ良ければ」、「他人の事など構っていられるか!」と言った態度が往々にして見受けられます。

 大変残念な事ですが、元々利己的だった人ばかりではなく、他人の事を気遣い、善意を施し、助け合っていた人達が本人も気付かぬ内に考え方や行動パターンが変わり、極端な場合には性格まで変わって「まるで人が変わってしまった」ように感じられることもあります。ゆっくり落ち着いて話をしている時には極めて正論で常識のある発言をする人が、一般的な総論から自分の利害に直接関わる各論に移ると急に利己的な発言に変わってしまい、こちらが面食らう事もあります。

 そのような中で間もなく1周年となる東日本大震災と福島原発事故が発生した後、被災地や被災者の人達への救援・支援活動を切っ掛けとして「他人のために何かしたい」、「誰かのために役立ちたい」という気運が日本中に溢れ、最初から積極的に活動している人達だけでなく、それまでどちらかと言うと内にこもって社会との関わりを断っていた人や仲間内だけの付き合いに限っていた人達が見ず知らずの人に連絡を取り、自分の思いを広く発信し、具体的に動き始めました。2011年の『今年の漢字』に『絆』が選ばれたのもうなずける話です。

 自分の事は二の次にしてでも「他人のために何かしてあげたい」と思う純粋な思いと利他の気持ちは極めて尊く、本人の意志が相手に伝わり実現するように大切にしなければならないのですが、時が経つにつれて折角の気運が尻すぼみになりつつあると言う残念なニュースを耳にしました。

 色々な理由や事情があるようですが、一つは最も中心的・リーダー的存在である国と政府の支援態勢が拙速でまとまりがなく一貫性を欠いて弱腰な事。次に個人や一般の人達よりも規模と金額で勝る国内企業が円高、原油高、業績不振などで支援する余力が少なくなった事。三つ目は救援・支援物資、義捐金、ボランティア希望者などの受け入れおよび配分・活用のための管理体制の不備や非効率な運営が尊い気持ちに水を差してしまっている事などがあるようです。

 それが本当ならば非常に残念なことです。過去の出来事を決して忘れたり、風化させてはなりません。自戒の念も含めて、折角忘れ掛けていた利他の念を思い出し、新たに芽生えた人達の意志を絶対に無駄にしないように是非協力し助け合いましょう !一人でも多く「リコよりリタが好き」と言えるように努力しましょう!

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

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